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PDF 2002年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文

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2002 年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文

「商品はどのようにして定番となるのか?」

A9942142 遊佐正治

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1.素朴な疑問

烏龍茶が伊藤園から初めて缶で発売されたのが昭和 56 年(1981 年)。その後「お~い、

お茶」が昭和 60 年(1985 年)に発売された。しかし、今まで飲料業界でお茶は主役には ならなかった。2000年3月にキリンビバレッジから「生茶」が出て、そこから急速にお茶 市場が拡大し始めた。現在では非常に多くのお茶が各飲料メーカーから出されている。就 職活動をしていて、飲料メーカーを受けていたが、各飲料メーカーともお茶の市場拡大に 注目していて、伸び悩む飲料業界にとってお茶はまだ新しい市場で最も伸びが期待でき、

お茶市場で大きなシェアを取ろうと力を入れていると言っていた。では、なぜ15年もの間 火が付かなかったお茶市場が最近になって急速に伸びているのだろうか。初めはこのよう な疑問を持った。しかし、いろいろ商品について調べている内になぜお茶が売れているの かということより、残っていく商品と多くの消えていく商品とがあるということに興味が 移っていった。世の中には様々な商品があるが、毎年各企業は何らかの新しい商品を開発 している。その中で、世の中に残っていく商品と消えていく商品とがある。お茶市場でも ブームとなった感があり、各飲料メーカーが様々な商品を次から次へと出していた。その 中で、伊藤園の「お~い、お茶」やキリンビバレッジの「生茶」などはずっと残っていて、

現在でも定番と呼べるかはわからないがまだ残っている。このようにお茶市場だけではな く、様々な商品において定番商品として長く市場に残っている商品がある。では、いった い定番とは何で、どのようにして定番となるのかと疑問に思い、考えてみようと思った。

また、少し考えてみたところ近年定番と呼ばれる商品があまり出てこなくなっているので はないかという疑問も持った。

2.定番の定義

まず、この定番という言葉の定義をしたいと思うのだが、これは非常に難しい。単純に 辞書を引き、意味だけを見ると「流行に左右されず、常時良く売れている商品」とあり、

ただ「定番」という言葉を理解するだけなら誰にでも分かると思う。しかし、どの商品が 定番の商品であるかどうかということを定義するのは厳しい。なぜなら、年代や性別によ って持っているイメージが異なる場合定番商品は変わってきてしまう可能性もあるし、単 純にその製品カテゴリーの中でのシェアを見てもその一時点だけの売り上げになってしま うので定番とは言い難くなってしまう。意識調査としてアンケートを取って、製品毎の定 番を決めることもできたが、それもそのアンケートを取った一時点でのイメージになって しまうし、これもなにより個人によって変わってきてしまい、きちんとした定義ができな い。そこで、私が考えるに「イメージが定着すること」が定番となることであると思うが、

定番とはロングセラーと私は定義したい。定番とロングセラーとは完全にイコールではな いが、一番近く、分かり易く、無難な定義であると思う。ただし、このロングセラーとい う言葉もどのくらいの期間売れ続けていればロングセラーであると言えるかという問題が 出てくるが、例えば日清チキンラーメン、カップヌードル、グリコポッキー、グリコキャ

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ラメル、ロッテグリーンガムなど15年以上市場で売れ続けている商品はロングセラー商品 と言えるし、定番となっていると思う。このようなことから完全ではないが、定番=ロン グセラーと定義したい。

ここでもう一つ考えなければならないことは、定番と言っても製品カテゴリーの定番と ブランドカテゴリーの定番を区別するということである。各ブランドの盛衰はあっても市 場が長く存続しているのが前者で、パッケージのデザインやサイズが変化してもその商品 自体が長く売れ続けているのが後者である。例えば冒頭のお茶市場について言えば、「お茶 市場」というのが製品カテゴリーに当たり、「お~い、お茶」や「生茶」などがブランドカ テゴリーに当たる。この二つを区別することは非常に重要なことである。なぜなら、定番 として商品が消費者に認知される場合、まず何らかの形で流行(ブーム)が起き、その後 製品カテゴリーが確立され、ほぼ同時に(少し後)ブランドカテゴリーが確立される(初 期参入の場合)。ただし、ブランドカテゴリーが製品カテゴリーより前に確立されることは ない。そして消費者が主にブランドに対して定番と認知する(下の図)。

流行(ブーム)

製品カテゴリーの確立

ブランドカテゴリーの確立

定番

3.なぜ定番商品が生まれ難くなっているか?

