• Tidak ada hasil yang ditemukan

● 化学 と 生物 

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2023

Membagikan "● 化学 と 生物 "

Copied!
8
0
0

Teks penuh

(1)

紅(べに)は紅花(ベニバナ)の加工花から得られる赤色色 素であり,その数千年にも及ぶ用途は,動物性および植物性 繊維の染色,化粧品,医薬品および食用色素である.筆者ら は紅の前駆物質などベニバナ色素の化学構造を決めて以来,

ベニバナが紅を合成する仕組みについて興味をもってきた.

最近,花で発現する遺伝子を網羅的に明らかにするトランス クリプトーム解析を行うことで,紅の生合成にかかわる遺伝 子の候補が見えてきた.本稿では紅の化学的および生物学的 背景について,また最新の研究結果と周辺領域の研究とを合 わせて見えてくる紅の推定生合成経路について解説する.

ベニバナとベニバナ色素 1. 紅花の花の加工と紅の調製

ベニバナ( )はその名「紅花」

とは裏腹に黄色い花を咲かせる(図

1

.総苞に包まれ

て成長した集合花は,開花直前に一気に花の基部が伸張 し総苞をこじ開け,外部に細長い黄色の花を露わにし,

蕾がなくなるまで毎日新しい花が現れる.個々の花は開 花後徐々に花弁の基部から赤みを帯び,やがて花全体へ 拡がり赤黒くしおれる.このとき生じる赤色素は紅と化 学的に同一だが,赤黒い花は収量も品質も優れないため 紅の生産には用いない.

花は,緑の総苞の上部にポンポンがついているように 見えるとき収穫する.これを天日で乾燥させたオレンジ 色の乾燥花が「乱花」で,主に生薬として用いる.収穫 花を日陰に数日間放置し発酵後,形成して天日で乾燥し たものが「紅餅」で,紅の生産に用いる(図1)

紅の生産は,まず紅餅を水で繰り返し洗浄し,水溶性 黄色色素を十分に取り除く.次いで,残渣に残った紅を 草木灰の灰汁で抽出する.この暗赤色の抽出液に烏梅汁

(梅の燻製の熱湯抽出液)を加減して加えた鮮赤色の液 で青苧などの繊維を染色する.染色した繊維を水洗後,

再度灰汁で抽出すると紅の純度が高まる.この抽出液に 烏梅汁を十分に加えると紅が沈殿するので,これを絹二 重で越して泥状の紅を得る.

2. カーサミンとプレカーサミン

紅の化学的本質はカーサミン(カルタミン)というフ

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

【解説】

Transcriptomic Study of Biosynthetic Pathway of Carthamus  Pigments: Exploring Genes Related to Carthamin Biosynthesis Kohei KAZUMA, Hiromichi KENMOKU, Junichi SHINOZAKI, 

*1 名古屋大学大学院情報学研究科,*2 帝京科学大学生命環境学部,

*3 徳島文理大学薬学部,*4 昭和薬科大学薬学部

ベニバナ色素生合成経路の 

トランスクリプトーム解析による解明

紅の生産にかかわる遺伝子に迫る

数馬恒平 * 1 , 2 ,兼目裕充 * 3 ,篠崎淳一 * 4

(2)

ラボノイド系の赤色色素である(1〜3)(図

2

.カーサミン

はベニバナ色素に特徴的なキノカルコン -グルコシド

(QCG)骨格をもつQCG二量体で,左右の発色団が中央 のメチン炭素を介して共役しており,赤色の発色に貢献 している.全合成はまだ達成されていないが,最近の全 合成研究に注目したい(4)

紅餅の調製を通して,カーサミンの前駆物質プレカー サミンが,植物自身の酸化酵素あるいは微生物の作用で カーサミンへ変換される(5, 6)(図2)

.プレカーサミンは

二つのQCG骨格で置換された酢酸の構造を有しており,

酸化的脱炭酸反応により左右の発色団間に不飽和のメチ ン炭素が生じる.食品添加物のうち,カーサミンを主成 分とするものをベニバナ赤色素,水で抽出される水溶性 黄色色素をベニバナ黄色素という(7)

