• Tidak ada hasil yang ditemukan

論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2025

Membagikan "論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ"

Copied!
4
0
0

Teks penuh

(1)

氏 名 前川 武雄 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 乙第 676 号

学 位 授 与 年 月 日 平成 25 年 8月 15日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第3項該当

学 位 論 文 名 トロンボスポンジン 1 の発現解析による皮膚線維腫と隆起性皮膚線維肉 腫の鑑別についての研究

論 文 審 査 委 員 (委員長) 教 授 出 光 俊 郎

(委 員) 教 授 福 嶋 敬 宜 講 師 山 沢 英 明

論文内容の要旨

1 研究目的

隆起性皮膚線維肉腫は緩徐に増大する真皮内の間葉系細胞腫瘍で、局所再発率が低いことや、

転移が稀であることから中間型の悪性腫瘍として取り扱われている。病理組織学的には、車軸状 構造(cartwheel pattern)や花むしろ状構造(storiform pattern)を形成し、真皮結合組織や下床の脂 肪組織に向けて浸潤性の増殖を示す。一方、皮膚線維腫は良性の線維性組織球腫として知られる 比較的頻度の高い腫瘍であるが、時に紡錘形細胞が束状や花むしろ状に増生し、時に皮下組織に まで進展することがある。皮膚線維腫と隆起性皮膚線維肉腫の間には臨床的、病理組織学的にい くつかの鑑別点が知られているが、時にその鑑別が困難な症例を経験する。

皮膚線維腫及び隆起性皮膚線維肉腫における線維化の原因として transforming growth factor-β(TGF-β)の 関 与 が 重 要 と さ れ て お り 、 そ の TGF-β 活 性 化 の メ カ ニ ズ ム の 1 つ に

thrombospondin-1(TSP-1)が極めて重要であることが報告されている。本研究では、両腫瘍におけ

るTSP-1の発現を比較することで、TGF-β活性化とTSP-1との関連性を明らかにし、両腫瘍の鑑 別の一助になる可能性について検討を行った。

2 研究方法

皮膚病理組織標本は東京大学皮膚科を受診した同意の得られた皮膚線維腫患者7名及び隆起性 皮膚線維肉腫患者4名の計11名より採取した。全ての患者は臨床的、病理組織学的に診断した。

健常人コントロールとして、5名の基礎疾患を有しない健常人ボランティアより皮膚を採取した。

皮膚線維腫及び隆起性皮膚線維肉腫の鑑別のため病理組織学的検討を全例で施行した。標本は 20%ホルマリン液で固定し、パラフィン切片を作成の上ヘマトキシリンエオジン染色を行った。

また、全例で抗CD34抗体を用いた免疫組織化学的染色を行った。

免疫組織化学染色はVectastain ABC kitを使用し、パラフィン切片を用いて行った。抗TSP-1 抗体は、Santa Cruz Biotechnologyのものを使用した。免疫反応性はVector Redを用いて可視 化した。その後、切片はヘマトキシリンで対比染色した。染色の度合いは、弱陽性: +、中等度陽 性: ++、強陽性: +++と判定した。

免疫ブロット法において、TSP-1の検出は、蛋白濃度測定試薬を用いて補正を行った上で電気

(2)

泳動し、ニトロセルロース膜に転写した。ニトロセルロース膜を抗TSP-1抗体を用いて一晩4℃ でincubateし、二次抗体と反応後、enhanced chemiluminescenceで発光しX線フィルムに感光 させた。コントロールとして、2000倍希釈した抗β-actin抗体を用いて免疫ブロットを行った。

3 研究成果

(1) 免疫組織化学染色によるTSP-1発現の比較

正常皮膚では線維芽細胞にTSP-1の発現はみられなかった。皮膚線維腫では、病変内の紡錘 形細胞に中等度のTSP-1の発現を認めた。これとは対照的に隆起性皮膚線維肉腫においては、