次に定番商品がなぜ近年生まれ難くなっているのかを考えてみようと思う。

①マーケットの移り変わり(消費者側の原因)

まず、商品自体を考える前にマーケットが大きく移り変わっていったことを考えたい。

工業化、近代化の中で多くの企業がマス・マーケティングを行ってきた。まだ全体的 にモノが十分でない未充足の時代(消費者の生活水準が低かった時代:例えば、1960年 代前半の第一次高度成長期には、白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が「三種の神器」と呼ば れ、人々の消費生活の目標となっていた。そして、その後第二次高度成長期には、カラ ーテレビ、カー(車)、クーラーが「3C」と呼ばれ、同じように人々の消費生活の目標 となっていた。今はすべて、私たちの生活に当たり前のように溶け込んでいるが、30 年 から40年前、日本はまだそんな時代だった)であったため、メーカーは低価格・大量生 産でよく、流通企業も大量生産=大量消費とし、流通革命を推し進めてきた。消費者の ニーズが見えていたため、このようなマーケティングで良かったと言えるだろう。

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しかし、1980年代以降消費者の生活水準が上がり(所得上昇)、生活の基盤というか、

普通に生活する上でというか、「三種の神器」や「3C」があるのは当たり前の時代(モ ノの充足の時代)になり(需要一巡を経て)、消費は質を求められる時代になった。消費 者が自分の好みや価値観の元、消費を行うようになってきたのである。個々のライフス タイルにあった消費を行うようになったと言っても良いかもしれない。企業にとって消 費者のニーズが見えづらくなって来たと言える。このことにより、企業は従来のマス・

マーケティングを行って作った商品は売れなくなり、きちんとセグメントを区別し、そ のセグメントのいくつかを選択し、集中し、それぞれ標的市場のニーズにあった製品と マーケティングを行わなくてはならなくなった。いわゆるターゲット・マーケティング を行わなくてはならなくなったのである。

このようにマーケット自体、消費者自体が変化してしまったことにより、定番商品が 生まれ難くなっていることが考えられる。消費者のニーズ自体個々の価値観を持つこと により多彩になっていて、企業が消費者のニーズをうまく捉えることが出来難くなって いるのであると思う。また、市場、消費者の変化が激しい今日では、変わらざる商品と しての定番商品の魅力をどう関連付けるかということに二律背反的なテーマがあるから 定番商品作りは難しくなっていると言える。

②製品ライフサイクルの短縮(企業側の原因)

次に商品のことについて考えたい。

これは耐久財に関して主に言えることだが、技術革新が早いため製品ライフサイクル

(次ページの図と表参照)が近年短くなっているように思える。家電などそうだと思う が、技術革新が進んで毎年毎年新しいモデルが出ているように思える。この製品ライフ サイクルがあまり短くなると消費者は買い換えようと思っていても、またすぐ新しい商 品が出るからそれを待とうという気にもなるし、もしその時点で買い換えたとしてもす ぐに新しい商品が出た場合、その消費者に与えるショックは大きいと思う。その企業に 対しての信頼度が低くなり、次に本当に買い換えようと思ったときに選択から外されて しまうことに成りかねない(ただし、その商品自体が非常に満足いく物であった場合は 変わってくる、後述)。携帯電話やパソコンも製品ライフサイクルが短い商品と言える。

また、企業としても、製品ライフサイクルが短くなると他の企業との競争を考え、目 先の製品開発に追い込まれ、ヒット率も低下してしまう。こうしたマーケティングを取 るメーカーと消費者の意識には前述のようなギャップが生まれてしまうのだと思う。新 製品の導入は新しい技術開発の成果でコストダウンが実現され、機能のレベルアップの 割に新製品価格が下がっているので、消費者にメリットが大きいという考えもある。新 製品が市場に活力を与え、市場を創造する重要な役割があることは疑いない(カメラの ミノルタ『α-7000』は一眼レフ市場を再創造した。α-7000 はカメラグランプリ 85 に続き、ヨーロピアン・カメラ・オブ・ザ・イヤーも1985も制覇し、初めての本格的オ

