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リンク機構と作図ツールによる合同変換の指導に関する研究

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リンク機構と作図ツールによる合同変換の指導に関する研究 

―線対称作図器(LEGO)を用いた発展的学習を通して― 

 

筑波大学大学院修士課程教育研究科  手島  直樹   

章構成  1. はじめに 

2. 研究目的・研究方法  3. リンク機構の教材化  4. 移動・変換について  5. “合同変換”の授業概要  6. 課題に対する考察 

 

      要約   

要約

本研究は、線対称、平行、回転移動した図形の指導に 焦点を当て、生徒がそれらを合同変換の視点からまとめ、

関連づけることを目的とした授業を行った。生徒が「対 称移動を基にした合同変換の考え」を認めたことから、

合同変換の指導でのリンク機構と作図ツールの探求環境 としての有効性が示唆できた。 

7. おわりに   

キーワード:リンク機構  合同変換  作図ツール  対称移動  平行移動  回転移動   

1. はじめに 

文部省(1999)は高等学校学習指導要領解説の中で、高等学校における数学的活動につ いて「主体的に様々な問題解決の方法を味わったり、問題解決の後も自らの思考過程を振 り返ったり、その意味を考え、より発展的に考えたり、一般化したりして問題の本質を探 ろうとするなど、数学的考察・処理の質を高める。」活動とし「設定した数学的な課題を 既習事項を基にして数学的に考察・処理し、その過程で見出したいろいろな数学的性質を 論理的に系統化し、数学の新しい理論・定理等(以下、数学的知識)を構成する活動」の 重要性を述べている。しかしながら、「高等学校では、数学に興味・関心を持たない生徒 が少なからずいることも事実である」と指摘している。それを受けて、「数学の学習を単 に内容の習得にとどめるのではなく、(中略)数学的活動を通して創造性の基礎を培う」

こととしている。 

これらの記述に関して筆者は、「数学的性質を論理的に系統化」する力に着目した。「数 学の学習を単に内容の習得にとどめるのではなく」とあるように、生徒は学年を跨いだ内 容を輪切りでしか学習できていのではないかと捉え、授業者が生徒に既習事項を基にした 数学的知識を構成させるような授業をすることによって上記の能力が育成できるのではな いかと考える。 

また平成 10 年の学習指導要領の改訂で中学校における図形領域では論理的な思考力の 育成に重点が置かれ、学習内容の厳選の立場から、平行移動、回転移動及び対称移動は扱

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われなくなった。しかしその一方では、作図ツールという新しい環境を前提とした、変換 の指導可能性への関心が高まっている。(長田 1999、多田辺 2003) 

そこで筆者は現行の「対称図形」の扱いにおいて、その用語こそ扱わないが図形の性質 を移動の見方で捉えることへの素地として意識した学習が行われていると考え、「対称図 形」「三角形の合同条件」という単元を“合同変換”という考えを軸とした幾何学に発展 させていくという視野から、対称移動の合成という一つの大枠として見直すことにした。 

図形の移動、変換に関するこれまでの研究として長田ら(1999)が中学校段階における 作図ツールによる変換の指導可能性を、川野邊(2003)が、LEGO を活用することが数学 的活動の動機となり、論理的に説明しようと思考を高めることに有効とし、田中(2004)

が未習である回転移動を学習する際に歴史の中で使用された道具の活用が有効としている。

リンク機構に関する研究として小関(1998)が四節リンク機構の教材化を題材にその効果 を検証する実践報告を、小林(1999)が、高校生段階の生徒が図形に関する知識を構成す る際に LEGO と作図ツールを使った多表象の相互翻訳が有効であるとしている。 

本研究では、今回の改訂で未習事項となった平行移動、回転移動及び対称移動について 合同変換の視点から発展的内容の提示例となることを目指す。 

そこで、生徒が合同変換に関する探究活動を興味深く、そして容易に行うことができる ようにリンク機構と作図ツール(Cabri GeometoryⅡplus) を用いた変換の指導を高等学 校での観察を通して例証する。 

