第 1 章
商品と貨幣 第1節 商品(1) 商品の2要因-使用価値と価値
① 使用価値
1. 商品とは をもつもの
:その自然的属性が人間の何らかの欲望を充足させる性質 2. 商品とは され合うもの
商品であるための必要条件 (a) 使用価値をもつこと
(b) にとっての使用価値であること (c) 労働生産物であること
② 価値
商品は何らかの量的な で交換される (a) 交換価値
X量の小麦=Y量の綿布
X量の小麦:Y量の綿布と交換されるという交換価値をもつ 右辺にはさまざまな商品が置かれうるから,
商品は,さまざまな他の商品の一定量と交換されるという交換価値をもつものとして現れる 商品生産社会では,ある社会・地域のある時期には,一定の が成立している この等式が意味するのは小麦と綿布には何らかの共通のものが存在
その共通で同質の何かの量= が等しい 共通のものとは何か?
(b) 価値の実体 使用価値?
商品が交換されるのは 使用価値をもつから
⇒異なる使用価値の量的比較は 使用価値から得られる効用?
類似した使用価値の効用の比較は
But まったく異なる効用の量的比較は 2つの商品に含まれる共通で同質のものとは
☆ の生産物であるという性質 労働のもつ2つの性質
具体的有用労働
具体的な有用性を作る労働=具体的有用労働 小麦を作る労働と綿布を作る労働は比較 抽象的人間労働
多様な具体的労働の異なる形態を取り払っていくと 共通で同質な性質が残る=人間の 能力の発揮 等式はこの抽象的人間労働の量が等しいことの表現
商品の価値とは抽象的人間労働が商品に されたもの 商品の価値の実体は 人間労働
交換価値とは(そのままでは目に見えない)商品の価値を他の商品の一定割合で表現したもの =X量の小麦にはY量の綿布と交換できる 価値がある
(c) 価値量
抽象的人間労働は質の差がなく だけが異なる 商品の価値量は生産に必要な で決まる。
複数の生産者の個別的労働時間には差がある どの水準に決まるのか?
商品の価値量は,その商品の生産に必要な 労働時間で決まる 社会的平均的労働時間:
ある社会の標準的・平均的な と平均的な労働の熟練・強度によって ある商品を生産するために必要な労働時間
平均的な生産条件や労働の熟練度が変化すると
⇒商品1単位の生産に必要な が変化
⇒価値量が変化
価値水準の変化
短い労働時間で生産できる生産者が増えると,社会的平均的な労働時間が する
その商品の価値が する(安くなる)
③ 労働の二重性
商品の2要因に対応して商品を生産する労働も2つの性質をもつ 具体的有用労働;特定の を生み出し多様な形態をもつ 抽象的人間労働;商品の を形成し同質で無差別
(a) 具体的有用労働による使用価値の生産
どのような社会形態においても人間が生存していくためには絶対に必要な条件 (b) 抽象的人間労働による価値の形成
商品生産社会(資本主義社会)における労働
= ・分散的な労働
1. 生産手段:個人・資本家(企業)が に所有 2. 自然発生的で個別・分散的な分業
私的・分散的労働が意味をもつためには 労働の一環であることの証明が必要
=自分の労働が社会的に必要とされること
=商品の交換( )が行なわれること
そのために自分の商品を他の商品と等式関係に置く
= があることを示す
=自分の労働を抽象的人間労働として自分以外の労働と等式関係に置く 交換(販売)の実現
⇒自分の私的労働が社会的労働の一環であったことが 証明される 交換が実現しなければ? 自分の労働が なものになってしまう 人と人との関係が と との社会的関係として現象する社会
=商品生産社会(資本主義社会)固有の性質
(2) 価値形態
価値はどのような形態で現象するのか?
貨幣はなぜ商品の価値を表現することができるのか?
