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第43回日本伝熱シンポジウム講演論文集 (2006-5)

FT-ICR による遷移金属クラスターと炭化水素の化学反応

FT-ICR study of reaction of transition metal clusters with hydrocarbons

吉松 大介 (東大院学) *小泉 耕平 (東大院学)

須山 直紀 (東大院学) 伝正 丸山 茂夫 (東大院)

Daisuke YOSHIMATSU, Kohei KOIZUMI, Naoki SUYAMA, Shigeo MARUYAMA Dept. of Mech. Eng., The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo Bunkyo Tokyo 113-8654

Chemical reaction of transition metal cluster ions (Co) with ethylene and ethanol was investigated by using the FT-ICR mass spectrometer. Metal clusters with 9-21 atoms were generated by a pulsed laser-vaporization supersonic-expansion cluster beam source directly connected to FT-ICR (Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance) mass spectrometer. Observed reactions are mainly simple chemisorptions and dehydrogenated chemisorptions of ethanol and ethylene. Another reaction is dehydration between two molecules of ethanol. Dehydrogenation from ethylene is strongly occurred and two or three molecules of ethylene can’t adsorb without dehydration. This experiment also shows the size-dependent characteristics of reaction products of Co (n=9-21) with ethylene.

Key Words: FT-ICR, transition metal, cluster, catalyst, cobalt

1. 緒言

単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube, SWNT)はその特異な物性からナノテクノロジーのキー素材 として注目されている.その生成方法は大きく3つに分かれ ており,それぞれレーザー蒸発法,アーク放電法,触媒CVD 法である.特に本研究室ではアルコールを炭素源として用い ることで高純度な SWNT を生成するアルコール CVD 法

(ACCVD法)を開発した(1).しかしいずれの生成法においても

SWNT の初期生成過程での炭素源と触媒金属の反応につい ては未知な部分が多く,実験的に試行錯誤しながら最適な生 成方法を模索しているのが現状である.

これまで本研究室ではFT-ICR質量分析装置により,遷移 金属クラスター(Fe,Co,Ni)とエタノールの反応を検討し

てきた(2, 3).その結果,反応速度定数のクラスターサイズ依存

性が定性的に同じ様相を示し,更に原子番号の順にシフトす ることが分かった.また,コバルトクラスターとエタノール の広範囲における反応実験からエタノール中の水素が2個な いし4個脱離する脱水素反応を観測,その反応機構を提案し た.また,エタノール2分子との反応においては脱水反応が 示唆され(4),Coクラスター上でのエーテル結合の可能性も含 め検証する必要があった.なお,これまでにエタノール以外 のSWNT合成CVDに使われているガスとの反応については 調べられていない.

そこで本研究では SWNT 生成触媒で中心的な役割を果た すと考えられるコバルトに注目し,FT-ICR 質量分析装置を 用いてコバルトクラスターとエチレン,アルコールとの反応 を探った.

2. 実験装置および方法

Fig.1にFT-ICR質量分析装置を示す.強磁場中でのイオン

サイクロトロン共鳴に着目した質量分析法である.一様な磁 束密度Bの磁場中に置かれた電荷q,質量mのクラスターイ オンは,ローレンツ力を求心力としたイオンサイクロトロン 運動を行なう.イオンの速度をv,円運動の半径をrとする

mv2/r = qvBの関係よりイオンサイクロトロン運動の周波

f = qB/2πmとなり,クラスターの質量 m に反比例する.

質量スペクトルを得るためには,クラスターイオン群に適当 な変動電場を加え円運動の半径を十分大きくし,検出電極間 に誘導される微少電流を計測し,得られた波形をフーリエ変 換する.クラスターイオンは,コバルト100%のディスクを 試料としたレーザー蒸発・超音速膨張クラスター源によって 生成した.蒸発用パルスレーザー(Nd:YAG: 2倍波 532nm, 20-30mJ/pulse)を固体試料上に0.8mm-1mmに集光し,このレ ーザーと同期した高速パルスバルブからヘリウムガスを噴 射する.ヘリウムガスと共にノズルに運ばれた試料蒸気はヘ リウム原子と衝突することで冷却されクラスター化し,その 後ノズルからヘリウムガスと共に超音速膨張することによ ってヘリウムに冷却されながら噴射される.こうして生成さ

Cluster Source Gate Valve

Gas Addition

6 Tesla Superconducting Magnet

Deceleration Tube

Front Door

Screen Door Excitation & Detection Cylinder

Back Door

Electrical Feedthrough

Probe Laser Ionization Laser

100 cm

Turbopump Cluster Source

Gate Valve

Gas Addition

6 Tesla Superconducting Magnet

Deceleration Tube

Front Door

Screen Door Excitation & Detection Cylinder

Back Door

Electrical Feedthrough

Probe Laser Ionization Laser

100 cm

Turbopump

Fig.1 FT-ICR mass spectrometer directly connected with laser vaporization cluster beam source.

Mass (amu)

Intensity (arbitrary)

(a) 13 atoms

(b) 14 atoms

(c) 15 atoms Co13

+

Co14+

Co15+

26

28 Co14

+

Co15+

Co16+ 52 50

7678

74

Fig.2 FT-ICR mass spectrum of cobalt clusters with ethylene.

(2)

第43回日本伝熱シンポジウム講演論文集 (2006-5) れたクラスターイオンはスキマー(直径 2 mm)によって軸方 向直進成分のみが 約6 Tの超伝導磁石方向に送られ,超伝 導磁石内のICRセルに直接導入される.その結果,質量範囲 は〜10000amu,0.1amuの精度で測定を可能とする.