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ートフォーカス一眼レフとしてデビューし極めて画期的なカメラだった。初心者はコン パクトカメラでスタートという図式から、一気に一眼レフからのスタートに変えたのも このカメラだと思う。秒間2コマのワインダーを内蔵し、プログラムだけでなく、シャ ッター速度、絞り両優先のAEモードを持つなど基本機能もしっかりとしていただけで なく、フィルムのオートローディングやDXコードによるフィルム感度の自動設定など あらゆるユーザーにとって使い易い機能がバランス良く搭載されていたことが成功につ ながったことは間違いない。この後、プロユースを意識したα-9000、よりビギナーユ ース向きのα-5000と兄弟機をリリースして3機種揃って販売が続く。しかし、ミノル タの大ヒットは打ち上げ花火的で終わりその後のαシリーズはパッとせず、後発のキャ ノンのEOSやFマウントを守り続けたニコンなどがやがて追い付き、追い越していっ た。ミノルタがα-7000の時の勢いを保ち続けていたら、カメラ業界の地図も変わった かも知れない)。しかし、競争激化の元、製品ライフサイクルの短い新製品競争になれば、

消費者を疲労させるばかりか、利益なき繁忙に陥らないとも限らない。

具体的な例として、カメラ業界のことを少し見ておこうと思う。

日本のカメラ業界はモデルチェンジが早い。明らかに供給過多で、一年もしない内に 次々と新製品を出して製品の寿命を短くしている(=ライフサイクルが短くなっている)。

これはかなり昔からそうであるが、今のデジタルカメラを見てもらっても分かると思う。

デジタルカメラの定番を挙げろと言われてもあまりピンとこないのではないだろうか。

ある種まだブームの最中であるのかもしれないが、もうすでに製品のカテゴリーとして は十分成り立っているので、ブランドカテゴリーも確立されてもおかしくないはずであ る。しかし、パッと思い浮かぶブランドがあるだろうか。他の商品に比べてあまり思い 浮かばないと感じるはずである。

製品ライフサイクルはイノベーションの普及と密接に関係がある。イノベーションの 決定プロセスは、「認知⇒説得⇒決定⇒実行⇒確認」というプロセスを踏む。ここでの話 では、このイノベーション決定プロセスの「認知の段階」が問題となっている。製品ラ イフサイクルが短いとイノベーションプロセス全体の期間が短くなるから、当然認知の 段階が短くなる。すると、消費者に知られる期間が短いということになるから、定番と なることは難しくなると考えられる。定番になるためには、いや商品自体一時期でも売 れるためには何よりも消費者に知ってもらわなければ仕方がない。その知られる期間が 短いということはもう定番には成り得ないと言っても過言ではないと思う。逆を考えて みよう。もし認知の段階が長いと、人々に広く認知されるということであるから、もち ろん定番と成る可能性は高くなると言える。

このようなことから製品ライフサイクルが短くなっているため、定番商品が生まれ難 くなっているのではないかと思う。ただし、これは耐久財に対して主に当てはまるとし たが、非耐久財は耐久財に比べ、購入頻度が高いため認知され易く、定番と成り易いの だと考えられる。

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〈製品ライフサイクルの基本形〉

時間 導入期 成長期 成熟期 衰退期

売上 単価

利益 金

〈製品ライフサイクルの段階別特徴と戦略〉

導入期 成長期 成熟期 衰退期 売上高 低水準 急速上昇 緩慢な上昇or

下降

下降

利益 僅少or マイナス

最高水準 下降 低水準or ゼロ 顧客 イノベーター マスマーケッ

マスマーケッ ト

遅滞者

特徴

競争 殆ど無し 増加 競争企業多数 減少 戦略の焦点 市場の拡大 市場での浸透 シェアの防衛 撤退のタイミ

ング マーケティング

支出

高水準 高水準

(割合は低下)

低下 低水準

戦略の強調点 製品の認知 ブランド選好 ブランドロイ ヤリティ

選択的

流通 閉鎖型 開放型 価格 高水準 低下 製品 本質サービス 補助サービス

戦略

プロモーション プッシュ マスコミ利用 プル

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4.売れる商品を作るために

前述したように、商品はまず消費者に認知されることから始まり(3の②イノベーショ ン普及プロセス)、そうされることで製品カテゴリー&ブランドカテゴリーが確立される。

このようなプロセスを経て、定番となる。定番になるためにはまず売れる商品を作ること から始まると考えた。では売れる商品を作るためにはどうすれば良いかを考えよう。

①消費者は二度評価する

消費者が商品を買うとき、二つの評価(買う前と買った後の評価)をしている。「初回 購入」時と「再購入」や「継続購入」時における評価である。

Ⅰ.「初回購入」(次ページにモデル:図表1)