2. 研究の目的・研究方法及び概要 

(1)研究の目的 

本研究ではリンク機構と作図ツールを用いた活動を通じて、数学への興味・関心を高め ると同時に、発展的内容を学習すること及び数学的知識を構成することを目的にする。  上 記の目的を達成するために、以下の課題を設定する。

課題1:未習である合同変換の考えを対称移動の合成として学習することができるか。ま た既習事項を基にして数学的知識を構成できるか。

課題2:リンク機構と作図ツール(Cabri GeometoryⅡplus) を用いて、道具の仕組みを 探求することを通して、論理的に数学を考える機会を提供できるか。

(2)研究方法 

リンク機構を教材化し、それを使用して授業を行う。授業テキスト(ワークシートを含 む)、ビデオカメラによる授業記録、事前調査及び事後調査をもとに考察する。 

 

3.リンク機構の教材化 

(1)リンク機構の教材化 

リンク機構とは数個の剛体を回転自在のピンで結合して,各部分の動きと位置が一義的 に決まるように運動を行うようにしたもので,その構成要素をリンクと呼ぶ.本研究では リンク機構の一つである線対称作図器を扱う(図1)。線対称作図器は軸とひし形(たこ 形)からなる.適当な二つの作図器を取ってきて,その軸が平行になるようにとり,かつ 互いのリンクの長さが二つの軸がなす距離以上の時に限り,元の図形は平行移動される(図

(3)

図1:Aがある図形を描くとき、

Cはその図形を、直線EFに対し て対称移動した図形を描く。 

2)。同様にして,二つの軸が交わるようにとり, 

かつ互いのリンクの長さが二つの軸がなす長さ以上の 時に限り,元の図形は回転移動される(図3)。特に,

二つの軸がなす角が直角となる時,元の図形は点対称移 動される.LEGO は LEGO Group の登録商標である。リン ク機構の教材化は、筑波大学数学教育研究室での代数・

幾何・微積 For  All プロジェクトによる「いろいろな 機構と数学実験」内の「数学実験室」及び「レゴのペー  ジ

」 

(

http://130.158.186.230/Forall/kikou/kikou.html

を参考に構成した。 

図2:Aがある図形を描くとき、Cはその 図形を、直線m、nがなす距離の二倍分、

平行移動した図形を描く。

図3:Aがある図形を描くとき、Cはその図形 を、Oを中心にして直線m、nがなす角の二倍 分、回転移動した図形を描く。

 

(2)LEGO と Cabri GeometoryⅡplus について 

LEGO を用いるのは、礒田(2000)が「LEGO は、構成過程でその組み合わせの可能性 を試行錯誤する本性を内在している。部品を変えることでの条件換えが容易にできるもの である。」と述べているように、図形に対し、可変的に探求できるからである。また礒田

(1997)は「作図ツールは条件推論によって作図を構成するので、その利用には条件推論 が必須になる。作図ツールを利用できるようになることは、条件推論ができるようになる ことである」と述べているが、LEGO による探求にはカブリを用いる前段階としての役割 を持つ。つまり、それぞれのリンクがどのような性質を持ち、リンク機構全体としてどの ような性質を持っているのかを捉えるのに役に立つ。

線対称作図器の一般的性質を解明するためにLEGOを利用するわけであるが、作図器を 組み合わせるとリンクがうまく動かなったり、互いのリンクの長さを二つの軸がなす長さ 以上に調節しないと作図できなくなるといった制約が生まれる。その制約を解決するもの として Cabri GeometoryⅡplus(以下、カブリ)の利用を考えた。生徒がカブリを用いて 作図器をディスプレイ上に復元することにより、LEGO で試行錯誤した直観的な考えを援

