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論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

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Academic year: 2024

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氏 名 SURINA 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 甲第 688号

学 位 授 与 年 月 日 令和5年3月23日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第2項該当 学 位 論 文 名 患者由来癌細胞を用いた肺癌研究 論 文 審 査 委 員 (委員長) 教 授 坪 地 宏 嘉

(委 員) 教 授 仁 木 利 郎 教授 山 本 真 一

論文内容の要旨

1 研究目的

癌性胸膜炎は肺癌に伴う重篤な合併症であり、癌細胞を含んだ胸水が胸腔内に貯留する。大量 胸水が貯留した場合は排液が必要である。癌性胸膜炎胸水には癌細胞、腫瘍関連線維細胞、免疫 細胞など腫瘍関連細胞(tumor-associated cells)が含まれている。癌細胞を胸水から分離し、培 養することで生体内における癌細胞の挙動を検討できる。

患者癌細胞は、少数回の分裂を行った後、生体内の癌細胞の進展を体外で検討することで、市 販の細胞株よりも患者体内の状態に近い生体材料を得ることができ、また新たに生じた変化も少 ないため、より精密な研究が可能であると考えられる。同一患者の末梢血を採取し、末梢血単核 細胞から末梢血循環免疫細胞を誘導分化させ、癌細胞と共培養すれば、末梢血を用いた腫瘍免疫 研究も可能となるだろう。

我々は、以前の研究で、癌細胞にダメージを与えないよう物理的刺激を抑えた癌性胸膜炎胸水 癌細胞の採取法を確立した。本研究では、分離した癌細胞の体外培養を行なった。患者癌細胞と γ 線を照射したマウス胎児線維芽細胞を共培養した結果、スフェロイド(PDS)が形成された。

患者癌細胞をMatrigel matrixで包埋培養した結果、オルガノイド(PDO)が形成された。

本研究はスフェロイドとオルガノイドの形成に伴う形態学的変化とトランスクリプトミクス学 的発現から両者と生体内の類似性を検討した。さらに、両者を用いて癌進展モデル構築の可能性 を検討した。

2 研究方法

1.胸水収集

2018年4月から2020年4月までの間に、自治医科大学附属病院呼吸器内科に入院した20名 の癌性胸膜炎患者から同意を書面で取得し、診断、治療のため採取、排液された胸水の一部を収 集した。

2.患者癌細胞の単離法の構築

胸水癌細胞の沈降係数を利用した物理的な手法により、癌性胸膜炎胸水から患者癌細胞を分離 した。

3.共培養法

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患者癌細胞とγ線を照射したマウス胎児線維芽細胞の共培養を用いた、スフェロイドの体外培 養法を構築した。

4.三次元培養法

患者癌細胞をMatrigel matrixに包埋し、三次元培養を行うオルガノイドの体外培養法を構築 した。

5.形態学的観察

PAP 染色、Giemsa染色、免疫染色と免疫蛍光を用いて、患者癌細胞からスフェロイド、オル

ガノイドが形成される間に起こる形態学的変化を検討した。

6.RNA sequence

RNA sequenceを用いて患者癌細胞、スフェロイド、オルガノイドにおける遺伝子発現、シグ

ナル伝達経路、生物学的過程の相違を検討した。

7.In vitro免疫反応系の構築

胸水上清単核細胞、患者末梢血単核細胞、健康ドナー末梢血単核細胞から、樹状細胞と細胞傷 害性T細胞を誘導分化し、in vitro免疫反応系を構築した。

8.オルガノイドと免疫細胞の共培養

オルガノイドと免疫反応細胞を共培養した。オルガノイドのアポトーシスを評価した。

9.オルガノイドmRNAのプラスミドの構築

オルガノイドのmRNAを抽出し、全長cDNAを合成した。オルガノイド全長cDNAを含有す るプラスミドを構築し、他の細胞に移入した。

3 研究成果

以前の研究で10%FBSを含んだRPMI-1640、胸水上清、両者の1:1混合液を用いて患者癌細 胞を培養した結果、癌細胞は三者とも明確な成長を示さなかった。そのため、本研究では共培養 法と三次元培養法を試みた。3例の患者癌細胞は共培養法により、スフェロイドが形成された。5 例の患者癌細胞は三次元培養により、オルガノイドが形成された(n = 5)。12例の患者癌細胞は スフェロイドもオルガノイドも形成できなかった。スフェロイドを形成した患者癌細胞ではオル ガノイドが形成されず、オルガノイドを形成した患者癌細胞ではスフェロイドを形成されなかっ たことから、スフェロイドとオルガノイドの形成は排他的な関係であると考えた。

