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2014 年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文

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2014 年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文

ユニクロはなぜポイントカードを導入しないの か

―ポイント制度の有効性―

A1042589 大西 洋輔 2015年1月15日

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1 目次

第1章 はじめに………. 2

第2章 ポイント制度の基本情報 2.1 ポイント制度とは... 3

2.2 ポイント制度の現状... 3

2.3 共通ポイントカード... 7

第3章 ユニクロの基本情報 3.1 ユニクロとは... 8

3.2 ユニクロとポイント制度... 8

第4章 仮説・検証 (なぜユニクロはポイント制度を導入しないのか) 4.1 ブルーオーシャン戦略なのでポイント制度が不要……….. 9

4.2 ポイント引当金が負担となっているのでポイント制度が不要……….10

4.3 オンラインショッピングに注力するのでポイント制度は不要……….12

第5章 結論……….14

おわりに……….15

参考文献……….15

(3)

2

第 1 章 はじめに

本稿の目的は、株式会社ユニクロの運営するユニクロの店舗でポイント制度が導 入されていない1理由を、仮説を挙げ検証するとともに、ポイント制度の有効性を考察する ことである。

昨今、リクルートポイントや au Wallet など新しいポイントシステムが表れてい る。スーパーやドラッグストア、家電量販店などにおけるポイント制度は従来から消費者 にとって身近な存在であり、また決して景気が良いとはいえない現在の日本社会において、

少しでも生活を助けてくれるツールとしていまや不可欠な存在でもあるだろう。筆者も、

ポイント制度は物心がついた頃から当然のように利用しており、大人になった今でも 1 ポ イントでもトクをしようと日々の生活を工夫している。ポイントはそのようなケチな消費 者の味方であり、店舗側からしても顧客の囲い込みができる素晴らしいシステムと疑うこ となく思っていた。テレビコマーシャルでもイオンやセブンイレブンなど、ポイントカー ド会員への販促を頻繁に行っている。しかしそのような状況の中、どうやらポイント制度 を積極導入していない業界がある。それがファストファッション業界だ。なぜポイント制 度を導入しないのかと疑問に思ったことが研究の動機であり、本稿ではその中でも過去に ポイントカードの導入歴があるユニクロを例にとって調べる。また同時にポイント制度そ のものの有効性についても議論したい。

1 本稿執筆時点において。2015年1月現在。

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3

第 2 章 ポイント制度の基本情報

2.1 ポイント制度とは

ポイント制度とは、顧客のロイヤリティ2の向上、顧客情報の入手、囲い込みの手 段として、金銭的なポイントを付与する制度である。具体的には、顧客の購入金額・来店 頻度に応じて金銭に換算可能なポイントを付与し、一定量貯まると商品・サービスの値引 きや景品、商品券や電子マネーなどへの交換ができるというものである。このポイントは 電子マネーなどとともに企業が発行する擬似的な通貨の側面があるため、企業通貨と呼ば れることもある。

日本におけるポイント制度の発祥に関しては諸説あるが、1989年、家電量販店の ヨドバシカメラが値引き作業の負担を軽減する目的で始めた磁気カードが最初だとされて いる。ヨドバシカメラが発行する「ゴールドポイントカード」には、日本で初めてポイン トカードを開始した旨が記載されている。その後、ポイント制度は業種問わず国内で遍く 普及するようになった。

2.2 ポイント制度の現状

昨今、ポイントカードの発行数が増加し続けている。これは従来の店舗での発行・

利用に加え、オンライン上での発行・ポイント付与も増えているためだ。今やポイントカ ードを1枚も持ってない人は極めて少ないだろう。2014年2月1日にソフトブレーン・フ ィールド株式会社によって行われたポイントサービスに関するアンケートの結果、男女と もに、多くの人が複数のカードを日常的に所有していることが分かる(図表1)。特に女性は 11 枚以上所有する人の率が高かった。一方で、所有しているカードの中でよく使うカード というものもあり、利用シーンによって使い勝手が良いものを選択していることが分かる (図表2)。それぞれのカードによって有効な場面が異なることから利用者は賢く使い分けて いる。こちらも特に女性に傾向が強かった。筆者も数えてみると常に5,6枚のポイントカー ドを携帯していた。よく使うものだけを選んで携帯しているつもりだが、その5,6枚の中に も使用頻度は差がある。こういった人は少なくないだろう。

