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論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

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氏 名 はやし林 宏ひ ろさ か 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 甲第661号

学 位 授 与 年 月 日 令和4年3月23日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第2項該当

学 位 論 文 名 骨量減少によって骨から溶出するリンが腎機能に及ぼす影響の研究

論 文 審 査 委 員 (委員長) 教 授 髙 橋 將 文

(委 員) 教 授 森 下 義 幸 教 授 竹 下 克 志

論文内容の要旨

1 研究目的

リンは生命維持にとって欠かせない必須元素の 1つであるが、過剰に摂取すると生体に有害な 場合がある。実際に、過剰なリン摂取がマウスやラット、ヒトにおいて腎臓を障害することが報 告されている。また、リンによる腎障害はネフロンあたりのリン排泄量と関係しており、ネフロ ン数が少なくなると、同じ量のリンを摂取してもより重度の腎障害に発展する。つまり、ネフロ ン数の減少する高齢者では、若年世代では過剰なリン摂取とならないリンの量でも、腎障害を発 症する可能性がある。慢性腎臓病(CKD)などの腎疾患を有するような患者ではより容易に重度 の腎障害に発展しうる。

通常、過剰なリンを排泄するための迅速な応答として副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌され、

続いて骨から線維芽細胞増殖因子23(FGF23)が分泌される。FGF23の主要な標的臓器は腎臓で あり、尿細管細胞に発現するKlotho蛋白とFGF受容体の複合体に結合することで、近位尿細管で のリン再吸収を抑制し尿中へのリン排泄量を増加させる。この反応をFGF23-Klotho内分泌系と呼 び、これら2つのホルモンにより血中のリン濃度が一定の範囲内で保たれている。

しかし、この血中リン濃度を維持するための適応反応により、尿細管障害が誘導される。FGF23 によるリン再吸収の抑制により、尿中へのリン排泄量が増加すると近位尿細管での尿中リン濃度 が上昇し、微細なリン酸カルシウム結晶が尿細管内に出現する。この結晶が近位尿細管頂上膜の Toll 様受容体 4(TLR4)に結合すると、尿細管細胞の障害と炎症細胞の浸潤を引き起こす。持続 的な尿細管障害は、間質線維化やネフロン数を減少させる。その結果、尿中へのリン排泄量を増 加させるためにさらにFGF23が分泌され、尿細管障害が遷延するためネフロン喪失が進行すると いう負の連鎖が起きる。

このようにリンによる腎臓への悪影響が明らかになっているが、このリンは腸から吸収される 食事(体外)由来のリンである。しかし、血中に流入するリンは、この体外由来のリンだけでな く、骨から溶出する体内由来のリンも考えられる。骨粗鬆症や寝たきり状態などの骨量が減少す る疾患において、骨から溶出した体内由来のリンが腎臓に及ぼす影響はまだ明らかになっていな い。そこで、骨から溶出した体内由来のリンが血中に流入すると、血中FGF23値を上昇させ、尿 細管障害を誘導するという仮説を立てた。本研究では、マウスに骨量減少を引き起こした時の腎

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臓への影響を検討した。

2 研究方法

骨吸収の促進に可溶性破骨細胞分化誘導因子(sRANKL)を、骨吸収の予防にリセドロネート

(Ris)を用いた。

1) sRANKL単回投与実験:C57BL/6Jマウス(10週齢、メス)に対してsRANKL(2.0 mg/kg)を 単回投与(腹腔内注射)し、sRANKL投与前のベースラインおよび投与から18・21・24・27・ 30・48時間後までの経時的な変化を評価した。

2) sRANKL 3回投与実験:C57BL/6Jマウス(10週齢、メス)に対しsRANKL(2.0 mg/kg)を24 時間毎に3日間連続で腹腔内注射した。1回目のsRANKL投与前のベースラインおよび3回目 のsRANKL投与から1.5・12・24・36時間後までの経時的な変化を評価した。また、尿中のリ ン・カルシウム排泄量を評価するためにsRANKL投与前から蓄尿を行い、24時間毎に計4日 間の尿を採取した。

3) C57BL/6Jマウス(10週齢、メス)に対し、sRANKLの投与前にRis(10 µg/kg)を24時間毎 に3回皮下注射を行った。その後、Risを24時間毎に 2回追加投与(皮下注射)し、同時に sRANKL(2.0 mg/kg)を24時間毎に3日間腹腔内注射した。3回目のsRANKL投与から24時 間後にマウスの解剖を行った。また、尿中のリン・カルシウム排泄量を評価するために最後の Ris投与後から蓄尿を行い、24時間毎に計4日間の尿を採取した。

3 研究成果

1)sRANKLを投与すると破骨細胞の分化が進み、骨量減少を来すことが明らかになった。骨から

溶出したリンとカルシウムが血中に流入し、血中リンとカルシウム値は一過性に上昇した。こ れに続いて血中 FGF23 値が上昇した結果、尿中のリン排泄量が増加した。つまり、骨から血 中に流入したリンはFGF23-Klotho内分泌系により尿中へ排泄されることが明らかになった。

2) sRANKL 3回投与では単回投与の時よりも破骨細胞が多く分化し、骨量減少が強く長く誘導さ

れた。sRANKLの蓄積効果により、血中リンとカルシウム値はより高値を示し、これに続いて

血中 FGF23 値もより高値を示した。その結果、尿中のリン排泄量の増加も長時間持続し、尿

細管障害が誘導されることが明らかになった。

3)sRANKL投与前にRisを投与してsRANKLが誘導する骨量減少を予防すると、破骨細胞の分化 が抑制され骨量減少を予防できた。これにより、血中 FGF23 値の上昇は抑制され、尿中のリ ン排泄量も減少した。この結果、骨吸収の予防により尿細管障害の誘導も予防できることが明 らかになった。