TSP-1 が腫瘍細胞に強くびまん性に発現していた。また、隆起性皮膚線維肉腫では皮膚線維

腫と比較して腫瘍辺縁でのTSP-1の発現が強くみられた。隆起性皮膚線維肉腫において、腫 瘍中央部と比較して腫瘍辺縁部においてTSP-1の発現が強くみられた。

(2) 免疫ブロット法によるTSP-1発現量の比較

免疫組織化学染色の結果とは異なり、皮膚線維腫、正常コントロールと比較した隆起性皮膚 線維肉腫におけるTSP-1の過剰発現は認めなかった。

4 考察

皮膚線維腫及び隆起性皮膚線維肉腫における線維化の中心的役割を担っていると考えられてい

るのが TGF-βである。TGF-βは多くの生体システムの中で、細胞外マトリックスの構成、成長、

分化における重要な役割を果たす多機能のサイトカインである。TGF-βの活性化メカニズムの 1 つがlatent TGF-βとthrombospondin-1(TSP-1)との結合によるものである。そして、このTSP-1 による活性化メカニズムはin vivoにおいてTGF-βの作用を発揮させる上で極めて重要であるこ とが報告されている。したがって、TSP-1 の過剰発現は皮膚線維腫と隆起性皮膚線維肉腫におけ る線維化を引き起こしている可能性が考えられる。

本研究では、皮膚線維腫と隆起性皮膚線維肉腫におけるTSP-1の発現パターンに明白な違いが

確認された。皮膚線維腫では、各腫瘍細胞において TSP-1がびまん性に弱く散在性であり、一方 で隆起性皮膚線維肉腫においては腫瘍の辺縁において TSP-1が顕著に強く発現していた。この結 果からは、TSP-1の発現パターンは皮膚線維腫と隆起性皮膚線維肉腫の鑑別に有用と考えられた。

TGF-βやTSP-1と悪性腫瘍との関わりは多数報告されている。TGF-βやTSP-1の過剰発現によ り癌の進展が抑制されるという報告もあるが、逆に悪性化や浸潤・転移を促進する因子であると の報告もあり、その作用については未だ明らかにはなっていない。本研究で確認された隆起性皮 膚線維肉腫における TSP-1の強い発現は、転移を抑制している可能性が示唆され、隆起性皮膚線 維肉腫が局所性の悪性腫瘍であり、転移が稀であることを現していると考えられた。

本研究において、TSP-1 は皮膚線維腫と比較して隆起性皮膚線維肉腫において強く発現してい た。一方で過去の報告では、TGF-βレセプターが皮膚線維腫において隆起性皮膚線維肉腫よりも 強く発現したとされる。TSP-1は TGF-βの主な活性化因子であるため、TSP-1 も同様に皮膚線維 腫において強く発現すると考えられたが、結果は逆のものとなった。この結果に関しては 3つの 仮説を考えた。①TGF-βの過剰発現によりnegative feedbackが働きTSP-1が抑制される可能性。

②線維化に重要なのは ligand の量ではなく、receptor の発現量が重要である可能性。③隆起性 皮膚線維肉腫においては、TSP-1 の産生が増加しているわけではなく分解能が低下している可能

(3)

性。また免疫ブロット法において、皮膚線維腫、隆起性皮膚線維肉腫の腫瘍細胞と正常皮膚の真 皮内線維芽細胞におけるTSP-1の発現量に有意な差は確認できなかった。これは免疫染色の結果 と大きく異なるため、この結果を説明できる2つの仮説を考えた。①in vivo(免疫染色)では隆 起性皮膚線維肉腫の細胞密度が高いためにTSP-1が過剰発現するが、in vitro(免疫ブロット)

ではin vivoと異なり細胞と細胞外マトリックスのinteractionが異なるため、必ずしも実際の

腫瘍の状態を反映していない可能性。②免疫ブロットにおいては、腫瘍からの培養線維芽細胞を 用いているために、TSP-1の活性が減少してしまった可能性。3群において同じ発現量と言うこと は考えにくく、本研究においてはin vivoでの結果を尊重すべきと考えた。

