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FT-ICR によるクラスターの質量分析

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Academic year: 2025

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FT-ICR によるクラスターの質量分析 FT-ICR Mass Spectroscopy of Atomic Clusters

伝正  丸山 茂夫(東大工) 機学 林 秀明(東大工院)

機学 *吉田 哲也(東大工学) 伝正 井上 満(東大工)

Shigeo MARUYAMA, Hideaki HAYASHI, Tetsuya YOSHIDA and Mitsuru INOUE Dept. of Mech. Eng., The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113

In order to investigate relatively large clusters with very high resolution, we have implemented a Fourier-Transform Ion-Cyclotron-Resonance (FT-ICR) mass spectrometer. The newly designed ICR cell was installed in an ultra high vacuum chamber of 10

-9

Torr inserted to a 84 mm room-temperature bore of a 6 Tesla superconductive magnet. A solid sample material which was laser-vaporized and ionized near the ICR cell was trapped in the cell for the mass spectroscopy. The fullerene mixtures extracted from the arc-discharge fullerene generator were measured as the demonstration of the sound system operation and the high mass resolution.

Key Words: Molecular Scale, FT-ICR, Mass Spectrum, Fullerene

1. はじめに 分子動力学法や量子分子動力学法の適用によ って分子スケールでの伝熱現象の理解が急速に進んでおり,

これらの計算の結果を直接に評価できる実験的研究が渇望 されている.さらに,薄膜生成プロセスなどで原子・分子 クラスターの挙動が重要な問題となり,これらの基礎的な 理解の必要性も高まってきている.そこで,著者らはレー ザー蒸発・超音速膨張クラスタービーム源によって生成さ れた,炭素クラスター,シリコンクラスター,銀クラスタ ーなどの質量分析を飛行時間法(TOF)を用いて行ってきた

(1).本報では,潜在的に極めて高い質量分解能を有し,大き なクラスターを扱いうる(2)フーリエ変換イオンサイクロト ロン共鳴質量分析(Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance, FT-ICR)装置を設計製作し,その基本性能を確認した.今 後,レーザー蒸発クラスター源を取り付けて,各種のクラ スターの光解離や化学反応特性についての研究を進める予 定である.

2. FT-ICR質量分析の原理 FT-ICR質量分析は強磁場中で

のイオンのサイクロトロン運動に着目した質量分析手法で あり,原理的に10,000 amu程度までの大きなイオンの高分 解能計測が可能である.その心臓部であるICR セルの概略 を図1に示す.内径42 mm長さ150 mmの円管を縦に4分 割した形で,2枚の励起電極(Excite)と2枚の検出電極(Detect) がそれぞれ対向して配置され,その前後をドア電極(開口

22 mm)が挟む.一様な磁束密度Bの磁場中に置かれた電荷

q,質量mのクラスターイオンは,ローレンツ力を求心力と したイオンサイクロトロン運動を行うことが知られており,

イオンの速度をv,円運動の半径をrとするとmv r2 =qvBの 関係より,イオンの円運動の周波数f =qB 2πmとなり,比

電荷q mによって決まる.

質量スペクトルを得るためには,クラスターイオン群に 適当な変動電場を加え,円運動の半径を十分大きく励起し たうえで検出電極間に誘導される電流を計測する.例とし て,図 2 に励起波形と後述のフラーレン混合物を励起した ときの検出波形(2枚の検出電極を差動アンプで増幅したも の)を示す.将来的には励起波形としては周波数平面での 任意の形を逆フーリエ変換して求めるSWIFTという方法を 用いるが,本報では簡単のために周波数掃引によって10kHz

〜900kHzの範囲を励起した(32Kのデジタルデータを時間 刻み0.2 µsにてD/A変換して出力).その直後に観察され た検出波形(50 ns幅で50 msサンプリング)は30ms程度の 間続いており,これのフーリエ成分から,C60 (123.8kHz)と C70に対応するピークが明瞭に観察される.

なお,イオンの半径方向の運動がサイクロトロン運動に

0 1 0 2 0 30

E xcite D etec t

Tim e (m s )

Voltage (arb.)

0 500 1 000

C

60

E xcite

D ete ct

Fre quen cy (kH z)

In te n s it y

Fig. 2 Example of Excite and Detect waveforms.

Detect

Excite Ion Magnetic Field

Back Door

Excite

Detect

Fig. 1 Schematics of ICR cell.

(2)

変換され,さらに軸方向の運動をドア電極によって制限さ れるとイオンは完全にセルの中に閉じこめられる.この状 態で,レーザーによる解離や化学反応などの実験が可能で ある.