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助でき、図形や組み合わせた作図器の持つ性質や特徴を見つけやすくなる。これらの活動 によって、操作的活動から数学的活動を進めていくことができ、学習を発展するのに役立 つ。

 

4.移動・変換について 

(1)数学教育現代化期以降の移動・変換の学習指導 

今回の学習指導要領改訂で中学校において「移動」が削除され、前回の改訂で「一次変 換」の学習内容が「複素平面」に置き換えられたなど、幾何教育において「変換」を意識 した教育課程の系統は薄れてきた。かつて「変換」の学習指導が取り入れられたのは数学 教育現代化期である。現代数学の重要かつ基本的な概念である「集合」「関数」「論理」

などによって整理・統合し、学習を単純・明瞭なものにしようとしたのである。古藤・金 子(1974)によれば、現代化要請の背後にあった当時の問題点として、他の分野に比較し て系統が立てにくいこと、図形指導の目的が不 

鮮明であったこと、論証指導は“論証の書き方”にだけ力が注  いで、その役割理解への配慮が欠けていたこと 

等があげられていた。このような状況の中で、 

小高(1970)が「図形の移動、相似、 

比例線、3角比、投影図などの一連の内容は 

(中略)単独で教えられるよりも、全体として  写像・変換の考えを通すほうがずっと風通しが  よくなってくる」と述べたことなどから「変換」 

学年  指導内容  5年  線対称・点対称  小学校  6年  縮図・拡大図 

1年  図形の移動 

2年  合同変換、相似変換  中学校 

3年  位相的な見方  数Ⅰ  写像 

高等学校 数Ⅱ  一次変換 

図4:数学教育現代化期の図形指導の系統

(清水、2003) 

の考えが当時の問題点克服の鍵となった。これ  を裏付けるものとして、当時の学習指導要領を 

見ると、一次変換の学習に向けて,中学校段階で「変換の考え」が重要視されているのが分 かる(図4)。現代化期以降は、学習指導要領から「変換」及び「変換の考え」に関わる項 目が削除され、変換を意識した教育課程の系統が薄れ、今回の「図形の移動」の削除によ り、系統と呼べるもの自体存在しなくなった。本研究では、現代化期には存在しなかった、

リンク機構及び作図ツールという新しい学習環境が、変換の学習にどのように利用されう るのかについて見ていく。 

(2)合同変換の数学的解説 

小学校において「折り返す」「ずらす」「回す」を経験しているが、これを平面上で数 学的に抽象化したものが、線対称、平行、回転の各移動である。これらの移動は、平面上 のすべての点を定義域と見ることにより、鏡映、平行、回転と呼ばれる変換へと拡張され、

距離と角度を保つ変換、すなわち合同変換として統合される。 

n次元ユークリッド空間 E=ℜ2の2点  ),

,..., ,

(x1 x2 xn

p=         q=(y1,y2,...,yn)    の間の距離pqを、 

2 2

2 2 2 1

1 ) ( ) ( )

(x y x y xn yn

pq= − + − +⋅ ⋅⋅+ − で定義した時、 

(5)

E から E への写像f:E→E  が、2 点間の距離を変えないとき、すなわち、E の任意の2 点 p,q に対して、 f(p)f(q)= pqが成り立つとき、fを E の合同変換と定義する。 

n次元ユークリッド空間の合同変換は高々n+1個の鏡映の積として表され(証明略)ま た E の合同変換の全体をなす集合 I(E)は、群の公理系を満たし、一つの群をなす。(証 明略) 

なお、対称移動を導入し、それを既習事項として平行移動と回転移動を数学的知識とし て構成することを目的とする本研究では、平行移動と回転移動の定義を提示するに留め、

合同変換に関する定義、定理を伝えることは目的としていない。 

 

5.「合同変換」の授業概要  

(1)授業環境 

日時:平成 17 年 12 月 16 日、19 日の二日間。(1 授業 90 分) 

