社会学概論レジュメ 2008.04.14.Mon. 文責:薄葉
A. イントロダクション 1. 「社会学」とは?
1)二つの「社会」
a. 「大きな」社会
・例:グローバル社会/国民国家/企業社会/経済(市場)システム/政治システム、etc.
・遠くにあるもの/「私」の外部
・見えない/抽象的 → 実感がない?
・拘束的/窮屈
→ 自分の思い通りにはならないもの(例:就職活動中の4年生)
b. 「身近な」社会
・Erving Goffman(1920-85)
→ 友達と会話すること、他者と「居合わせる」こと、といった身近な日常生活それ自体がひとつの社 会現象
・変則自己紹介 方法
二人組になって向き合う
話す側:「私は~です」と自分についての情報をできるだけたくさん述べる
・例:名前、学部学科、学年、出身(県・高校)、趣味、家族構成、etc.
聞く側:黙って、相手の目を見て聞くだけでよい 60秒で交替する
何が起きるか?
・話す側:居心地の悪さ/心をのぞかれる感じ/朦朧としてくる(何を話しているのか分からなく なる)etc.
・聞く側:無意識のうちにうなづいている(相づち)/「笑顔」を浮かべている
・今の実験から見えてくること 様々なルールや技法
・→ 微笑、(一定の間隔で)相づち、沈黙を避ける(「へー」「はー」)、凝視し続けない、
etc.
ふだんはほとんど意識されない (seen,but unnoticeable)
→ 侵害して初めて気づく(不快感、当惑、居心地のわるさ)
壊れやすい
例:沈黙が少し続いただけで気まずくなってしまう/男女の会話で、女性が目を逸らせるのが ちょっと遅れただけで、勘違いする男もいる(例:木下先輩)
・ミクロな社会秩序
※われわれは無意識的に、微細なルールに従い様々な技法を駆使しながら、ともすれば容易に壊れて しまう日常生活を、危ういバランスを取りながら日々過ごしているのだ
2)等身大の社会学 a. 対象
・日常の身近な社会関係(コミュニケーション)
・「私」自身(の経験や感覚)も考察の対象になる b. 方法
・距離を置くこと
・我々は通常、様々な人間関係(「家族」「学校」「サークル」etc.)の中で暮らしている。しか し、普段はそうした「関係」を意識することはほとんどない。あまりにもありふれていて、あまり
にも身近にあるため、この「関係」自体はかえって見えにくいのである。
・このため、人間関係のパターンや、その背後にある文化を知るためには、目の前にある「当たり 前」のことから「距離」を取って見る必要がある。すると、これまでとは違った人間関係のパター ンが見えてくる。
→「距離を取る」ことは、観察対象(人間関係)から距離を置くだけではない。そこに埋め込まれ ている「自分自身」からも距離を取ることが要請される。実は、これが結構難しい。
というのもわれわれはふだん、「自己中心的な世界観」の中で生活している。「私」が世界の中心 であり、基本的に「私(の感覚や経験)こそが真である」と思っている。「私から距離を取る」と いうことは、こうした「自己愛(ナルシズム)」から距離を取る、ということでもある。
この作業が難しいのは、次の例を挙げればいいだろう。ふだん、自宅で自分の顔を鏡で覗くとき、
われわれは無意識のうちに「自分のかっこいいイメージ」を鏡像に投影して、見ようとする。表情 もそうしたイメージに近づけるよう調整する(角度を変えるとか、髪型を整えるとか)。ところ が、友達に取ってもらった自分の無防備な姿を見て、「えーっ」と思うことは珍しくない。
「自分自身から距離を取る」とは、こうした自分に対する「自己愛」や「うぬぼれ」を抑制し、
「多様な関わりの中にいる自分」を現実的に受け入れる、ということでもある。その意味で、「大 人になる」ためのレッスンと言えなくもない。
・距離を置いて社会関係を見る方法には、例えば以下のようなものがあるだろう。
1.比較
→アメリカと日本ではコミュニケーションの様式が違う 2.歴史
→世代間による敬語表現の変遷 3.実験(変則自己紹介など)
4.理論
→色の異なる眼鏡をかけると違った風景が見えてくる。特定のものの見方
・もちろん、距離の取り方は多様である。距離が近ければ細かな枝葉(ディテール)にまで目が届く が森(全体)を見通すことは難しい。逆に、鳥の視点を取って遠くから眺めると、森は見えるが枝 葉までは目が届かない。そこで、その中間領域(メゾレベル)に視点を取る、という方法もある。
どれがいちばん良い、というわけではない。異なる距離の取り方によって、異なる図柄(関係のパ ターン)が見えてくる。そうした多様な視点を取ることによって、より深く対象を把握することが できるのである。
c. 社会学は役に立つのか?
