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色材サロン - pweb - 上智大学

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Academic year: 2024

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1.上智大学の中の理系

上智大学のイメージをインターネットで検索すると,「英語 ができる優秀な女子学生が多い」や「アナウンサー」などの内 容が出てきますが,この中で理工学部の話題はあまり出てきま せん。上智大学は今年で創立100周年を迎え,区切りの年にな りますが,理工学部は1962年に,文学部,経済学部,法学部,

外国語学部,神学部に続く6番目の学部として開設されました。

大学の歴史の中では学部創設50周年を迎えたばかりになりま すが、この頃は,日本の高度成長と国際化の時流にも乗り,い くつかの私立大学が理工学部設置を目指した時代のようで す。当時の大泉孝学長も「今日のように科学技術が発達し,

その結果『物と心』の対決にせまられるときには科学技術者は 人間としていっそう優れた人物でなければならない。このため,

理学と工学の両部門を一体化し,基礎科学や語学教育をも重視 し,国際的視野をもった人材を社会に送り出す理工学部の設置 は,建学以来人間形成に意を注いできた上智大学の使命であ る」と新年のあいさつで述べ,その開設が加速したと言われて います。

2.理工学部とドイツ

実は,理工学部設置に関しては,大正2年に創立された上智

建学方針であるUniversitas(ウニヴェルシタス:総合大学)に,

明記されていました。しかし,上智大学の経済的基盤はドイツ に依存していたため,第一次世界大戦や第二次世界大戦による ドイツの財政的基盤の揺ぎや,国内でも関東大震災などがあ り,たびたび先送りになってしまったようです。その後,1953 年に設立の機会が巡り,本格的な理工学部設立資金集めが始ま りました。おもに,ヨーロッパやアメリカでの募金活動が行わ れ,ドイツのケルン教区やバチカンから数億円(当時)の寄付 がありました。また,ドイツのクルップ財団,カール・ツアイス 社,シーメンス社,フォルクスワーゲン社,ホルテン,ツアイ ス財団に加え,多くの日本の財界などからも支援を受け理工学 部が設置されました。校舎建設のはじめに行う鍬入れ式も,西 ドイツのアデナウアー首相(当時)が行うなど,日本の大学で は見られない光景の中で設立が進められたようです。また,各 学生実験室に設置された分析装置や実験機械はドイツからの輸 入品が使われ,当時の大学の中では最先端の機器や器具に囲ま れながら,授業や研究を行ったようです。

現在の理工学部は,2008年に理工学の領域間の連携を充実さ せるため,5学科(機械工学科,電気・電子工学科,数学科,

物理学科,化学科)および1研究所(生命科学研究所)から,

物質生命理工学科,機能創造理工学科,情報理工学科の3学科 に再編され,この3学科と繋がる大学院も,7専攻の旧体制か

−33−

上智大学

理工学部物質生命理工学科

堀 越   智 ,†

色材サロン

J. Jpn. Soc. Colour Mater., 87〔4〕, 145 – 147

(2014)

上智大学理工学部物質生命理工学科 准教授 東京都千代田区紀尾井町7-1(〒102-8554)

† Corresponding Author, E-mail: [email protected]

写真-1 2013年度ゼミ旅行(伊勢・名古屋)中央に筆者

写真-2 西ドイツのアデナウアー首相(当時)による鍬入れ式

(2)

ら,8領域(機械工学,電気・電子工学,応用化学,化学,数 学,物理学,生物科学,情報学)が1専攻の中に配置されまし た。また,2012年秋学期から,物質生命理工学科グリーンサイ エンスコースや機能創造理工学科グリーンエンジニアリングコ ースなどの英語を共通語とした新コースが加えられました。

3.研究室の新設

筆者は2011年4月より上智大学に勤務することになりました

が,研究室は前任者(幸田清一郎前教授・東京大学名誉教授)