5 結論

①免疫染色では皮膚線維腫、隆起性皮膚線維肉腫ともにコントロールと比較して、TSP-1の過剰 発現がみられた。

②免疫染色では、隆起性皮膚線維肉腫においてTSP-1は皮膚線維腫と比較して強く発現しており、

特に腫瘍辺縁で強く発現しており、鑑別に有用な可能性が考えられた。

③免疫ブロット法では皮膚線維腫、隆起性皮膚線維肉腫、コントロール間における線維芽細胞内

のTSP-1の発現量に有意な差は確認できなかった。

論文審査の結果の要旨

悪性軟部組織腫瘍の診断は難しく、しばしば病理診断の専門家でも意見もわかれるところであ る。このうち、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)は、低悪性度の皮膚悪性腫瘍に分類されるが、良性の 皮膚線維腫(DF)との鑑別が容易ではないこともある。DF なら腫瘍マージンぎりぎりで切除して も再発はないが、DFSP であれば、広範囲の病巣切除が必要である。したがって、両者の鑑別は 重要である。DFSPではしばしば良性として誤診されて、小切除、再発を繰り返しているうちに、

悪性度が強くなり、局所破壊、転移をきたすこともある。現在までDFSPでは、免疫染色で腫瘍 細胞がCD34染色陽性、factor XIIIa染色陰性であることが特徴のひとつで、良性のDFとDFSP の鑑別に役立つとされている。しかしながら、これらを用いても両者の鑑別にとまどう症例もあ り、DFとDFSPのより、精度の高い鑑別法が求められている。皮膚の線維化および線維性皮膚 腫瘍の病態にはtransforming growth factor (TGFβ)が関与しているとされ、トロンボスポンジ ン1は、TGFβの活性化を促す上で重要な物質である。

本学位論文の研究はDFとDFSPの鑑別方法に関するもので、その中でトロンボスポンジン1 に注目している。研究は(1)両腫瘍のトロンボスポンジン 1 染色による免疫組織化学的解析、

(2)免疫ブロットによる腫瘍内のトロンボスポンジン1発現量の解析から成っている。

まず、免疫組織学的に、DFでは中等度にトロンボスポンジン 1に染色されるが、DFSP では 細胞質がかなり強く染色されること、また、DFSP の染色性が腫瘍辺縁に強くなる傾向を見いだ した。なお、正常皮膚組織線維芽細胞はトロンボスポンジン 1に染色されない。また、免疫ブロ ットでトロンボスポンジン1発現量をみるとDFとDFSPでは有意な差がみられなかった。これ らの結果から、DFSPではトロンボスポンジン1の分解が低下している可能性を想定している。

本学位論文の結果はDFとDFSPの両者の鑑別法のみならず、線維性皮膚腫瘍や皮膚線維化の病

(4)

態の理解に役立つ知見を包含している。しかしながら、論文審査では免疫染色による手法、抗体 の選択、判定法の限界、今までのCD34染色と比較した有用性、実用性が問題点として取り上げ られた。また、免疫ブロットにより、DF、DFSPではトロンボスポンジン1の過剰発現がみられ ないことの解釈にはいくつかの可能性があるのではないかという疑義も出された。それらについ ては後に、加筆訂正された論文が提出された。

研究内容はすでに欧州の権威ある英文学術雑誌European Journal of Dermatology に掲載され ていることを評価し、審査員全員一致で合格と判定した。

試問の結果の要旨

申請者の紹介に引き続き、本研究内容ついての発表がおこなわれた。

まずDFとDFSPの解説、その鑑別を行うことの重要性について説明がなされた。次いでDF と DFSP の線維化に TGFβとレセプターの結合が関与していること、TGFβが活性化してレセ プターに結合するにはトロンボスポンジン1が必要であることなどの基礎的な事項の発表が行わ れた。その後、本題であるトロンボスポンジン1の免疫染色、免疫ブロットについてプレゼンテ ーションがあった。質問では(1)本当にDFSPとDF鑑別に有用なのか?(2)トロンボスポ ンジン1の発現が悪性所見とどう関係するのか?(3)悪性度よりも腫瘍の大きさと関係するの ではないか?(4)DFで陽性、DFSPではさらに陽性、辺縁部ではもっと陽性である意味と過去 の報告例にある TGFβ染色の結果の整合性はどうか?(5)免疫染色の結果(DF<<DFSP) と免 疫ブロット結果(DF=DFSP)の解離はどう説明されるか?(6)免疫ブロットでは腫瘍細胞を培養 系に移しており、混在する腫瘍内の培養線維芽細胞のロンボスポンジン 1を反映しているのでは ないか?となどの質問がなされた。(1)については検索症例も限られており、従来の方法に比べ た有用性は現時点では見いだせていないが、腫瘍の発症や病態にトロンボスポンジン1が関わっ ているという結果は意義のある結果であるとされた。(2)については文献的には癌の進展、抑制 など両論あるが不明(3)については小さい DFSPも症例に含まれており、大きさよりもDF、 DFSP本質的な差であろうという答えであった。また、(5)についてはいくつかのspeculationの あることが述べられた。(6)については本実験の限界について説明が行われた。なお、これらは 修正した博士学位論文にも反映された。

