p=a2 +b2 と表される素数 都築暢夫 平成17年度「先端数学」 7月15日(金)1時限
1.どの世界の問題か? 問題.p=a2 +b2 (a,b∈Z)と表される素数pを求めよ。 •2=12 +12 ,5=12 +22 ,13=22 +32 ,··· •3,7,11,···は表されない すべて求めるには? p=a2 +b2 =(a+bi)(a−bi)(iは虚数単位) ⇒Z[i]={x+yi∈C|x,y∈Z} (Gaussの整数環)での(因数)分解?
2.Gauss数体Q(i)のノルム写像 Gauss数体Q(i)={x+yi∈C|x,y∈Q} ノルム写像N:Q(i)→QN(x+yi)=x2 +y2 z=x+yiに対して、z=x−yiとおくと、N(z)=zz 命題.(1)N(z)=0⇔z=0 (2)N(zw)=N(z)N(w) (3)N(Z[i])⊂Z ≥0
3.Z[i]はU.F.D. 定理.Z[i]はEuclid整域(E.D.)、すなわち、 ∀z,w∈Z[i](w6=0),∃q,r∈Z[i] s.t.z=qw+r&N(r)<N(w). 特に、Z[i]は一意分解整域(U.F.D.) 定理. Euclid整域 (E.D.)⇒単項イデアル整域 (P.I.D.)⇒一意分解整域 (U.F.D.)
4.Z[i]の単数 命題.u∈Z[i]が単数⇔N(u)=1⇔u=±1,±i. ∵)uが単数⇔∃v∈Z[i]s.t.uv=1 ⇔N(u)N(v)=N(uv)=N(1)=1 ⇔N(u)=1. ¤
5.素数pのZ[i]での素元分解 命題.Z[i]において、素数pは次の(1)-(3)のいずれか。 (1)互いに共役かつ同伴(単数倍の意味)な2つの素元の積 (2)互いに共役かつ同伴でない2つの素元の積 (3)pは素元 ∵)p=α 1···αrとZ[i]にて素元分解 p2 =N(p)=N(α 1)···N(α r)とZにて因数分解 N(α 1)6=0,±1⇒1≤r≤2⇒可能性は(1)-(3)のみ (1),(2)の共役性:p=ππ0 N(π)N(π0 )=N(p)=p2 ⇒ππ=N(π)=p⇒π0 =π¤
6.素数pの運命 定理.p:素数 (1)p=2=12 +12 =(1+i)(1−i)=−i(1+i)2 特に、1+iは素元 (2)p≡1(mod4)⇔∃a,b∈Zs.t.p=a2 +b2 特に、a+biとa−biは互いに同伴でない素元 (3)p≡3(mod4)⇔pはZ[i]の素元 系.p=2またはp≡1(mod4)となる素数が問題の答え 前節の命題から、(3)の同値性を証明すればよい。 命題.p≡3(mod4)⇔剰余環Z[i]/(p)は整域
7.p元体上でのx2 +1の既約性 p6=2とし、Fp=Z/(p)はp元体とする。 Z[i]/(p)=Z[x]/(x2 +1,p)=Fp[x]/(x2 +1)に注意すると、 Z[i]/(p)が整域⇔F p[x]/(x2 +1)が整域 ⇔x2 +1がF p[x]で素元 ⇔∗ x2 +1がF p[x]で既約 ⇔F pに1の原始4乗根が存在しない ⇔∗∗ 46|p−1 ⇔p≡3(mod4) °⇔∗ :U.F.D.では「素元=既約元」 °⇔∗∗ :次の定理 定理.F pの乗法群F× pは巡回群
8.ちょっと不思議な関係 定理.p:素数(p6=2) N p=]{(x,y)∈F2 p|y2 =x3 −x},a p=|p−N p|/2 (1)p≡1(mod4)⇒∃b p∈Zs.t.p=a2 p+b2 p (2)p≡3(mod4)⇒a p=0 p≡1(mod4) pN pp−N pa pb p 57-212 137632 1715214 2939-1052 3739-216 41311054
pN pp−N pa pb p 53391472 6171-1056 7379-638 89791058 97791894 101103-2110
9.類体論へ 素数のZ[i]の中での素元分解は、「類体論」と呼ばれる整数論 の理論で説明される。一般には素元一意分解は成り立たない。 例えば、Z[√ −5]において、 6=2×3=(1+√ −5)(1−√ −5) となる。このような環でも、イデアルの素イデアルによる一意 的な分解が成り立ち、その言葉を用いて、最初の問題の一般化 が可能になる。 8章の定理は、楕円曲線の虚数乗法論という類体論と数論幾 何を関係付ける理論の例である。
°レポート問題.以下から2問解け。 1.2つ以上の定理、命題等に証明をつけよ。 (このノート証明は概略なので、言葉を補って証明せよ。) 2.8章の定理を大きな素数pまで(計算機を利用して)確か めよ。(可能なら証明をつけよ。) 3.p=a2 −ab+b2 (a,b∈Z)と表される素数を求めよ。 ヒント:環Z[ω](ω2 +ω+1=0)での素元分解を考えよ。 4.方程式y2 =x3 −1のp元体F pにおける解の組みの個数 と前問a,bの不思議な関係(8章の類似)を見つけよ。 5.感想を書け。
°夏休みに読むことを薦め本 1.高木貞治「解析概論」岩波書店 言わずと知れた解析学の古典。3年生ぐらいが読むと面白 さがわかる? 2.高木貞治「初等整数論講義」岩波書店 代数的整数論に関する古典的名著 3.Lang,S.,“Algebraicnumbertheory”,GTM110,Springer 類体論の入門書 4.久賀道郎「ドクトル・クーガの数学講座1・2」日本評論書 現代数学、特に整数論に関する解説的随筆