を引き継ぐのではなく,新規に開設することになりました。不 幸にも,この年は東日本大震災があり,前勤務先の東京理科大 学では退職記念パーティーの前日に地震があったため,東京理 科大学で感謝のお礼を言うこともなく去ることとなり,上智大 学の研究室の立ち上げがスタートしました。4月以降も地震の 余波や原発事故によるさまざまな混乱が続く中で,ゆっくりと ではありましたが,実験台やドラフトの整備などを済ませ,ポ スドクや学生諸君の努力により,夏には研究が開始できる状況 になりました。上智大学理工学部のキャンパス(写真-3)はJR 四ツ谷駅の目の前で,皇居と迎賓館に挟まれた位置関係にあり ます。このような立地条件では,都心の大学が抱える「研究・

教育スペースの狭さ」,を着任してすぐに実感しました。しか し,学部長,学科長,学科の先生方,関係事務のサポートによ り,十分なスペースを与えていただきました。上智大学の方針 である「人を大事に育てる」を,身をもって実感いたしました。

4.化学プロセスを一新するマイクロ波化学 以前は,マイクロ波化学をやっていると言うと,「電子レン ジのあれでしょ」と言われたものですが,現在では化学反応を 行うための手段として世界中で認知されました。多くの研究者 や技術者が「マイクロ波化学=迅速合成」といったイメージを もつようになり,ラボから実用化へのスケールアップが,さま ざまな化学分野で取り組まれています。現在のマイクロ波化学 の発展は1986年のTetrahedron Letter誌27巻に二つの論文が掲 載されたことに始まります。それは,マイクロ波(電子レンジ)

を用いた有機合成で,Gedye(カナダ)らとGiguere(アメリ カ)らによる研究が大きなきっかけになっていると言われてい ます。これらの論文は日本製電子レンジを用いていくつかの有 機合成を行い,著しく反応速度が促進することを報告していま す。また,マイクロ波有機合成の有効性を示すと同時に,反応 容器,溶媒,温度管理などが重要であることを示唆しており,

マイクロ波を用いた有機合成の利点と欠点を明確にしました。

さらに,次のターニングポイントとして2000年頃から有機合成 専用のマイクロ波装置が欧米や日本のメーカーから複数発売さ れ,安全性・再現性・制御性が改善されました。また,同時に さまざまな産業用大型装置についても市販されはじめ,ここ10 年で化学実験におけるマイクロ波装置の地位を確立したと考え られます。

マイクロ波有機合成の魅力は何でしょうか? その一つに は,劇的な反応時間の短縮が挙げられます。マイクロ波と既存 加熱における有機合成の一例を表-1に示します。既存法では数 日要する縮合反応がマイクロ波を用いると数十分に短縮するこ

とができます。また,長時間を要するペプチド合成も著しい時 間短縮が可能となり生産性を向上させることができることが報 告されています。このような時間短縮は,副生成物の生成も抑 えることができるため,合成後に行う精製時間の短縮にもつな がります。さらに,マイクロ波加熱の特徴は吸収のある物質だ けが自己発熱する選択加熱が起こります。読者の皆さんもお弁 当を電子レンジで温めると食品だけが温まり,容器は冷えてい る(選択加熱)を経験されていると思います。選択加熱を行う ことができるマイクロ波法では,多くの事例で無溶媒系での反 応を行っており,グリーンケミストリーに適合化した化学プロ セスとしても知られています。とくに,一定の高品質が求めら れているファインケミカル分野にマイクロ波法が適していると 言われ,産業分野ではマイクロ波化学合成装置とロボット技術 を組み合わせた全自動化のマイクロ波スクリーニング試験装置

が24時間連続運転している例もあります。一方,化学プラント

の熱源をマイクロ波に変えることで,プラントサイズを著しく 小型化でき,使用エネルギーも数十分の一に省エネできること がすでに試算されています。

5.マイクロ波非熱効果の解明に対する挑戦 上述に示したように,マイクロ波を利用すると化学反応速度 が著しく促進しますが,その速度は予想をはるかに超えるた め,メカニズムを解明することは非常に困難と考えられてきま した。このため,多くの学術論文ではその促進メカニズムを