・直接的効用?
職業資格?
社会福祉士・精神保健福祉士の選択科目ではあるが…
・→この授業では試験対策は行わない(他の専攻の人もいるし…)。
社会学の知識が「直結」するような資格はない(例:社会調査士)
・間接的効用
「べき論」から「事実の観察」へ
・「~べき論」(理想論)は取りあえずカッコにくくる。上にも述べたとおり、人々は社会につい て様々な「理想」(あるべき社会イメージ)を持っている。しかし、「絶対的に正しい」という 理想や理念というものはない。
注:「自分が絶対に正しい」という自己中心的な世界観を押しつけているのが、現在のアメリ カである。一方、テロリストも「自分達は絶対に正しい」と思って自爆している。「べき論」
から出発すると、こうした「暴力の悪循環」をもたらす可能性もあるのだ。
・「問題の解決(solve a problem)」から「問題の構成(make a problem)」へ
→「なぜ問題(例えば、「いじめ」)が起きたのか」「その責任の所在は誰か」を追求して早 急に問題の解決へ向かうのではなく、「ある社会問題がどのように語られ、どのように問題化 するのか」という「プロセス」に注目する。
知的な快楽
→ 「見えないもの」を見る面白さ 新しい自分の発見?
常識とは異なる視点を取る → それ以外でもありえる世界 揺らぎ・不安
→ しかし、こうした動揺は新たな自己を形成するために不可欠
2. 講義・レポート・評価について 1)講義の進め方
a. レジュメ配布&講義
・基本的にはレジュメを配布して、それに添って講師が解説を加えるという形式を取る
・ただし、レジュメには書いていないことを板書したりすることもあるので、ノートの筆記は不可欠 b. ホームページについて
・URLは以下の通り:
http://ha2.seikyou.ne.jp/home/Takeshi.Usuba/
・レジュメや資料などは、こちらからダウンロードできるようにする予定
・連絡事項なども記載するので、定期的にチェックするように c. 講義に関するその他の注意事項
・座席を指定する(4月下旬?)
・私語の防止
・できるだけ、受講生の顔を覚えるため
・黒板が見えにくい人は、申告すること。
・私語について
・2回注意された者(1回目は警告)は、単位取得資格を失うのでそのつもりで。
・携帯の着信音は切っておくこと 2)ブリーフ・レポート
a. ブリーフレポートとは?
・「単なる感想文」と「正規のレポート」の中間
→とにかく「書く」という経験を積んでほしい(「書くこと」は、自己形成の一部)
b. 書いて欲しい内容
・授業の内容のまとめ
「自分の言葉でまとめる」ことが大切
・→レジュメや資料を漠然と引用するよりも、内容を自分なりに「咀嚼」して言葉を紡ぎ出すよう にすると力がつく。
「自分にとって重要だ」と思われる箇所について集中的に論じてもよい
・→どこが重要かは、個人によって異なってくる。自分にとって「重要」に思える箇所に集中して くれても構わない。
・展開
疑問・異論・反論 素朴な疑問
・→ 疑問点を、自分なりに解釈したり推測したりするとなおよい。
他の議論との比較
他の授業(学問分野)の議論 自分がこれまで読んだ本
→ これらを、この授業で扱った内容と比較・検討してみる 理論を自分の体験に当てはめてみる
自分が直接体験したこと 間接体験
・映画、ドラマ、小説、マンガ、報道、etc.
