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光触媒による水分解の高活性化への取り組み

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Academic year: 2025

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光触媒による水分解の高活性化への取り組み

多元物質科学研究所 加藤英樹

1. はじめに

光触媒による水分解反応では,光エネルギーを利用して水から水素を作り出すことがで き,当該反応は光エネルギーを化学エネルギーへと変換し蓄積できることから「人工光合 成」として興味が持たれている。自然エネルギーである太陽光を利用できれば,再生可能 エネルギーである太陽光水素の獲得が可能となる。紫外光下では外部量子収率(AQY)が 50%を超える光触媒的水分解が実現しており1),さらにほぼ100%の内部量子効率で水分解 できる光触媒が最近開発された2)。可視光照射下においても,単独型およびZスキーム型と もに水分解が実現しており,光触媒の報告数も少しずつ増えている。しかしながら,可視 光で駆動する光触媒のAQYは依然として低く(単独型で1%未満,Zスキームで10%程度), 太陽光エネルギー変換効率(STH)も非常に低く実用化にはほど遠い。水分解光触媒研究 分野ではSTH向上を目的として精力的に研究が進められている。当研究グループでは新物 質合成を通じた新規光触媒開拓,固溶体形成による光触媒特性制御,ポスト合成処理によ る形態・表面構造制御を行ってきた。今回は最近行っている取り組みについて紹介する。

2. 酸素生成光触媒BiVO4の微粒子化

シーライト型の BiVO4は酸素生成に活性な可視光応答型の光触媒で,Z スキーム系の酸 素生成光触媒(OEP)として利用できる。Fe3+を電子受容剤に用いた酸素生成反応では,

高活性なBiVO4は20°Cで約21%,35°Cで38%のAQYで反応を進行させることが報告さ れている。しかし,複数の光触媒が紫外光下ではあるもののAQY50%超での水分解を実現 していることを考慮すると,BiVO4のAQYを更に向上することも可能と考えられる。4電 子反応である酸素生成では,粒子径が大きい方が有利であることが知られているが,BiVO4

の電子・正孔の移動度が小さいため,微粒子にすることで活性が向上できる可能性が期待 された。高活性なBiVO4の合成法である液固相法で合成したミクロンサイズのBiVO4をボ ールミル処理により約30nmの微粒子へと機械的に粉砕した。試料のAQYは粉砕によって 20.6%から13.1%へと低下した。ボールミル処理によって形成された表面が再結合を促進し ている,または水酸化に対する表面活性が低いと想定された。そこで,粉砕試料を 400°C でアニール処理するとAQYは22.8%へと向上した。BiVO4では400°Cでのアニール処理 そのものは活性を低下させるにもかかわらず,粉砕—アニール処理試料で活性が向上したこ とから,アニール処理が不要で活性の高い表面が形成できる微粒子合成法が開発されるこ とで更なる高活性化が可能になると推察される。

3. ペロブスカイト型酸窒化物のZスキーム系におけるOEP応用

ペロブスカイト型酸窒化物は多様な可視光応答性光触媒材料群として知られている。中 には650nm超の吸収端波長を有するものも知られており,長波長応答の光触媒系として有 望である。酸窒化物光触媒の多くはAg+を電子受容剤とする酸素生成反応に対して高い能力

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を有する一方,メタノールを電子供与剤とする水素生成反応に対しては非常に乏しい能力 しか有していない。高い酸素生成能を活かして水酸化のための光アノード応用が精力的に 行われているが,Zスキーム系のOEPとして応用された例はない。そこで,当グループで 開発した固溶体酸窒化物La0.5Sr0.5Ta0.5Ti0.5O2N(LSTTON)3)をZスキーム系のOEP利用 を目指して研究を行った。LSTTONは助触媒がなくても酸素生成に比較的高い活性を有す る光触媒で,OEPとして広く利用されるBiVO4より長い吸収端を有するという特徴をもっ ている。幅広いpHで利用可能な[Co(bpy)3]3+/2+を電子伝達剤に用い,水素生成光触媒(HEP)

であるRu/SrTiO3:Rh4)と組み合わせたZスキーム系構築を検討した。助触媒能がない場合 には有意な酸素生成がみられず Z スキー

ム水分解は進行しなかった。助触媒による 修飾を検討したところ,Pt,Ir,CoOx な どを担持した場合に有意な酸素生成がみ られ,Zスキーム型水分解が進行すること を見出した。このように,ペロブスカイト 型酸窒化物をZスキーム系のOEPとする 水分解に初めて成功した(Fig. 1)。現状で は520nmに吸収端を有するSrTiO3:Rhを HEPに用いているためZスキーム系とし ての応答波長は520nm までに限られてい るが,長波長応答のHEPと組み合わせる ことで Z スキーム型水分解の応答波長拡 大が可能になる。

4. おわりに

光触媒の効率だけを考慮した場合,STH5%を達成すると実用化を視野に入れられる。

STH5%を達成するには,目安として単独型で 600nmまでを AQY30%(700nmまでであ ればAQY19%),Zスキーム型で600nmまでをAQY60%(700nmまでであればAQY38%)

を実現する必要がある。その実現のためには,長波長応答する光触媒の開発と高活性化が 重要であり,今後の発展が期待される。

1. H. Kato, K. Asakura, A. Kudo, J. Am. Chem. Soc., 125, 3082 (2003).

2. T. Takata, J. Jiang, Y. Sakata, M. Nakabayashi, N. Shibata, V. Nandal, K. Seki, T. Hisatomi, K.

Domen, Nature, 581, 411 (2020).

3. H. Kato, K. Ueda, M. Kobayashi, M. Kakihana, J. Mater. Chem. A, 3, 11824 (2015).

4. H.P. Duong, T. Mashiyama, M. Kobayashi, A. Iwase, A. Kudo, Y. Asakura, S. Yin, M. Kakihana, H. Kato, Appl. Catal. B, 252, 222 (2019).

Fig. 1 SrTiO3:Rh-LSTTON-[Co(bpy)3]3+/2+系Zスキ ームによる水分解反応

0 5 10

0 100 200 300

Time / h H2

O2

N2

Amounts of products / µmol

Referensi

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