対象:東京都立高等学校  第1学年  20 名 

      図形の移動に関しては未習であった。事前に授業参加を希望した生徒を対象とした。 

準備:授業テキスト(ワークシートを含む)、作図ツール(Cabri GeometoryⅡplus)、コ ンピュータ(授業者用、生徒用)、ビデオプロジェクター、線対称作図器(LEGO) 

      *受講生徒がカブリ初学者のため、予め不要なツールを削除した。 

(2)授業展開 

〈1〉線対称作図器について知る。(1時間目) 

二人一組に線対称作図器(LEGO)を配布し、何のための道具なのか考察した。小学校にお  いて「折り返す」「ずらす」「回す」を経験しているので、移動に対するイメージを持っ  ているが、どこを固定してどこを動かしたらいいのか分からない。「同じような形が描け  る」という意見はでるものの、対称の軸をはっきりと意識できないために対称に帰着でき  ない。ヒントとして軸を固定させることで、ようやく「橋(軸)に関して対称な図形が描  ける」という見方が出てくる。 

(生徒との対話) 

T:どこを固定していますか。 

S:紙と真ん中の 

T:どこを動かしていますか。 

S:二本の棒(ひし形の左側) 

対称の軸と対応する点の関係に着目してもらうため、 

作図する際に固定する点と移動する点をワークシート  でプロットする。その後、どうして作図器を使うと 

線対称移動した図が描けるのか考察した。しかし作図  線対称作図器を操作する生徒 器の仕組みについて「向かい合う角や辺が等しい」、「ひし形」、「ひし形の対角線が橋 

(対称の軸)と重なる」、「菱形の対角線は対角線の交点で二分される」等がでてきたが 

、ひし形という形に囚われてしまって対称の軸と対応する点の関係に着目し、軸を垂直二  等分線と見ることができない。 

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そこで、リンクを組み替えて菱形だったものをたこ形 

図5:凧形に組み替えて考える生徒 にしてもう一度作図してもらった。(図5) 

(生徒との対話) 

T:どんな図形が描けましたか。 

S:対称なやつ。この前(菱形の時)と同じやつ。 

T:二つに共通する性質はなんだろう。 

S:緑のやつ(対称の軸)が二等分されている。 

T:ということは別に菱形じゃなくても線対称な図は  書けるということだね。 

S:なるほど、橋(対称な軸)が左右の点(対応する点) 

の垂直二等分線になっているんだ。 

ここまでくると線対称作図器がもつ不変的な性質である軸が垂直二等分線であることに気  付くことができたため、付くこと半数くらいの生徒が対応する点と軸の関係に着目して、 

作図器を考察できるようになった。最後に、次回の授業を円滑に進めるためにカブリを用  いて線対称作図器を復元してもらった。 

 

〈2〉線対称作図器を組み合わせて、平行移動、回転移動した図形を描く。(2 時間目前半) 

前時の復習として、線対称作図器が垂直二等分線の性質を保っていることを確認し、対称  移動を「図形上の各点を直線について等距離の位置に動かす移動」、平行移動を「図形上  の各点を一定方向に同じ距離だけ移すこと」、回転移動を「図形上の各点を O を中心とし  て一定の角だけ移すこと」と図示しながら言葉の定義を行った。その後、どのように線対  称作図器を組み合わせたら平行、回転移動した図形が描けるのか、LEGO を使って作業して  もらった。一時間目で対応する点と軸の関係に着目できた生徒は元の図形、対応する点と  軸に着目してそれらしい図形が作図できているが、定義に立ち戻って作図を試みようとし  た生徒は3組に留まった。 

(生徒同士の対話、図6) 

S1:(対称図形を作図した後に二本目の軸を適  当にとって作図)平行移動してる。 

S2:ずれてない? 