2 Loyalty。企業や店舗などに対する親密性・信頼性のこと。

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4 9.8

18.7

51.5

61.7

30.7

16

7.4 2.6

0% 20% 40% 60% 80% 100%

女性 男性

1枚 2~3枚 4~5枚 6~10枚 11枚以上 ない

図表 2 よく使うカードの枚数( n =5,276 )

(資料)ソフトブレーン・フィールド「ポイントサービスに関する5,300人アンケート」2014年2月1日 2.2

4.2

16 28.9

26.3

31.9

29.8

23.5

24.3 9.4

1.4 2.1

0% 20% 40% 60% 80% 100%

女性 男性

1枚 2~3枚 4~5枚 6~10枚 11枚以上 持っていない 図表1 持っているポインカードの枚数(n=5,367)

(資料)ソフトブレーン・フィールド「ポイントサービスに関する5,300人アンケート」2014年2月1日

従来の日本企業には、全ての顧客に公平な品質の商品・サービスを提供するとい う意識が強いが、全ての顧客に画一的な対応をしていても誰も惹きつけられない。自社が 大切にすべきロイヤル顧客を明確にし、適切なアプローチを図ることが望ましい。経営用 語にパレート法則というものがあり、これは全体の 2割の顧客で売上の 8割を占めるとい われるものだ。場合によってはこの比率がさらに高くなることもあり、それだけロイヤル 顧客が重要だということを示している。

こうして日々の生活に多く使われているポイントカードだが、導入するにあたっ て、企業にもポイント制度のメリット・デメリットというものが発生する。安岡(2014)は、

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5

ポイントプログラムの導入によって期待できる効果やメリットは一般的に 4 つあるという (図表 3)。1 つ目は顧客囲い込み。購買によってポイントが付与されると、その恩恵をうけ るため顧客は再びその店で購買を行おうとする。魅力的な交換特典を提供することで、継 続的な来店を促すことができる。こうした点でポイント制度は、購買時点で恩恵を受ける 単純値引きと比べ、自社への顧客誘引効果が高いことが特徴といえる。2つ目は優良顧客化 だ。消費者は付与されたポイントを原資に、そのポイント以上に購買してしまうことがあ る。さらに購買金額や頻度によってステージなどが変わるプログラムにおいては、少しで も上のステージにあがるために多く消費することもある。ポイント制度にはこうして客単 価を高める効果もある。ポイント制度の 3 つ目のメリットは、新規顧客獲得だ。入会特典 ポイントを付与したり、魅力的なポイント制度を導入したりすることで、ポイント制度を 取り入れていない企業に比べ、新規顧客が獲得しやすい。そして 4 つ目が相互送客だ。最 近ではポイントの提携企業が増え、A 社が付与するポイントを B 社で利用できるなどのサ ービスが一般化している。これにより、それぞれに顧客を自社に誘引することができる。

そして、筆者が5つ目のメリットとして挙げるのがデータベース活用によるCRM3である。

消費者がポイントカードに新規入会する際、住所、年齢、職業などを登録することで企業 は顧客属性が取得できるようになり、店舗ごとのターゲット層がより明確になる。これに より、今までPOS4に頼っていた発注精度がより高まり、在庫の管理に役立てることができ る。ローソンでは、6600万人以上が所有するポイントカードPontaで発注精度を上げる取 り組みを行っており、機会ロス、廃棄ロス削減している。特に今までのPOSシステムでは 把握できなかった商品のライフサイクルをポイント制度によって予測できるようになった。

具体的には、販売数が落ちていなくても、購入リピート率が低ければ、早めに見切ること で、廃棄ロスの増大を防ぐといったことが可能になった。また、顧客の購買履歴、購買パ ターンから適切なクーポンなどを提供することができる。ビックデータという言葉は最近 よく聞くようになったが、その使い方次第で、蓄積したデータはプラチナデータともなり うる。RFM分析などが例で、この分析手法は会員を3つの視点から捉え、その中から優良 会員を抽出する方法である。(1)Recency、直近購買日。(2)Frequency、購買頻度。そして

