• Tidak ada hasil yang ditemukan

論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2025

Membagikan "論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ"

Copied!
4
0
0

Teks penuh

(1)

氏 名 尾関お ぜ き 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 乙第773号

学 位 授 与 年 月 日 令和 元年 8月 22日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第3項該当

学 位 論 文 名 川崎病患者における季節変動の年齢別分析および臨床疫学像の比較分 析: 川崎病発症に関連する微生物像の推察

論 文 審 査 委 員 (委員長) 教授 小 坂 仁

(委 員) 教授 石 川 鎮 清 准教授 森 澤 雄 司

論文内容の要旨

1 研究目的

本研究の目的は、川崎病患者の季節変動と臨床疫学像の観察により川崎病発症に関連する微生 物の季節分布と役割を推察することである。初めて川崎病が報告された1967年以来50年にわた り積み上げられた川崎病の記述疫学データは、発症要因として微生物が関与することを強く示唆 している。近年では、複数の微生物によるトリガー説が提唱されている。川崎病発症に関連する 微生物像をより明確にできたならば、感染の機会を減らすための有効な対策の立案、さらに、冠 動脈障害への進行をおさえるための初期治療の確立に大きく貢献すると期待できる。

2 研究方法

川崎病の季節性と年齢分布の特徴に着眼し、年齢別に患者の季節変動を観察した年齢別分析、1 月に生じる特徴的なピークに着眼し、1月と季節が逆の 7月の患者間に観察された臨床疫学像の 比較分析を行った。第 18 回から第 23 回の川崎病全国調査で作成されたデータセットを用いた。

季節変動の年齢別分析には、2003年1月から2014年12月までの12年間に川崎病と診断された 患者を対象にした。患者を初診時の年齢により4つの年齢グループ(0–11か月、1歳、2歳–3歳 5か月、3歳6か月–4歳)に分けて、患者の季節分布の特徴とその規則性を観察した。また、川 崎病発症に影響する季節要因の大きさを年齢グループ別に季節指数として算出した。さらに、季 節指数を離散フーリエ変換により複数の正弦波に分解し、季節要因の構成を観察した。臨床疫学 像の比較分析には、2011年1月から2012年12月までの2年間に川崎病と診断された患者のう ち、初診月が1月と7月の患者を対象にした。全国調査の調査項目について1月と7月の患者に 分けて集計し、二群比較を行った。さらに、初診時病日別に1月と7月の患者の臨床疫学像の統 計的解析を行った。

3 研究成果

季節変動の年齢別分析では、年齢により季節変動が異なっていることを確認できた。0–11か月

(2)

では、患者は1月に多く、6月から8月にかけてもやや多かった。1歳では、患者は1月と12月 に顕著に多く、3月から8月の間に患者の増加はなかった。2歳–3歳5か月では、患者は1月、

12月の順に多く、3月から6月にかけてもやや多かった。3歳6か月–4歳では、患者の変動は2 歳–3歳5か月の変動と類似していた。1歳の冬の患者数の増加および3歳6か月–4歳の秋の患者 数の減少は、観察した12 年間で毎年観察された。0–11か月の季節指数は 0.9–1.2の範囲に分布 し、1月と7月が特に高かった。1歳の指数は0.8–1.5の範囲に分布し、1月が顕著に高く、2月 –11月は1.0を超えなかった。2歳–3歳5か月と3歳6か月–4歳の指数は、それぞれ0.7–1.4、

0.6–1.3の範囲に分布し、両グループともに1月が最も高く、10月が最も低かった。季節要因の

影響を受けた患者の割合は、0–11か月では1月の患者が29%、7月の患者が25%であった。1歳 では1月の患者が46%を占めたのに対し、2月から8月の患者は8–16%の範囲であった。2歳–3 歳5か月では1月の患者が47%を占め、3月から6月の患者は30–34%の範囲であった。3歳6 か月–4歳では1月の患者が55%、3月から7月の患者は約42–49%の範囲であった。各年齢グル ープの季節指数をフーリエ分解した結果、顕著な振幅を有する正弦波は、0–11か月では1年を2 周期とする波形のみであった。一方、1歳、2歳–3歳5か月および3歳6か月–4歳では1年を2 周期とする正弦波に加え、1年を1周期とする正弦波も観察された。