S1:確かに。ここ(二つの軸が交わったあたり)   

を中心に回っているから回転移動か。 

S2:うん 

S1:じゃぁ、今度こそ平行移動を描いてみよう。 

(対称図形を作図) 

S2:これ(軸)が平行になるように動かせば描けるはず。 

S1:おっ完璧じゃん。完璧。 

S2:そうかな。長さが一定じゃないきがするけど・・・。  その3組のうち2組に定義のどこに着目して平行、回転  移動 を作図したか発表してもらい、全体に作図器の動かし 

図6:線対称作図器を組み合わ せて考える生徒

図7:平行移動の作図のポイン トを説明する生徒

(7)

方を共有した。(図7) 

  前時の授業でカブリを用いて線対称作図器を復元して  もらったので、生徒は LEGO で試行錯誤したことをカブリ  を用いてディスプレイ上で自由に作図器を組み合わせるこ  とができるようになっている。カブリで作図することによ  って、対応している点や二つの軸に着目して建設的に作図  できているか明瞭になり、なぜ平行、回転移動した図形が  描けるのかという論証の手がかりにもなると考えたからで  ある.多少時間がかかったが、LEGO での作図を思い出させ 

図8:一度に平行移動と回転移 動を書いた生徒の作図の様子

て、ほぼ全員の生徒がどちらかの組み合わせを、半数の生  徒が両方の組み合わせを作図できた。軸の関係が理解でき  た生徒は自由に図形を移動していた。 

 

〈3〉線対称作図器のしくみに着目して、平行,回転移動が描ける理由を証明する。 

(2 時間目後半) 

授業の始めに定義した対称移動を組み合わせて作図した図形が、平行移動及び回転移動の 定義したものとなっているか問いた。 

図9:定義に戻り平行移動を考える生徒 T:平行移動とは「図形上の各点を一定方向に同じ 

距離だけ移すこと」と定義しましたが、元の図形を  作図で二回移動したものは本当にこの定義を満たし  ていますか? 

S:二つの軸が平行なんだから、当たり前じゃん。 

T:でも軸が平行だからといって元の図形が平行移  動されるでは根拠が不十分です。前の時間に勉強し  た線対称作図器の性質に着目して、まず始めに 

“一定方向”について考えてみよう。(予め用意しておいた作業プリントを配布。) 

(生徒との対話、図 10) 

S:ここ(線対称作図器の軸)が垂直二等分線になっているので、この点(元の図形の点、 

Aとする)とこの点(一回目に作図した元の図形に対応している図形上の点、Bとす 

10: 平 行 移 動 の 証 明 を す る 生 徒

(点A,B,Cと軸m、nは筆者が追記)

る)が垂直に交わっていて、同じように  この点(B)とこの点(軸を平行にとっ  てBを線対称移動した点)も垂直に交わ  っているので、ここ(A)とここ(C) 

が一定方向に移動しているということが  言える。だから図形上のどの点も一定方向  に移動している。 

T:では“一定距離”はどうだろう。 

S:ここ(軸、mとする)からここ(もう一方  の軸、nとする)までの距離を5として、ここ 

(8)

(m)からここ(B)までの距離を a として、 

ここ(B)からここ(n)までの距離をbとすると、a+b は5となる。同じようにして  ここ(A)からここ(m)までが a で、ここ(n)からここ(C)までが b となるから、 

ここ(A)からここ(C)までの距離が10になる。で、そのことがどの点についても  言えるので、三角形のすべての点が一定方向に一定距離だけ移動するということが言え  る。 

T:では、回転移動はどうだろう。対応する点に注目して考えてみよう。点Oを中心にし  て一定の角だけ移動していることを証明しましょう。 

と発問し、しばらく考えてもらった。対応する点(平行移動の場合で言えば点A,B,C) 

と軸(m、n)が成す角に着目し文字を置ける生徒はいるが、中々証明まではいけず、 

ここで時間切れとなってしまった。授業者の方から、証明を紹介し、授業を終えた。 

 