(3)Monetary、(1 回あたりの)購買金額。この結果を元に、顧客別にロイヤリティを高める

施策を打つことができる。

3 Customer Relationship Management。顧客との関係性を構築することを重視する経営手

法のこと。

4 Point of Sales。販売時点管理。店舗で商品を販売するごとに商品の販売情報を記録し、

集計結果を 在庫管理やマーケティング材料として用いるシステムのこと。

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6

一方で、ポイント制度を導入することのデメリットもある。1つ目が、店舗に導入するコス トだ。ポイントカードとそのリーダーも高機能化しており、複数の店舗を持つ企業ほどそ のコストは大きくなる。2つ目が会計上の問題だ。ポイント制度を導入すると、顧客に付与 したポイントのうち、将来使われるであろう金額を過去の実績から算出して決算時に引当 金(負債)として計上しなければならない。そして最近ではポイントに関する新しい会計制度 もでき、その手続きがより煩雑化している。これに関しては 4 章で説明する。デメリット の 3つ目は情報流出のリスク。そして4 つ目は、消費者の財布の中に多くのポイントカー ドが入ってしまうことだ。今や多くの企業がポイント制度を導入しているので、ポイント カードで差別化をするのは難しくなっている。そして、図表 2 のようによく使われるカー ドというものが出てしまい、財布の中でポイントカードの取捨選択が行われてしまう。消 費者が財布の中に入れなかったポイントカードの店舗に行く頻度は大きく落ちるだろう。

安岡(2014)によると、ポイント制度に親和性の高い業種とそうでない業種があると

いう。以下のような業者がポイント制度導入に向いているという。(1)主にBtoC型の商品・

サービスを提供しており、(2)継続的に購入・利用される商品・サービスを提供している企 業。また、(3)一定以上の確度と深度の属性情報と購買情報を入手できる企業。そして(4)会 員に対するマーケティングに一定のコストを構えることができ、(5)会員に対するコミュニ ケーション能動的アクションを会員が承諾している企業。一方で、BtoB型の企業や、一生 に一度しか購買しない商材に関しては、ポイント制度がうまく機能しないという。

マス市場 ⾃自社 提携企業

②優 良良顧 客化

④相互送客

⼊入会時ボーナス 貯まりやすいポイント 魅⼒力力的な交換特典

貯まりやすいポイント 魅⼒力力的な交換特典

購買頻度度・⾦金金額に応じた 魅⼒力力的な上級会員向け特典

特典

ポイント交換 他社商品への

ポイント付与

図表 3 ポイント制度の 5 つのメリット

③新規顧客開拓拓

①顧客囲い込み

(資料)「ポイント・会員制サービス入門」を元に筆者作成

⑤DB活⽤用に よるCRM

(8)

7

下記には、現在の主要ポイントの交換マップを示した(図表4)。とても複雑なこと は一目瞭然である。しかし、次節で述べる共通ポイントの登場により、これでも以前と比 べるとシンプルになってきている。

2.3 共通ポイント制度

国内のポイント制度では、個々の事業者が個別に導入する時代から、複数の事業 者が連携して提供する時代になりつつある。1(事業者)対1(会員)ではなく、N(事業者)対1(会 員)のモデルともいえる。共通ポイント制度とは、企業が発行するポイントを他社のポイン トと交換し合う従来から存在するアライアンスのシステムではなく、アライアンス企業内 の購買を、同一ポイントカードで貯めたり使えたりするサービスである。企業としても、

お互いに顧客を送客でき、消費者としても、財布の中のカードを減らすことができ、また ポイントを分散させずまとめて貯めることができる。下記に、現在主流の共通ポイントを まとめた(図表5)。カニバリズムを避けるため、同じ業種からは1事業者が原則となってい るのが特徴だ。

高島屋

au Walet 東急

イオン WAON

大丸

ドコモ

JAL

ビック カメラ

Ponta

Suica

ビュー カード

京成

T-­‐point

Pasmo

東京 メトロ セブン

カード nanaco ヤマダ

電機

ANA

Edy

楽天 図表4 ポイント交換マップ(2014年4月現在)

(資料)ポイ探 ポイント交換マップ

(9)

