「読むこと」に関する指導のポイント

（平成二十六年度北海道 高等学校学力向上事業学力テスト. ベー シックモデル【国語】より）. 若 い 男 の 言 う こ とは 親 切 ずく な の には 違 い ない 。 が 、 その 声 や い か 顔色は如何にも Ｘ を極めている。素直に貰うのは忌々しい。 と言って店を飛び出すのは多少相手に気の毒である。保吉はやむ を得ず勘定台の上へ一銭の銅貨を一枚出した。 「じゃ そのマ ッ チ を 二 つ く れ 給 え 。 」 「二つでも三つでもお持ちなさい。ですが代は入りません 。 」 かげ そこへ幸い戸口に下げた金線サイダーのポスターの 蔭 から、小 もうろう にきび 僧 が一 人首を 出し た。 これ は表情の 朦 朧 とした、面 皰だらけ の 小僧である。 だんな 「 檀那、 マッ チ は こ こ に あ り ま す ぜ 。 」 保吉は内心凱歌を挙げながら、大型のマッチを一箱買った。代 は勿論一銭である。 問１ ニ重傍線部「凱歌を挙げながら」の本文中における意味と し て最も適 当なものを、次の①～⑤のうちから一つ選べ。解 答番号は７。 ① マッチがようやく買えることを祝いながら ② 小僧の的確な助け船を褒め称えながら ③ 主人の不注意に怒りを抱きながら ④ マッチが残っていた幸運に感謝しながら ⑤ 主人との戦いに勝ったと喜びながら 問４ 傍線部「保吉はやむを得ず勘定台の上へ一銭の銅貨を一枚 出した」とあるが、この時の保吉の心情として最も適当なも のを、次①～⑤のうちから一つ選べ。解答番号は 。 11. ① 主人の気配りに甘えて、ただでマッチを 貰うのは気の毒な ので、男が不要なものを 買わなくていいと言うなら、せめて マッチ代を払いたいと感じている。 ② 主人の厚意は認めても、従うのは腹が立って受け入れがた いが、断るのもきまりが悪く、マッチを買い 取るよりほかに どうしようもないと感じている。 ③ 主人の親身な申し出に従ってほどこしを受けるの は遠慮し たいが、いまさら引き返すのも申し訳ないの で、マッチを多 めに買うしかないと感じている。 ④ 主人は一見、親切なようだが、本当はマッチを持 って行か れたくないのだと察して、とりあえず一銭 ぐらいは支払った 方がよさそうだと感じている。 ⑤ 主人の思いやりある提案を受けて、そのままマッ チを貰っ て店を出るのは気の毒だと思い、一銭ぐらいは代金を出すよ りほかにしかたないと感じている。. 辞書的な語義を踏まえながらも、文脈に即して心情を読 み取る力を育てるための授業改善を図る必要がある。 ○ 思い込みを排して文章を読み取り、登場人物の心情を表 現に即して読み味わう力を育てるための授業改善を図る必 要がある。. ○. 析. 分. の. 題. 課. 語 国 Ｂモデル. 「読むこと」に関する指導のポイント. 教材の活用・学力テスト等の結果から見られた課題. 【出題（作成）のねらい】. 文章に描かれた人物、情景、心情などを表現に即して読み味わう力を問う ことをねらいとして、二重傍線部、傍線部について説明したものとして、適 切な選択肢を選ばせた。 二重傍線部については、語義を踏まえて、文脈に即した答えを正答とし、 傍線部については、これまでの心情の変化を踏まえたものを正答とした。. 〈学習指導要領における領域・内容等〉. 「Ｃ 読むこと」の(1)の「ウ 文章に描かれた人物、情景、心情など を表現に即して読み味わうこと。」. 改 善（課題の解決）に 向 け て ○ 心情を表す語や慣用的な表現について語彙を増やしなが ら、文脈に即して心情を読み取らせる指導を行う。 ○ 生徒自身が本文の内容の読みと、表現に即した読みを比 較し、的確に読む段階と自由に読む段階とを意識的に区別 する機会を設ける。. 読むことの育成を目指した指導事例 【単元の指導計画】 次. 学. 習. 活. 動. 指導上の留意点. 本単元では小説を題材として、文章に描 ・心情を表す語句を調べ、教え合う中で、 かれた心情を読み味わうために必要な語彙 自分の言葉で平易に意味を説明する活動 を辞書や国語便覧で調べて教え合ったあ を通じて、語句の的確な理解を促す。 と、実際に小説の文脈の中でそれらの語彙 ・文脈に即して言葉がどのような心情を表 がどのような心情表現に用いられているか 現するのかを話し合い、発表を聞き合う を話し合い、発表する。 ことで、的確な読みへの意識を高める。 第１次. ・文章中の心情を読み味わうため に必要 ・辞書や国語便覧、場合によってはインタ な語彙を辞書や国語便覧で調べ、自分の ーネットなどを活用し、言葉の意味の説 言葉で平易に説明したり、具体例を工夫 明や用例を調べた上で、説明文を書く。 したりして、分かりやすく説明するため の説明文を書く。. 第２次. ・各自が書いた説明文を全体で発表し、他 ・場合によっては複数生徒に発表させるこ 者の発表を参考に補足を加え、言葉の理 とで、説明を比較させ、より的確な言葉 解を深めるために自分のワークシートを の理解を促す。また、積極的にメモを取 完成する。 らせる。. 第３次. ・グループを作り、お互いのワークシート ・机間巡視を行い、グループの生徒の実態 を見て言葉の理解を共有する。その後、 を踏まえて助言を行う。思い込みや行き 各グループで言葉をひとつずつ選び、本 過ぎた解釈があれば、言葉の説明文に戻 文を読み、言葉が文脈の中でどのような って考えるように促す。 心情を表現しているかを話し合い、グル ープで読み取りの結果をまとめた発表原 稿を作る。. 第４次. ・グループごとに発表を行い、言葉の意味 ・発表を聞き取るためのワークシートを用 を踏まえながら、文脈においてどのよう 意し、発表の内容を書き取らせるととも な心情が描かれているか、それぞれの場 に、聴き手の解釈と比較したときの発見 面について理解を深める。 や気づきを記録させる。. 生 徒 の 反 応 ・ 効 果 ○ 分かりやすくなるよう説明文を工夫し、身ぶりなども 交えて、言葉の意味を伝えようとする様子が見られた。 ○ 当初、自分自身が思い描いた解釈と、言葉の意味から 読み取った心情との違いを意識し、楽しむ様子が見られた。.