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微生物の世界

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Academic year: 2024

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─ 73 ─

Microbiol. Cult. Coll. June 2007 Vol. 23,  No. 1

─ 73 ─

書    評

微生物の世界

監修:日本菌学会,日本藻類学会,日本放線菌学会,日本微生物資源学会, 

   日本微生物生態学会,製品評価技術基盤機構 編集:宮道慎二,奥田 徹,井上 勲,後藤俊幸,他 発行:筑波出版会

ISBN 4‑924753‑56‑4,A4 判上製 230 ページ,オールカラー,定価 12,600 円(税込)

 微生物といえば,即バイ菌をイメージし,形がどん なものなのか見る気もしないという人が多く,また,

専門家の中でも形を見ても面白みがないと思っている 方が少なくない.実際は,微生物はウィルス,細菌,

菌類,微細藻類,無色の原生生物等非常に多様であり,

形態的にも複雑かつ多様である生物である.本写真集 は,微生物の本当の姿を可視的に示した最初の本であ り,特に,細菌のような形が単純な微生物については,

写真の組み方も上手にできており,幻想的な感じすら 与える.このような写真集の刊行を実現させた編者等 の労に,満腔の敬意を表したい.

 写真集を順に見ていこう.第 1 部に原核生物が登場 する.原核生物は古細菌ドメイン,細菌ドメインとわ けられるが,それぞれについての現時点での分類の概 要が示され,大腸菌,赤痢菌,サルモネラ,ビブリオ 類(コレラ菌,発光細菌),シュードモナス,シアノ バクテリア等を含むグラム陰性菌,枯草菌,黄色ブド ウ細菌,炭疽菌等のグラム陽性菌,及び放線菌の多く の写真が掲載されている.それぞれがどんな問題を起 こす細菌か,どんな機能を持つ細菌か等登場する細菌 の性質が実に要領よくまとめられており,写真ととも に解説も楽しめる.ただし,細菌類をグラム陰性菌,

陽性菌というまとめ方をして写真を示すのならば,放 線菌もグラム陽性菌であるので,誤解をうけないよ うな配慮が必要だったのではないかと思われる.ま た,放線菌のあとに突如まとめ方が変わり,「極限環 境」というキーワードでまとめた微生物の仲間がでて くる.ここには古細菌,細菌が混在しており,原核生 物ではない (真核の緑藻)も登場する.極 限環境微生物の姿を示したいという編者等の気持ちは よくわかるが,ここでも読者に余計な誤解をもたらさ ないような配慮が必要だったのではないかと思う.

 第 2 部は菌類である.菌類になると形が複雑かつ多

様化していて,写真も細菌の部と比べるとあでやかに なる.植物病原菌,昆虫に寄生する菌,キノコの写真は 圧巻であり,見ていてその美しさに十分堪能させられた.

 第 3 部は微細藻類とその他の原生生物である.写 真の最初に登場してくるのが藍藻類である.藍藻類 は原核生物の部でシアノバクテリアとして登場して いるが,ここで二度目の登場となる.読者にいらぬ 混乱をあたえないようどちらかに統一すべきだった のではないかと思う.特に原核生物の部のシアノバ クテリアの顕微鏡写真は,質が高くなく, を Oscillatoriales(ユレモ目)とするなどの間違い(本 当は Nostocales ネンジュモ目)が見られた.それは さておき,第 3 部では,微細藻類の複雑かつ多様な形 と色彩の写真が示され,その美しさにあらためて堪能 させられる.欲を言えば,サイズを示すものがあると よかったのではないかと思う.また,p. 158 に示され

たミカヅキモは, とされてい

るが,写真を見るかぎりピレノイドが散らばっていな いので, と同定される種であろう.

 第 4 部はウィルスである.通常ではなかなかお目に かかれないウィルスの写真であり,すべてが貴重な写 真である.タンパク質の殻と核酸だけで成立する特殊 な生物でもこんなに形態が違うのかということがよく わかる.

 後記も読むとおもしろい.それぞれの微生物研究者 の微生物に対する思い入れがわかり,ほのぼのとした 思いで読ませて頂いた.

 以上,部分的に辛口の評もあるが,全体としては非 常にすばらしい写真集であることは間違いない.これ にとどまらず,さらにその 2,その 3 と刊行していく つもりと聞いているので,今回の書評が少しでも参考 になれば幸いである.

