微分方程式 (20) は後で (→ 角運動量の理論) 解くことにす る。最も重要な結果:以前導入した数 ` の値は ` = 0,1,2, . . . の ように離散的になる。つまり L~2 の固有値は
`(` + 1)¯h2 = 0,2¯h2,6¯h2, . . .
となる。 つまり、量子力学では角運動量の大きさは 量子化 さ れ、離散的な値いとなる。` = 0,1,2, . . . は角運動量の量子数と 呼ばれている。
ここで、先ず R(r) についての Schr¨odinger 方程式を考える:
− h¯2 2mr2
d dr
r2dR(r) dr
+
V (r) + `(`+ 1)¯h2 2mr2
R(r) = E R(r) (1) R(r) の代わりに関数 u(r) を次のように導入すると、少し簡単 になる:
R(r) ≡ u(r) r R0(r) = u0
r − u r2
(r2R0)0 = (u0r − u)0 = u00r
− h¯2 2m
d2u(r) dr2 +
V (r) + `(`+ 1)¯h2 2mr2
u(r) = E u(r) (2) 遠心力の項は斥力なので、基底状態は ` = 0 となることが予想 できる。
水素原子
クーロンポテンシャル V (r) = −Ze2
r (Z = 1) および E =
−EB < 0 を u(r) に対する Schr¨odinger 方程式 (3) に代入する と、
u00 +
−2m
¯
h2 EB + 2m
¯ h2
Ze2
r − `(`+ 1) r2
u(r) = 0 (3) この方程式を厳密に解く前、先ず r → 0 及び r → ∞ での振舞 について調べる:
• r → 0 のときに、(. . .) の中、遠心力の項は一番大きいので、
近似的に
u00 − `(`+ 1)
r2 u(r) = 0 ⇒ u(r) = rα 但し、α(α − 1) − `(` + 1) = 0 ⇒ α = `+ 1, −`.
波動関数 R(r) = u(r)/r は r → 0 のときに有限なるため、
α = `+ 1 のみを採択する。
• r → ∞ のときに、(. . .) の中、定数の項は一番大きいので、
近似的に
u00 − 2m
¯
h2 EB u(r) = 0 ⇒ u(r) = e−γr 但し、γ = ±√
2mEB/¯h. 波動関数は r → ∞ で有界 (ゼロ) なるため、 γ = +√
2mEB/¯h のみを採択する。
以上をまとめると、u(r) の振る舞いは次のようになる:
u(r) −→ r`+1 × constant (r → 0) (4) u(r) −→ e−γr ×(power of r) (r → ∞) (5)
ここで、新しい関数 F(r) を次のように導入する:
u(r) ≡ r`+1e−γrF(r) (6) 上記の式 (4), (5) から、関数 F(r) は次の「境界条件」を満たさ ないと行けない:
F(r) =⇒ constant (r → 0) (7)
F(r) =⇒ (power of r) (r → ∞). (8) 定義式 (6) を Schr¨odinger 方程式 (3) に代入すると、関数 F(r) についての Schr¨odinger 方程式を導くことができる。(この計算 は練習問題!)
zd2F
dz2 + (2` + 2 −z)dF
dz − (`+ 1 − k)F = 0 ただし、変数 z および定数 k を次のように定義した:
z ≡ 2γr, k ≡ Zme2 γh¯2 注意:式 (6) を使って u(r) に戻すとき、
u(r) = r`+1e−γrF(2γr) (9) となる。
物理数学の復習: 合流型の微分方程式:
zF00 + (c − z)F0 − aF = 0 (10) それを解くために、次のベキ級数の形を仮定する:
F(z) = X∞
n=0
bnzn (11)
この形は、境界条件 F(r) −→r→0 定数 (= b0) を自動的に満たして いる。
係数 bn を決定するために、式 (11) を (10) に代入する:
∞
X
n=1
bnn(n − 1)zn−1 +c X∞
n=1
bn nzn−1 − X∞
n=0
bn nzn − a X∞
n=0
bnzn = 0 最初の 2 つの項で n → n + 1 を置き換える:
∞
X
n=0
(bn+1 n(n + 1) +c(n + 1)bn+1 − bn n −abn)zn = 0 それは全ての z に対して成り立つために、(...) = 0 から
bn+1
bn = a + n c+ n
1
n + 1 ⇒ bn
bn−1 = a + n −1 c+ n− 1
1 n 従って、
bn
b0 = bn
bn−1 · bn−1
bn−2 · . . . · b1 b0
= a c
1
1 · (a + 1) (c + 1)
1
2 · . . .· (a +n − 1) (c +n − 1)
1 n
≡ (a)n (c)n
1 n!