臨床疫学像の比較分析では、1月と 7月の患者間の相違は大きくないことが確認できた。全国 調査の約50項目において、特筆すべき相違点は年齢の分布、不全型の主要症状数、免疫グロブリ ン静注例の割合、初診時のアルブミン値であった。年齢の分布では、0か月以上2歳未満を3月 か区切りの患者数でみた場合、1月の患者2,812人の中では9–11か月の207人 (7.4%) が最も多 く、7月の患者2,302人の中では6-8か月の181人 (7.9%) が最も多かった。臨床項目では、「川 崎病診断の手引き 改訂5版」に示された定型例、不定型例および不全型の割合に1月と7月の患 者で相違はなかったが、6 つの主要症状のうち 4 つの症状が認められた不全型の割合は 1 月が 69.4%、7月が63.3% (P < 0.05) であった。免疫グロブリン静注例の割合は1月が92.6%、7月

が91.1% (P < 0.05) であった。免疫グロブリン静注例のうち治療に対し反応した患者の割合は1

月が82.1%、7月が82.8%で、有意な差はなかった。初診時のアルブミン値の平均値では、1月の

患者が7月の患者よりも低かった (P < 0.01)。また、初診時のアルブミン値の平均値は、1月と7 月の患者ともに初診の病日が遅くなるに従って減少する傾向が観察されたが、初診時病日が第 2 病日から第5病日の1月の患者のアルブミン値は、7月の患者に比べ有意に低かった(第2病日:

P < 0.01、第3病日: P < 0.05、第4病日: P < 0.05、第5病日: P < 0.05)。

4 考察

季節変動の年齢別分析で確認できた川崎病患者の年齢別の季節変動の特徴から、川崎病発症に 関与する数種の微生物像を推察する: 一つは、乳幼児に感染性が高く冬季(12月–1月)に流行す る微生物; 一つは、乳児に感染性が高く夏季(6月–8月)に流行する微生物; 一つは、幼児に感染 性が高く春から初夏(3月–6月)に流行する微生物である。日本での過去3回の大流行において も、今回推察された微生物の一種が何らかの原因で勢力を持って拡がり、患者発生に関与したと 考える。本解析では、季節変動に関連する要因を主として検討した。川崎病患者の長期の変動要 因や非季節要因についても今後検討し、川崎病発症に関与する微生物の特徴が記述されるべきで ある。

(3)

臨床疫学像の比較分析で確認できた1月と7月の患者間の相違は少なく、1月と7月の患者の 発症に関連する微生物が全く異なるとは考えにくい。加えて、ある微生物は1月と7月に共通し て存在し、別の微生物はどちらかの月により多く存在するような数種の微生物の組み合わせが、1 月と7月の患者のわずかな臨床疫学像の相違をもたらしたと考える。国内外を問わず、川崎病の 季節変動と特定の微生物との強い関連を報告したものはないが、一部の川崎病患者との関連を認 めた微生物の報告が多いことは、複数の微生物の関与を示唆している。一方、1月と 7 月の患者 間にいくつかの相違が観察されたことは、川崎病発症に関与する微生物が病原体として機能して いる可能性を意味するが、トリガー説を否定するには至らないであろう。川崎病発症に関与する 微生物の役割を検討するには、さらに多くの臨床項目について観察する必要があった。生体内で のアルブミンの動態と関連がある総タンパク量やBUN/クレアチニン比等の検査データがあれ ば、病態の変化に関する詳細な観察ができたかもしれない。

5 結論

季節変動の年齢別分析と臨床疫学像の比較分析により、川崎病の発症に関連する微生物像を検 討した結果、季節性が異なりヒトへの感受性に年齢差がある複数の微生物の存在が推察できた。