3. 結果と考察

3.1 コバルトクラスターとエチレンの反応  コバルトとエチ レンの反応性を調べるため ICR セル内に生成したクラスタ ーが保持された状態で反応ガスバルブからエチレンを噴射 し,1500〜4000ms間1.0×10-8torrのエチレンガス雰囲気で混 合後のクラスター質量を測定した.Fig.2 に本実験で得られ た反応結果を示す.Fig.2は13-15量体とエチレンを4000 ms 混合した後に得られた質量スペクトルである.9-21量体でこ れと同様のスペクトルが得られた.なおコバルトクラスター は天然同位体が一つであるため,ピークの同定は 58.93amu の倍数であるか否かにより行う.9-21量体においてコバルト のピークに対し26amuの吸着を表すピークが観測された.エ チレン分子の質量は28amuであることから水素が2個脱離し たことが分かった.この脱水素反応を示すピークは強く観測 されたが,単純吸着を示すピークは弱いため,脱水素の反応 速度が速いと考えられる.また,2分子吸着する際の反応に ついては水素が4,6つ脱離する反応が観測され,3分子吸着 する際の反応については水素が 6-10 の偶数個脱離したこと から,幾つかの反応のパスがあると考えられる.エチレン1-3 分子の吸着に関して反応分岐率b = Ip / ∑Ip( Ip: 生成物スペク トル強度 )をFig.3に示す.Fig.3(c)から16量体での3分子吸 着率が最も高いと分かった.なお,コバルトとエタノールの 反応で脱水素反応が強く見られるのも16量体である(3). 3.2 コバルトクラスターとエタノールとの反応  遷移金属ク ラスターとエタノール2分子が反応する際,分子間で脱水反 応をするとの報告(4)を検証するため,エタノールとの反応と ジエチルエーテルとの反応を比較した.本実験では約 1.0〜

2.0×10-8torr のガス雰囲気と混合後,得られたスペクトルを

Fig.4に示す.Fig.4(a)はコバルト13量体とエタノールとの反

応スペクトルで,Fig.4(b)はジエチルエーテルと反応させた時 の結果である.Fig.4(b)のジエチルエーテル(74amu)との反応

において68amuのスペクトルが得られている事から水素が6

つ 脱 離 し た こと が 分 か っ た. 一 方 Fig.4(a)の エ タ ノ ール

(46amu)の2 分子吸着を示すピークとして,脱水反応と脱水

素反応を示す 68amu(46×2‐18‐6)のスペクトルが確認でき た.この化学反応式は以下の通りとなる. 

Co13+ + 2C2H5OH → Co13(C4H4O)+ + H2O + 3H2 (1)

また,Fig.4(a)から 70amuのピークが確認できた.エーテ ルとの反応からは見られないピークでありエーテル構造を とっていない可能性が考えられる.脱水反応は12-16量体に おいて観測され,13量体で最も強い.このサイズ(12-16)は,

脱水素反応を起こすサイズとほぼ一致する.また,Fig.4(b)

の 42amu のピークからエーテルが分解される反応も確認で

きた.

3.3 コバルトクラスターの反応性とクラスターサイズ  コバ ルトとエチレン,エタノール,メタノール,水素(5)との反応 性についてまとめた結果をFig.5に示す.横軸にクラスター サイズ,縦軸に反応レート r =∑Ip/(Ir+∑Ip) (Ir: Coスペクトル 強度)として評価した.Fig.5は相対比較であることに注意し たい.エチレンは10-20量体において反応性に大きな差は表 れなかったが,Fig.3 にあるように反応の進行度には違いが あった.3分子吸着は主に13-17量体で見えた.一方エタノ ールとメタノールの反応性は相似的な変化をしておりコバ ルトとアルコールの反応特性の量体による傾向がわかった.

4. 結論

Co クラスターとエチレンの反応では脱水素反応速度が大 きいことがわかった.また,反応生成物がサイズ依存するこ とを確認した.また,Coクラスターとエタノールの反応にお いて脱水反応を確認した.アルコールの脱水反応と脱水素反 応は,ほぼ同じ量体で起こることがわかった.但し,クラス ター上でエーテル結合が生じているか否かについては,今後 検討すべき課題である.

参考文献

(1) Maruyama, S. et al., Chem. Phys. Lett., 360(2002), 229.

(2) 井上修平,丸山茂夫,機論(B),71-707(2005), 1909.

(3) 井上修平,丸山茂夫,機論(B),71-707(2005), 1915.

(4) 吉永聰志, 他3名, 第42回日本伝熱シンポジウム講演 論文集, Ⅱ(2005), 251.

(5) Conceicao, J., et al. J. Phys. Rev. B, 51-7(1995), 4668.

0 0.5 1

0 0.5

10 15 20

0 0.5

◆ Con(C2H2)+ – H2

□ Con(C2H4)+

Branching fraction

Cluster size (a) 1 molecule adsorption

◆ Con(C6H4)+ – 4H2

□ Con(C6H6)+ – 3H2

Cluster size

◇ Con(C6H2)+ – 5H2

(c) 3 molecules

◆ Con(C4H2)+ – 3H2

□ Con(C4H4)+ – 2H2

Cluster size

(b) 2 molecules

Fig.3 Branching fraction of Con+ + C2H4.

760 780 800 820 840

13 14

Mass (amu)

Intensity (arbitrary)

(b) ether

Number of cobalt atoms

70 68 (a) ethanol

18 42

46

68

42

Fig.4 Comparison of reactions of Co13+

with (a) ethanol and (b) ether.

10 20 30

Number of Cobalt Atoms

reactive num. / total num.

C2H5OH J. Conceicao, et al.

(H2) CH3OH C2H4

Fig.5 Comparison of reaction rates by cluster sizes.

Referensi

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