初回購入の特徴はその商品からまだ「満足」を味わっていなく、「期待」に対して のみ金を払うという点である。「期待」は商品(厳密には商品コンセプトだが。後述)

側の内容と消費者側のニーズ(~をしたい)という Do ニーズ)によって発生する。

例えば、「やせたい」というニーズを持っている人が「腕にはめるだけでやせられる という商品」を見つけると、その商品に「魅力」を感じ、「もしかするとやせられる かもしれない」と「期待」する。「やせたい」というニーズがなければその商品には 魅力を感じないし、期待も生まれない。

期待が生まれると、「一度試したい(一度買いたい)」という気持ちが発生し、こ の気持ちは「欲しい」というHaveニーズである。この欲しいというニーズを強く持 った消費者が店頭でその商品を見つけ、価格が妥当と思えば、購入行動が起こる。

耐久財と非耐久財とでは行動パターンが分かれる。耐久財の場合は購入した商品 の満足が低ければ使用が中止され、期待倒れの心理が生まれる。満足が高ければ使 用が継続され、それを用いた消費行動が定着していく。しかし満足が高いからとい って原則的には「再購入」という行動(後述)が発生するわけではなく、良い口コ ミを拡げたり、同企業の他の商品を購入したりする。非耐久財の場合は初回購入し た商品の満足が低ければ、途中で中止し、期待はずれの心理が生まれるという点は 耐久財と同じであるが、満足が高ければ、最後まで使用を継続し、次にニーズが再 び発生すると「再購入」の行動(後述)が発生する。例えば、食べ物だったら満足 したら、また食べたいというニーズが生まれたときに、また同じその商品を買うと いうこと。

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〈生活ニーズの発生から初回購入にいたるモデル〉(図表1)

「Beニーズ」の存在 生活行動 「Doニーズ」の発生

認知した商品 合致

その商品に対する

「魅力」を感じる

「期待」の発生

「Haveニーズ」の発生

店 頭 で 発見

価 格 妥 当性

購入行動

(初回購入)

背景

企業活動

商品開発

(C)

広告 パッケージ

配 荷 販促

価 格 設定

無 せず せず

商品ニーズ

同時に発生

したり、継

続的に発生

生活ニー

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Ⅱ.「再購入」または「継続使用」(下記にモデル:図表2)

再購入の特徴は、初回購入によって一度「満足」を味わっており、「実感した満足」

を再び味わうために、金を払ったり、繰り返し使う、という点である。「やせられる かもしれない」と「期待」した消費者は「欲しい」と思い、初回購入し、それを使 って生活する。「満足の実感」があれば使用行動が続き、満足が得られなければ使用 するのを止め、他人への「悪い口コミ」が拡がる。満足が実感され、使用行動が続 くと、耐久財の場合は他人への「良い口コミ」を拡げ、さらにそれを使用する。非 耐久財の場合は使用行動の後、多くの場合、再購入され、再びそれを用いた消費行 動をする。

〈初回購入から再購入、消費行動が定着するモデル〉(図表2)

そ れ を 用 い た消費行動

満足

満足 低

高 企業活動

商品開発

(P)

悪い口コミを拡げる

良い口コミを拡げる

再購入行動 非耐久財

使用行動の継続 耐久財 配 荷

販促 広告

継続

未継続

・期待以上

・期待通り

期待倒れ

一回(数回)

の 使 用 で

費 さ れ る 商

それを用いた 消費行動 図表1より

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このように消費者は商品の購入に際して二度の評価を行っている。

この二つの評価のタイミングで決定的な働きをするのが「商品コンセプト」(初回購入 を決定付ける)と「商品パフォーマンス」(再購入や継続使用を決定付ける)である。図 表1の商品開発のところに(C)、図表2のところに(P)と書いてあるが、Concept と

Performanceの頭文字を取ったものである(以後、Cとは商品コンセプトのことであり、

Pとは商品パフォーマンスのこととする)。また、その商品を用いた消費行動の定着が「ロ ングセラー」化である。このモデルの注意として、当初「満足」が高くても、継続使用 の後、「飽き」などの心理により「満足」が続かないことが多い。