8

第 3 章 ユニクロの基本情報

3.1 ユニクロとは

株式会社ユニクロは、株式会社ファーストリテイリングの子会社であり、世界で 衣料品を扱う同名ブランドの店舗を展開する企業である。山口県を発祥とする企業で、柳 井正が代表取締役会長兼社長を務める。衣料品の商品企画・生産・物流・販売を一貫して 行うSPA5という方式を取っている。2014年11月における店舗数は国内が852店舗、海外 が695店舗で合わせて1547店舗である。2014年8月期の売上高は1兆1292億7000万円 だった。

3.2 ユニクロとポイント制度

ユニクロは現在ポイントカードを導入していない。その理由に関しては次章以降 で仮説を立て検証する。そのユニクロも以前、ポイントカードを導入していたことがあっ た。1990年代に有効期限は無期限という売り文句で導入されたが、2002年に新規発行が終 了した。それ以降の発行は行っていない。当時のポイント制度は購入2000円ごとに1ポイ ントが付与され、30 ポイント獲得で 5000 円分の商品券と交換できる。ポイント付与率は 8%と高水準だが、6 万円分の購入をする必要があり、容易に使えるというわけではなかっ た。

5 Speciality store retailer of Private label Apparel。製造小売業のこと。

Tポイント Ponta Rポイントカード

運営企業 カルチュア・コンビニエンス・

クラブ

ロイヤリティ

マーケティング 楽天

開始時期 2003年10月 2010年3月 2014年1月

主な加盟企業 TSU TAYA、ファミリーマート すかいらーく、EN EO S

ローソン、ゲオ、

昭和シェル石油

楽天、サークルKサンク ス、出光

ポプラ、ミスタードーナツ 会員数 5150万人(2014年11月) 6600万人(2014年11月) 9550万人※楽天会員

(2014年9月) (資料)筆者作成

図表5 共通ポイントカード

(10)

9

第 4 章 仮説・検証

4.1 ブルーオーシャン戦略なのでポイント制度が不要

この章では、標題の「ユニクロはなぜポイントカードを導入しないのか」につい て3つの仮説を挙げ、検討したいと思う。

まず、最初の仮説は、ユニクロはブルーオーシャン戦略を取っており、同業他社 との差別化を図れているので、ポイント制度を導入する必要性がない、というものだ。ま ずブルーオーシャン戦略というのは、オーシャンを市場と捉え、既存市場でかつ競合が多 く存在するものをレッドオーシャン、未開拓市場で競争のない領域をブルーオーシャンと 例える経営戦略の 1 つである。企業はこのブルーオーシャンで活動し続けることが望まし いとされている。ユニクロの場合、かつての低価格戦略から、ヒートテックなどをはじめ とする機能性の高い高付加価値商品により注力するようになった(図表6)。

ブルーオーシャンでは、差別化と低コスト化で新規市場を創造することが重要と されている。差別化のみで新規市場の開拓を狙っても、コスト優位性がなければ、あとか ら参入した別企業に、新市場を乗っ取られるからだ。ユニクロは、それまでの衣類には無 かった機能性の高い製品を提供すると同時に、製造から販売までを自社で一貫して行い

(SPA)、流通や仕入れ・買い付けなどのコストを削減した。そして、新たな市場を作りなが

ら、市場での需要を掘り起こし、独自のブルーオーシャンを創出した。ブルーオーシャン を数値化する指標はないが、未だにヒートテックなどの機能性衣料で大きな利益を上げて いる点からもブルーオーシャン戦略を保てているといえるだろう。

ポイントの話に戻ると、通常ポイントカードはそれ自体、あるいはその交換特典 などが企業を差別化する要素となる。商材のみでは差別化しにくい業界で導入されること が多い。例えばスーパー、ドラッグストア、家電量販店、コンビニなどだ。レッドオーシ ャンの業界では、ポイントの還元率の高さなどで誘客することが多いが、ブルーオーシャ ンの業界では、ポイント付与で経営体力を疲弊させる必要性は高くない。

以上より、現状では「ブルーオーシャン戦略なのでポイント制度が不要」という 仮説は正しいと言える。しかしブルーシャン戦略の数値化がなされないため、根拠が弱い ということも否めない。現状では、と書いたのは、ブルーオーシャン戦略というのは一度 その市場を開拓しても、他社の追随・模倣によりレッドオーシャン化する恐れがあり、ユ