申請者の研究領域周辺の知識、研究目的、結果やその意義についての理解、質疑に対する応答 の内容、態度は満足すべきものであり、学位授与に価する十分な学識、研究資質、能力を有する と評価した。よって、審査員全員一致で博士学位を授与するにふさわしいと判定した。

Referensi

Dokumen terkait

LFS および OS は、Kaplan-Meier 法を用いて算出した。Log-rank 検定を用い、LFS および OS の単変量解析を行った。競合リスクを設定した累積発生率曲線を用いて、生着、GVHD、再 発、NRMの発症割合を算出した。Gray検定を用いて、累積発生率を群間で比較した。多変量解

4 考察 消化器がん患者の術後末梢血中には、形態学的特徴と表面抗原から未成熟型の LDN が多量に 存在した。この LDN は、手術時間と出血量に正の相関を示し増加したことから、手術侵襲によ って誘導された炎症シグナルにより、緊急時の骨髄での好中球造血が亢進した結果として末梢血 中に補充動員された未成熟な好中球であることが推測される。この術後患者の末梢血中LDNは、

投与は、視床下部のERストレスマーカーであるCHOPの発現およびPERKのリン酸化を抑制し、 レプチンによる摂食抑制作用および視床下部 STAT3 のリン酸化を著明に増強させた。その結果、 BD投与はC57BL/6Jマウスにおける食餌誘発性肥満DIOに対する予防効果と治療効果の両方を 発揮した。 4 考察

法はOSやPFSに影響を与えなかったが、治療関連毒性で下痢に関してはMEL1群の発生頻度が明 らかに高かった。これは、1 日での投与のためメルファランの血中濃度がより高くなり消化管の 粘膜障害が増悪するためと考えられた。 本研究は、後方視的研究であり、不均一な少数集団を対象としているため、結果の解釈には限 界がある。本研究で得られた結果をふまえ、MCNU-BEAM

イオン濃度変化による受容体細胞内局在変化の評価 外液Na+濃度の低下とともにV1b バゾプレッシン受容体の内在化は抑制され、細胞外液のイオ ン組成の変化により内在化をコントロールできる可能性が示唆された。 4 考察 V1aバゾプレッシン受容体とV1bバゾプレッシン受容体の未刺激の状態での局在の相違、細胞

臨床疫学像の比較分析で確認できた1月と7月の患者間の相違は少なく、1月と7月の患者の 発症に関連する微生物が全く異なるとは考えにくい。加えて、ある微生物は1月と7月に共通し て存在し、別の微生物はどちらかの月により多く存在するような数種の微生物の組み合わせが、1 月と7月の患者のわずかな臨床疫学像の相違をもたらしたと考える。国内外を問わず、川崎病の

4 考察 研究1 早朝収縮期血圧の改善がインスリン抵抗性を改善させたメカニズムの一つとして、微小血管系 の変化が関与していること考えられた。α遮断薬によって認められる短期間の eGFR の低下は、 UACRの低下を伴っているとともに、主として eGFRが保たれているstage1においてであるため、

病名は診断と疾病を表す要素7と臓器別の章で表した。診断病名は2006(平成18)年11月1日 に定期受診者のカルテから病名を確認した。 鹿島診療所から他の医療機関に紹介した場合は、その紹介先の診療科を記録した。紹介後の転 帰については、紹介状に対する返書、もしくは患者本人や家族への確認を行い記録した。 3 研究成果