また、前述のイノベーション普及プロセス(3の②)でも消費者の二度評価を確認す ることができる。認知の前に消費者はニーズや問題を持っている。そして、ニーズを満 たす商品の発見した段階が認知であり、魅力を感じた段階が説得であり、初回購入が決 定に当たる(ここで一度評価)と思う。その後、その商品に対して「満足」が得られる かどうか実行、その商品を用いた消費行動をし(例えば食べ物なら食べてみて確認。食 べることが実行)、もう一度買うかどうか、再購入するかどうか考える段階が確認の段階 に当たると思う。それを簡単に表したものが図表3である。

〈イノベーション普及プロセスにおける評価モデル〉(図表3)

認知 ニ ー ズ

or問題 説得

決定 実行

確認

ニ ー ズ を 満 た す商品の発見

一度評価

二度目の評価

再 購 入 す る か どうか考える

そ の 商 品 を 用 い た 消 費 初 回 行動

購入

魅力を感じる

②C/Pバランスと売れる商品

二つの評価のタイミングで決定的な働きをするのが「商品コンセプト」(初回購入を決 定付ける)と「商品パフォーマンス」(再購入や継続使用を決定付ける)であると前述し たが、この二つが売れる商品を作るために最も重要で、必要なものである。

「買う前に欲しいと思わせる力」を強めるには消費者のニーズに応えなければならない。

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そして、そのニーズに商品が応えていることを消費者に買う前に実感させることである。

これが「商品コンセプト」である。そして、「商品パフォーマンス」は、商品力、本質的 に商品そのもの自体が良いものかどうかということである。

今までの商品開発はこの「商品パフォーマンス」のみが重要視されていて、「商品コン セプト」は考えられていなかった。本当に商品力のある、売れる商品を作るときにはこ の二つを考えなければならない。コンセプトが消費者に「買う前に欲しい」と思わせ、

パフォーマンスが「買った後に買って良かった」と思わせる力なのである。売れる商品 とはこの二つが共に良くできた商品(C/Pのバランスが良い商品:図表4)のことである

(図表5)。多くの消費者にトライしてもらい、多くの人々にリピートや良い口コミを拡 げてもらうためには、商品コンセプトを魅力的に開発し、それに合致する商品パフォー マンスを開発することが不可欠で、そのために消費者ニーズの研究と消費者満足の研究 が不可欠である。

〈C/Pバランスの基本図〉(図表4)

欲しい

(ニーズ)

良かった

(満足)

C 商品力 P

行動

商品を買う

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〈C/Pバランスの概念図〉(図表5)

企業側 構成要素

買う前に欲しい と思わせる力

買った後買って 良かったと思わ せる力

消費者側 商 品 コ ン セ

プト

商 品 パ フ ォ ーマンス

ニーズ

満足

トライ アル

リ ピ ート

口 コ ミ を 拡 げ 企業と消費者の接点 る

消費者行動 消費者心理

売れる商品

商品力

そしてC/Pのバランスによって売上のパターンが次のように決まってくる。

ⅰ.成功商品(トライする人もリピートする人も多い。CもPもある)

販売力や広告力は一層早く、一層高い売上を一層長期にわたって持続させること に貢献する。

ⅱ.線香花火商品(多くの人がトライするが、リピートされない。C があるが Pがな い)

販売力や広告力が影響力を発揮できるのはピーク時の高さと、ピーク時を早める ことの2点である。どんなに販売力や広告力が強くても急激なダウントレンドを防 ぐことは不可能。パフォーマンスが改善されない限りどんなに販売や広告に金を投 入しても効果は発揮されない。

ⅲ.スロースタート商品(リピートする人は多いが、トライする人が少ない。Cがなく、

Pがある)

販売力と広告力によってスロースタート商品の売上パターンを変えることは不可 能ではない。スロースタート商品はパフォーマンスは良いのにコンセプトが悪いの であるから、広告によって一度買わせるような工夫に成功すれば一挙に成功商品の パターンに移行させることは可能。

ⅳ.空振商品(トライする人も少ないし、リピートする人も少ない。CもPもない)

主として広告力によって初期の売上を高めることは不可能ではないが、線香花火 商品同様、急激なダウントレンドを止めることはできない。

また、価格とこのC/P のバランスも密接な関係があり、C が価格と比べて魅力的なら 初回購入(トライアル)され、Pが価格と比べて高いなら再購入や継続使用(リピート)

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や良い口コミが発生する。価格とは商品価値(CとP)と比較対照され、購入決定を左右 する要因なのである。

