情報数学 I-A 講義のポイント No.7
復習 No.6
1)Xの直和分割A ≡ {Ai⊂X; i∈J} Ai̸=∅ (∀i∈J) Ai∩Ak =∅ (i̸=k)
X =∪
i∈J
Ai
2)X上の同値関係RとXの直和分割Aの関係について 定理 1 Xの直和分割Aに対して,X上の関係Rを
(x, y)∈R def⇔ ∃i∈J s.t. x, y∈Ai
で定めると,Rは,X上の同値関係である。このとき,A=X/Rが成り立つ。
証明. i) 反射律
∀x∈X に対して,∃i∈J s.t. x, x∈Ai
⇒(x, x)∈R ii) 反対称律
(x, y)∈R ⇒ ∃i∈J s.t. x, y∈Ai
⇒ ∃i∈J s.t. y, x∈Ai
⇒ (y, x)∈R iii) 推移律
(x, y)∈R,(y, z)∈R
⇒ ∃i∈J s.t. x, y∈Ai,∃j∈J s.t. y, z∈Aj
⇒ y∈Ai∩Aj
⇒ i=j (i.e., i̸=jであればAi∩Aj =∅)
⇒ ∃i∈J s.t. x, y, z∈Ai
⇒ (x, z)∈R
以上のことよりRはX上の同値関係である。次に,A=X/Rを示す。
∀Ai ∈ A
∀x(i), y(i)∈Ai(̸=∅)
⇒ (
x(i), y(i))
∈R
⇒ x(i), y(i)∈[ x(i)]
=[ y(i)] Ai⊂[
x(i)]
Ai⊂[ x(i)]
のとき
[x(i)]
\Ai=∅を示す
Ai ⊂[ x(i)]
のとき
[x(i)]
\Ai̸=∅と仮定すると,
⇒ ∃z∈[ x(i)]
∩Aci
⇒ ( x(i), z)
∈R かつ z /∈Ai
⇒ x(i), z∈Ai かつ z /∈Ai となり矛盾 よって
∀Ai∈ A ⇒ Ai =[ x(i)]
∈X/R より (*)
A⊂X/R が成立 逆に,
∀[x]∈X/R
∀y, z∈[x] ={u∈X; (x, u)∈R}
⇒ ∃i∈J s.t. x, y, z∈Ai
∃i∈J s.t. [x]⊂Ai
[x]⊂Ai のとき Ai\[x] =∅を示す
x∈[x]⊂Ai のとき Ai\[x]̸=∅と仮定すると,
⇒ ∃z∈Ai∩[x]c
⇒ z, x∈Ai かつ z /∈[x]
⇒ z, x∈Ai かつ z /∈[x]
⇒ (x, z)∈R かつ z /∈[x]
⇒ z∈[x] かつ z /∈[x] となり矛盾 よって,
∀[x]∈X/R ⇒ ∃i∈J s.t. [x] =Ai∈ A より (**) X/R⊂ A が成立
式(*)と 式(**)より
A=X/R
3)X上の順序関係R
i) 反射律 ∀x∈X に対して,(x, x)∈R
ii) 反対称律(x, y)∈R かつ (y, x)∈R ⇒ x=y iii) 推移律(x, y)∈R,(y, z)∈R ⇒ (x, z)∈R 上記のi)ii)iii)を満たす関係Rを(半)順序関係という。
X上の順序関係Rに対して,(x, y)∈R を x≼y と書き,(X,≼)で 順序集合を表す。
4)順序集合(X,≼)の例
RX ≡ {f | f :X →Rの写像の全体} f ≼g def⇔ f(x)5g(x) (∀x∈X) で≼を定めると,(
RX,≼)
は順序集合である。
5)(X,≼)を順序集合とする。Xの最大元,最小元,極大元,極小元 1. X の最大元 x∈X def⇔ y≼x (∀y∈X)
2. X の最小元 x∈X def⇔ x≼y (∀y∈X)
3. Xの極大元 x∈X def⇔ x≼y, y∈X ⇒ x=y 4. Xの極小元 x∈X def⇔ y≼x, y∈X ⇒ x=y
6)順序集合(X,≼)とXの部分集合Aに対して,Aの上界,下界,上限,
下限
1. x∈X が Aの上界の元 def⇔ a≼x (∀a∈A) 2. x∈X が Aの下界の元 def⇔ x≼a (∀a∈A)
3. x∈X が Aの上限 (x= supA) def⇔ Aの上界の最小元 4. x∈X が Aの下限 (x= infA) def⇔ Aの下界の最大元
講義 (No.7) の内容
1)順序集合(X,≼)の種類
有向集合, 全順序集合, 整列集合, 帰納的順序集合
2)集合の濃度
集合Xの元・要素の個数(例えば,α)を集合の濃度(cardinal num- ber)または基数といい,
|X|=α, ♯(X) =α
などで表す。集合Aから集合Bへの全単射が存在するとき,集合Aと集合 Bは対等(equipotent)であるといい,
A∼B
で表す。このとき,集合Aと集合Bの濃度(要素の数)は等しい。
|A|=|B| 2-1)有限集合(finite set)
X が有限集合とは,
0≤ |X|=n <+∞
を満たすことをいう。
例) A={a1, a2,· · ·, an},B={0,1,· · · , n−1}に対して,集合Aと集 合Bは,異なる,すなわち,
A̸=B
であるが,集合Aと集合Bの濃度(要素の数)は等しい。
|A|=|B|=n
命題 2 上記の集合Aと集合Bは対等である。すなわち,集合Aから集合B への全単射が存在する。
∃f :A→B s.t. f(ak) =k−1∈B (∀k= 1,2,· · · , n) 2-2) 無限集合(infinite set)
有限集合でない集合を無限集合という。
2-2-1) 可算集合(countable set) 命題 3 自然数の全体Nは無限集合である。
自然数の全体Nの濃度をℵ0(”アレフゼロ”と読む)と表す。
|N|=ℵ0
濃度ℵ0をもつ集合Xを可算(countable)集合または可付番集合という。す
命題4 整数の全体Zは可算集合である。
命題5 N2=N×Nは可算集合である。
例)有理数の全体Qは可算集合である。
無限集合の性質
無限集合Xの部分集合Aに対して,すなわち A⊂X ⇒ |A|=|X|
となる場合がある。有限集合Y の部分集合Bに対して,
B⊂Y ⇒ |B| ≤ |X|
が常に成り立つ。
2-2-2) 非可算集合(uncountable set)
命題 6 実数の全体Rは可算でない無限集合である。
実数の全体Rの濃度を連続体の濃度といい,ℵ(”アレフ”と読む)で表す。
上記の証明で用いられた方法を対角線論法という。