これらの体験を教わった理論に当てはめてみる うまく当てはまらない場合
より当てはまりのよい理論やモデルを考えてみる 理論と体験のズレが何を意味するのか、考えてみる c. ブリーフ・レポートの評価
・「授業内容のまとめ」と「展開」で総合評価する
・「まとめ」と「展開」の分量の配分は自由
ただし、要約だけで展開が全くないとか、逆に、自分の体験を羅列するだけで要約やまとめが全く
ない場合は、評価は低くなる。
基本的には、前半に「授業内容のまとめ」を書いて、後半に「展開」を書く、という形式にするこ と。
・評価の基準は、「まとめ」の適切さと、「展開」の面白さで、総合評価する。
・字数は「800字」(400字詰めの原稿用紙2枚)を「目安」とする
・800字を越えても構わない。
→ ただし、やみくもに長くしても内容を伴わなければ(たとえば、ひたすらレジュメを書き写す とか)評価は上がらないので、そのつもりで。
・最低、600字は埋めること。
d. レポートの提出方法
・メールを利用する場合(望ましい)
・現在、メールを利用できる環境にある人は、できるだけメールで提出すること。また、まだその環 境にない人も、早めにその環境を整えること。
提出先のアドレス [email protected]
→ wah の後は数字(12148)なので注意
・携帯メールは避ける
誤字脱字が多かったり、こちらが読みにくいケースが多かった。携帯の画面では全体を眺めること ができないし、またプリントアウトすることもできないので、こうしたことが起きるのだろう。
→ なお、通常のメールで提出する人も、提出前にプリントアウトして、誤字・脱字のチェッ クをするクセをつけるとよい。モニターを見るだけでは、なかなか修正が効かないから。
・冒頭に、科目名(「社会学概論A」,あるいは「概論 B」)、学生番号、氏名、「タイトル」、を 必ず書くこと。
注1:「タイトル」は、自分で自由につけてくれて構わない。タイトルをつけるのも、要約の一部 である。
注2:もし、参考文献を使用した場合は、末尾にまとめて記載する。引用の仕方などについては、
追って説明する。
・末尾に、「文字数」を書くこと。
「Word2007」(最新バージョン)の場合
メニューバーの「校閲」をクリック。次に、ツールバーの左寄りにある「文字カウント」ボタ ン(「1,2,3」という表記が為されているボタン)をクリック。
「Word2007」以前のバージョンの「}Word」を使用する場合 メニューバーの「ツール」→「文字カウント」をクリック
「一太郎」を使用する場合
メニューバーの「ツール」→「文書の文字数」をクリック
・ワードか一太郎で作成したファイルを「添付」して送信するのが望ましい(OSがWINDOWSの人)。
ファイルの添付の仕方が分からない人は、情報技術サービス相談室(?)のチューターさんか、詳 しい友達に聞いて操作法を覚えてください。
「Word」と「一太郎」以外のワープロ・ソフトを使用している人は、文書の保存形式を「Word」文 書かテキスト文書に変換して、「添付」するようにしてください。
・Macintoshのパソコン(iMacとかMacBookとかPowerMacとか)を使っている人・ファイルの添付の仕 方がどうしても分からない人
ワープロで作成したレポートの内容をコピーしてメール欄に張り付けてる。
この場合、段落が変わるところでは一行空けるなど、見やすくしてください。
「タイトル」や「文字数」を忘れないこと。
・提出期限
授業があった週の「金曜日」いっぱい
→ メールを使用した場合の方が、期限が若干伸びるわけである。
早めに提出すること。
・教務学事課に提出する場合 提出用紙
「A4サイズの原稿用紙」
・文字数をカウントする必要があるので、必ず「A4サイズの原稿用紙」を利用すること(縦書 きか横書きかは問わない)。
→ それ以外の用紙は受け取らないので、そのつもりで(通常の「レポート用紙」は不 可)。
ワープロの文書をプリント・アウトする場合
・サイズはA4。