最後にマーティングとの関係を見ると、商品力(CとP)は商品が売れるための基本要 素で、販売力と広告力は最大化要素である。販売力と広告力が強ければ強いほど売上に 貢献するのである(もちろんCとPがあることが前提)。

③未充足ニーズ(どんなニーズに応えればコンセプトは魅力的になるか)

②で商品コンセプトと商品パフォーマンスが重要なことが分かった。しかし、商品パ フォーマンスは商品自体を良い商品にすればよいということだが、商品コンセプトはど のように決めたら良いのを考えたい。商品コンセプトは消費者のニーズに応えるような ものだということはすでに述べたことであるが、商品コンセプトの決定はまさにニーズ を研究してそのニーズに対して決定される。3の①で前述した通り、マーケットが移り 変わり、消費者のニーズは捉えづらくなっているが、消費者がニーズをなくしたわけで はないところに注目しなければならない。むしろ、生活水準の向上、ボトムアップによ り、消費者は自分の価値観にあったものへの消費を易くなっていると思う。消費者ニー ズの深層には「基本ニーズ(○○な人生を送りたいなど)」があって、それを満たすため に「行為ニーズ(Do ニーズ)」が発生し、そのニーズがある商品やサービスに触れると

「欲しい」(対象・所有ニーズ、Have ニーズ)というニーズを発生させる。しかし、す べてに「欲しい」というニーズが発生するのではなく、行為ニーズが「強くて未充足」

というときに発生する。簡単に言うと「したい、やりたい、でもできない」というニー ズに、ある商品やサービスが応えたとき消費者はその商品やサービスを欲しいと思うの である。行為ニーズにはこの「強くて未充足(天才コンセプト)」の他に、「強いが未充 足でない(凡人コンセプト)」「弱いが未充足(変人コンセプト)」「弱いし未充足(出来 の悪い凡人コンセプト)」という4種類がある。

また、未充足の強いニーズは三種類あり、それはベターニーズ、ディファレントニー ズ、不足ニーズである。

ⅰ.ベターニーズ

従来の Do ニーズを強く持っている人が従来の充足手段に特別問題を持っていな いときに、「もっと」とか「一層」という条件を付加することによって創造される。

既存市場の中でワンランク上を訴求した商品はこれである。ベターニーズは無限だ が、工夫しないと飽きられ易い。(応えた商品例:スーパードライ、おいしい水、ラ 王、シャウエッセンなど)

ⅱ.ディファレントニーズ

従来の Do ニーズを強く持っている人が従来の充足手段に大きな生活上の問題を 持っている時に、その手段の生活上の問題を解決した条件を付加することによって 創造される。ディファレントニーズに応えた商品は新しい製品カテゴリーを形成す

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ることが多く、生活に変化を与える商品が多い。(例:テレビ、ラジオ、冷蔵庫など)

ⅲ.不足ニーズ

前者の二つとは異なり、Haveニーズレベルにある。単純に商品の供給量や季節や 場所を制限することによって希少性を高めるもの。そのことによって、消費者に「不 足感」を与え、購買を動機付けようというもの。したがって消費者に与えるベネフ ィットはせいぜい所有の満足や希少価値程度しかない。普及すれば希少性も失われ てしまう。

ここまで、ニーズに関することを述べてきたが、実際消費者のニーズを測ることは難 しいことである。そこで、企業が消費者に対してニーズを提案する、新しいニーズを創 造するということでも良いのではないかとも思う。もちろん何の根拠もなく商品を作っ て、こんなニーズがあると後から加えるようなものは駄目であるが、きちんと未充足な ニーズを考え、創造することができればそれはそれで越したことはないと思う。むしろ それが出来る企業は素晴らしい企業であると思う。ただし、技術だけに頼るニーズの創 造も根拠のないニーズとなると思うのでそれもなしとしたい。

5.定番化=ロングセラー化

最後に、商品の定番化について考えてみようと思う。

売れる商品を作るためには4で述べたように「商品コンセプト」と「商品パフォーマン ス」をバランス良く商品に持たせることだった。これはどちらも消費者の満足を満たすた めに必要なものだった。これがそろっていればその商品は売れるということだったが、定 番化(ロングセラー化)するためには、要は消費者満足を損なわず、ずっと満たしていく ような商品であれば良いということになる。もう少し細かく見てみよう。