スフェロイド、オルガノイドの形態を検討した。スフェロイドの形態は患者癌細胞より低分化 であり、オルガノイドの形態は患者癌細胞より高分化だった。

スフェロイド、オルガノイドをトランスクリプトミクスから検討した。スフェロイドで高発現 した遺伝子は腫瘍の増殖を補助し、オルガノイドで高発現した遺伝子は腫瘍の転移を補助するも のだった。遺伝子セット濃縮分析Gene Set Enrichment Analysis(GSEA)では、スフェロイド は炎症反応と上皮間葉系転換を減弱し、オルガノイドでは相反して増強した。遺伝子セット変動 分析Gene Set Variation Analysis(GSVA)では、スフェロイドではtransforming growth factor

beta (TGF-β)により引き起こされた上皮間葉系転換の増強を抑制したが、オルガノイドでは促進

していた。

GSEAとGSVAの結果は、オルガノイドは免疫応答性を増強する可能性があることを示すもの だった。我々は末梢血単核細胞を用いて、体外の細胞傷害性アッセイを構築した。アッセイでは、

(3)

オルガノイドのアポトーシスを促進することを示唆しており、オルガノイドは樹状細胞が認識可 能な腫瘍関連抗原を保有していると考えた。これまでの結果の応用として、オルガノイドを用い た癌治療法を確立することを目指し、mRNA を抽出し、mRNA ワクチンを作成する基礎検討を 行った。オルガノイド全長cDNAプラスミドラブラリーを構築し、他の細胞への導入を確認した。

4 考察

患者癌細胞を直接用いた癌研究は生体内の癌をより近い状態で観察でき、個々の癌の異なる性 質を検討できると考えられる。

単離した患者癌細胞が共培養、三次元培養のいずれでしか培養できなかったことは、癌細胞の 増殖における成長因子だけでは不十分であり、胸膜間質と接触することが重要であることを示唆 するものであった。共培養のfeeder cellが胸膜・胸壁間質細胞の機能を模倣し、足場を提供する ことでスフェロイドが形成されると考えられた。スフェロイドは低分化で増殖し続け、癌の局所 増殖のモデルになると考えられた。三次元培養では、Matrigel matrixが細胞外基質を提供するこ とでオルガノイドが形成された。オルガノイドは癌の転移増殖のモデルになると考えられた。

スフェロイドとオルガノイドの形成は排他的な関係であり、いずれを形成するかは患者癌細胞 が胸腔内に存在する際に、すでに決定付けられていると考えた。トランスクリプトミクスの研究 を通して、これらの性質をRNA発現パターンから解明できると考えた。

スフェロイドとオルガノイドに共通して認められた変化は細胞外基質に関与し、細胞外基質に対 する反応性は局所増殖、転移に関連する。癌細胞は免疫系との相互作用により、生体内で変化し、

TGF-βを分泌することで腫瘍の成長を促進する。TGF-βシグナル伝達経路に関与することで免疫

寛容の環境を修飾することができ、腫瘍細胞は容易に成長できる微小環境を保持できると考えら れる。スフェロイド、オルガノイドと免疫細胞の相互作用を検討することにより、腫瘍の増殖、

進展、転移を体外で検討できると考えられる。

同一患者の末梢血単核細胞を樹状細胞、細胞傷害性T細胞に誘導分化し、オルガノイドと共培養 することで腫瘍と免疫細胞の相互作用を解明できるだけでなく、体外で抗腫瘍治療法を検討でき るシステムともなり得る。これらの応用として、オルガノイドmRNAは医療手段になることが期 待できる。

5 結論

患者癌細胞から作成されたスフェロイドは腫瘍の局所進展のモデルとなり、オルガノイドは腫 瘍の遠隔転移のモデルになると考えられた。トランスクリプトミクスの結果では、スフェロイド では細胞外基質の形成に関する遺伝子が発現増強し、オルガノイドでは細胞外基質の分解に関す る遺伝子発現増強していた。スフェロイドでは免疫反応と上皮間葉系転換に関連する遺伝子が発 現減弱し、オルガノイドでは発現増強していた。同一患者の末梢血単核細胞から、樹状細胞と細 胞傷害性T細胞を誘導分化し、それらをオルガノイドと共に培養した結果、オルガノイドのアポ トーシスが促進し、腫瘍変異負荷を保有することが示唆され、腫瘍関連抗原を有していると推測 した。腫瘍関連抗原が含まれたオルガノイドRNAを抽出し、オルガノイド全長cDNAプラスミ ドライブラリが作成でき、lipofectamineを用いてオルガノイドmRNAが他細胞内に導入するこ とができた。患者胸水癌細胞は、様々な癌研究に利用可能だと考えられる。