4 考察

本研究で、持続する骨吸収が尿細管障害を誘導することを明らかにしたが、血中 Cre値の上昇 は認められずサブクリニカル急性腎障害(AKI)の病態を示した。この状態で、食事などの体外 由来のリンが加わることでより重度の腎障害に発展し、このAKIの繰り返しがCKDへの移行を 早める可能性がある。このサブクリニカルAKIを防ぐことは腎機能の保護に貢献できるため、骨 吸収を停止あるいは持続させないことが重要である。

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骨量減少を来す病態として、寝たきり状態が注目されている。現代では高齢化社会が進み寝た きり状態の患者が増えている。この病態では骨吸収が優位になるため、骨からはカルシウムだけ でなく、リンも溶出する。これが血中に流入し続けると、リンが尿中に持続的に排泄されるため サブクリニカルAKIを発症しうる。高齢者に限らず脳血管疾患や骨折などによる寝たきり状態で も骨量減少が引き起こされると考えられる。実際に、AKI は股関節手術後の患者によくみられる 合併症の1つとして報告されている。

本研究で、体内由来のリンが、食事由来のリンと同様の排泄経路をたどることが明らかになっ たため、同じ機序で尿細管障害を誘導していると考えられる。食事や骨由来に関わらず、リンが 持続して血中に流入することで、FGF23 が上昇し尿中のリン排泄量が増加する。その結果、尿細 管内での微細なリン酸カルシウム結晶を析出し尿細管障害が誘導される。

CKDには骨密度の低下による骨折が発生することがある。これを慢性腎臓病に伴うミネラル骨 代謝異常(CKD-MBD)と呼び、CKD が骨量減少の原因と捉えられているが、本研究では、骨量 減少がAKIやCKDの原因となりうることを示している。実際に、高齢者やCKD患者における座 位行動が、低骨密度などと相関することが示されており、座位行動の代わりに運動療法を行うこ とで骨密度を増加させることが明らかになっている。運動や薬物療法による骨量維持が、CKDや 加齢による腎機能低下を予防あるいは減速させる可能性があるため、今後の介入研究が期待され る。

5 結論

本研究では、sRANKL が誘導する骨吸収により骨から溶出したリンとカルシウムは、血中に流 入し尿中に排出された。また、持続する骨吸収が尿細管障害を誘導し、骨吸収を予防すると尿細 管障害の誘導も予防できることを明らかにした。本研究の成果は、骨由来のリンが食事由来のリ ンと同様に尿細管障害を誘導するため、骨量減少を来す疾患だけでなく、術後安静を要する若年 者や高齢者においても、骨量減少を停止することが腎機能保護の治療法につながる可能性を示し た。

論文審査の結果の要旨

リンは生命維持に欠かせない必須元素の一つである。しかし、過剰なリン摂取により腎障害が 誘発されることが知られており、リン代謝を制御するFGF23-Klotho内分泌系を介して尿中リン 排泄量が増加すると、近位尿細管での尿中リン濃度が上昇して、リン酸カルシウム結晶が形成さ れ、TLR4 を介した経路で炎症反応や尿細管障害が惹起される。これまで、この過剰なリンによ る腎障害は、腸から吸収される食事性(体外)由来のリンでしか知られていなかった。

申請者は、骨から溶出する、いわゆる体内由来のリンによっても尿細管障害が誘導されるので はないかとの仮説を立て、sRANKL投与によるマウス骨量減少モデルを用いて本研究を行った。

その結果、

1) sRANKL(1回)投与による破骨細胞の分化が進み、骨量減少が起こり、骨から溶出したリン

とカルシウムが血中に流入して、尿中リン排泄量が増加した。

2) sRANKL(3回投与)により破骨細胞の分化と骨量減少が強く長く誘導されるとともに、血中

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のリンとカルシウム濃度の増加も高値を示し、尿細管障害が誘導された。

3) sRANK(3回)投与前にリセドロネート(Ris)を投与することにより、sRANKLによって誘 導される骨量減少を予防すると、尿中リン排泄量も減少して尿細管障害も抑制された。

以上の結果から、持続する骨吸収によって溶出した体内由来のリンにより尿細管障害が誘導さ れること、この骨吸収を予防することで尿細管障害も予防できることが明らかになった。

本研究の研究目的は明確で、研究方法も妥当であり、新規性や独自性もある。また、骨量減少 を来す疾患や慢性腎臓病、高齢者の腎保護の治療法にも繋がることが期待されることから、審査 員全員一致で博士論文に相応しいと評価した。

最終試験の結果の要旨

申請者は、研究背景や目的、方法、結果、考察について、決められた時間内で要領よく説明し た。その内容の骨子は「論文審査の結果」に記載したとおりである。なお、審査委員からなされ た主な質問やコメントは以下の通りである。

1) 腎の糸球体あるいは尿細管障害について

2) 本研究のモデルとして使用したリセドロネート以外のビスフォスフォネート製剤による同様 の作用の可能性

3) 腎尿細管障害の原因物質としてのリン酸カルシウム結晶とCPPについて 4) 外因性(食餌由来)リン負荷モデルとの違いについて

5) IL-1βやTNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインの発現

6)リセドロネート投与モデルにおける性差、雄と雌の違い、他のモデルの可能性

申請者は、ほとんどの質問に対して的確に返答した。一部の質問に関しては、検討されていな い、あるいはこれから検討予定とのことで、申請者自身の仮説を交えることで適切に答えること ができた。また、提出された学位論文では、一部の指摘事項について、適切に修正かつ加筆され た。

以上の発表および質疑応答から、申請者が十分な資質と能力を有していることが明らかになり、

審査委員全員一致で合格と判断された。

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