①消費者満足に関わる諸心理関連図

満足の対象を「自我関与の高い対象」「自我関与の低い対象」そして「好き嫌いの感情 を伴わない対象」の三つに分け、整理した。前者二つは好き嫌いの感情が伴い、満足が継 続しないと「飽き」が来るが、第三の「好き嫌いの感情を伴わない対象」には満足が継続 しなくても「飽き」は来ない。単純に不満足となるだけである。「飽き」は好き嫌いのみに 起こる心理である。

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A:自我関与の高い対象・・・気に入って買った時計、皮のバックなど(耐久財)

ニーズ 行動 満足の 達成

執着

飽き

満足の

継続 愛着 愛用

対象への満足の継続

諦めきれない状態=未練

自律的(意識でコントロールできる)

未継続

心理 行動 継続

達成

継 続

未継続 未達成購入・使用

諦め

B:自我関与の低い対象・・・ご飯、インスタントラーメンなど

ニーズ 行動 満足の 達成

執着

飽き

満足の 継続

飽 き

ない 常用

対象への満足の継続 達成

継続

心理 行動 未継続

未継続 継 続 未達成購入・使用

諦め

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C:好き・嫌いの感情が伴わない対象・・・育毛剤、洗剤、トイレットペーパーなど

ニーズ 行動 満足の 達成

執着

不満足

満足の

継続 満足 常用

未継続

購入・使用 達成

未継続 継続

対象への満足の継続 心理 行動

未達成

継 続

諦め

②飽きと愛着、愛用

自我関与がある対象は「満足」の後に「飽き」が来る。自我関与の高い対象に対する 満足が継続している状態が「愛着」で、その愛着の心理を伴った使用行動が「愛着」で ある。「飽き」も愛着も満足の達成までは同じであるが、その後、愛着や飽きない状態に 移行するものもあるが、飽きが来るも多いのはなぜだろうか。これは大きくロングセラ ー化に関わっていると思う。

ⅰ.消費者側の要因

1-1、「欲の無限性」が期待する満足水準を上昇させる性質

人間は満足を味わうともっと満足したくなる。初めて使用して、期待以上でも 使用を繰り返すと期待する満足の水準が高くなり、「飽き」が来てしまう。

1-2、連続行為が身体に与える負担を避ける性質

満足の継続(連続)は満足疲労を起こしてしまう。分かり易く言えば、好きな 食べ物でも毎日食べていたら飽きるということ。

1-3、ニーズの変化

入手時はニーズが強く、未充足だったため、初めは喜びも大きく、商品に対す る魅力も強かったが、未充足でなくなるために魅力が薄れ、飽きの感情が生まれ る。

1-4、飽きっぽい性格

ただ消費者が飽き易いというのも一応考えられる。

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ⅱ.商品(対象)側の要因

2-1、パフォーマンスが上昇しない

消費者側の「期待する満足水準」の上昇に応えて商品のパフォーマンスを上昇し ていけば飽きないが、それが追いついていかないと飽きが来る。(もちろん製品ライ フサイクルなどを考えて、ただ闇雲に新製品を出せば飽きを防ぐことができるわけ ではない)

2-2、その都度、新しい発見や楽しみが味わえない

一度や二度の使用では楽しみが味わえたが、その後結果や成果が同じになってし まうと飽き易い。いつも同じ結果だと「期待の減退」を消費者に与えてしまうから だろう。(例えば、単調なゲームなど)

2-3、単調作業の繰り返し

結果や成果が同じというのではなく、単調な繰り返し作業を強いられるものも飽 き易い。

2-4、好き嫌いの感情が伴う商品(対象)であること

飽きの要因というより、条件かもしれないが、好き嫌いの感情が伴う商品は飽き という感情が発生したり、しなかったりする。

③飽きの特徴

ⅰ.飽きとは対象に対する「好き」という感情が消えることである。

ⅱ.飽きとは、上位ニーズを継続的に達成するための「手段の変化」であるようにも 思える。

ⅲ.自我関与の高い対象も低い対象も飽きるが、低いもののほうが簡単に飽きられる

(食品の方が趣味品よりも飽き易いものが多い)

ⅳ.ベターニーズに応える対象は他に代替手段があると飽き易い。(類似品がたくさん あるインスタントラーメンなど)

ⅵ.生活行動も商品選択も共に飽きるが、前者は後者より飽き難い。(ゲームは飽きる がゲームを楽しむ行動は飽き難い)

ずっと飽きの心理を語ってきたが、これもロングセラー化のためのものである。商品開 発をする上(コンセプトを作る)で消費者の心理を知ることが大切となるからである。

④満足の三次元(図表6)