一方、微生物が川崎病のトリガーとして機能しているか否かについて、結論を出すまでには至ら なかった。今後、トリガー説を実証するためには、患者の年齢別にみた異なる季節の臨床疫学像 の比較研究が必要である。

論文審査の結果の要旨

本論文は川崎病患者における季節変動の年齢別分析および臨床疫学像の比較分析により、川崎 病発症に関連する微生物像の推察を行ったもので、川崎病は、複数の微生物によるトリガ一によ り起こるという、トリガー説を仮説として設定し(1)年齢別に患者の季節変動を観察した疫学 的研究および(2)初診が1月と7月の患者を対象にした臨床的、疫学的な研究を行い仮説を検 証した研究である。

(1)では冬季および春から夏の患者数の増加の程度、秋季の患者数の減少の程度は、患者の年齢 により異なっていることに加えて、1歳の12-1月の増加、3歳6か月-4歳の9-11月の減少の規 則性は、極めて高く、また推計された季節要因の大きさは最大 5割程度で、年齢が高いほど大き いことを示した。また季節要因の構成は年齢と季節により異なっていることを実証し、川崎病の 原因として、感染性の要因よりは複数の病原体が原因となるトリガー説を支持する結果であった。

また(2)において、1月と7月に発症した患者の臨床疫学像の相違点は少なく、この点からも、仮 説であるトリガー説が支持された。(1)から推察できる微生物像は、季節性を有する複数の微生物 であり、その他年間を通して常に存在している微生物が想定しうる。 (2)から推察できる微生物 像は、1月と 7 月に共通して存在する微生物、あるいはどちらかの月により多く存在する微生物 であることが示唆された。

川崎病は、患者数が年々増大するにもかかわらず、原因不明で小児期の主要な虚血性心疾患の

(4)

原因となっている。そのため原因の特定・予防は社会的意義が高い。本研究は質の高い疫学的デ ータを用い、年齢別、月齢別に感染要素を推定する新規性のある方法を用いて、川崎病の、原因 に関して新たな所見を得ており、研究の意図も明確であり、国際レベルでの研究である。全員一 致で、学位論文に該当すると判断した。

修正点としては、トリガー説の定義が、明確でないために本文に注として加えるように、指導 したのみである。

試問の結果の要旨

最初に申請者より、研究の背景として川崎病の今までの疫学調査からの、特徴とそれにより導 き出される仮定が述べられた。特に感染症の関与について、それのみで疫学像は説明できず、複 数の微生物がトリガーとなって発症する可能性が高いことをのべ、関連して本研究の意義につい て述べられた。続いて方法として、全国疫学調査の方法と、季節要因の抽出のための季節指数、

移動平均値、離散フーリエ変換、統計学的解析方法について説明ののち、結果として年齢別の季 節変動、2003年からの月別患者分布と回帰曲線、季節要因の寄与度、フーリエ解析、1月と7月 の川崎病の臨床疫学的特徴についての結果説明がなされた。以上の結果から、川崎病の発症は微 生物による感染性の要因、とくに乳児に感性が高く、夏季に流行する微生物、幼児に感染性が高 く春から初夏に流行するものなどの複数の微生物を想定することが妥当であるとの考察を述べら れた。また長期に渡って徐々に発生率が上昇していることをどのように関連付けていくのか、微 生物像から想定できるかが今後の課題であると述べられた。また臨床疫学的な比較分析からは、