但し、(a)n を次のように定義した:
(a)n ≡ a(a + 1). . .(a +n − 1) [(a)0 ≡ 1] (12) 結局、式 (10) の解は次のようになる:
F(z) = X∞
n=0
(a)n (c)n
1
n! zn (13)
ここで b0 = 1 にした。(波動関数の規格化定数は最後に求め ることにする。)この関数 (13) は数学で合流型関数と呼ばれ、
F(a, c,;z) で表されている。具体的に書き出すと、
F(a, c;z) = 1 + a c
z
1! + a(a + 1) c(c+ 1)
z2
2! +. . . 次に、この解は以前の r → ∞ の境界条件
F(r) r→∞−→ (power of r) (14) を満たしているかどうかについて調べる:直接 (13) 式も使え るが、(10) 式からもっと簡単に分かる: z → ∞ のときに近似 的に
zF00 − zF0 = 0 ⇒ F00 = F0 ⇒ F(z) ∝ ez
となる。つまり、そのままで境界条件は満たしていない!
先ず、水素原子の問題へ戻すために、z = 2γr, c = 2l+2, a =
` + 1 − k を使い、波動関数 R(r) = u(r)r は次のようになる:
R(r) = r`e−γrF(` + 1 −k,2`+ 2; 2γr) (15) これは r → ∞ で次のように発散する:
R(r) → e−γr × e2γr × (power of r) = eγr × (power of r)
Schr¨odinger の解決案:関数 F(a, c;z) は 無限級数(13) であるか ら、z → ∞ のときに ez のように発散する! ただし、 F(a, c;z) の中の a は a = −N (N = 0,1,2, . . .) であれば、F(a, c;z) は 有限級数 になる:
(a)n = a(a + 1)(a + 2). . .(a +n − 1) ⇒ (a)n = 0 if n ≥ N + 1
例:a=−5⇒(a)5 = (−5)(−4)(−3)(−2)(−1), (a)6 = (a)7=. . .= 0
その場合、F(a, c;z) = F(−N, c;z)は有限級数(N 次の多項式) となる:
F(−N, c, z) = 1 + (−N) c
z
1! + (−N)(−N + 1) c(c+ 1)
z2
2! +. . . + (−N)(−N + 1). . .(−1)
c(c+ 1). . .(c +N −1) zN N!
この多項式は Laguerre の多項式 と呼ばれている。 その場合 (a = −N) は, r → ∞ のときに波動関数 (15) は
R(r) → e−γr × (power of r) → 0 となり、境界条件を満たしている。
N の代わりに nr を書くと、条件 a = −nr は次のようになる:
`+ 1 − k = −nr (nr = 0,1,2, . . .radial quantum number) この条件から束縛エネルギー EB が決まる:
k = nr +`+ 1 ≡ n (16)
(n = 1,2,3, . . .principal quantum number)
Zme2
¯ h2γ
2
= n2 (γ2 = 2mEB
¯ h2 ) EB ≡ −En = mZ2e4
2¯h2 1
n2 (17)
これは Balmer の公式と等価!
水素原子 (Z = 1) の基底状態 (n = 1) の束縛エネルギーを求 める:
E1 = −me4
2¯h2 = − mc2 2(¯hc)2e4
= −1 2
mc2
(137)2 = −1 2
0.51MeV
(137)2 = 13.6 eV. (18) これは観測値と一致している。
主量子数 n (エネルギーEn) を固定したときに、角運動量の
量子数 ` はどの値を取り得る?それは式 (16) から分かる:
n = nr + `+ 1 から
nr = n − `− 1 ≥ 0 ⇒ ` ≤ n − 1
つまり、主量子数 n を固定したときに、軌道角運動量の量子 数は次の値はとれる:
` = 0,1,2, . . . n − 1 (19)