図表6

発売開始時期 商品 1994年 フリース 2003年 ヒートテック

シルキードライ サラファイン

2009年 ウルトラライトダウン 2012年 エアリズム

(資料)筆者作成 2007年

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ニクロのブルーオーシャン戦略も新しい市場を創造し続けない限りそれが維持できない。

それでは、果たしてユニクロがブルーオーシャン戦略を維持することができなくなった際、

ユニクロはポイントカードを導入するのだろうか。それは否だろうと推測する。これに関 しては次節以降の仮説で言及する。

4.2 ポイント引当金が負担となっているのでポイント制度が不要

2つ目の仮説は、ユニクロにとってポイントを導入・運営することは会計上の負担 が大きいためポイント制度が不要なのではないか、というものだ。ポイントプログラムを 導入する企業は、会計基準に基づいた処理が必要である。その会計基準を、日本の基準か らIFRSと呼ばれる国際会計基準へ移行する企業が、大企業を中心に増えており、金融庁が 強制適用するタイミングも近いという。この IFRS(国際財務報告基準)がポイント制度の会 計上の処理に大きく影響を与える。従来の日本の会計基準では、過去のポイント発行数や 交換数に応じて「ポイント引当金」などの勘定科目で負債として計上してきた。しかし、

ポイント制度に関する法律や専門の会計基準は存在しないため、企業が独自の判断基準で 計上していた。例えば、発行したポイントの全額を計上せず、前年の交換使用実績の 50%

を今年度の引当金として計上する、といったような方法だ。一方で、IFRSでは、発行した ポイント数に相当する全額を売上から除外して、負債に計上しなくてはならなくなる。そ して、ポイントが使われた時か、有効期限が切れて失効した際に、初めて売上に計上でき る(図表7)。

図表7 日本とIFRSのポイントの計上方法の比較

―ポイント付与率10%の例―

ポイント 10

ポイント 10

日本 IFRS

商品の 販売額

100

売上⾼高に計上

ポイント 分を差し 引いた 販売額

90

売上⾼高に計上 使

用 時 に費 用 とし て計 上

使 用 時 に売 上 高 とし て計 上

(資料)ザイ・オンライン「日本のポイント制度は国際会計上は問題だらけ!?

今後は消滅の可能性も」

(12)

11

現在の日本の会計方法では、ポイントの発行の有無・発行額にかかわらず、商品の販売額 をそのまま売上高に計上できるため、ポイントは即効性のある販促ツールとして用いられ てきた。しかし、国際会計基準ではポイント発行分は売上高から差し引かなければならな いので、ポイント発行額分だけ、当初の売上高が減少してしまうことになる。さらに、ポ イント発行額の算出には、一定のルールのもとに算出される公正価値や、それが将来商品 に引き換えられるであろう予想引換率や失効率などを試算しなければならず、煩雑な手続 きが必要になる。ユニクロは2014年からIFRSを導入している。かつてユニクロが有効期 限は無期限と謳ったポイントカードを廃止したのは、将来のIFRS導入を見越して、その際 に生じる、ポイント発行時まで遡る会計処理の煩雑さがあったからであると推測できる(も ちろんこれはユニクロがポイント制度を廃止した複数ある要因の中の1つにすぎない)。こ のIFRS導入後は、ユニクロはポイント発行により多額の負債を抱えることを敬遠したので はないか。

筆者は、ユニクロが共通ポイントに加入することが良いと考える。なぜなら共通 ポイントに加盟することで会員の個人情報の管理や分析を発行企業に委託でき、またポイ ント引当金などの負債リスクも発行企業が負うことになるからだ。ユニクロほどの売上の 企業が共通ポイントに参加すると、そのポイントの魅力が上がるだけでなく、ユニクロに とっても加盟企業からの誘客が期待できる。ただ、一方で既存の加盟企業からはユニクロ が同一ポイントに参加することによってユニクロに送客するばかりになってしまい、ポイ ントコストばかりかさんでしまうかもしれないので反発されてしまう可能性もある。これ だけの業界の巨人が今から共通ポイントに参戦するのは難しいのかもしれない。そういっ たユニクロのポイントへの関心がうかがえるのが、2012年にビックカメラとのコラボレー ションでオープンした新宿のビックロである。ポイント制度を廃止して以来、一度も復活 させなかったユニクロだが、このビックロではビックポイントをユニクロの商品券として 交換できる。あくまで推測となってしまうが、ユニクロは新たなポイントアライアンスの パートナーを模索していると考えることもできる。しかし、現状ビックカメラは日本航空 のマイレージプログラムと提携をしているので、ユニクロと組むかどうかについては分か らない。

