B 生命・
側面がある 4 1つは「感受的な美」である。これは,対 象の形態特性そのもの(形や色,旋律や音色など)から感
受する美であり,感性を働かせて認識するものである。2 つは「知覚的な美」である。これは,対象から何らかの意 味や解釈をすることで知覚する美であり,知性を働かせて 認識するものである。
このように,芸術科において,美的情操を養うためには,
感性と知性の両側面が必要不可欠である。感受したことを 基に,対象や行為を分析し,知覚的に認知することで,よ り感性の働きが強くなる。このことから,感性と知性が一 体化されて美的情操は生まれるものである。これは,美し いものに感動する心を育て,多様な美しさをもった作品を 尊重する心にもつながるものである。
そのために育むべき,3つの資質・能力は次のとおりで ある。まず創造性は,芸術に関わる材や作品のよさや美し さを感じ取り,表現をつくりだすことである。発想力や構 想力を発揮したり,作品に対して分析を行ったりしながら 美を追究していく際に, 「感受」と「知覚」の往還が行わ れる。次に協働性は,自他の表現のよさや美しさを感じ取 り,他者と共有する喜びを味わうことである。他者の感じ たことや作品の価値に対して,受容したり,互いの考えや 表現方法を調整してよりよい表現に高めたり,心を合わせ て表現したりすることのよさを実感することである。最後 に,省察性は,材や作品に多様に関わり,表現したり鑑賞 したりしていく活動を通して,自己の知識や技能的な伸び や,作品に対する新たな価値観を認識することである。こ の3つの資質・能力の関係を表すと次のようになる(図1)。
【図1 芸術科の目標構造図】
(3) 学年の目標
〔第1学年及び第2学年〕
① 材や作品の特徴を音楽的,造形的な視点から気付 き,音楽的や造形的な面白さや楽しさを味わうため の技能を身に付け,楽しく発想や構想をしたり,事 象や対象の楽しさを見いだしながら表現を工夫し たりすることができる。 (創造性)
② 他者との芸術活動や対話活動を通して,作品や表 し方などのよさや面白さの感じ方を共有し,一緒
に活動する楽しさを味わうことができる。 (協働性)
③ 思いや意図を明確にもち,材や作品に楽しく関わ り,自分の表し方の面白さや楽しさに気付き,自己 の変容を自覚することができる。 (省察性)
〔第3学年及び第4学年〕
① 材や作品の特徴を音楽的,造形的な視点の関わり 合いから気付き,音楽的や造形的なよさや面白さを 味わうための技能を身に付け,豊かに発想や構想を したり,事象や対象のよさを見いだしながら表現を 工夫したりすることができる。 (創造性)
② 他者との芸術活動や対話活動を通して,作品や表 し方などのよさや面白さの感じ方を共有し,一緒に つくりだす楽しさを味わうことができる。 (協働性)
③ 思いや意図を明確にもち,材や作品に進んで関わ り,自分の表し方のよさや面白さに気付き,自己の 変容を自覚することができる。 (省察性)
〔第5学年及び第6学年〕
① 材や作品の特徴を音楽的,造形的な視点の関わり 合いから多角的に理解し,音楽的や造形的なよさや 美しさを味わうための技能を身に付け,創造的に発 想や構想をしたり,事象や対象の美しさを見いだし ながら表現を工夫したりすることができる。
(創造性)
② 他者との芸術活動や対話活動を通して,作品や表 し方などのよさや美しさの感じ方を共有し,一緒に つくりだす喜びを味わうことができる。 (協働性)
③ 思いや意図を明確にもち,材や作品に主体的に関 わり,自分の表し方のよさや美しさに気付き,自己 の変容を自覚することができる。 (省察性)
3 内容構成
(1) 内容構成の考え方
内容は「発想・構想」 「分析」「技能」「調整」である。
「発想・構想」 「分析」 「技能」は主に創造性に関わる資質・
能力である。「受容・調整」は主に協働性に関わる資質・
能力である。芸術科は先述した通り現行教科の音楽科,図 画工作科と対応している。
【図2 芸術科の内容構成】
(2) 具体的な内容構成