3. 新鮮花と加工花,花色変異体間でフラボノイド組成 が異なる

キノカルコン -グルコシド類(QCGs)はベニバナに 特異な化合物群で十数種類知られている.カーサミン以 外はすべて黄色である.QCGsの構造の多様性は乱花で 図1ベニバナの花の成長,収穫および加工

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

紅と藍

紅と藍は,化学染料が世界を席巻する以前に,世 界で最も利用された染料の代表格である.紅も藍も 化学的概念の萌芽すら誕生する以前,有史以前に,お そらく極めて経験的に製法および利用法が考案され,

交易によって原料植物の種子と生産技術が世界各地 に伝播した.紅はベニバナの花,藍はハマタイセイ やタデアイなど複数の植物の葉から得られる.

紅は遅くとも紀元前2500年頃には,藍はさらに数 千年遡って利用されていたと言われるが,英国ロン ドンの大英博物館を訪れれば,紀元前1500年頃の古 代エジプトのミイラを覆っていた,紅染や藍染が施 されたリネンの展示を見ることができる.

人類にとって紅と藍は,昔も今も繊維,食品,およ び身体装飾(ルージュやタトゥーなど)用の染料,薬 としての実用品である.紅も藍も,植物が基礎代謝 から派生して二次的に酵素反応で段階的に生産(生合 成)する二次代謝産物で,その過程は遺伝子が支配し ていると理解されたのは,この100年くらいの間のこ とだ.

紅はカーサミン,藍はインディゴという色素化合 物だが,偶然にも両植物はこれらの前駆物質を生産

して蓄積する.ベニバナは黄色のプレカーサミンを,

インディゴ産生植物は無色のインドキシル配糖体を 蓄積するので,ベニバナの花は黄色でインディゴ産 生植物の葉は緑色である.植物の老化に伴いそれぞ れそれなりに色素化合物は生じるが,人類は前駆体 を蓄積する新鮮な花や葉を積極的に「発酵」加工し て色素化合物を高効率に得る技術を編み出した.微 生物や空気により,プレカーサミンを酸化し,イン ドキシル配糖体から糖を切断して酸化的にインドキ

シルを二量体化するのだ.「紅餅」および「すくも」

は,それぞれカーサミンおよびインディゴを高含有 するよう調整された花および葉の加工品である.

植物種間で共通の二次代謝経路がある一方,ある 植物で特異的に生産される有用物質の生合成がどこ で派生するのかは各論であり,不明な点が多い.ベ ニバナではわれわれのトランスクリプトーム解析を 用いた研究により,ようやくメスが入れられたとこ ろである.天然色素は数千年という利用の歴史が人 体に対する安全性を担保しており,近年ますますそ の重要性が高まっている.伝統的色素の生合成関連

酵素遺伝子が,育種・食品・化粧品・医薬品など

種々の分野で応用生物学的に産業利用され,われわ れの日常生活が天然色素を用いた製品で彩られるこ とを期待している.

コ ラ ム

(3)

大きく十数種類のQCGが検出されるが,新鮮花では主 成分としてヒドロキシサフロールイエロウAとサフ ロールイエロウBが,マイナー成分としてアンヒドロサ フロールイエロウB,プレカーサミンおよびカーサミン などが検出される程度の単純さがあり(8)

,乱花中には乾

燥加工中に二次的に生じたQCGsがあることを示唆して いる.

