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論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

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Academic year: 2024

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氏 名 池田い け だたかひろ 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 乙第 770号

学 位 授 与 年 月 日 令和 元年 6月 21日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第3項該当

学 位 論 文 名 社会性と抑制機能による自閉症スペクトラムの病態解明

―fNIRSを用いた検討―

論 文 審 査 委 員 (委員長) 教授 須 田 史 朗

(委 員) 教授 阿 部 隆 明 教授 高 瀬 堅 吉

論文内容の要旨

1 研究目的

自閉症スペクトラム(Autism spectrum disorder;ASD)と、注意欠如/多動症(Attention deficit hyperactivity disorder;ADHD)は代表的な神経発達症である。両障害の病態には実行機能障害 が関与する。実行機能とは課題を達成するために様々な認知機能を統合・調整する能力の総称で、

脳機能研究においては同機能が前頭前野を中心とした脳活動に起因することが報告されている。

一方で、ASDとADHDの実行機能障害に起因する脳活動は明らかでない。

そこで我々は、これまでの研究で、実行機能障害に関わる前頭前野の機能を、脳機能検査の一 つである機能的近赤外分光分析法(functional Near-Infrared Spectroscopy, fNIRS)によって可 視化することで、ASD及びADHDの病態解明を試みた。fNIRSは近赤外光を脳表に照射し、血 液中の酸素化ヘモグロビン(oxygenated-Hemoglobin, OxyHb)の変化量から脳血流量の増減を 計測する。被験者の体動に影響されにくく、拘束性が低く、かつ安全性の高い装置であるため、

小児、特に多動性や衝動性を持つ神経発達症に適した装置として、近年報告が増加している。ま た、検査課題として、実行機能の一つである抑制機能を検証する抑制機能課題を使用した。

まず、定型発達児とADHD児を対象とし、抑制機能課題の一つであるGo/no-go課題遂行中の

脳活動をfNIRSを用いて計測した。結果、定型発達児では右前頭前野の脳活動が上昇したのに対

し、ADHD児では脳機能変化が見られず、同部位の機能不全がADHD の病態であることを明ら かにした。一方、ASD児を対象として、同じ検査系により右前頭前野の脳活動を計測したところ、

ADHDと同様にGo/no-go課題中の有意な脳活動がなく、ASDに特異的な脳機能障害を見出すこ

とはできなかった。

そこで我々は、ASDの中心病態である社会性障害と実行機能障害との関連に着目した。社会性 障害により、ASDは視線の合いにくさや他者の表情の理解しにくさといった症状を呈する。この 社会性障害に、実行機能の発達の遅れが関与することが報告され、両機能の関連が示唆されてい る。さらに脳機能研究においては、他者の顔、視線、表情といった社会性に関わる刺激により、

定型発達において前頭前野を含めた脳機能部位の活動が報告される一方、ASDでは視線刺激に対

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する同部位の特異的な活動が見られた。以上から、実行機能と社会性を組み合わせることでASD に特異的な脳機能障害を可視化できると仮説を立て検証した。

2 研究方法

8歳~17歳のASD児22名、定型発達児24名をリクルートした。両群とも知能指数が70以上、

他の精神疾患に罹患していない症例を対象とした。

実行機能に対する社会性の影響を検証するため、新たな課題を作成した。実行機能課題は、こ れまでの研究で使用した抑制機能課題であるGo/no-go課題を選択した。具体的には、緑の点が提 示された時はボタンを押し、赤の点が提示された時は押さないよう指示した。また、社会性刺激 は、ヒトの視線刺激を用いた。直視(direct gaze条件)もしくはよそ見(averted gaze条件)の 顔を提示し、その眉間にGo/no-go課題の緑もしくは赤の点を配置することで、抑制機能課題と社 会性刺激を同時に提示した。

本課題遂行中の脳活動をfNIRSを用いて計測した。これまでの抑制機能研究において最も頑健 な脳活動変化を呈した右Ch10を関心領域とし、同部位のOxyHb値の平均値の変化をASD群と 定 型 発 達 群 の 群 間 及 び 、 視 線 方 向 に よ る 条 件 で 二 元 配 置 反 復 測 定 分 散 分 析 (two-way mixed-design repeated-measures analysis of variance (ANOVA))を用いて比較した。また、行 動指標としてGo/no-go課題中のボタンを押す反応時間、誤反応率、無反応率を計測し、各群及び 各条件間の差をANOVAを用いて比較した。いずれの値もp<0.05を有意差ありと判断した。

3 研究成果

脳機能解析においては、ASD群と定型発達群の群間及び視線方向の2 要因の交互作用を認めた。

単純主効果の解析で、定型発達群で視線方向の有意な効果を認め、direct gaze条件よりもaverted gaze 条件の脳活動が有意に高かった。一方、ASD 群では視線条件間の有意な効果はなかった。

また、行動指標では、両群ともaverted gaze条件よりもdirect gaze条件で有意に誤反応率が高 かった。一方で、両群の群間差や群間と視線方向の交互作用はなかった。