現行教科の音楽科,図画工作科の内容は, 「表現」 「鑑賞」
「共通事項」で構成されている。活動別で見ると,音楽科 では「歌唱」 「器楽」 「音楽づくり」 「鑑賞」の4つの活動, 図画工作科では「造形遊び」「絵」「立体」「工作」 「鑑賞」 の5つの活動が示されている。このように,音楽科,図画 工作科の内容はともに「教科を特徴付ける活動」を基に設 定されている。しかし,芸術科においては,「美的情操の 育成」 「生活や社会の中の美」という視点で考え,活動ご とではなく,「発想・構想」 「分析」「技能」「受容・調整」 で構成し,育てたい資質・能力で整理する。こうすること で,音楽科,図画工作科に存在した, 「学校での学びが生 活や社会に転移しない」 「活動自体が目的になってしまう」 という課題を解決できると考える。その上で,活動を行っ ただけにとどまらず, 「美的情操の育成」 「生活や社会の中 の美」という視点で,音楽科,図画工作科の内容について 考え,教科の本質的な問いに迫っていく。このことにより, 活動に柔軟性をもたせ, 「美的情操の育成」 「生活や社会の 中の美」の視点で,内容を構成することができる。以上の 内容構成の視点は,内容が整理されることや,芸術科が目 指す美的情操を養い,生活や社会の中の美と豊かに関わる 姿がより具体化できる。
また,デビット・A・スーザ,トム・ピレッキ(2017) は,AI時代を生きる子どもたちに必要なSTEAM教育 の重要性を示している。その中で,芸術は,人間の経験に とっての基本であることを唱えており,芸術には次に挙げ る 7 つの能力を養えるとしている
5。
・好奇心を誘導する
・正確に観察する
・異なった形をした対象物を知覚する
・意味を構築し,観察したことを正確に表現する
・他者と効果的に仕事をする
・空間的に考える
・運動感覚的に知覚する
これらのことから,好奇心を誘導するための「発想力」や 正確に知覚できる「分析力」,正確に表現する「技能」,他 者との関わりである「協働的な調性」が重要であることが 分かる。そのため,芸術科では,活動ごとに内容を明記す るのではなく,育てたい資質・能力で内容を構成する。 以上の視点から,次のような学習活動や学習活動を考え ていく。
ア 音楽
ここでは,時間芸術である音楽を中心に取り扱う。例え ば,音色,リズムなどの音楽を形づくっている要素を含む 音や音楽への関わりを基に,感じたことを音楽的な表現活 動を中心に表したり,自分の思いや意図を伝えるための音 楽的な表現をつくりだしたり,曲や演奏のよさなどを見い
だし,曲を全体にわたって味わって聴くことが考えられる。 イ 造形
ここでは,空間芸術である美術やデザインなどを中心に
する資質・能力「発想・構想」「分析」 「技能」, 「協働性」
に関する資質・能力「受容・調整」に分け,それぞれの対 象を「音楽(表現及び鑑賞) 」「造形(表現及び鑑賞) 」に 整理し,現行の音楽科と図画工作科の特性を重視しながら,
知識や技能を焦点化したり,内容をスリム化したりしてい く。
2 ⽬標
(1) 教科の目標
感性を働かせながら,思いや意図を音楽や造形に表 現していく過程の中で,芸術的な見方・考え方を養うこ とで,美と豊かに関わる3つの資質・能力を次の通り育 成することを目指す。
(1) 芸術に関わる材や作品のよさや美しさを音楽 的,造形的な視点から感じ取り,思いや意図を実現 するための知識・技能を習得・活用しながら表現を つくりだすことができる。 (創造性)
(2) 自他の表現のよさや美しさを感じ取り,他者と 共有する喜びを味わうことができたり,感じたこ とを伝えたりしようとする。 (協働性)
(3) 自己の思いや意図を明確にもった活動を通し て,材や作品に多様に関わり,自分自身の伸びを自 覚することができる。 (省察性)
(2) 芸術的な見方・考え方と資質・能力の関係