6.考察 

(1)課題1に対する考察 

課題1:未習である合同変換を対称移動の合成として学習することができるか。また既習 事項を基にして数学的知識を構成できるか。 

事後アンケートより生徒の記述の一部をそのまま抜粋 

①線対称がもとになっている 

②二次関数(X 軸、Y 軸、原点対称) 

③合同な三角形を作図する 

④原点や軸に対して一定の距離や角度を持っている 

⑤一定の距離や角だけ移す関係 

⑥移動した図形は移動する前の図形と合同。線対称移動が、その他の図形移動の元になっている 

⑦合同になっている 

①〜⑦の意見は、主に事後アンケートの中の質問「図形の移動にはどのようなものがあり ますか。」で「線対称移動、平行移動、回転移動」と答えた生徒が、続く質問「上であげ た図形の移動は、どのような関係になっていますか」での回答である。①、④、⑥の生徒 は線対称移動を元に対応する点と軸の関係に着目できたため、また二つの軸の関係が平行 の位置にあることや、二つの軸が交わった点を回転の中心とみることができたため、対称 移動の積として合同変換の考えを学習できたものと捉えることができる。「合同になって いる」と答えた生徒は中学校の時に学習した“三角形の合同”という既習事項と「線対称 移動、平行移動、回転移動」という図形の移動の考えが結びつき数学的知識を構成できた と捉えることができる。また②の二次関数と答えた生徒は、二次関数における頂点と本授 業における対応する点が結びつき、対称移動、平行移動や回転移動を幾何学的な視点と代 数学的な視点で捉えらることができたと考えられる。これは小林(1999)が未習である楕 円を学習する際に「『代数的表現』『幾何的表現』『機械的表現』それぞれの翻訳を経験 すること」が有効であると述べているが、対称移動、平行移動や回転移動についても同様 に、色々な表現を体験することが数学的知識を構成するのに有用であると考察できる。 

 

(9)

(2)課題2に対する考察 

課題2:リンク機構と作図ツール(Cabri GeometoryⅡplus) を用いて、道具の仕組みを 探求することを通して、論理的に数学を考える機会を提供できるか。 

事後アンケートより生徒の記述の一部をそのまま抜粋 

道具があると分かりやすく理解できる 

分かりやすくなった 

道具を使わないと図形を描くことはできない 

授業がよりスムーズに分かりやすくなった 

道具があったほうが動きが見えて理解しやすいし、おもしろい 

頭のなかでもできるけど、実際に使ってみたほうが納得できた。 

①〜⑥の意見は、主に事後アンケートの中の質問「授業では作図器を使って図形を描きま したが、このように数学の授業に道具を用いることについて思ったことを書いてくださ い。」や授業の感想などからのものである。 

上記のような意見や 2 時間目前半の生徒の会話から、LEGO による図形の移動に関する作図 が、その仕組みや性質を探求的、論理的に考えていく上で役に立ったと感じ取っているこ とが読み取れる。これは礒田(2004)の言うように LEGO が「運動を伴いながら対応関係を確 認する道具であり、対応としての変換を、対応関係として動的に一般化して学ぶ素地とな るメタファ」を提供したこと、線対称作図器のリンクの形状をひし形から凧形へと容易に 組み替えられたため、作図器が持つ多種な性質の中から不変な性質を見出しやすくなった、

と考えられる。そして、「LEGO だとぶれてしまうけど、このソフトならしっかりと書ける から」と生徒が答えたように、ソフトつまりカブリにより、LEGO による探究活動における

「ずらす」や「回す」といった漠然とした考えを、ディスプレイ上で再考する機会を提供 することで、「ずらす」を平行移動として、「回す」を回転移動として再構成することが できたため、論理的な思考がより進んだと考察できる。また授業終了後のインタビューで、

「他にも色々と道具があるといい」と答えた生徒もおり、さらに探求したいという意欲が 読み取れた。 

 