「マイクロ波効果(またはマイクロ波非熱効果)」という言葉で 表現し,それ以上の追及はあまりなされてきませんでした。ま た,2008年には,ほとんどの研究で試料の温度むらを正確に 測定していないとした発表があり,この状況からマイクロ波効 果は,実際にはないと結論づけている研究者もいます。マイク

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色 材 サ ロ ン

J. Jpn. Soc. Colour Mater., 87〔4〕(2014)

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写真-3 四ツ谷駅から見た上智大学とイグナチオ教会

分類

縮合反応

固相 ペプチド

通常加熱 80%

3日

4日 マイクロ波

88%

25分

5時間

収率・反応時間 化学反応

GM1認識ペプチド(15残基)

表-1 マイクロ波有機化学の反応の一例

(3)

大 学 ・ 研 究 所 め ぐ り

ロ波加熱はオイルバス加熱のように,伝熱に頼らないため,た びたび温度に誤差が生じることが昔から知られています。この ような混乱は,私たちはキッチンで電子レンジを頻繁に利用し ていますが,実際にはどのようにマイクロ波が試料に照射さ れ,加熱が進行しているかがわかっていない点にあります。こ のため,紹介者らの研究ではマイクロ波の電磁界分布を加味し た照射装置を試作し,電磁波(マイクロ波)と温度を精密にコ ントロールしながら実験を行ってきました。この装置を用いて monoglycerylcetyldimethylammonium chloride(モデル反応)の 精密マイクロ波化学合成を行うと,条件によってマイクロ波効 果が発生するものやそうでないものがあることがわかりました。

通常,この合成には極性の異なる原料を溶かすため2プロパ ノールを溶媒として使用します。溶媒を入れた均一系試料では マイクロ波加熱とオイルバス加熱に大きな合成収率の差はあら われませんでした(マイクロ波効果なし)。一方,無溶媒系で 不均一撹拌混合した試料を用いて同じ温度条件で合成を行う と,オイルバスに比べマイクロ波は1.3倍の促進効果があらわ れました(マイクロ波効果あり)。これ以外にも,マイクロ波 効果が著しくあらわれるものとそうでないものがあり,マイク ロ波を使った化学反応ではマイクロ波熱的効果とマイクロ波非 熱効果を分けて考えなければならないことを示唆しました。ま た,マイクロ波非熱効果は触媒のように活性化エネルギーを低 下させるわけではなく,分子の配向や分極とマイクロ波の相互 作用により分子間の衝突頻度(有効頻度)を高めるものと考察

しています。

6.研究室の目指すもの

よく,ほかの先生から堀越研究室はいったい何の研究をして いるの? と質問されます。本年度の研究室メンバー(ドイツ 人客員教授,博士課程1名,修士課程3名,4年生3名,外部研 究生1名)は,このマイクロ波効果をあぶりだすため,有機合 成,固体触媒反応,マイクロ波光触媒反応,生体酵素反応,セ ラミックス合成などをモデルとして,マイクロ波効果有無の体 系化とそのメカニズム解明に挑戦しています(うち2名はマイ クロ波ではなく光触媒の研究をやっています)。また,マイク ロ波効果の重要因子の解明のため,国内のさまざまな分野の専 門家と,この難問に挑む談話会を重ねています。世界が挑んで きた,マイクロ波効果の解明を柔軟な若い学生の発想と異分野 の融合により,チームジャパンで世界を先導したいと考えてい ます。それにより,マイクロ波化学が化学分野の学術領域とし て地位を固め,さらなる普及につながることを目指しています。

もし,本紹介によってマイクロ波化学に興味をおもちの方が いらっしゃれば,以下の文献を参照していただければ幸いです。

[初級]堀越 智, 谷 正彦, 佐々木政子:図解よくわかる電磁波化 学, マイクロ波化学・テラヘルツ波化学・光化学・メタマテリア ル, 日刊工業新聞社(2012)

.

[中級]堀越 智, 篠原真毅, 滝澤博胤, 福島 潤:マイクロ波化学, 三共出版(2013)

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