話が飛躍してしまったが、「ポイント引当金が負担となっているのでポイント制度 が不要」という仮説は、ユニクロが自社単独でポイント制度を導入するのであれば、正し いと言える。ただ、昨今ではポイントは単独でやらずとも共通ポイントに乗り入れるとい う方法やポイントアライアンスを組むという方法もポピュラーとなりつつあるということ を付け加えておく必要がある。

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12

4.3 オンラインショッピングに注力するのでポイント制度は不要

3つ目の仮説は、ユニクロが今後オンラインショッピングの売上を増加させること によって、それがポイント制度の効果を包含するという仮説である。ユニクロは2000年に インターネット上での販売を開始。徐々に売上を伸ばし、2014年8月期の国内ユニクロの オンラインストアでの売上は255億円であった。これは国内ユニクロの売上高の3.5%を占 める。依然としてこの構成比は決して高いとは言えないが、筆者はユニクロがこのオンラ インショッピング事業に今後注力していくのではないかと推測する。上述したようにポイ ント制度を導入・運用するにはコストがかかる。ポイント制度の効果は、5つあると2章で 述べたが、その中でも顧客囲い込み、優良顧客化、そしてデータベース活用によるCRMは オンラインショッピングでも代替できるはずだ。2章のローソンの例で述べたように、企業 にとって顧客データは非常に貴重ゆえにプラチナデータと言われるが、特にSPA方式を取 っているユニクロにとっては重要なデータだろう。ユニクロは消費者に一番近い川下で起 きている動きを察知し、すぐに川上である製造部門で対応することができる。

ユニクロの製品ラインアップは、豊富なカラー展開ではあるが、あくまでもベー シックカジュアルを売りにし、シンプルである。1シーズン毎に製品は入れ替わるが、その シーズン内は同じ製品を生産・販売し続ける。(ちなみに同じファストファッション業界の スウェーデンの H&M、アメリカの Forever21 などは、有名ファッションデザイナーと組 み、多品種・小ロット・短サイクルで商品を展開している。デザインを重視し、次々に新 商品を出すため、2章で述べたローソンの発注精度の良し悪しなどは彼らには無縁といえる。

その、売り切ると同じ商品は二度と販売されない、ということが顧客の購買意欲を高め、

常に店内に新鮮な商品が置かれている状態につながる。筆者も、以前 H&M の店舗で、顧 客が店員に以前あった T シャツはいつ入荷するのかを聞いており、それに対し店員が再入 荷はしないであろう、と答えているのを目にしたことがある)。そのため、ユニクロではシ ーズンの終わりに売れ残りや、あるいは品切れが極力少なくなるように小売り部門と製造 部門が協力することが重要となる。スーパーやコンビニで扱う商材のように衣料には賞味 期限があるわけではないが、シーズン中に売れ残った商品を 1 年間在庫として抱えるのは コストの増加につながる。しかし、現状の店舗販売ではリピート購買率や顧客層が把握で きない。これに関しては、オンライン販売の比率が高まるにつれ、需要量と供給量が合致 してくると予想できる。筆者はSPAとオンライン販売は非常に適した相乗効果を生み出せ る組み合わせと感じる。

衣料のオンラインショッピングにおいて、一番消費者にとってもどかしいのは実 商品を確認・試着できないことだろう。しかし、この点もユニクロだからこそ気にならな いと言える。日本人であればユニクロで商品を買ったことがない人も少ないだろう。また ユニクロの扱っている商品は全てベーシック・シンプルなもので、かつ商品には素材も明 記されているので、サイズさえ合っていれば、実物を見て思っていたものと大きく違うと