「感性を働かせながら表現していく過程」とは,感動体 験や子供が感じたこと,思いついたイメージ,表したい思 いや意図を大切にしながら表現していく姿を想定してい る。この過程を通して,芸術的な見方・考え方を養う。芸 術的な見方・考え方とは,「材や作品などの対象を,音楽 的,造形的な視点で捉えること」及び「自己のイメージや 感情,生活や社会などと材や作品とを関連付け価値を認識 していくこと」である。このような見方・考え方を養うた めに,芸術科の本質的な問いとして「なぜ音楽作品や造形 作品は美しく感じるのだろうか」や「どのような表現方法 をとれば,思いや意図,よさや美しさを音楽や造形で表す ことができるのであろうか」のような,自己の感性や知性 を基にした方法を含むものを考えている。この本質的な問 いに対応する永続的な課題を積み重ねていくことで,芸術 的な見方・考え方が養われる。このように,芸術的な見方・
考え方を養うことは芸術科を学ぶ上で価値が高いもので ある。
芸術科の究極的な目標は「美と豊かに関わること」であ る。美と豊かに関わる上で「美的情操」は,重要な要素と 言える。美的情操とは,美しいものを美しいと感じ,美に 感動する心の働きである。
芸術科における「美」とは,思いや意図を実現した作品 や,これまでの芸術作品を知覚的に分析,解釈して味わう ことのできる価値のことである。 「美」には,次の2つの
側面がある
4。1つは「感受的な美」である。これは,対 象の形態特性そのもの(形や色,旋律や音色など)から感 受する美であり,感性を働かせて認識するものである。2 つは「知覚的な美」である。これは,対象から何らかの意 味や解釈をすることで知覚する美であり,知性を働かせて 認識するものである。
このように,芸術科において,美的情操を養うためには,
感性と知性の両側面が必要不可欠である。感受したことを 基に,対象や行為を分析し,知覚的に認知することで,よ り感性の働きが強くなる。このことから,感性と知性が一 体化されて美的情操は生まれるものである。これは,美し いものに感動する心を育て,多様な美しさをもった作品を 尊重する心にもつながるものである。
そのために育むべき,3つの資質・能力は次のとおりで ある。まず創造性は,芸術に関わる材や作品のよさや美し さを感じ取り,表現をつくりだすことである。発想力や構 想力を発揮したり,作品に対して分析を行ったりしながら 美を追究していく際に, 「感受」と「知覚」の往還が行わ れる。次に協働性は,自他の表現のよさや美しさを感じ取 り,他者と共有する喜びを味わうことである。他者の感じ たことや作品の価値に対して,受容したり,互いの考えや 表現方法を調整してよりよい表現に高めたり,心を合わせ て表現したりすることのよさを実感することである。最後 に,省察性は,材や作品に多様に関わり,表現したり鑑賞 したりしていく活動を通して,自己の知識や技能的な伸び や,作品に対する新たな価値観を認識することである。こ の3つの資質・能力の関係を表すと次のようになる(図1)。
【図1 芸術科の目標構造図】
(3) 学年の目標
〔第1学年及び第2学年〕
① 材や作品の特徴を音楽的,造形的な視点から気付 き,音楽的や造形的な面白さや楽しさを味わうため の技能を身に付け,楽しく発想や構想をしたり,事 象や対象の楽しさを見いだしながら表現を工夫し たりすることができる。 (創造性)
② 他者との芸術活動や対話活動を通して,作品や表 し方などのよさや面白さの感じ方を共有し,一緒
に活動する楽しさを味わうことができる。 (協働性)
③ 思いや意図を明確にもち,材や作品に楽しく関わ り,自分の表し方の面白さや楽しさに気付き,自己 の変容を自覚することができる。 (省察性)
〔第3学年及び第4学年〕
① 材や作品の特徴を音楽的,造形的な視点の関わり 合いから気付き,音楽的や造形的なよさや面白さを 味わうための技能を身に付け,豊かに発想や構想を したり,事象や対象のよさを見いだしながら表現を 工夫したりすることができる。 (創造性)
② 他者との芸術活動や対話活動を通して,作品や表 し方などのよさや面白さの感じ方を共有し,一緒に つくりだす楽しさを味わうことができる。 (協働性)