4 考察

脳機能解析においては、定型発達群では、averted gaze条件時に右前頭前野の脳活動が上昇し、

先行研究における抑制機能課題遂行時の脳活動上昇と一致した。一方、direct gaze 条件下では、

同部位の脳活動が低下し、視線条件間で逆の傾向を示した。以上から、抑制機能課題に視線刺激 を課すことで、前頭前野の脳活動に干渉作用が起きたと推察した。

行動指標においては、両群ともdirect gaze条件下で誤反応率が増加し、社会性刺激による抑制 機能への影響が示唆された。ASDは社会性刺激による影響を受けにくいと言われているが、今回 の課題では眉間に Go/no-go 課題を設定することで、他者の視線を注視し、ASDでも視線の影響 を受けたと考えた。また、行動指標と脳機能解析結果と異なる傾向を認めたことから、ASDの神 経メカニズムを見出すには脳活動が行動指標よりも鋭敏な指標である可能性がある。

ただし、本研究では関心領域を右前頭前野に限定したため、他の脳機能部位の活動を検証でき ていない。今後、右前頭前野と他の脳機能部位との関連を明らかにする必要がある。

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5 結論

本研究は、実行機能課題(抑制機能課題)に社会性に関与する刺激(視線刺激)を加えた時に 起こる脳機能変化について検証した。これにより、実行機能と社会性の機能が、前頭前野を介し て相互に関連することが示された。さらに、両機能に障害のあるASDにおいて、特異的な脳活動 変化を認めたことから、右前頭前野が中枢病変の一つであると考えられた。

論文審査の結果の要旨

申請者の論文は、自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorder; ASD)における実行機能 障害と社会性障害との関連を機能的近赤外分光分析法(functional Near-Infrared Spectroscopy;

fNIRS)と行動指標を用いて可視化し、ASD群では定型発達群と比較して抑制機能課題(Go/no-go

課題)遂行中の社会性刺激(視線刺激課題; 直視している顔; direct gaze条件とよそ見している顔;

averted gaze条件)による右前頭前野のOxyHb値の変化が有意に少ないことを示した。また、

社会性刺激によるOxyHb値の変化はASDの臨床的行動指標であるAQスコアと負の相関がある ことを示した。

これらの研究結果から申請者は、ASD群は抑制機能課題遂行中に認められる脳機能変化におい て、定型発達群と比較して視線刺激課題による影響を受けにくいことを示唆した。また、定型発 達群では抑制機能課題遂行中の右前頭前野の脳活動が direct gaze 条件により低下することを示 し、定型発達群では抑制機能課題と視線刺激課題の干渉作用が右前頭前野に生じること、ASD群 ではこの干渉作用が生じないことを示唆した。申請者は脳活動の変化と臨床的行動指標の相関か ら実行機能と社会性の干渉作用の障害がASDの症状の強さに関与する可能性、脳血流反応指標が 行動指標よりも鋭敏に視線方向処理の違いを検出できる可能性を示唆するとともに、fNIRS の ASDの神経基盤の解明における有用性を指摘している。本論文はASDにおける特徴的な所見と して抑制機能課題と視線刺激の干渉作用の低下を指摘した点に独創性があり、その神経基盤に右 前頭前野の脳活動が関与している可能性を示した点に学問的意義、新規性がある。

論文は研究背景、研究方法、結果および討論が明瞭簡潔に記載されており、図も明解である。

一部に研究方法・結果の記載の不十分さ、討論における整合性の問題が指摘されたが、これらは 試問後に適切に修正された。

論文は全体として明確に論理立てて記述され、新規の発見を含んでおり、学位論文として十分 にふさわしいと満場一致で判断された。

試問の結果の要旨

発表は、自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorder; ASD)、注意欠如/多動症(Attention deficit hyperactivity disorder, ADHD)における(functional Near-Infrared Spectroscopy, fNIRS)を用いた先行研究の解説から始まり、次いで抑制機能課題遂行時に視線刺激課題を組み 合わせるタスクの確立の過程、定型発達群では抑制機能課題遂行中の右前頭前野の脳活動が視線

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刺激課題のdirect gaze条件により低下すること、ASD群では抑制機能課題遂行中の右前頭前野 の脳活動が視線刺激課題による影響を受けにくいこと、視線刺激課題による脳活動の変化はASD の臨床的行動指標であるAQスコアと負の相関があること、定型発達群では抑制機能課題と視線 刺激の干渉作用が右前頭前野に生じ、ASD群ではこの干渉作用が生じないことが示唆されること が明解かつ論理的な研究結果により示された。

引き続き、研究対象者の背景情報、ASDにおける抑制機能課題、視線刺激課題を用いた先行研 究と本研究の相違点、抑制機能課題遂行時に視線刺激課題を組み合わせることの意義、本研究の 学術的な意義、本研究の限界、今後の研究計画についての質疑応答がなされた。候補者はこれら の質問に真摯な姿勢で適切に回答した。

候補者は関連領域にわたり幅広い知識と教養を持ち合わせており、博士号の学位に相応しい研 究能力と思考力を有していると満場一致で判断された。

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