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障害者のきょうだいとして生きる

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Academic year: 2025

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卒業論文

障害者のきょうだいとして生きる

2016年度入学

九州大学 文学部 人文学科 人間科学コース 社会学・地域福祉社会学専門分野

2020年1月 提出

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要旨

本研究では、障害者のきょうだいの語りを通してきょうだいが置かれている社会的な立場 を明らかにし、きょうだいに障害者がいることでライフコースの選択にどれほどの影響を 及ぼすかを検討する。

この課題を設定した背景として、近年障害者を対象とした研究が活発化していく中、障害 者の家族を対象とした研究が徐々に広がりを見せていることが挙げられる。特に障害者の 親、母親研究は障害者家族研究において最も主流の物であり、よく見られる構図として「障 害者の親」と「当事者」の二項対立で論じられてきた流れがある。

しかしながら、障害者のきょうだい所謂「親亡き後」のケア役割を真っ先に期待されるの はきょうだいである。重いケア役割を課せられたきょうだい達は自らの人生の中心にきょ うだいを据えた上で人生設計を考えなければならず、ライフコースを考えるにあたり大き な影響を及ぼすと考えられる。それにも関わらず、これまで障害者のきょうだいは研究の対 象として大きく取り上げられることは非常に少なかった。

そこで、本研究における課題を①障害者のきょうだいの語りを通してきょうだいが置かれ ている社会的な立場を明らかにすること、②きょうだいに障害者がいることがライフコー スの選択にどれほどの影響を及ぼすかを検討することの2つに設定する。「きょうだいが置 かれている社会的な立場」とは障害者をきょうだいに持つ人たちがどのような役割を社会 から、また他の家族から期待されているのかを指しており、きょうだいが担うケア役割やき ょうだいが目の当たりにする障害者差別などについて検討する。

まずは障害者家族研究を土屋葉(2002)の分類に基づき、①家族ストレス論、②障害者福 祉、③社会学的視点の3つに分けて概観していく。医学とりわけ生理学、そして心身医学、

さらには心理学で多くの業績が上げられてきた家族ストレス論では、家族を社会システム としてとらえており(石原 1985)、家族ストレス論は家族を障害児/者を支援する存在か らストレスを受ける主体としてとらえる視角への転換を導いた(土屋 2002)。次に障害者福 祉とは社会福祉の一分野であり、特定化された生活上の支援の必要性へ対応する社会的方 策体系である。その目的は障害のある人の福祉の実現、「障害」と直面しているその人のウ ェルビーイングを実現することである(中野 2001:14)。しかしながら、障害者福祉政策に おいては親と子を一体の物とみなし(中根 2006)、「前提に家族による介助役割を組み込ん でいる」ということを指摘がある(土屋 2002)。3つめの社会学的視点はさらに「親」論と

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「脱家族」論の2つにわけることができる。「親」論では「健全者の論理」を用いて障害者 の親が“差別される対象”であると同時に“差別する主体”であるという両義的な存在である ことや(要田 1999)、愛情規範を用いて母親よる子供の囲い込みの構造が示されている(岡 原 1995)。「脱家族」論は家族に囲い込まれてしまう障害者が「自己決定権」の行使を目指 いして立ち上がった自立生活運動の系譜の中で立論されている(樋口 2001)。「脱家族」論に 対しては家族、とりわけ母親が社会のエージェントとしての役割期待から距離をとりつつ あると指摘し、子どもと関わる中で親も自らの認識枠組みの差別性を知り、そこからの解放 を目指しつつあるという。にもかかわらず、これまでの障害者運動は親を過小評価しすぎて いるのではないかと批判(石川 1995)もある。これらの3つの研究を踏まえて、行為者と しての個人の経験に依拠する枠組みを用いてこれまで語られてこなかった当事者がとらえ る「障害者家族」を描写し、当事者が抱えるリアイティ定義を導いた土屋と「ケアの社会的 分有」を提唱した中根成寿(2006)の研究を取り上げている。

その一方、障害者のきょうだいは「親」研究における副次的な存在であったことを示し、

また南山浩二(2006)の研究をとりあげながらきょうだいの社会的役割とケアの両立の重 要性を指摘した。

調査は障害者のきょうだいを持つ3人の20代女性を対象にした半構造化インタビュー調 査を行った。そのデータを基にきょうだいの障害の受容、きょうだいが受ける差別、きょう だいが引き受けるケア役割、将来のライフコース選択について適宜コーディングしながら 分析を行った。

その結果、「健全者の論理」に触れる前に障害を持ったきょうだいと出会っていることか ら、障害の受容は自然に行われ、きょうだいと関係性を構築していくなかで母親と同様の愛 情規範を持つようになっていったことがわかった。家庭に対して非協力的な父親と対立し たり、学校や職場において差別のまなざしを受ける中できょうだいは家族の内側へと引き 込まれていく。その結果、今後のライフコースにおいても障害のあるきょうだいのケアをす ることを前提として選択をしていくきょうだい達の姿が見えた。

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目次

はじめに ... 1

1 本研究の目的 ... 3

2 先行研究 ... 4

2.1 障害者家族研究の概観 ... 4

2.1.1 家族ストレス論 ... 4

2.1.2 障害者福祉 ... 5

2.1.3 社会学的視点 ... 6

2.1.4 きょうだいの扱われ方 ... 11

3 調査の概要 ... 12

4 結果 ... 13

4.1 障害の受容と家族関係 ... 13

4.2 ケア役割の引き受け ... 19

4.3 差別のまなざし・差別へのまなざし ... 21

4.4 ライフコース選択 ... 30

5 分析 ... 36

5.1 自然な受容からケア役割を引き受けるまで ... 36

5.2 差別への抵抗 ... 37

5.3 強化されるケア役割とライフコース選択 ... 38

6 結論 ... 38

参考文献 ... 39

謝辞 ... 41

(6)

付録 ... 42

Referensi

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