③ 思いや意図を明確にもち,材や作品に進んで関わ り,自分の表し方のよさや面白さに気付き,自己の 変容を自覚することができる。 (省察性)
〔第5学年及び第6学年〕
① 材や作品の特徴を音楽的,造形的な視点の関わり 合いから多角的に理解し,音楽的や造形的なよさや 美しさを味わうための技能を身に付け,創造的に発 想や構想をしたり,事象や対象の美しさを見いだし ながら表現を工夫したりすることができる。
(創造性)
② 他者との芸術活動や対話活動を通して,作品や表 し方などのよさや美しさの感じ方を共有し,一緒に つくりだす喜びを味わうことができる。 (協働性)
③ 思いや意図を明確にもち,材や作品に主体的に関 わり,自分の表し方のよさや美しさに気付き,自己 の変容を自覚することができる。 (省察性)
3 内容構成
(1) 内容構成の考え方
内容は「発想・構想」 「分析」「技能」「調整」である。
「発想・構想」 「分析」 「技能」は主に創造性に関わる資質・
能力である。「受容・調整」は主に協働性に関わる資質・
能力である。芸術科は先述した通り現行教科の音楽科,図 画工作科と対応している。
【図2 芸術科の内容構成】
(2) 具体的な内容構成
現行教科の音楽科,図画工作科の内容は, 「表現」 「鑑賞」
「共通事項」で構成されている。活動別で見ると,音楽科 では「歌唱」 「器楽」 「音楽づくり」 「鑑賞」の4つの活動,
図画工作科では「造形遊び」「絵」「立体」「工作」 「鑑賞」
の5つの活動が示されている。このように,音楽科,図画 工作科の内容はともに「教科を特徴付ける活動」を基に設 定されている。しかし,芸術科においては,「美的情操の 育成」 「生活や社会の中の美」という視点で考え,活動ご とではなく,「発想・構想」 「分析」「技能」「受容・調整」
で構成し,育てたい資質・能力で整理する。こうすること で,音楽科,図画工作科に存在した, 「学校での学びが生 活や社会に転移しない」 「活動自体が目的になってしまう」
という課題を解決できると考える。その上で,活動を行っ ただけにとどまらず, 「美的情操の育成」 「生活や社会の中 の美」という視点で,音楽科,図画工作科の内容について 考え,教科の本質的な問いに迫っていく。このことにより,
活動に柔軟性をもたせ, 「美的情操の育成」 「生活や社会の 中の美」の視点で,内容を構成することができる。以上の 内容構成の視点は,内容が整理されることや,芸術科が目 指す美的情操を養い,生活や社会の中の美と豊かに関わる 姿がより具体化できる。
また,デビット・A・スーザ,トム・ピレッキ(2017)
は,AI時代を生きる子どもたちに必要なSTEAM教育 の重要性を示している。その中で,芸術は,人間の経験に とっての基本であることを唱えており,芸術には次に挙げ る 7 つの能力を養えるとしている
5。
・好奇心を誘導する
・正確に観察する
・異なった形をした対象物を知覚する
・意味を構築し,観察したことを正確に表現する
・他者と効果的に仕事をする
・空間的に考える
・運動感覚的に知覚する
これらのことから,好奇心を誘導するための「発想力」や 正確に知覚できる「分析力」,正確に表現する「技能」,他 者との関わりである「協働的な調性」が重要であることが 分かる。そのため,芸術科では,活動ごとに内容を明記す るのではなく,育てたい資質・能力で内容を構成する。
以上の視点から,次のような学習活動や学習活動を考え ていく。
ア 音楽
ここでは,時間芸術である音楽を中心に取り扱う。例え ば,音色,リズムなどの音楽を形づくっている要素を含む 音や音楽への関わりを基に,感じたことを音楽的な表現活 動を中心に表したり,自分の思いや意図を伝えるための音 楽的な表現をつくりだしたり,曲や演奏のよさなどを見い
だし,曲を全体にわたって味わって聴くことが考えられる。
イ 造形
ここでは,空間芸術である美術やデザインなどを中心に
学習指導要領
Dalam dokumen
未来社会を創造する主体を育成する カリキュラム・マネジメントⅡ
(Halaman 82-94)