1月と7月の患者に大きな差異は認めず、1月と7月に共通する微生物を想定させ、アデノウイ ルス、ヒトライノウイルス、コロナウイルス等も候補に上がるとした。

その後質疑に移り、移動平均が12か月で行われているが、通常、ある月の値を移動平均で見る 場合は、該当する月をまたいで前後で見るとすると、奇数月数の平均(例えば、3か月や5か月 の移動平均など)となることが多いように思うが、12か月平均とした場合、どのようにして該当 月を決めたのかとの質問に関しては、12か月でやるのが前提と思って行ったとの返答で、意義づ けについては明確な返答はなかった。また国外における川崎病の季節変動に関する知見について 質問がなされ、わが国と比較的類似した気候であると思われる韓国においても月単位のズレはあ るものの国内の傾向との類似性が見られること、中国南部の上海などでは雨期に発症数が多い傾 向がみられること、その他の諸地域では川崎病の症例数が少なく解析が困難であること等を淀み なく回答されており、先行研究をしかるべく渉猟して自己の研究内容との比較考量も十分である ように思われた。また、発症年齢によって季節変動のパターンが異なることに関する質疑でも、

宿主と比較的普遍的な微生物との関係が発症に関与しているであろうことを合理的に回答するこ とが出来ており、その中で客観的な事実と、そこからの推定について分別した議論を進める能力 を垣間見たように推認された。以上より試問の結果も、合格にふさわしいものと判断された。

Referensi

Dokumen terkait

列を導入し、メジャーサテライト転写産物(major satellite transcripts : mSAT)の過剰発現細 胞を作成した。 mSAT 過剰発現の影響を検討するため、細胞の増殖能や足場非依存性増殖能を確認し、染色体 不安定性との関連を評価するため、染色体分配異常と DNA 細胞障害と免疫細胞化学によって確

4 考察 消化器がん患者の術後末梢血中には、形態学的特徴と表面抗原から未成熟型の LDN が多量に 存在した。この LDN は、手術時間と出血量に正の相関を示し増加したことから、手術侵襲によ って誘導された炎症シグナルにより、緊急時の骨髄での好中球造血が亢進した結果として末梢血 中に補充動員された未成熟な好中球であることが推測される。この術後患者の末梢血中LDNは、

理を要するリスクが高まると思われる。 5 結論 本研究で GAが妊娠中の血糖コントロール指標として有用であること、糖尿病母体児の各合併 症について母体妊娠後期の GA値のカットオフ値を算出し、糖尿病母体児の合併症発生数と母体 GA値の間には正の相関があることを示した。さらなる研究が必要ではあるが、今後従来のHbA1c による管理に加え、GA

野生型マウスと IL-33KO マウスの褥瘡の組織から単離したマクロファージは IL-33 の刺激で IL-1βを誘導しなかったがIL-33KOマウスの組織のIL-1βの発現が野生型マウスより少なかった。 4 考察 IL-33KOマウス、sST2 Tgマウスでは野生型マウスより圧迫による皮膚潰瘍形成が抑制され、また

群間比較を行う際には、分類変数については Fisher の正確検定、連続変数については Mann-Whitney検定を用いて統計的有意性を評価した。2つのLpa群について、循環器疾患(脳 血管疾患、心疾患、その他の循環器疾患)による死亡、がんによる死亡、その他の原因による死 亡確率を計算した。累積死亡率の群間比較には Gray の検定を用いた。全生存割合については

② 慢性心不全モデルにおける長時間使用の検討 本研究では、上記の方法でEVAHEARTを植込んだヤギに対し、定常回転駆動と、トレーニ ングモードを施行し、廃用性萎縮を防ぐ効果を検証する。LVAD装着時の心筋生検からから線 維化の指標を検討するとともに、超音波クリスタルを用いた心機能測定を行い検証した。虚血

4 考察 本研究では生活習慣病患者が内服薬を処方されながらも自身の原疾患または処方薬について認 識が欠如している実態を調査した。本研究により、スタチン使用者において、米国では 6 人に 1 人、日本の国立国際医療研究センターでは3人に1人で、自身の高コレステロール血症またはス タチン使用の目的疾患・使用薬剤の認識が欠如していることが示唆された。米国の検討では、降

4 考察 術前のCTで、Triplet mass with high densityとTriplet mass without enhancementが陽性 であれば、捻転の角度≧360°と予測でき、卵巣が壊死する可能性が高かった。これらは、術前の 患者への説明で非常に重要である。患者が卵巣の温存を希望すれば、壊死する前に捻転を解除す