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「第 3 の」メバロン酸経路の発見

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146 化学と生物 Vol. 53, No. 3, 2015

好熱性アーキア Thermoplasma acidophilum に見いだされた新しいタイプのメバロン酸経路

「第 3 の」メバロン酸経路の発見

メバロン酸(MVA)経路はイソプレノイド生合成の 初期過程の一つであり,一般には,出発物質であるアセ チルCoAから,イソプレノイド化合物の基本構成単位 となる炭素数5の化合物,イソペンテニル二リン酸

(IPP)およびジメチルアリル二リン酸が合成されるま でを指す(1).MVA経路の解明は主に真核生物を対象と して進められ,1950年代後半にはすでに経路全体の酵 素反応が明らかにされている.この古典的MVA経路

(図1)は一部のバクテリアにも見いだされ,長く普遍 的なものと考えられてきたが,その後全ゲノム配列が多 くの生物で決定されるようになり,アーキアにおける一 部酵素の不在が明らかとなるに至った(2).そもそもアー キアでは,同経路の酵素ホモログの大半がゲノム上に コードされており,さらに過去に行われた取り込み実験 の結果もMVAが中間体であることを支持している.に もかかわらず,例外的に古典的経路を有するSulfolo- bales目の好熱性アーキア(3)を除き,すべてのアーキア のゲノム中にはホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)の,

もしくはPMKとジホスホメバロン酸デカルボキシラー ゼ(DMD)の両者のオーソログ遺伝子が存在せず,古 典的MVA経路が一部途切れている.このミステリーの 解決のヒントとなったのが,イソペンテニルリン酸キ

ナーゼ(IPK)という酵素の発見であった(4).大部分の アーキア(とごく一部のバクテリア)で保存されている 同酵素は,イソペンテニルリン酸(IP)から直接IPPを 合成できる.この知見をもとに,IPを中間体とする新 たな生合成経路,変形MVA経路(図1)の存在が提唱 された.PMKの不在を考慮するならば,IPを与える最 もシンプルな酵素反応は,PMKの基質である5-ホスホ メバロン酸(MVA-5-P)からの脱水/脱炭酸である.

しかしながら同反応を触媒する酵素,ホスホメバロン酸 デカルボキシラーゼ(PMD)は長らく未同定であった.

最近になってようやくこのミッシングリンクが埋められ た.PMDの反応はDMDが触媒する5-ジホスホメバロ ン酸(MVA-5-PP)からIPPへの脱水/脱炭酸反応と類 似している.アーキアの一分類群である高度好塩性アー キアはDMDのオーソログ遺伝子をもつが,実はその翻 訳産物がDMDではなくPMDだったのである.PMDの 最 初 の 発 見 はChloroflexi門 の バ ク テ リ ア

においてなされたが(5),次いで 属 の高度好塩性アーキアでもPMDが同定された(6).これ により,ようやくアーキアにおける変形MVA経路の存 在が実証されたわけである.

さて,高度好塩性アーキア以外にも,DMDオーソロ

図1これまでに見いだされたMVA経路(部分)

古典的経路は真核生物,一部のバクテリア,およびSulfolobales目の好熱性アーキア, / -type変形経路は高度好塩性 アーキアとごく一部のバクテリア, -type変形経路はThermoplasmatales目の好熱性アーキアにそれぞれ存在する.

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化学と生物 Vol. 53, No. 3, 2015

グをもつと予想されたアーキアはわずかながら存在し,

属の好熱性アーキアはその代表例であっ た.われわれはPMDが見いだされたのとほぼ同時期

に, のMVA経路の解明を

進めていた.その過程で,同菌がもつ複数のDMDホモ ログのうち,最もDMDから離れたTa1305がMVAのリ ン酸化を触媒し,3-ホスホメバロン酸(MVA-3-P)を生 成することを見いだした(7).DMDはMVA-5-PPの3位 水酸基をリン酸化し,その脱リン酸反応に共役させて脱 炭酸反応を触媒する酵素であるため,DMDホモログに よるリン酸化反応の触媒自体は不思議ではない.つま り,Ta1305はATPからMVAへのリン酸転移反応のみ を触媒し,その後の脱リン酸/脱炭酸反応を触媒しない DMDホモログである.そこで放射標識したMVA-3-Pを 合成し,ATP, Mg2+イオンの存在下,