7.おわりに 

本研究では、リンク機構の一つである線対称作図器を教材として、リンク機構と作図ツ ールによる探究活動が未習である合同変換の考えを学習する際に有効であること、数学的 知識を構成するのに有効であることが確認できた。授業においては、生徒自身が実際に道 具を操作し、作図することでどのような図形が書けるのかを確認することができ、さらに カブリを用いることで、うまく作図できなかった生徒もディスプレイ上で確認することが できた。また、「図形を勉強する上で、役に立つと思った」「ノートや黒板の上だけでや るものと思っていたけど、道具やソフトを使ってみて楽しいと思った。」といった事後ア ンケートの回答からもうかがえるように、普段使うことのない道具やテクノロジーを用い た授業を行うことで、生徒はより興味・関心を持って授業に取り組めたと言える。 

  謝辞 

(10)

研究授業の実施に際して、東京都立科学技術高等学校の青木弘先生には多大なるご協力と 共に、貴重な指導をいただきました。心より御礼申し上げます。 

  注) 

本研究は、文部科学省科学研究費特定領域研究(2)課題番号 17011014「代数・幾何・微積 分の動的理解を促す「使える数学」教材サイトの開発に関す る研究―数学用機械とJAVA による移動・変換と関数・微積ハンズオン教材のWEB化研究(II)―」(研究代表者礒田正 美)による研究の一環として行われた。

     

引用・参考文献: 

文部省 中学校学習指導要領解説 数学編.  大阪書籍  1998 

文部省 高等学校学習指導要領解説 数学編   理数編.  実況出版  1999   

礒田正美「テクノロジー利用による代数・幾何・解析の改革へのパースペクティブ〜関数・

微積 For All プロジェクト〜」筑波大学数学教育研究室 1997 

礒田正美「手段としての教具から媒介としての道具への教具観の転換に関するー考察」日 本数学教育学会第 33 回数学教育論文発表会論文集 2000(p.193−198) 

礒田正美「なぜ道具を数学教育で活用する必要があるのか」日本数学教育学会第 36 回数学 教育論文発表会「課題別分科会」発表収録 2003(p.246-249) 

礒田正美「道具による普段と違う数学体験・数学学習の価値を考える」数学教育 2004 年7 月号、明治図書  2004 特集号 

小関勝則「4節リンク機構における曲線の探求」筑波大学数学教育研究室 1998(p.212-218) 

長田裕一郎・牧野智彦・本多英之・礒田正美「中学校段階における作図ツールによる変換 の指導可能性に関する研究」日本数学教育学会誌第81巻第9号 1999  (p238-244)  小林良典「作図ツールとリンケージによる曲線の多様な表象」筑波大学数学教育研究室 1999

(p.80-89) 

広井徳文・北島茂樹・坂本正彦「線対称作図器の授業におけるレゴの効果に関するー考察」 

筑波大学数学教育研究室 2000(P101-108) 

丸野悟「作図ツールを用いた合同変換の指導可能性に関する研究」筑波大学修士論文 2002  川野邊一晃「数学的活動を活かした図形指導に関する研究―対称図形作図器(LEGO)を利

用した発展的な学習を通して―」筑波大学数学教育研究室 2003(p.220-252) 

清水静海「戦後学校数学の変遷」筑波大学数学教育研究室 2003 

田中真樹子「リンク機構を教材とした、数学的活動を高める授業の研究」筑波大学数学教 育研究室 2004(p.166-176) 

原田耕平・熊田伸彦・エリザベート・ガルー・ダミール「幾何の証明問題の解決を支援す る Cabri-Geometory の利用-教授学的場の分析-」日本数学教育学会第 27 回数学教育論文 発表会論文集(p329-334) 

飯島康之「作図ツールを用いた写像・変換と複素数に関する数学的探究について」日本数

(11)

学教育学会第 33 回数学教育論文発表会論文集(p205−210) 

高橋聡「学校数学における変換の考えに関する一考察」日本数学教育学会第 38 回数学教育 論文発表会論文集(p685−690) 