ベニバナには,花色が黄色で赤くならない黄花系統,

花色が白の白花系統がある.これらの花色変異型に対し て,カーサミン生産系統をここでは赤花系統と呼ぶこと にする.花色の変異型は,QCGsの合成に関連する複数 の遺伝子が変異して生じたと考えられる.黄花系統はプ レカーサミンおよびカーサミンを含まない以外QCGsの 組成もフラボノール組成も赤花系統と同じである(8)(図 2)

.白花系統ではQCGsと6-ヒドロキシケンフェロール

配糖体を含まず,フラボノール配糖体を含んでいる(8)

QCGsの4位と6-ヒドロキシフラボノールの6位はフラ ボノイドA環の相同な部位であり,赤花および黄花の QCGs生産系統のみがこの部位に水酸基をもつ.このこ とを考慮して推定生合成経路が提案されたが(8)

,十分に

遺伝的な背景に迫れる結果ではなかった.そこで,筆者 らは花色変異の遺伝的背景を考慮したトランスクリプ トーム解析を行った.

次世代シーケンサーを用いたベニバナのトランスク リプトーム解析

1. 解析戦略

次 世 代 シ ー ケ ン サ ー(next generation sequencer; 

NGS)を用いたトランスクリプトーム解析(RNA-seq)

は,個々の未知遺伝子の配列情報に加え,これらの発現

量をも明らかにすることができる.筆者らはまず,各花 色系統の花のフラボノイド組成の差異(図2)は,フラ ボノイド生合成関連遺伝子の(変異を含む)発現量の差 異に依存すると仮定し,各花色系統の花と赤花系統の葉 のmRNAを対象としたRNA-seqと遺伝子発現パターン のクラスタリング解析およびアノテーションを行うこと とした.なお,ベニバナの花のトランスクリプトーム解 析には前例があるが(9〜11)

,その後フラボノイド生合成

関連酵素遺伝子のクローニングは報告されていない.

2. サンプル調製とシーケンス

現 時 点 で 代 表 的 な NGS は Ilumina 社 の HiSeq/

NextSeq/MiSeqシリーズ,Thermo Fisher Scientific社 のIon proton/Ion S5シリーズおよびPacific Bioscience 社のPacBio RS ll/PacBio Sequelシリーズがある.これ らの機器は,シーケンスの原理や塩基配列の読める長 さ,正確性などについてそれぞれ特徴があり,機器自体 の発展や試薬性能の向上も日進月歩である.筆者らがベ ニバナのRNA-seqに用いたのは,Ilumina社のGenome  Analyzer IIxであり,以下のサンプル調製の過程は現行 のシリーズでもほぼ同じである.各RNAサンプルの抽 出は市販のRNA抽出キットを数種試し,Agilent社の 2100 Bioanalyzerなどで評価の良いものを選ぶのが理想 的である.RNAの抽出・品質評価の後は,使用する試 薬のマニュアルに沿ってmRNA精製,逆転写,断片化,

アダプター配列の付加などを進め,サンプル調製が完了 する.現在では,受託解析でも読み取り塩基長100 bp 以上でcDNA断片の両端を読むペアエンドシーケンス が主流であるが,筆者らは当時の主流であった100 bp のシングルエンドシーケンスを行った.

図2変異の遺伝的背景を示唆する花色変異 体の色素構成

破線丸内は6-ヒドロキシケンフェロールと QCG骨格の相同な部位の水酸基を示す.

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

(4)

3. シーケンスデータの解析環境

非モデル生物のトランスクリプトームを解読する場合 には,参照配列がないため,NGSで得られたリード断 片を新規( )に張り合わせ(アセンブル)して 元の配列を再構成する必要がある.トランスクリプトー ムの アセンブルのためのソフトウェア(アセン ブラー)などは無償配布で使えるものが数多く開発され ており,国立遺伝学研究所ではこれらを無償で使用でき るクラウド型データ解析プラットフォームを整備してい る(12)

.シーケンスデータを外部に出さないで解析した

い 場 合 は 解 析 環 境 を 自 前 で 整 え る 必 要 が あ る.