の無細胞抽出液と反応させたところ,IPPへの変換が観 察された.同様の変換実験を既知のメバロン酸経路の中 間体でも行ったところ,MVAとIPは同様にIPPに変換 されたが,MVA-5-PとMVA-5-PPの変換は起きなかっ た.こ れ ら の 結 果 は,MVA, MVA-3-P, IPが

におけるMVA経路の中間体であることを強 く示唆している.われわれはさらに,

の無細胞抽出液中から,MVA-3-Pをさらにリン酸化す る酵素活性を見いだした.その生成物は3,5-ビスホスホ メバロン酸(MVA-3,5-PP)と推定され,おそらくこれ に続く酵素反応によって直接IPに変換されると予想さ れた(後に米国の研究グループによって,Ta0762が MVA-3-Pの リ ン 酸 化 を 触 媒 す る こ と が 証 明 さ れ,

MVA-3,5-PPの構造も決定された)(8).以上の実験結果は が,古典的経路とも,高度好塩性アー キアでその存在が実証された変形経路とも異なる,第3 のMVA経路を有することを示している.われわれはこ れを -typeの変形MVA経路(図1)と呼 び, / -typeの変形経路と区別して いる.

上述したとおり,ここ1, 2年のうちにアーキアの変形 MVA経路に関する報告が立て続けになされ,長らく予 想されていた変形経路の実証と,予想だにしなかったも う一つの変形経路の発見が行われた.それらの間の進化 的な関連性はきわめて興味深い.しかし,メタン生成 アーキアや大部分の好熱性アーキアなど,アーキアの大 半はPMKとDMD(およびPMD)のオーソログをとも にもたず,そのMVA経路はいまだに途切れたままであ る.その解明がなされて初めて,アーキア,さらには生 物全体におけるMVA経路の進化の歴史が見えてくるの ではないかと考えている.

  1)  T.  Kuzuyama,  H.  Hemmi  &  S.  Takahashi: “Comprehen- sive Natural Products II Chemistry and Biology,” Vol. 1,  ed. by L. Mander & H.-W. Liu, Elsevier, 2010, p. 493.

  2)  A. Smit & A. Mushegian:  , 10, 1468 (2000).

  3)  H. Nishimura, Y. Azami, M. Miyagawa, C. Hashimoto, T. 

Yoshimura & H. Hemmi:  , 153, 415 (2013).

  4)  L. L. Grochowski, H. Xu & R. H. White:  , 188,  3192 (2006).

  5)  N. Dellas, S. T. Thomas, G. Manning & J. P. Noel:  ,  2, e00672 (2013).

  6)  J. C. Vannice, D. A. Skaff, A. Keightley, J. K. Addo, G. J. 

Wychoff & H. M. Miziorko:  , 196, 1055 (2014).

  7)  Y. Azami, A. Hattori, H. Nishimura, H. Kawaide, T. Yo- shimura & H. Hemmi:  , 289, 15957 (2014).

  8)  J. M. Vinokur, T. P. Korman, Z. Cao & J. U. Bowie: 

53, 4161 (2014).

(邊見 久,名古屋大学大学院生命農学研究科)

プロフィル

邊 見  久(Hisashi HEMMI)

<略歴>1993年東北大学工学部分子化学 工学科卒業/1998年同大学大学院工学研 究科博士課程修了,博士(工学)/同年同大 学大学院工学研究科助手/2005年名古屋 大学大学院生命農学研究科助教授/2007 年同准教授,現在に至る.この間,2004

〜 2005年米国ネブラスカ大学リンカーン 校客員研究員<研究テーマと抱負>微生 物,特にアーキアのイソプレノイド生合成 に関する研究<趣味>読書,サッカー観戦 Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会

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