① 単純な価値形態
X量の小麦=Y量の綿布
(a) 価値表現における左辺と右辺の役割の違い
左辺の商品は自分のX量の を表現するために右辺のY量の商品と関係を結んでいる 左辺=相対的価値形態:右辺の商品と関係を結ぶことで間接的・相対的に自分の を表現 右辺=等価形態:自然のままの姿で の商品の価値を表現
使用価値それ自体が抽象的人間労働の対象化された として現象 両辺を入れ替えると の役割の逆転
(b) 直接的交換可能性
X量の小麦(の所有者)はY量の綿布とならいつでも に応じるという意思表明 X量の小麦⇒ Y量の綿布
右辺が承諾すれば交換が成立
にある商品は直接的交換可能性をもつ
② 展開された価値形態
単純な価値形態は小麦の価値を綿布で個別的・偶然的に表現しているに過ぎない 社会的な価値表現を行なうためには
Y量の綿布 Z量の鉄 X量の小麦= A量の石炭
B量の茶 ・・・・
X量の小麦が他のさまざまな使用価値と等しいものとして関係が結ばれることによって 小麦に対象化されている価値・抽象的人間労働が
使用価値・具体的有用労働の種類と なものであることがより明らかになる
③ 一般的価値形態
展開された価値形態は小麦の価値は表現
⇔右辺の商品の価値も相互の量的関係も表現されていない 多数の展開された価値形態を並べてみると
A量の石炭を右辺に持つ価値表現の等式を抜き出すと X量の小麦
Y量の綿布 Z量の鉄 A量の茶 ・・・
左辺の商品の価値はすべて1つの共通な商品によって価値表現 左辺の商品相互の量的関係は右辺の商品の で表現 価値表現としてはもっとも合理的で一般的な価値表現
右辺の商品は一般的等価形態にあり,一般的等価物の機能を果たす すべての商品と 可能性をもつ特殊な商品として現れる 特定の商品が一般的等価物の機能を独占すると,その商品が となる。
④ 貨幣形態
(a) 貨幣商品の条件
1. 半永久的に変質・腐敗しないこと 価値を する必要 2. 少量で多量の価値をもつこと
商品との交換のため に便利
3. 均質で同じ価値比率で分割可能であること さまざまな価値をもつ商品と 可能
⇒諸商品の価値は金の で表現=
重量の単位:ポンド,ドル,両(テール)・・・
金は,貴金属としての と労働生産物としての をもつほかに Y量の綿布
Z量の鉄 X量の小麦= A量の石炭 B量の茶 ・・・・
X量の小麦 Z量の鉄 Y量の綿布= A量の石炭 B量の茶 ・・・・
X量の小麦 Y量の綿布 Z量の鉄= A量の石炭 B量の茶 ・・・・
X量の小麦 Y量の綿布 B量の茶= Z量の鉄 A量の石炭 ・・・・
=A量の石炭
一般的等価物として,もっとも適した属性をもつ X量の小麦
Y量の綿布 Z量の鉄 A量の石炭 B量の茶 ・・・
(b) 貨幣商品の使用価値
商品が一般商品と貨幣商品とに分裂
金の使用価値⇒貴金属としての使用価値のほかに 貨幣商品=一般的等価物としての使用価値
形態的使用価値:一般的等価形態に置かれたことによって生まれる使用価値
=他のすべての商品との全面的な
この特殊な商品のもつ形態的使用価値を求めて,一般商品所持者は金を欲するようになる
貨幣形態の成立⇒金のみが価値物であり,全商品と交換可能なのは金の生まれながらの自然の性質 であるかのように意識される
(c) 価格変化
今までのかぎりで価格の変化についてふれておくと,
金の価値 商品価値 商品価格 一定 変化
変化 一定 変化 変化 (3) 商品・貨幣の物神的性格
① 商品生産者の最大関心事
自分の私的労働が の一環であることを実証すること
② 商品の物神的性格
(a) 人と人との社会的関係⇒ の交換関係 ⇒商品が価値をもつのは自然の属性のように意識 (b) 商品の価値の が至上命令
商品が売れる⇒自分の労働が でなかった証明 ⇒商品が神のように人間の上に君臨
=1オンスの金
③ 貨幣の物神的性格 貨幣の成立
金も労働生産物であり,一般商品と交換できるのは抽象的人間労働の対象化された が等し いからという事実が消失
⇒金は生まれながらに価値の結晶・価値物であり,もともと神のような特殊な力を備えたもので あるかのように意識される
たんなる に過ぎない金(貨幣)が
全知全能の力をもつかのように崇拝され,人間の幸福をも左右するものとして熱望される
第2節 貨幣の諸機能 (1) 価値の尺度
商品の価値を貨幣の一定量の重量によって表現 (2) 流通手段
貨幣は生産と消費との間の商品交換を媒介する手段
貨幣は流通界にとどまり次々と商品交換を媒介
① 物々交換と貨幣が媒介する交換との違い (a) 物々交換
W1 W2
販売することは同時に すること⇒需要と供給は常に (b) 貨幣が媒介する商品交換
生 産
生産者 A0 A1 A2 A3 A4
流通 W0 W1 W2 W3 W4
W1 W2 W3 W4 W5
消費者 A0 A1 A2 A3 A4
消 費
G G G G G ・・・・・・
商品の販売:私的労働が 労働の一環であることの証明
⇔売れなければ自分の労働はムダ
商品の貨幣への変換W→Gは「 の飛躍」
貨幣の商品への変換G→Wは?