WindowsやMac上で動作する市販ソフトウェアの例と して,CLC bio社/QIAGEN社のCLC genomicsシリー ズは,リード断片に入り込んだアダプター配列や品質の 悪い部分配列の除去といったトリミングから,アセンブ ルおよび相同性検索や遺伝子発現量の可視化までも行う ことができる.一方,無償配布のプログラム群はそれぞ れの開発者が管理しており,そのほとんどはコンピュー ター OSのLinux上でコマンドラインから実行する必要 がある.これらのプログラムを使用するためにはLinux に加えてPerl, Ruby, Rといったスクリプト言語の知識 も少々必要ではあるが,プログラムの導入・使用方法も SEQanswers(13)やTogoTV(14)で解説されており,敷居は 年々低くなってきている.現在,筆者らのデータ処理 は,LinuxディストリビューションのUbuntu(15)を導入 した64 bit市販コンピュータ(CPU: 4コア8スレッド,

メモリ:32 G)に無償配布されている複数のプログラム を導入して行っている.

4. シーケンスデータ処理とアセンブル

NGSによって得られたデータは配列とクオリティ値 を一つにまとめたFASTQファイルとして取り扱われ る.アセンブラーによる アセンブルを行う前 に,FASTQファイルを丹念かつ慎重にトリミングを行 うことで,アセンブラーで得られるContig配列の長さ が飛躍的に伸びることを筆者らは経験している.筆者ら は,tagcleaner.pl(16)プログラムを用いて両末端のアダプ ター配列,クオリティ値の悪い両末端部分配列,塩基配 列がNとされた両末端配列を複数回除去するように設 定したbashスクリプトを作成・実行して,トリミング を行っている.

トランスクリプトーム用のアセンブラーではTrini- ty(17)がよく使われているが,得られたContig配列から 目的候補遺伝子を抜き出してみると,一つの遺伝子に由 来すると思われる複数の配列が得られている場合が多

い.これは複数の転写産物(splice variants)が存在し ている場合に加え,多型や遺伝子重複といった生物学的 な理由とシーケンスエラーに起因すると思われる断片化 したContigを含んでいるためである.P450酵素遺伝子 や糖転移酵素遺伝子といったファミリーが大きい遺伝子 の機能解析を行いたい場合は,この断片化したContig 同士を探して張り合わせる作業で苦労する.筆者らはこ れをなるべく省力化するため,SEQanswersで初期に提 案のあった以下のようなアセンブル方法をとることで良 好な結果を得ることができた.ABySS(18)は現在でも並 列処理化やペアエンドシーケンス,トランスクリプトー ムへの対応など更新が続いているゲノム用アセンブラー である.このプログラムで用いられているアルゴリズム で重要なパラメータに -merがあり, の値はアセンブ ルの際の「のりしろ」となる塩基配列の長さに相当す る. 値を大きくすると,高発現の長いContigが得られ る傾向にある.一方, 値を小さくすると低発現の配列 も拾われるが,得られるContigは断片化する.Trinity は

=25を -merとして固定しているのに対し,筆者ら

はABySSを用いて

=25〜95でアセンブルを行い,多

数の重複するContigを得るという戦略を採用した.こ こで得られたContigは集合和としてさらに貼り合わせ る必要がある.NGSの登場以前にEST(expressed se- quence tag)配列の末端同士を貼り合わせるために CAP3(19)というプログラムが用いられており,筆者らは CAP3を内部で用いて並列処理化されたPCAP(19)の使用 を新たに検討し,この張り合わせで良好な結果を得るこ とができた.さらにCD-HIT-EST(20)を用いた重複配列の 統合を行うことで冗長性のないSupercontigを得ること ができた.筆者らは,ABySSによる複数の 値によるア センブルからPCAPおよびCD-HIT-ESTによる統合まで の工程をbashスクリプトでまとめて実行している.ま た,次に述べる遺伝子発現パターンのクラスタリング解 析のために,共通するリファレンス配列が必要となるこ とから,赤,黄および白のベニバナ花弁と赤花ベニバナ の葉についてPCAP実行後に得られたContigすべてを まとめて投入してCD-HIT-ESTを実行し,得られたもの をリファレンス配列として用いるUnigene配列とした.

