• Tidak ada hasil yang ditemukan

サイトカイニンが器官間シグナルとして働く仕組み - J-Stage

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2023

Membagikan "サイトカイニンが器官間シグナルとして働く仕組み - J-Stage"

Copied!
2
0
0

Teks penuh

(1)

421

化学と生物 Vol. 53, No. 7, 2015

サイトカイニンが器官間シグナルとして働く仕組み

側鎖修飾と輸送によるサイトカイニン作用の調節

いわゆる高等植物は,水や無機養分の吸収を担う根と 光合成を行う葉に代表される役割の異なる複数の器官か ら構成される.これらの器官を統合し,個体として生存 環境や発達段階に最も適したバランスを維持するために は,器官間の緊密なコミュニケーションが欠かせない.

心臓や血管などの循環系をもたない植物では,主に道管 と師管を介して長距離の情報のやり取りを行う.道管は 根圧と蒸散流に従った根から地上部への水と物質の輸送 経路であり,師管はソース器官からシンク器官(たとえ ば地上部から根)への物質輸送を担う組織である.代謝 物,small RNA, タンパク質,ペプチドホルモン,植物ホ ルモンなどがシグナルの実体として報告されている(1)

このようなシグナルの一つに,細胞分裂・分化の制 御,栄養応答,老化抑制,イネの着粒数の制御など植物 の成長・発達に広くかかわる植物ホルモン・サイトカイ ニンがある(2).このホルモンは生産された細胞やその近 傍の細胞に対して細胞間のシグナルとして作用するだけ でなく,1962年にはその活性が道管液中から検出され ており(3),古くから器官間シグナルとしても働くと考え られてきた.

サイトカイニンの基本骨格はアデニンに側鎖がついた 構造だが,側鎖構造が異なる複数の分子種が存在する.

実験モデル植物のシロイヌナズナでは,イソペンテニル アデニン(iP)とその側鎖が修飾されたトランスゼアチ ン(tZ)が主要な分子種である(図1A).興味深いこと に,iP型とtZ型のサイトカイニンは異なった空間的分 布を示す.iP型は師管液中の主要な分子種であるのに 対し,道管液中のサイトカイニンの大部分はtZ型であ ることから,iP型とtZ型は異なったメッセージを伝える 役割をもつ可能性が指摘されていた(4).しかし,それら の作用の違いが明らかになったのはごく最近である(5)

筆者らは,側鎖修飾の違いがサイトカイニン作用にど のような影響を及ぼすのかを明らかにするため,側鎖修 飾ができない変異体を作出した.具体的には,側鎖の水 酸化を担う酵素遺伝子 を同定し,この遺伝子 の破壊株 を作製した.この破壊株では,葉や花 茎などの地上部の成長の著しい悪化が観察された.この 表現型はtZを与えると回復するが,iPは全く効かな

かった(5).このことから,tZとiPは作用が異なる,つ まり伝えるメッセージが違うことが明らかになった.ま た, の発現部位は主に根の維管束であるにも かかわらず, の根では表現型が見られなかった ことから(5),tZ型サイトカイニンは根で合成され,道管 を介して輸送されて,地上部特異的に作用することが示 唆された(図1B).tZ型サイトカイニンは,根から地上 部への器官間の成長シグナルであると言えるであろう.

tZ型サイトカイニンが器官間シグナルとして働くた めには,道管を介した輸送も適切に制御される必要があ る.道管液は基本的に根圧と蒸散流に従って流れるた め,輸送制御は道管への積み込みの過程で行われると考

図1サイト力イニンの側鎖修飾と長距離輸送による地上部成 長の制御

(A) CYP735Aによるトランスゼアチンの生合成.実際は,イソペ ンテニルアデニンヌクレオチドの側鎖が水酸化され,トランスゼ アチンヌクレオチドが作られるが,ここでは簡略化してある.(B)  CYP735AとABCG14を介したサイトカイニン作用の制御による 器官間コミュニケーションモデル.

今日の話題

(2)

422 化学と生物 Vol. 53, No. 7, 2015

えられるが,そのメカニズムは不明であった.最近筆者 らは,この過程にかかわる遺伝子 を同定した(6). この遺伝子が変異すると,地上部ではtZ型サイトカイ ニンが欠乏するのに対し,根では高蓄積が見られた.詳 細な解析の結果,ABCG14は根における道管へのサイト カイニンの積み込みにかかわることにより,根から地上 部へのサイトカイニンの輸送を制御する因子であること が 明 ら か に な っ た(図1B). はATP-binding  cassette(ABC)輸送体をコードする遺伝子であること から,サイトカイニン自身またはその前駆体や誘導体な どの輸送体であると考えられるが,真の基質の正体はい まだ不明である.