全米数学教師協議会(NCTM)「幾何教育への新しいアプローチ」教育出版 1980  古藤怜・金子忠雄「幾何教育と変換の考え」近代新書出版社 1974 

小高俊夫「数学教育指導の現代化(第Ⅳ巻)空間と図形」近代新書出版社 1970  岩掘長慶「初学者のための合同変換群の話」現代数学社 2000 

 

Web Reference 

http://130.158.186.230/Forall/kikou/kikou.html 

Referensi

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有用微生物の細胞機能に関する分子遺伝生化学的研究 東京大学大学院農学生命科学研究科 応用生命工学専攻 教授 依 田 幸 司 人類は古来より経験的に多様な微生物の働きを利用し,微生 物の実体を知ってからは,積極的な探索と育種が進んだ.動植 物に比べて,有用微生物の育種では,理屈に基づく計画的改変 と,膨大な数の変異体からの闇雲な探索が,容易に両立する.

日本数学教育学会第1回春期研究大会「創成型課題研究」 理論構築の萌芽領域としての算数・数学科における授業研究 オーガナイザー: 藤井斉亮(東京学芸大学) 発表者: 藤井斉亮(東京学芸大学) 高橋昭彦(DePaul University) 中村光一(東京学芸大学) Tad 渡辺(Kennesaw State University) 中村享史(山梨大学)

①小学校社会科の目的・学習内容・教師の支援とその検討 の基礎となる社会的な見方・考え方について理解すること ができる。 ②小学校社会科の目的・学習内容・教師の支 援とその検討の基礎となる社会的な見方・考え方につい て、小学校社会科の授業を計画することができる。③②の 計画に基づいて、模擬業を実践することができる。 週 学修内容 授業の実施方法 到達レベルC可の基準

日本数学教育学会第1回春期研究大会「学会指定課題研究」 わが国の算数・数学教師教育における教材研究 オーガナイザー: 佐々木徹郎(愛知教育大学) 発表者: 飯田慎司(福岡教育大学) 岡崎正和(岡山大学) 指定討論者: 太田伸也(東京学芸大学) 久保良宏(北海道教育大学旭川校) 研究題目と要約 題目:「わが国の算数・数学教師教育における教材研究」の趣旨

- 3 - 本題材の構成 配時 学習活動と予想される子供の反応 教師の具体的な支援 45 45 90 1 木材と金属と触れ合ったり,木材と金属でつくる「不思議なオブジ ェ」を想像したりして,学習の見通しをもつ。 2 不思議なオブジェのイメージを基に,表したい形を構想する。 3 発想したことから材料を加工したり組み合わせたりして試したり構

5 7 本時の指導3/8 1ねらい 雪国・十日町市の市街地の様子を写真資料で調べ,雪国の生活について追究する学習問題をつかむ。 2本時の展開 分節ごとの ねらい(分) 児童の学習活動 1~4 主な学習活動 ・児童の反応や内容 教師の指導・支援 ◎留意点 □資料 ◇評価 ※積雪が2m以上に なると市民の生活 で困ることを考え る。

教科書 ページ 題材名・コーナー名 等 配当時数 ( )内は,学校の授業 以外の学習分 学校の授業以外の場において行うことが 考えられる教材・学習活動 共=共通教材 指導順序を変更することが考えられる 教材・学習活動 表紙裏 ひびきに心をのせて 随時 0.5 辻井伸行さんからのメッセージを読む。 p.4-5 〔巻頭教材〕

臨床・障害 2PM173 日本心理学会第65回大会2001 小学校における指導上困難な児童についての調査研究(3) ○ 宮 本 正 一 (岐阜大学教育学部) 1.目的 調査研究(1)2に続いて本研究では、教師が指導困難な児童 と判定した対象児の「困難」の内容を数量化理論による分析を行 い、教師の対応・効力感との関連を検討した。 2.方法