5. 遺伝子発現パターンのクラスタリング解析とアノ テーション

花色の違いを利用してカーサミンの生合成関連遺伝子 群を絞り込むために,各花色系統間の遺伝子発現量を比 較することとした.Bowtie2(21)はFASTQファイルなど のリード配列をリファレンス配列に高速でマッピング

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

(5)

(貼り付け)を行い,その数をカウントするプログラム である.ただし,このカウント数を直接比較はできな い.なぜなら,サンプルごとに得られたリード総数は異 なり,また,遺伝子の配列長に応じてマッピングされる リード数は増えるからである.このカウント数を比較で きるようにすることを正規化と言い,RPKM(reads  per kilobase per million mapped reads)値がよく用い られる.前述のUnigene配列はUTR(非翻訳領域)配 列を含み,そのままマッピングを行うと正確なカウント 数を得ることができないことから,TransDecoder(22)に よるORF(Open Reading Frame)配列の切り出しを行 い,得られたUnigene-ORF配列をリファレンス配列に 用いてマッピングを行った.TransDecoderはORF配列 を切り出す際にblastp検索結果およびPfamデータベー

スを対象としたドメイン・モチーフ検索結果を用いるた め,この過程でUnigene-ORF配列のアノテーション

(意義づけ,注釈)も同時に行うことになる.赤,黄お よび白花系統の花弁と赤花系統の葉のそれぞれのマッピ ングカウント数からeXpress(23)により遺伝子発現量を RPKM値として算出し,MeV(24)ツールによりlog2でク ラスタリング後に可視化した結果の一部を図

3

に示す.

CHS(カルコン合成酵素)

,P450酵素,UGT(糖転移酵

素類)

,酸化還元酵素,転写因子等の各候補遺伝子配列

において,赤花のみ,または赤花と黄花で強く発現して いるものを明らかにできたことから,これらが図2に示 す各花色系統間のフラボノイド組成にかかわる遺伝子発 現の差異を表していると期待している.現在ここで得ら れた候補遺伝子を中心に機能解析を進めている.

生合成関連酵素遺伝子のクローニングとQCG推定 生合成経路

1. カルコン合成酵素遺伝子のクローニング

トランスクリプトーム解析および発現解析の結果を  受 け て,筆 者 ら は ま ずIII型 ポ リ ケ タ イ ド 合 成 酵 素

(PKSIII)をクローニングした(25)

.PKSIIIは分子量約

40 kDaのサブユニットからなるホモダイマー酵素であ り,植物においてはフラボノイド,カテキン(茶)やカ ンナビノイド(大麻)などさまざまな二次代謝産物の生 合成にかかわっている.これまでに最もよく研究がなさ れているPKSIIIはカルコン合成酵素(CHS)である.

CHSは1分子の -クマロイルCoAを開始基質として,3 分子のマロニルCoAに由来するC2単位を順次縮合の 後,クライゼン型の環化反応が進行して,C6‒C3‒C6構 造のフラボノイド骨格(ナリンゲニンカルコン)を生成 する(26, 27)

PKSIIIの う ち 赤 花 系 統 の 花 で 高 発 現 が 見 ら れ た , 

,および について赤花系統の花よりクロー

ニングした.これら3種の遺伝子のORF(open reading  frame)は約1,188 bpであり,約396残基のタンパク質

(約40 kDa)をコードしていた. , 

,および

はアミノ酸配列で81〜89%と高い相同性を示した.ま た,系統樹解析の結果,CtCHS1, 2および3はCHS/STS

(スチルベン合成酵素)クラスターに入ることが明らか となった.植物由来PKSは,大腸菌のケトアシルキャ リアタンパク合成酵素III(FabH)を外群に選定するこ とで,CHS/STSクラスターとそのほかのPKSクラス ターに二分できることが知られている(28)

.さらに,

CtCHS1, 2および3にはカルコン合成酵素で高度に保存 されている触媒3残基(システイン164,フェニルアラ 図3各花色系統における遺伝子発現量の比較

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

(6)