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13

思うことも少ないはずだ。これは他のファストファッション企業と EC6マーケットで戦う 上でユニクロが有利な点であるだろう。

Forever21に関しては、オンラインショッピングでの購買に限り、ポイントを付与

しており、そのポイントは同じくオンラインショッピングのみで使用できる。

またユニクロが2012年から始めたモバイルアプリでは、店舗でバーコードをスキ ャンすることができたり、モバイル限定クーポンを取得したりすることができる。また、

Twitter や Facebook を利用したソーシャルマーケティングにも力を入れており、2012年

には日経デジタルマーケティングが発表するソーシャル活用売上ランキングで 1 位となっ

た。Facebookとの連携企画で、店頭で位置情報を登録するとその場で最大2000円引きの

値引きクーポンが当たるキャンペーンをした結果、20 万人を来店させることができた。ち なみに2014年は同ランキングで4位だった。様々なソーシャルメディアに日常的に触れて いる消費者を、ユニクロも様々な手法で囲い込み、ロイヤリティを向上させ、かつ売上増 加につなげていることが分かる。ちなみに他のファストファッション業界では、モバイル アプリを導入する企業は増えており、GAP、H&M、Forever21などが自社のキャンペーン 情報などを提供している。GAP に関しては、毎回の購買時にアプリをレジで提示すると割 引がなされるなど、モバイルアプリでの販促の可能性を模索しているともいえる。上記の

Forever21のオンライン限定のポイント付与や、GAPの例など、ユニクロ以外のファスト

ファッションブランド各社も、様々な手段で差別化を図っている。

「オンラインショッピングに注力するのでポイント制度は不要」という仮説につ いては、まだまだEC売上の構成が低いものの、今後オンラインショッピングの売上が伸び、

かつソーシャルメディアを駆使することにより顧客の購買行動・需要を把握し、顧客の需 要に見合った製品を需要に見合った量で生産することができると考える。特にユニクロの SPA という業態との親和性が高い。このオンラインショッピングを駆使することでかつて ポイント制度が担っていた機能を代替することができるはずだ。

6 Electric Commerce。インターネットなどの電子的な手段を介して行う商取引の総称。

(15)

14

第 5 章 結論

本稿では、ユニクロがなぜポイントカードを導入しないのかについて、ブルーオ ーシャン戦略・ポイント引当金・オンラインショッピングの 3 点に着眼し、仮説を用いて 検討した。そして結果として、全ての仮説が正しいと導いた。

問:ユニクロはなぜポイントカードを導入しないのか。

答:ユニクロは(1)高付加価値商品を低コストで販売するブルーオーシャン戦略を採ってお

り、(2)IFRS導入に伴うポイント引当金の会計処理の負担が大きく、(3)SPAを活かしたオ

ンラインショッピングに注力するため。

あくまでも、これらの要因は複合的に作用している要因の 1つに過ぎず、どれか 1つだけ を取って、ユニクロがポイントカードを導入しないのかを説明することは難しいと思う。

例えば仮説 2 の、ポイント引当金が理由という節では、最後に共通ポイント制度に参加す ることを提案したが、ユニクロがブルーオーシャン戦略を維持できている限り参加するメ リットも大きくないだろう。

最後に、ポイント制度自体の有効性に関して言及する。今や多くの企業が導入し ているポイント制度。消費者にとっては値引きツールとしての印象は昔に比べ弱くなって きてしまい、消費者はより効用の高いと思われるカードを取捨選択して使っている。しか し、未だにマーケティングツールとしての効果は有効である。かつては値引き手法として 大きな影響力を持っていたポイントカードであるが、会計制度の変更もあり、また消費者 の価値観が多様化している中で、企業の消費者に対するアプローチも柔軟に変化させる必 要がある。数あるマーケティング手法の中の 1 つの選択肢として、ポイント制度を適切に 利用することで、顧客のロイヤリティを高め、企業にとっての長期的な利益につながるだ ろう。

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15

おわりに

本稿を最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。まだまだ調べ が浅かったり、調べがつかなかったりしたところもありましたが、書ききることができま した。仮説とそれに対する答えも平凡なものですが、書ききることはできました。調べが つかなかったところとしては、ブルーオーシャン戦略の部分の戦略キャンパス、共通ポイ ントの導入コスト、導入前後の効果、引当金関係などがあります。少し未来予測のような 部分もありますが、5年後10年後にどうなっているのかが楽しみです。

