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低圧超臨界相の活用で 従来以上に高品質な窒化ガリウム結晶を作製

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www.tohoku.ac.jp

2022年5月26日 報道機関 各位

東北大学 多元物質科学研究所

【発表のポイント】

 低圧酸性アモノサーマル法*1 において、高品質なシード(種結晶)を用い ることにより結晶性がよく、高純度な窒化ガリウム*2結晶の成長を確認

 高品質な窒化ガリウム基板の供給により窒化ガリウムデバイスの研究促進 に貢献

【概要】

近年、世界中で環境問題への関心が高まり、産業界において省エネルギー化 が進められています。そのためには各分野で用いられている半導体デバイス の高性能化が必要不可欠です。例えば電力制御を担う高周波パワートランジ スタ*3 など自立した窒化ガリウム(GaN)基板上に作製される電子デバイス

(GaN-on-GaNデバイス)はエネルギー消費を抑えることでCO2の削減につな

がると期待されています。しかし現在市販されているGaN単結晶基板では品 質に課題があり GaN-on-GaN デバイスのポテンシャルを十分に引き出し切れ ていないのが現状です。

東北大学多元物質科学研究所の秩父重英教授らは、株式会社日本製鋼所、三 菱ケミカル株式会社との共同研究において、GaN 基板の量産法として開発し た低圧酸性アモノサーマル(LPAAT)法の実用化に向けた検討を進め、使用す るシード基板の品質が成長後の結晶の品質に与える影響を明らかにしました。

特に、高品質なシードを用いれば成長させた結晶の結晶性も良くなり、室温の フォトルミネッセンス*4 スペクトルも自由励起子*5 再結合によるバンド端発 光が支配的になるほど高純度になることを確認しました。

本成果は、科学雑誌Applied Physics Expressにて2022年5月13日にオンラ イン公開されました。

低圧超臨界相の活用で

従来以上に高品質な窒化ガリウム結晶を作製

-実験炉で反りがなく高純度な窒化ガリウム結晶成長を実証-

(2)

本研究の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

(NEDO)のプログラム「低炭素社会を実現する次世代パワーエレクトロニクス プ ロ ジ ェ ク ト (JPNP10022)」、「 戦 略 的 省 エ ネ ル ギ ー 技 術 革 新 プ ロ グ ラ ム

(JPNP12004)」、および文部科学省「人・環境と物質をつなぐイノベーション創

出ダイナミック・アライアンス」の助成を受けています。

【問い合わせ先】

(研究に関すること) (報道に関すること)

東北大学多元物質科学研究所

教授 秩父重英(ちちぶ しげふさ) 同研究所 広報情報室 電話: 022-217-5363 電話:022-217-5198

E-mail:[email protected] E-mail:[email protected]

【参考画像1】LPAAT 法により、高品質なSCAATTMシード上に成長させたGaN 単結晶の外観、結晶構造特性、およびフォトルミネッセンススペクトル。

(3)

【詳細な説明】

1.背景

近年、世界中で環境問題への関心が高まり、特に地球温暖化対策として温室 効果ガスの削減および低炭素化が進められています。そのためには各分野に おいて省エネルギー化を進める必要があり、エネルギーロスを改善するため には各分野で用いられている半導体デバイスの高性能化が必要不可欠です。

例えばGaNは広い禁制帯幅(3.4 eV)、高い絶縁破壊電界(3.3 MV cm-1)、速 い飽和電子速度(2.5×107 cm s-1)などの優れた物性を有するため、次世代パ ワー半導体材料として検討されています。電力制御を担う高周波パワートラ ンジスタなど、自立したGaN基板上に作製される電子デバイス(GaN-on-GaN デバイス、参考画像2)はエネルギー消費を抑えることでCO2の削減につなが ると期待されています。しかし現在市販されているGaN単結晶基板では品質 に課題があり GaN-on-GaN デバイスのポテンシャルを十分に引き出し切れて いないのが現状です。

2.研究手法と成果

本研究では、東北大学多元物質科学研究所秩父研究室と株式会社日本製鋼 所、三菱ケミカル株式会社が共同研究により開発した「低圧酸性アモノサーマ ル(Low-pressure acidic ammonothermal; LPAAT)法」を用いました。LPAAT法 は大口径のGaN単結晶基板が安価で量産可能になると期待されている技術で、

既に実用化もなされている、高圧の超臨界流体アンモニアを用いる酸性アモ ノサーマル(AAT)法と比較して半分の圧力で結晶成長が可能なため装置構成 と運転上の理由から量産に向いています。本研究ではLPAATの実用化に向け てさらに研究を進め、実験炉において成長に使用するシードの種類(HVPE製、

【参考画像2】 GaNを用いた縦型パワートランジスタの模式図。

(4)

SCAATTM製)の違いにより成長後の外観や結晶性などの品質に大きな差が出 ることを明らかにしました。本共同研究枠組みの成果に基づき三菱ケミカル

㈱がSCAATTMとして商標登録した高品質GaNシードを用いてLPAAT成長さ

せた結晶は、参考画像 1 に示すように外観が透明かつ平坦であり、結晶モザ イク性についても低いこと(対称面・非対称面の X 線ロッキングカーブ半値 全幅が20秒以内)を確認しました。またフォトルミネッセンススペクトルも、