ニン215およびアスパラギン336)やそのほかの重要な アミノ酸残基もすべて保存されていた(25)

大腸菌で発現させたこれらの組換えタンパク質につい て酵素活性を確認したところ,CtCHS1, 2, および3はい ずれも -クマロイルCoAを開始基質として生成物を与 えることが明らかとなった.これら組換えタンパク質の 基質特異性についても検討しており, -クマロイルCoA 以外の芳香族アシルCoA(カフェオイル,フェルロイ ル,およびシナポイルCoA)も基質として認識するこ とがわかった.これらのことから , 

,および

は典型的な であることが明らかになった.ベニバ ナの花からフラボノイド生合成関連遺伝子がクローニン グされたのはこれが最初の例である.

赤花系統の花には今回クローニングおよび機能解析に 成功した , 

,および のほかにも,高発現して

いるPKSIIIがある.その中の2種( およ び )については酵素機能を解析中であり,QCG生合成 との関連を調べている.

2. フラボノイド生合成とキノカルコン生合成の接点 QCG骨格の特徴は,4位の -グルコシル基および水酸 基,およびヘミキノン化カルコンA環である(図2)

これらの特徴を与える酵素反応について考察する(図

4

.まず -グルコシルトランスフェラーゼ(CGT)遺

伝子は,最近コムギなどからクローニングされており一 般的に2-ヒドロキシフラバノン(希にフラボン)を基質

とする(29〜34)

.ベニバナでも同類のCGTが関与するとす

れば,2-ヒドロキシナリンゲニンの合成にかかわるフラ ボノイド2位水酸化酵素(F2H)の関与は濃厚だが,ベ ニバナは -グリコシル化フラボンを生産しない.

QCG4位水酸基とフラボノイド6位水酸基は相同な位 置であり,QCG生産系統のみがこの部位に水酸基をも つことは,フラボノイド6位水酸化酵素(F6H)による ナリンゲニンの6位水酸化はQCG生合成初期段階の必 須の反応と言える.これを踏まえれば,CGTの基質と して2-ヒドロキシナリンゲニンでは6位への -グルコシ ル基導入後プロトン移動によりフラボノイドA環が再 芳香族化されるのに対し,2,6-ジヒドロキシナリンゲニ ンが基質の場合は再芳香族化せずヘミキノン型A環を 形成すると推測できる.なお,シトラスから2-ヒドロキ シフラバノンに2つの -グリコシル基を転移するCGT が最近報告されている(34)

QCG骨格の形成が解明されたとしても,プレカーサ ミンへ至る過程は謎が残る.アンヒドロサフロールイエ ロウBが重ピリジン溶液中でカーサミンを生じたが,直 鎖糖部分の酸化的切断の機構は不明である(8)

.ベニバナ

の培養細胞が,サフロールイエロウBの分解物であるサ フロールメタボリンとグリオキシル酸からプレカーサミ ン経由でカーサミンを培地上に生産したが(35)

,細胞外

での変換反応と生合成経路が同じ必然性はない.

おわりに

紅(カーサミン)は古来より世界中で利用された植物 由来色素の一つであり,その生合成経路の解明は産業的 に価値あることと考えている.いくつかのトランスクリ プトーム解析の結果がいまだQCGsを含むフラボノイド 生合成関連遺伝子のクローニングに結びついていない中 で,筆者らがカルコン合成酵素遺伝子 , 

,およ

び をクローニングして機能解析した意義は大きい.引

図4カーサミン推定生合成経路

CHI,カルコンフラバノンイソメラーゼ;

F2H, F3H,およびF6H,フラボノイド2, 3 および6位水酸化酵素;FLS,フラボノール 合成酵素;CGT,およびOGT,  - および - グリコシル基転移酵素.

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

(7)

き続き絞り込まれた候補遺伝子のクローニングと機能解 析を進めている.フラボノイド生合成研究の最近の進捗 を踏まえてQCG推定生合成経路について述べたが,こ れはP450やCGTなど候補遺伝子のクローニングと機能 解析を進めるなかで確認されることである.近い将来 QCG生合成経路の全体像が明らかになることを期待し ている.