貨幣は全面的な 可能性をもつ 販売の成功はただちに購買することを意味しない W→G G→W
商品交換を貨幣が媒介することによって,販売と購買の の可能性が生じる
=社会全体で需要≠供給の可能性
生産総額が需要総額に対して過剰となる=全般的過剰生産恐慌の抽象的可能性
② 流通必要貨幣量
一定期間の商品流通に必要な貨幣量=商品 総額/貨幣の 速度(回数) (3) 蓄蔵手段
価値を する機能=蓄蔵手段としての機能 貨幣は流通から引き上げられても価値は どのような場合に貨幣は蓄蔵されるのか?
☆ 固定資本の流通の特殊性
設備投資(工場・機械設備等の購入)=一方的 購入した設備による生産・販売=一方的
固定資本の流通をめぐって,販売と購買の大規模な時間的分離は 生 産
生産者 A0 A1 A2 A3 A4
流通 W0 W1 W2 W3 W4
W1 W2 W3 W4 W5
消費者 A0 A1 A2 A3 A4
消 費
G G G G G ・・・・・・
億円 億円
(4) 支払手段
① 商業手形(広義の信用貨幣) (a) 商業手形による商品取引の原理
商品引渡し時期と貨幣の支払時期が異なる場合 手形:金額・支払期日・振出人名
商品引渡し時 支払期日 商品 貨幣
A B A B
手形 手形
債権債務関係の発生 債権債務関係の解消
貨幣の支払手段としての機能:債権債務関係の (b) 商業手形による貨幣の機能の代行
Bが支払期日までに貨幣を必要とした場合 支払連鎖
商品 商品 商品 商品
A B C D
手形 手形 手形 手形 振出
商業手形が貨幣の流通手段としての機能を →流通に必要な貨幣の 工場・設備 生産物 売上げ 償却基金
工場の使用価値は 耐用期間中一定
1年に1億円ず
つ価値 耐用期間終了後に償却基金を投下して
(c) 商業手形による貨幣の機能の代行の限界 1. 支払期日が来れば が必要
→A→B→C→D 2. 流通範囲
振出人・裏書人に対する の範囲 3. 支払不能の連鎖の危険性
手形の不渡り=振出人の貨幣による決済
B→Cの支払不能⇒C→Dの支払不能・・・⇒支払連鎖が支払不能の連鎖に転化
⇒健全な(債務超過でない)企業も 倒産の可能性
② 銀行券(狭義の信用貨幣)
(a) 兌換銀行券の発行と貨幣の機能の代行 兌換銀行券の発行と流通
金貨幣 商品 商品 商品 銀行 B C D
銀行券 銀行券 銀行券 銀行券 兌換銀行券
金貨幣の預り証(各種額面の銀行券の発券)
流通範囲:銀行に対する にもとづく 期日:
貨幣の流通手段としての機能を (貨幣の節約) (b) 銀行による信用創造の原理
通常の金兌換請求額を支払 とし,それ以外を手形割引や融資などを通じて貸出し さらに貸出しを金貨幣でなく によって行なう
現金預金残高 銀行券の発行残高 商業手形の割引と銀行券の発行
手形 商品
銀行 B C ・・・・
銀行券 銀行券
手形割引:期日前の手形を受け取り,額面金額を現在価値に 金額を支払う 銀行による信用創造によって,流通に必要な金貨幣量を大幅に
生産拡大 金生産量の増大(信用創造の限界内で)
一般に生産拡大は流通必要貨幣量の増大を必要とするが,この信用創造によって生産拡大は一定程度,
金生産の増大の限界に縛られなくなる。
(c) 銀行による信用創造の限界
販売と購買の にもとづく過剰生産恐慌 1. 手形による決済の不能→ への需要増 2. 貸付金の不良債権化→銀行に対する信用
→銀行券の金貨幣への 請求 銀行の倒産⇒
(5) 世界貨幣
国際間の取引では一国内での銀行券は通用しない
金が全面的に登場 cf. 初期IMF=ドル体制下でのUSドル(Text p.44~)