3. 実験装置と方法 設計した実験装置の概略を Fig.3 に示 す.ICR セルは内径 84 mm の超高真空用ステンレス管

(SUS316)の中に納められ,この管がNMR用の6テスラの超

電導磁石を貫く設計となっている.両側のターボ分子ポン プ(300l/s)によって,背圧3×10-10 Torrの高真空が実現でき

る.Fig. 3の左部分にはレーザー蒸発クラスター源があるが

本報の実験においてはこれは取り付けずに,固体試料をICR セルの近傍(Front Doorより15 mm)に固定して,これを外 部からレーザー蒸発・イオン化させることによってクラス ターイオンを生成した.クラスター源でイオンビームを生 成した場合には,ヘリウムの超音速で飛行するクラスター イオンを減速する必要があり,パルス電圧の印可可能な減 速管を有する.

励起電極には,パソコンで計算した励起信号を高速任意 波形発生ボードから入力し,検出電極の出力は差動アンプ とデジタルオシロを介してパソコンに取り込む.ICRセルの 前方には,一定電圧に保つScreen Doorと,クラスタービー ム入射時にパルス的に電圧を下げイオンをセル内に取り込 むFront Door,後方にはBack Door電極を配置してある.そ れぞれ±20V の範囲で電圧を設定でき,減速管で減速され たクラスターイオンのうち,Screen Doorの電圧を乗り越え

て Back Door の電圧で跳ね返されたものがセル内に留まる

設計である.

4. 実験結果 最初の FT-ICR 装置の性能試験には,銀原子 を用い,Ag107,Ag109の2つの天然同位体のピーク周波数か ら磁場の強度を校正した.この結果,B = 5.807 Tとなり,

この値を用いて以下のフラーレンの質量分析を行った.

フラーレンサンプルは,黒鉛のアーク放電(3)によって得ら れた陰極堆積物に,同じく炭素のアーク放電によって得ら れたフラーレンをトルエンによって染み込ませ,乾燥させ て作った.この試料をICR セル近傍に配置してレーザー蒸 発(Nd:YAG 2倍波,1.5 mJ/pulse,直径約0.5mmに集光,10 Hzで3 s照射)させた.このときの質量スペクトルをFig. 4 に示す.C60とC70に相当する質量に顕著なピ−クが見られ,

かつ,これらの解離クラスターに対応するピークは一切現 れていないことが分かる.また,C60およびC70ピークの横 軸を引き延ばしたものを1.108%のC13天然同位体から計算

した同位体分布と比較するとよい一致が見られ,少なくと

も1000 amu程度の質量範囲で1amuの質量分解能があるこ

とが分かる.

Fig. 5には,C70より大きなフラーレンの部分を拡大して

示したが,アーク放電法で得られる典型的なマジック数C74, C76, C78, C82, C84, C90, C94, ...が明瞭に計測されている.また,

Fig. 5 下部にはクラスター源によって生成された炭素クラ

スターのレフレクトロン TOF による質量分布(1)を合わせて 示した.これらを比較するとFT-ICRとTOFとの質量分解能 の差が明らかである.また,クラスター源で生成されるク ラスターとマクロに生成されるフラーレンの質量スペクト ルの違いがあまりに大きいことが見て取れ,フラーレン生 成機構と関連してクラスター源で生成されたものがすべて 完全なフラーレンであるとは考えにくくなる.

この研究の遂行に当たり,文部省科学研究費基盤研究

07555068の補助を受けた.また,超電導磁石に関して米国

Rice大学R. E. Smalley教授にご援助頂いた.

文献 (1) Shigeo Maruyama et al., Microscale Thermophysical Engineering, 1-1 (1997), 39.

(2) S. Maruyama et al., Rev. Sci. Instrum., 61-12 (1990), 3686.

(3) 丸山・他3名,32回伝熱シンポ, (平7), 569.

5 0 6 0 7 0 80 90 1 0 0

x 2 0

C60

C7 0

7 6

84 9 0 7 8

7 4 8 2

N 9 4 96

N

9 8

M ixtu re (FT- IC R )

C lu s te r S o u rce (TO F)

N u m be r of C a rbo n A tom s

Intensity

Fig. 5 The comparison of FT-ICR spectrum with TOF mass spectrum.

Turbopump Gate Valve

Cluster Source

6 Tesla Superconducting Magnet

100 cm Deceleration Tube

Front Door

Screen Door Rear Door Excite & Detection Cylinder

Electrical Feedthrough Gas Addition

Ionization Laser

Probe Laser

Fig. 3 FT-ICR apparatus with direct injection cluster beam source

60 70 80

59 60 70 71

x 5

N umber of C arbon Atoms

In te n s it y

C60

C70

Natural Isotope Distibution

Fig. 4 Isotope effects for C60 and C70.

Referensi

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