文献

  1)  C. Kuroda:  , 1930, 752 (1930).

  2)  H. Obara & J. Onodera:  , 8, 201 (1979).

  3)  Y. Takahashi, N. Miyasaka, S. Tasaka, I. Miura, S. Urano,  M. Ikura, K. Hikichi, T. Matsumoto & M. Wada: 

23, 5163 (1982).

  4)  T.  Hayashi,  K.  Ohmori  &  K.  Suzuki:  , 19,  866  (2017).

  5)  T.  Kumazawa,  S.  Sato,  D.  Kanenari,  A.  Kunimatsu,  R. 

Hirose, S. Matsuba, H. Obara, M. Suzuki, M. Sato & J.-i. 

Onodera:  , 23, 2343 (1994).

  6)  K.  Kazuma,  E.  Shirai,  M.  Wada,  K.  Umeo,  A.  Sato,  T. 

Matsumoto  &  T.  Okuno:  ,  59, 1588 (1995).

  7)  日本食品化学研究振興財団:既存添加物名簿収載品目  リスト,http://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/a11c  0985ea3cb14b492567ec002041df/c3f4c591005986d949256fa  900252700?OpenDocument, 2014.

  8)  K.  Kazuma,  T.  Takahashi,  K.  Sato,  H.  Takeuchi,  T. 

Matsumoto  &  T.  Okuno:  ,  64, 1588 (2000).

  9)  H. Li, Y. Dong, J. Yang, X. Liu, Y. Wang, N. Yao, L. Guan,  N. Wang, J. Wu & X. Li:  , 7, e30987 (2012).

10)  H. Lulin, Y. Xiao, S. Pei, T. Wen & H. Shangqin: 

7, e38653 (2012).

11)  X. Liu, Y. Dong, N. Yao, Y. Zhang, N. Wang, X. Cui, X. Li,  Y.  Wang,  F.  Wang,  J.  Yang  :  , 16,  25657 (2015).

12)  DDBJ:  DDBJ  Read  Annotation  Pipeline,  https://p.ddbj.

nig.ac.jp/pipeline/, 2017.

13)  SEQanswers: SEQanswers: the next generation sequenc- ing community, http://seqanswers.com/, 2017.

14)  DBCLS: TOGO TV, http://togotv.dbcls.jp/, 2017.

15)  U. J. Team: Ubuntu, https://www.ubuntulinux.jp/, 2017.

16)  R.  Schmieder,  Y.  Lim,  F.  Rohwer  &  R.  Edwards: 

TagCleaner:  for  cleaner  sequences,  http://tagcleaner.

sourceforge.net/index.html, 2013.

17)  B.  Haas:  RNA-Seq  De  novo  Assembly  Using  Trinity,  https://github.com/trinityrnaseq/trinityrnaseq/wiki,  2017.

18)  A. Raymond: ABySS: Assembly By Short Sequences̶A  , parallel, paired-end sequence assembler, http://

www.bcgsc.ca/platform/bioinfo/software/abyss, 2016.

19)  X.  Huang:  CAP3  and  PCAP  and  PCAP.Solexa,  http://

seq.cs.iastate.edu/, 2017.

20)  W. Li: CD-HIT, http://weizhongli-lab.org/cd-hit/, 2017.

21)  B.  Langmead:  Bowtie  2:  Fast  and  sensitive  read  align- ment,  http://bowtie-bio.sourceforge.net/bowtie2/index.

shtml, 2017.

22)  B.  Haan:  TransDecoder  (Find  Coding  Regions  Within 

Transcripts), https://transdecoder.github.io/, 2015.

23)  A.  Roberts:  eXpress:  Streaming  quantification  for  high- throughput  sequencing,  https://pachterlab.github.io/

eXpress/overview.html, 2017.