・末尾に、「文字数」を記入するのを忘れないこと!文字カウントの仕方は、上記を参照。
提出先:「学事課」
・提出期限
授業があった週の「金曜日の13時10分まで」(昼休みの終了まで)
→ 期限を過ぎたらいっさい受け取らないので、注意
締め切りのギリギリになって提出しようとすると、学事課が混乱するし、場合によっては皆さ んの昼食時間がなくなることにもなりかねないので、早めに提出すること
授業があった日から時間が経つと、授業の内容を忘れてしまって、書くのが難しくなる。
「厭な事」は先延ばしにすればするほど、その負担が重くなる。どうせ書かなければならな いのなら、さっさと片付けてしまう方が精神衛生的にも樂になる(「案ずるよりも産むが易 し」)。
こういうとき、ワープロは便利。とにかくまずは「書けること」「書きたいこと」から書い ていって、あとからいくらでも添削したり、カット&ペーストで構成を変えたりすることが できるから。逆に手書きの場合、まずキーボード操作よりも「労力」がかかるし、添削が難 しい(全部消しゴムで消したり、書き直さなければならない)。これを避けるために「一発 で」完成したものを書こうとするから、逆にハードルが高くなってしまって、なかなか書け なくなる。結果的に、内容にも差が出てしまうことになる。
・「レポートの表紙」をつけて、提出すること。
提出方法(表紙について)
「表紙は事前に付けること!!」
・事前に表紙を授業で配る。学事課へ行く前に、事前に必要事項を記入してレポートにホチキ ス留めし、学事課ではすぐ提出できる状態にしておくこと。
e. 返却
・採点のうえ、翌週の授業中には返却する予定。
・メールの場合は、週末に採点して返信する(返信は土・日になることが多いので、月曜日にチェッ クしてください)。
→ 返信がない場合は見落としている可能性があるので、メールでその旨を連絡してください。
3)リアクション・ペーパー
a. ブリーフ・レポートのない週
・→ 講義終了後、授業の内容について自由に記述してもらう(ブリーフ・レポートの「展開」部に相 当)。
b. 評価の基準
・ミニ・レポート用紙(B6サイズ)の最低、半分は埋めること。
→ 量が足りない場合は1点、白紙の場合は2点、「出席点」から減点する。
4)全体的な成績評価
a. 出席点とレポート点の合計で判断する
・→ 105点満点を100点満点に換算して計算する b. 出席点(45点)
・3点×15回
・最低、10回以上(2/3)の出席が必要
・注1:就職活動や公務員試験・インターンシップ・教育(介護)実習・法事など、やむを得ない理由 で欠席する場合は、その旨を示した正規の書類(「公欠届け」)を提出すれば、出席点をカウント します。
・注2:欠席の回数がリミットに近づいた学生については、社会学概論のホームページ上で通知する予 定
・理由のない遅刻など 1点、減点する
・→ 遅刻してリアクション・ペーパーが白紙だったりする場合、出席点は「0」になるので注意 が必要。
c. ブリーフ・レポート点(60点)
・10点×6回
・講義に欠席してレポートだけ提出した場合は、「7点満点」で採点する。
出席者にアドバンテージを与えるため
講義の説明なしにレジュメだけでレポートを書くのはかなり難しいと思われるので、その点は覚悟し ていただきたい。
・通常の提出期限(その週の金曜日)を過ぎてからレポートを提出した場合も「7点満点」で採点す る。
d. 日頃の蓄積がものを言う(テストによる一発逆転がない)ので、特に4回生は注意が必要。
3. メール送信のお願い(今週中)
1)メール(パソコン用)を送信できる環境にある受講者
・学 籍 番 号 ・ 学 年 ・ 学 部 学 科 専 攻 ・ 氏 名 、 お よ び 、 簡 単 な 自 己 紹 介 を 書 い て 、 薄 葉 宛
([email protected])まで送信してください。なお、「件名」については、「メール送信テスト」とで も書いておいてください。
注:複数のパソコンを利用できる環境にある人は、レポートを送信する予定のパソコンから送信してく ださい。