  (筑波大学生命環境科学研究科 渡邉 信)

(2)

書  評

─ 74 ─  本書の「はしがき」に『洋の東西を問わず,多くの 人たちは「微生物」と聞くと,まず「病気」や「バイ菌」

をイメージするようです.…(中略)…本書は,微生物 の世界を知る発端となることをめざして…』と書かれ ている.それを読んで,十数年前,研究室に新たに配属 になった時,先輩に尋ねられた時のことを思い出した.

 「君の専門は何?」「細菌を扱っています」「ふーん,

バイキンか」「……」

 その先輩は生態学を専らとしている気鋭の研究者で あった.生物学者でも微生物に対する認識はその程度 のことかと思ったことを,本書の「はしがき」を読ん で思い出した.では,微生物を専門に研究している我々 はどうか.微生物は多様であり,また研究分野も多様,

研究者の興味も多岐に亘っている.大学では一通りの ことを学んできたはずであるが,自分の専門が深くな るほど,自分が対象としている分野,微生物群以外の ことについては目が届かなくなっていく.本書を読ん でいて,最新の微生物研究の進歩にはついていけずに いることに気がつき,興味を持って読むことができた.

 本文は 6 章で構成され,微生物と人間とのかかわり について 22 名の専門家が様々な角度からとらえてい る.微生物は大型の動植物と異なり,直接目にするこ とができない,見ようと努力しなければ見えない生き 物である.第 1 章「地球の生い立ちと生命の歴史」で は,地球に生物が誕生してから今日に至るまで,地球 環境と生態系の形成に微生物が果たしてきた役割につ いて説き起こし,第 2 章「微生物学の歴史」において は,そのような微生物の存在に我々がどのようにして 気づき,認識してきたのか,その研究の歴史を簡単に 振りかえっている.見えない生き物を我々はどのよう にして認識することができたのか.顕微鏡の力を借り てその存在に驚き,あるいは,微生物が引き起こす様々 な現象,実験結果からその存在や働きを確信した往時 の人たちの驚きの中には,微生物を研究する時の面白 さが凝集している.

 第 3 章「微生物の種類」では,多様な微生物が存在 することを分類学的な立場から紹介し,第 4 章「地球 環境の微生物たち」では,地球上に存在する微生物の 多様な世界を主に微生物の持つ機能の面から紹介して

いる.第 4 章前半の 2 節では物質循環に多様な微生物 群が関わることで地球という生態系が成立していると いうことを,第 1 章よりも詳細に説明している.後半 の 2 節は,高温と低温という 2 つの環境,通常の生物 にとっては耐え難い条件下でも活動する微生物群がい ることと,これらの微生物の適応機構の概要について 触れ,いまなお未知の事象が多く残されていることに,

これからの研究者の興味を駆り立てる.

 第 5 章「役に立つ微生物たち」では,我々の日常生 活と微生物の関わりについて,様々な角度から説かれ ている.本書副題にもあるような『身近な生命』とし て,我々の生活に密接な食品,医薬品,そして産業と 微生物の関わりについて,最新の話題を中心に専門家 が平易に解説している.その中で「発酵と腐敗」,「薬 効と毒性」,「寄生と共生」,「生合成と生分解性」など,

人間の側から見たときの微生物の活動に 2 面性がある ということと,これらをうまく利用していくことが重 要であるということを感じさせられた.

 第 6 章「バイオ研究の課題─生態系への影響と世界 の対応」は,現在の微生物利用,微生物研究の面して いる課題,すなわち,バイオテクノロジーと環境影響 の問題,そして,我々の生活環境の変化に伴い新たに 生じる感染症の問題について触れている.この最後の 章には抽象的な内容も含まれ,これまでの各章に比べ るとやや難しい印象があるが,取り上げられている課 題は我々研究者自身への問いかけでもあると思う.

 本書の記述は全体に平易であるが,さらに,専門的 な用語についてはコラムや囲み記事で補うことで生物 学の知識のない人にも理解できるように配慮され,各 章ごとに参考文献も豊富にあげられている.また,各 章の記述が独立しており,興味のある部分だけを読ん でも良いし,口絵の写真だけを見ていても美しい.本 書を学校の図書室において,中学生,高校生に気軽に 手にとって読んでもらえば,微生物という「見えない 生き物」を単に教科書の中の知識としてではなく,よ り身近な生き物として興味を持ってもらえるのではな いか.『微生物の世界を知る発端となる』という本書 の目的は,十分達せられると思う.

  (独立行政法人国立環境研究所 広木幹也)

微生物ってなに?

─もっと知ろう!身近な生命─

編著:日本微生物生態学会教育研究部会 発行:日科技連出版社

ISBN 4‑8171‑9194‑5,A5 判 204 ページ,定価 2,100 円(税込)

Referensi

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