24)  A.  Saeed:  MeV,  https://sourceforge.net/projects/

mev-tm4/, 2017.

25)  J. Shinozaki, H. Kenmoku, K. Nihei, K. Masuda, M. Noji,  K. Konno, Y. Asakawa & K. Kazuma: 

11, 787 (2016).

26)  M. B. Austin & J. P. Noel:  , 20, 79 (2003).

27)  森田洋行,阿部郁朗:化学と生物,47, 772 (2009).

28)  I.  Abe,  Y.  Takahashi,  H.  Morita  &  H.  Noguchi: 

268, 3354 (2001).

29)  M. Brazier-Hicks, K. M. Evans, M. C. Gershater, H. Pus- chmann, P. G. Steel & R. Edwards:  , 284,  17926 (2009).

30)  M. L. Falcone Ferreyra, E. Rodriguez, M. I. Casas, G. La- badie,  E.  Grotewold  &  P.  Casati:  , 288,  31678 (2013).

31)  Y. Nagatomo, S. Usui, T. Ito, A. Kato, M. Shimosaka & G. 

Taguchi:  , 80, 437 (2014).

32)  D. Chen, R. Chen, R. Wang, J. Li, K. Xie, C. Bian, L. Sun,  X. Zhang, J. Liu, L. Yang  : 

54, 12678 (2015).

33)  Y. Hirade, N. Kotoku, K. Terasaka, Y. Saijo-Hamano, A. 

Fukumoto & H. Mizukami:  , 589, 1778 (2015).

34)  T. Ito, S. Fujimoto, F. Suito, M. Shimosaka & G. Taguchi: 

91, 187 (2017).

35)  J.-i.  Onodera,  K.-i.  Kawamoto,  S.  Matsuba,  S.  Sato,  H. 

Kojima,  Y.  Kaneya  &  H.  Obara:  , 24,  901  (1995).

プロフィール

数馬 恒平(Kohei KAZUMA)

<略歴>1994年弘前大学農学部生物資源 科学科卒業/2000年岩手大学大学院連合 農学研究科博士課程修了/同年科学技術振 興事業団科学技術特別研究員/2003年日 本学術振興会特別研究員/2006年青森県 グリーンバイオセンター研修生/2009年 富山大学和漢医薬学総合研究所客員助教

(常勤)/2017年名古屋大学大学院技術補 佐員および帝京科学大学客員研究員,現在 に至る<研究テーマと抱負>フィールド ワークを基盤とした有用天然有機化合物の 探索と生合成研究<趣味>渓流釣り 兼目 裕充(Hiromichi KENMOKU)

<略歴>1997年山形大学大学院農学研究 科修士課程修了/同年高田製薬株式会社入 社/2003年岩手大学大学院連合農学研究 科博士課程修了/2004理化学研究所植物 科学研究センター基礎科学特別研究員/

2007年徳島文理大学薬学部(生薬研究所 兼任)助教/2015年同准教授,現在に至 る<研究テーマと抱負>薬用有用天然物の 生合成経路解析と利用/14-3-3タンパクを 制御する低分子化合物の探索<趣味>釣り

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

(8)

篠崎 淳一(Junichi SHINOZAKI)

<略歴>2001年昭和薬科大学薬学部薬学 科卒業/2006年東京大学大学院薬学系研 究科博士課程修了/同年昭和薬科大学助 手/2007年 同 助 教,現 在 に 至 る<研 究 テーマと抱負>シダ植物における二次代謝 産物の生合成<趣味>読書

Copyright © 2017 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.55.767

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

Referensi

Dokumen terkait

主はモーセとアロンに仰せになった。もし、皮膚に湿疹、斑点、疱疹が生じて、皮膚病の疑いがある場合、その人 を祭司アロンのところか彼の家系の祭司の一人のところに連れて行く。祭司はその人の皮膚の患部を調べる。患部 の毛が白くなっており、症状が皮下組織に深く及んでいるならば、それは重い皮膚病である。祭司は、調べた後そ