改めて、ありがとうございました。

大西洋輔

参考文献

[1] 安岡寛道『「ポイント・会員制サービス」入門』東洋経済新報社、2014。 [2] 岡田祐子『成功するポイントサービス』WAVE出版、2010。

[3] 青木章通・佐々木郁子「小売業におけるプロモーション手法の検討-ポイント制度と値 引き販売に関する実証研究-」『メルコ管理会計研究』2巻4号、2011、3-16頁。

[4] 高橋俊匡「滞留在庫、ポイント制度等に注意 卸売・小売業のデューデリジェンス」『旬 刊経理情報』1349号、2013、19-22頁

[5]村井直志『決算書の50%は思い込みでできている』東洋経済新報社、2011年

[6]「IFRS~適用への実務的課題と対策」『日本経済新聞』2014年12月25日、朝刊、26-28 頁

[7] 小 本 恵 照 「 進 化 す る ポ イ ン ト カ ー ド と そ の 将 来 性 」

<http://www.nli-research.co.jp/report/report/2006/02/eco0702a.pdf>(閲覧 2014 年 8 月 2 日)

[8]海保英孝「ポイント・プログラムをめぐる経営の諸問題について」

<http://www.seijo.ac.jp/pdf/faeco/kenkyu/187/187-kaiho.pdf>(閲覧2014年8月2日) [9]矢野経済研究所「ポイントカード・ポイントサービスの顧客囲い込み効果に関するアン ケート調査結果 2009」<http://www.yanoict.com/yzreport/101>(閲覧2014年8月2日)

[10] 土肥義則「スーパーでポイントカードを導入しても顧客は満足しない」

<http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0705/28/news090.html>(閲覧2014年10月11日) [11]富田克己「転換期を迎えたポイント・マイレージ」

<http://www.jftc.go.jp/cprc/katsudo/bbl.files/153th-bbl.pdf>(閲覧2014年10月11日)

(17)

16

[12]富田克己「効果測定に基づくポイントプログラムの有効活用」

<http://www.nri.com/~/media/PDF/jp/opinion/teiki/chitekishisan/2013/cs20131103.pdf>(

閲覧2014年10月11日)

[13]庭山一郎「ポイントカードシステム効果は上がっていますか?」

<http://marketing-campus.jp/column/ip01/001.html>(閲覧2014年12月1日) [14]川崎啓太「ポイントカード市場と動向、その有用性(FSP)」

<http://ameblo.jp/kawasakikei/entry-10895355821.html>(閲覧2014年12月1日) [15]「ポイントカードはもう古い? ソーシャル時代の小売業“サバイバル術”」

<http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1401/06/news03.html>(閲覧2014年12月1日) [16]カルチュア・コンビニエンス・クラブ<http://www.ccc.co.jp/index.html>(閲覧2014年 12月1日)

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<http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/OPINION/20090423/329055/>(閲覧2014年12月5日) [19]東洋経済オンライン「顧客データを品ぞろえに生かすローソン、データ活用で店頭の売 れ筋商品も変わる」<http://toyokeizai.net/articles/-/10856>(閲覧2014年12月5日)

[20]ザイ・オンライン「日本のポイント制度は国際会計上は問題だらけ!?今後は消滅の可 能性も」<http://diamond.jp/articles/-/19346>(閲覧2014年12月30日)

[20]「ローソンは顧客データを活用してヘビーユーザーの満足度を高める」

<http://www.commercetime.net/2013/03/26/lawson-to-make-heavy-user-happy-by-use-of -customer-transaction-data/>(閲覧2014年12月30日)

[21] 「1割のヘビーユーザーが6割の売上を支える現実 5,200万人を超えるPonta会員デー

タを活かすローソンのCRM戦略」<http://markezine.jp/article/detail/17384>(閲覧2014年 12月30日)

[22]ユニクロ<http://www.uniqlo.com/jp/> (閲覧2014年8月2日)

[23]日経デジタルマーケティング「ソーシャル活用売上ランキング発表」

<http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmgp/20120220/227414/>(閲覧2014年8月2日) [24]ポイ探<http://www.poitan.net/ >(閲覧2014年12月30日)

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