満足には「満足の達成」「満足の継続」「満足への挑戦」の三つの次元で捉えられる。

「満足の達成」は、消費者の期待に応え、満足を与えられる商品を作ること。商品パ フォーマンスを高めることである(最終的に消費者が満足と感じるのは買った後だから)。

「満足の継続」は、1.消費者の期待する満足水準の上昇に応えて商品パフォーマンス を向上させる。2.満足疲労を起こさぬ程度に使用感覚をあけさせる。3.常に競合商

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品では与えることの出来ないベネフィットを維持する。4.消費者側の使用上の工夫や 技術の向上の余地を加える。5.自我関与度を高める(飽きの先延ばし)。

「満足への挑戦」は消費者側に強いDoニーズが未充足のまま存続する限り、カテゴリー は存続するので、企業は市場が消滅、縮小しないようにニーズを達成するパフォーマン スの商品を開発し続けていこうというもの。

〈満足の三次元〉(図表6)

企業活動の目的 手段

満足の達成 購入者満足の提供 商品コンセプトに見合った 商品パフォーマンスの提供

満足の継続 事業の継続 飽きさせない

満足への挑戦 事業の維持、拡大 諦めさせない

この章の冒頭でも述べたが、商品をロングセラー化(定番化)させたい場合、消費者満 足を常に念頭に置かなくてはならない。ニーズに応えるコンセプトを作ることも商品のパ フォーマンスを保つこともすべては消費者満足を満たすために行っているものである。ロ ングセラー化、定番化には、結局消費者のニーズに応えた商品作りをし、商品自体の本質、

核となる部分(例えば食べ物なら味)をしっかりさせることが一番であると思う。お洒落 であること、ブームに乗っただけの商品やサービでは今の消費者を満足させることは出来 ないのだと思う。

6.まとめ

最後にまとめとして、企業にとって定番商品、ロングセラー商品とはどんなものか考え た。定番商品とは、伊藤園のような特化企業にとっては商品ブランド(イメージ)が企業 ブランドと密接に結びついていて、その商品以外に対してもブランド力が影響する商品で あると思う(「お~い、お茶」が健康志向商品であるから、伊藤園が健康志向の企業である ことを消費者に印象付けることができた)。また、キリンビバレッジのようなマルチ企業に とっては、定番商品(「午後の紅茶」や「生茶」)は商品ブランド力(イメージ)が強く、

安定しているため、確実な収益を望むことができ、他の商品開発や広告などにその資金を 投入することができるメリットを持っていると思う。いずれにせよ、定番商品とは企業に とって、良いイメージを与え、安定した収益をもたらしてくれる素晴らしい商品であると 思う。企業にとって、定番商品を作ることがこの不況の中、生き残っていく術なのではな いかと思う。

始めはもっと戦略的な見方をしようと思って始めたが、最後は非常に心理学っぽくなっ てしまった。商品を作り、マーケティングというのは消費者、人を相手にしたものだから、

どうしても文化的背景であったり、心理学の要素が強くなってしまう。もっと戦略的に見

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ることができたら良かったのかもしれない。また、具体的なものにまで触れることも出来 なったのも心残りの一つとなってしまった。これから社会に出るに当たって、メーカーに 勤めるので、これをベースに商品の定番化について考えていきたい。

参考文献

Everett M.Rogers,Diffusion of Innovations,Free Press 1995.

熊沢孝『ロングセラーに帰る消費者たち~市場再構築のニューパラダイム~』

ダイヤモンド社,1989

梅沢伸喜『消費者は二度評価する~成功商品開発の秘訣~』 ダイヤモンド社,1997 日本経済新聞社『市場占有率2003年度版』日本経済新聞社,2002

株式会社キリンビバレッジ http://www.beverage.co.jp/

株式会社伊藤園 http://www.itoen.co.jp/

アサヒ飲料株式会社 http://www.asahiinryo.co.jp/

サントリー株式会社 http://www.suntory.co.jp/

サッポロビール株式会社 http://www.sapporobeer.jp/

東京大学経済学部教授 新宅純二郎教授 経営戦略講義資料

http://www.e.u-tokyo.ac.jp/~shintaku/lecture/strategy/7PLC/PLC.htm

All About Japan 清涼飲料・スナック菓子・ファーストフード・即席食品のガイドサイト

http://softdrinks.org/index.shtml#exh1998

Referensi

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