12 Kでは高純度な半導体で観測される束縛励起子*5の再結合によるバンド端 発光強度が深い準位の発光と比較して約 3 桁高く、室温においても自由励起 子*5の再結合によるバンド端発光が支配的であり、高純度なGaN結晶である ことを確認しました。このようにLPAAT法による大口径・低反り・高純度な GaN単結晶基板が普及していけば、信頼性に優れるGaN縦型パワートランジ スタに代表される GaN-on-GaN デバイスの研究が促進され、早期に実用化さ れていくと期待されます。

3.今後の展望

本成果は量産用大型オートクレーブ運用に活用し、LPAAT 法にて高品質かつ大 口径なGaN基板の量産技術の実用化を目指します。成長温度のさらなる最適化 やそれにより作製されたGaNの輻射・非輻射再結合レートや空孔型欠陥濃度等 を、東北大や筑波大の持つ特殊計測技術を用いて定量することにより、LPAAT 法によるGaN単結晶の光学的・電気的な特性をさらに向上させます。

【研究チーム】

・東北大学多元物質科学研究所 秩父重英 教授、石黒徹 研究員、嶋紘平 助教、

・株式会社日本製鋼所 新事業推進本部 フォトニクス事業室 窒化ガリウムGr

・三菱ケミカル株式会社 技術統括本部 筑波工場 ガリウムナイトライド技術センター

【論文情報】

タ イ ト ル :Low-pressure acidic ammonothermal growth of 2-inch-diameter nearly bowing-free bulk GaN crystals

著者名:Kouhei Kurimoto, Quanxi Bao, Yutaka Mikawa, Kohei Shima, Toru Ishiguro, and Shigefusa F. Chichibu

雑誌名:Applied Physics Express DOI:10.35848/1882-0786/ac67fc

【用語解説】

*1. 低圧酸性アモノサーマル(Low-pressure acidic ammonothermal; LPAAT)法 通常の温度・圧力では溶解しない溶質を、高温・高圧の超臨界流体中に溶解 させ、炉内の温度勾配に応じた溶解度差を利用して種結晶上に溶質を再結晶さ

(5)

せるソルボサーマル法の一種です。使用する溶媒に応じてハイドロサーマル(水 熱)法やアモノサーマル(安熱)法などと呼ばれます。超臨界アンモニア中へ のGaNの溶解を促進させる鉱化剤として、アルカリアミド(MNH2, M=Li, Na, K)などの塩基性鉱化剤、ないしはハロゲン化アンモニウム(NH4X, X=Cl, Br, I) などの酸性鉱化剤を用います。我々の研究グループでは酸性鉱化剤を用いる酸 性アモノサーマル法の開発を行ってきました。高圧の超臨界流体アンモニアを 用いた酸性アモノサーマル法(AAT)は既に実用化されていますが、高圧であ るため超大型炉への適用は困難です。そこで本研究では、超大型炉に適用可能 な低圧条件での酸性アモノサーマル法(LPAAT法)を開発しました。

*2. 窒化ガリウム(GaN)

ガリウムと窒素から成る化合物半導体。GaN、および窒化インジウム(InN)

とGaNの混晶(InGaN)は青色発光ダイオードおよび青色レーザ等の発光デバ

イスの基幹材料として実用化されています。近年、半導体としての性能の限界 を迎えつつある珪素の代替材料として、炭化珪素、GaN、ダイヤモンド等が注 目されています。なかでも、GaNは広い禁制帯幅(3.4 eV)、高い絶縁破壊電界

(3.3 MV cm-1)、速い飽和電子速度(2.5×107 cm s-1)などの物性を有するため、

高出力かつ高周波で動作する電子デバイスへの応用が期待されています。

*3. 高周波パワートランジスタ

携帯電話の基地局、レーダー、通信衛星等における大容量・高速通信を実現す るための電力変換・増幅器。GaNは、他の材料では難しい高出力(kWクラス)

かつ高周波数(1 GHz ~ 100 GHz)の領域におけるデバイス応用が期待されてい ます。

*4. フォトルミネッセンス

半導体が禁制帯幅よりも大きなエネルギーの光を照射された際に、半導体内 に励起された電子正孔対が再結合する過程で光が放出される現象。フォトルミ ネッセンスにより放出される光のエネルギースペクトルには、半導体内のバン ド間の直接または間接遷移や励起子遷移、ドナーやアクセプター準位などに関 係する光学遷移の情報が反映されるため、半導体結晶の周期性や不純物に関す る情報を間接的に得ることができます。

*5. 励起子(自由励起子、束縛励起子)

高純度な半導体中では、電子とその逆の電荷をもつ正孔がクーロン力で束縛 しあい結晶中を動き回れる水素原子様の「励起子」という量子を形成する。自 由に動き回れる励起子を自由励起子、不純物や欠陥に束縛された励起子を束縛 励起子と総称します。

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