それでは,師管液中のiP型サイトカイニンの役割は 何であろうか? 最近の研究により,シロイヌナズナの 根の維管束のパターン維持のために必要であることが明 らかにされている(7).また,マメ科のモデル植物である ミヤコグサにおいては,根粒と側根の数を制御するシグ ナルとして作用することが報告されている(8).これらの ことから,師管液中のiP型サイトカイニンは,根の成 長・発達を制御する地上部由来の器官間シグナルとして 働くと考えられる.

以上のように,サイトカイニンを器官間シグナルとし た植物の成長バランス制御メカニズムが明らかになりつ つある.植物の器官バランスは農業上重要な形質であ り,たとえば,地上部より根が発達した植物は乾燥に強 く,土壌中の養分吸収に優れるが,葉面積が少なくなる ため光合成能は低くなる.逆に,地上部が根より発達す ると,光合成能は高くなるが,養分や水分の吸収が十分 でなかったり,倒れやすくなったりする.したがって,

器官バランス制御のメカニズムの理解が進めば,栽培環 境などに最も適した器官バランスの作物を作出すること が可能になると期待される.

  1)  J.  Puig,  G.  Pauluzzi,  E.  Guiderdoni  &  P.  Gantet: 

5, 974 (2012).

  2)  H. Sakakibara:  , 57, 431 (2006).

  3)  O. N. Kulaeva:  , 9, 182 (1962).

  4)  N. Hirose, K. Takei, T. Kuroha, T. Kamada-Nobusada, H. 

Hayashi & H. Sakakibara:  , 59, 75 (2008).

  5)  T. Kiba, K. Takei, M. Kojima & H. Sakakibara:  ,  27, 452 (2013).

  6)  D. Ko, J. Kang, T. Kiba, J. Park, M. Kojima, J. Do, K. Y. 

Kim, M. Kwon, A. Endler, W. Y. Song  :  , 111, 7150 (2014).

  7)  A.  Bishopp,  S.  Lehesranta,  A.  Vaten,  H.  Help,  S.  El- Showk,  B.  Scheres,  K.  Helariutta,  A.  P.  Mahonen,  H. 

Sakakibara & Y. Helariutta:  , 27, 927 (2011).

  8)  T. Sasaki, T. Suzaki, T. Soyano, M. Kojima, H. Sakakiba- ra & M. Kawaguchi:  , 5, 4983 (2014).

(木羽隆敏,榊原 均,理化学研究所環境資源科学研究 センター)

プロフィル

木羽 隆敏(Takatoshi KIBA)

<略歴>1998年名古屋大学農学部応用生 物科学科卒業/2003年同大学大学院生命 農学研究科博士課程修了(博士(農学))/

同年同大学生命農学研究科COE研究員/

2004年ロックフェラー大学博士研究員/

2008年理化学研究所植物科学研究セン ター研究員/2013年同環境資源科学研究 センター研究員,現在に至る<研究テーマ と抱負>植物の環境応答を分子レベルで理 解すること<趣味>釣り

榊 原  均(Hitoshi SAKAKIBARA)

<略歴>1992年名古屋大学大学院農学研 究科博士課程後期課程中途退学/同年同大 学農学部助手/2000年理化学研究所植物 科学研究センターチームリーダー/2006年 同グループディレクター/2013年同環境資 源科学研究センターグループディレク ター,現在に至る<研究テーマと抱負>窒 素栄養に対する植物の個体レベルでの応答 機構の解明.特に代謝レベル,形態レベル で協調的に応答し,個体として成長を最適 化する仕組みを明らかにしたい<趣味>家 庭 菜 園<所 属 研 究 室 ホ ー ム ペ ー ジ>

http://www.csrs.riken.jp/jp/labs/ppsrg/

index.html

Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.53.421

今日の話題

Referensi

Dokumen terkait

中を動きにくくなることによる.植物は低リン条件に置 かれると,いくつかの戦略を用いてこれらの難利用性リ ンを可給化(吸収可能な形に変えること)する.その分 子機構を図1に示した.土壌中で無機化合物,有機化合 物にかかわらずリン酸はアルミニウム,カルシウム,鉄 などの金属イオンと結合して難溶性となりやすいが,こ れを可溶化するために根から有機酸トランスポーターを

11, 2015 古くて新しい植物の O- 結合型糖タンパク質の世界 生合成の鍵となる糖転移酵素群がついに解明 タンパク質の糖鎖修飾には -結合型と -結合型とが 知られているが,基本的な生合成のしくみが動植物間で 類似している -結合型に対して, -結合型糖鎖は最初に 付加される糖とアミノ酸の組み合わせが大きく異なる. ヒトやマウスの