(4)

論文審査の結果の要旨

本研究では、肺癌患者の胸水中から採取した癌細胞を用いてスフェロイドとオルガノイドを作 成し、もとの癌細胞及びスフェロイドとオルガノイドで発現する遺伝子を多角的に分析している。

得られた結果からスフェロイドとオルガノイドの特徴を明らかにし、癌の増殖や転移の研究への 応用および今後の治療に繋がる知見を得ることを目指したものである。

本研究は、(1)肺癌患者の胸水中から採取した癌細胞からのスフェロイドとオルガノイドの作 成と形態学的観察、(2)患者癌細胞、スフェロイド、オルガノイドからの mRNA 発現のプロフ ァイルの比較検討、(3)スフェロイドを用いたin vitro細胞傷害性アッセイとオルガノイドのア ポトーシスの検討、(4)オルガノイド全長cDNA を用いたmRNAワクチンの作成と細胞への投 与から構成される。

(1)では、患者癌細胞は一般的な培養法では増殖を示さなかったが、線維芽細胞との共培養に よりスフェロイドが、三次元培養によりオルガノイドが形成されることが明らかとなった。本研 究では20症例の胸水癌細胞が用いられており、そのうち3例でスフェロイドが、5例でオルガノ イドが形成され、スフェロイドとオルガノイドの両方が形成された症例は認められなかった。当 初の論文ではスフェロイドとオルガノイドの作成に成功した症例数が明確ではないため修正を求 めた。また、スフェロイドとオルガノイド作成の方法について、何代まで継代し、どの継代数の 細胞を蛍光染色、遺伝子発現解析に用いたかについて具体的な記載を求めた。さらに、患者の臨 床情報の記載について誤りがあったため修正するよう指示した。(2)に関しては、主成分分析に よる遺伝子発現の解析で、患者癌細胞とスフェロイドは遺伝子発現の隔たりが大きかったが、患 者癌細胞とオルガノイドは比較的近いことが明らかにされた。また、遺伝子の発現量に関して、

スフェロイドとオルガノイドの両者で高発現している遺伝子は気管支上皮のマーカーである

SCGB3A1 のみであり、共通に低発現している遺伝子は補体に関するもののみであることが示さ

れた。Gene Set Variation analysisでは、TGF-βにより引き起こされた上皮間葉系転換がスフェ ロイドとオルガノイドいずれにおいても抑制されたが、オルガノイドの方がより抑制効果が強い ことが示された。初稿ではこれらを示す図がいずれも小さく読解が困難であったため修正を依頼 した。(3)に関しては、単核細胞の分離、培養の方法の記載が曖昧でわかりにくいためより具体 的な記述を求めた。細胞傷害性アッセイでは、患者胸水、患者末梢血、健康ドナー末梢血から誘 導分化された樹状細胞と細胞傷害性T細胞を用いてオルガノイドと共培養されたが、患者末梢血 細胞傷害性アッセイとnivolumabが添加された健康ドナー末梢血細胞傷害性アッセイでアポトー シスが最も強く誘導されることが示された。アポトーシス係数の経時的変化を示したグラフの改 善を求め、最終稿では適切に修正されていることを確認した。(4)についてはオルガノイドmRNA

を3T3-J2細胞に取り込ませ、傾向顕微鏡にて持続発現することが確認された。

本研究を基盤としたmRNAワクチンの作成などについては、臨床応用のためにはさらに多くの 課題を克服する必要がある。ただし、本研究の一部は既に1編の英文誌に掲載されているほか、

さらに 1編が英文誌に受理されている。以上本研究で得られた知見はいずれも新規性と独創性が あり、学問的意義が認められ学位授与に相応しいと審査員全員が評価し合格と判断した。

(5)

最終試験の結果の要旨

申請者は最終試験において、本研究の学術的背景、方法、結果、考察のいずれに関しても過不 足なく適切にプレゼンテーションを行った。得られた知見と本研究の限界およびこれからの発展 性についてもわかりやすく発表していた。本研究の内容について多方面からの質疑があったが、

概ね適切な回答が得られた。

論文審査と最終試験の内容より、申請者は研究者として十分な研究遂行能力と論理的思考を有 すると判断し、審査員全員一致で学位授与に値すると判断した。

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