1. 集合論の復習・ユークリッド空間 R n
科目: 数学演習IIA( f組)
担当: 相木
集合に関する基本性質の復習,およびユークリッド空間Rn の基本性質に関する問題 を扱う.
集合論の復習 集合の等号
A, Bを集合とするとき,AとBが等しいとは A⊂B かつ B ⊂A が成り立つこと.このとき,A=Bと書く.
写像の定義
A, Bを集合とするとき,Aの元にBの元を対応させる対応fに対して
Aの任意の元aに対して,aに応じたBの元bがただ一つ対応している ときにfを写像といい,aにbが対応していることをf(a) = bなどと表す.また,f がAからBへの写像であることをf :A→Bなどと表す.
写像の像・逆像
f :A→Bを写像とし,A1 ⊂A,B1 ⊂B とする.このとき,
f(A1) ={b ∈B | ∃a∈A1 s.t.b =f(a)}
をfによるA1の像(あるいは単にA1の像)と呼び,
f−1(B1) ={a ∈A |f(a)∈B1} をfによるB1の逆像(あるいは単にB1の逆像)と呼ぶ.
ユークリッド空間Rn
自然数nに対して実数全体Rのn個の直積をRnと書く(Rnと書く文献もある).つ まり,Rn =R×R× · · · ×Rである.n = 1のときは肩の添え字を省略してRと書く.
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Rnの元xは実数n個の組で表され,各成分を明示するためにxを(x1, x2, . . . , xn)などと も表す.このとき,xi ∈R (i= 1,2, . . . , n)である.
x,y∈Rnをそれぞれ(x1, x2, . . . , xn), (y1, y2, . . . , yn)と表すとき,その間の距離d(x,y) を
d(x,y) = vu ut∑n
i=1
(xi−yi)2 (1)
によって定義する.Rnに対して上のような距離(これをユークリッド距離とよぶ)を導 入したとき,Rnをn 次元ユークリッド空間(n-dimensional Euclidean space)とよ ぶ.また,直交座標を用いた座標空間と対応させてRnの元を点と呼ぶこともある.特に,
n= 1,2,3のときはそれぞれ直線,平面,空間と同一視して“平面R2の点”などの語法も 用いる.また,よく使われる記号としてRnの原点(0,0, . . . ,0)をnの値によらず0と表 すことが多い.
Rnにおける位相構造は,距離の概念によって定義される.
ユークリッド距離の基本性質
1. 任意のx,y∈Rnに対してd(x,y)≥0.
2. x,y ∈Rnに対して「d(x,y) = 0」と「x=y」は同値.
3. 任意のx,y∈Rnに対してd(x,y) =d(y,x).
4. 任意のx,y,z ∈Rnに対して
d(x,z)≤d(x,y) +d(y,z).
予約制問題
(1-1)A, B, C を集合とするときに次を示せ.
(i)A∪(B∩C) = (A∪B)∩(A∪C) (ii) A∩(B∪C) = (A∩B)∪(A∩C)
(1-2)X を集合とし,A, B をその部分集合とするときに次を示せ.
(i) (A∪B)c=Ac∩Bc (ii) (A∩B)c=Ac∪Bc
ただし,Ac = X \A は A の補集合とする.これらの等式をド・モルガンの法則(De
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Morgan’s law)と呼ぶ.
(1-3)f :A→B を写像とする. A の部分集合 A1, A2 に対して次を示せ.
f(A1∩A2)⊂f(A1)∩f(A2).
また,f(A1∩A2)⊃f(A1)∩(A2) をみたさない例をあげよ.
(1-4)d(x,y)を(1)で定めたものとする.平面R2の原点を0と置く(つまり,0= (0,0)).
1≤d(x,0)<2を満たすR2 の点x全体の集合を図示せよ.
早いもの勝ち制問題
(1-5)A, B, C を集合とするときに次を示せ.
(i) (A\B)\C =A\(B ∪C) (ii) A\(B \C) = (A\B)∪(A∩C)
(1-6)f :A→B を写像とする. A の部分集合 A1, A2 に対して次を示せ.
(i)A1 ⊂A2 ならば f(A1)⊂f(A2) (ii) f(A1∪A2) =f(A1)∪f(A2)
(1-7) x,y ∈ Rn を (x1, . . . , xn), (y1, . . . , yn)と表すとき,以下のシュワルツの不等式 (Schwarz inequality)が成り立つことを証明せよ.
(∑n i=1
xiyi
)2
≤ (∑n
i=1
x2i
)(∑n i=1
yi2 )
(1-8) 問題(1-7)のシュワルツの不等式を用いてユークリッド距離が基本性質4.をみた すことを示せ.
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