意見
自動車リサイクル法の費用徴収方法と時期に 関して
慶應義塾大学経済学部 3 学年
自動車廃棄物班
前田 陽一 瀬川 晋 新井 紫織 白田 要
費用徴収方法と時期に関して
費用徴収方法と時期は、自動車リサイクル法が効果的に働くかどうかの重要な鍵を握 っています。このパブリックコメントでは、環境省産業構造審議会環境部会廃棄物・リサ イクル小委員会第9回自動車リサイクルWGを私たちが傍聴させて頂いた時に頂きました 新たな自動車リサイクルシステムの構築に向けて<自動車リサイクルに関する制度化に向 けた考え方>(案)(以下、<考え方>)を参考に、<考え方>の中にあります費用徴収方 法と時期のA方式からF方式までを分析した後に、私たちの考える費用徴収方法と時期を 提案させていただきたいと思います。
では、まず<考え方>の中にある審議会の考える費用徴収方法と時期について確認さ せていただきたいと思います。
(以下、斜字は考え方の中の映し)
自動車リサイクル法の費用徴収方法と時期の審議の現状
不法投棄の増加懸念を招かないとの観点や料金の回収ロスが少ないなどの優位性から、
新車購入者が当該自動車のリサイクル・処理に要する費用をリサイクル料金として前 払いする方法(新車時徴収)とする。既販車については、リサイクル検討の活用発行 等による任意時点徴収とする。が、一定の期限を設定して徴収することについても検 討する。
ユーザーがリサイクル料金を支払ってから、当該自動車がリサイクル・処理されるま での間、自動車メーカー等の倒産・解散などによりこれによる滅失することがないよ うにするためには、公的な資金管理主体(公益法人を想定)による資金の徴収、管理
(運用)、支払いといった制度が考えられる。その際の課税問題について引き続き調整 が必要であるとともに、資金管理及び、ここの自動車毎に徴収された料金を管理する など透明性の高い資金管理を行うとともに、公的な資金管理主体自体の運営に関する 高い透明性、公開性の確保が必須。
ユーザーが支払ったリサイクル料金と、実際のリサイクル・処理にかかった費用との 過不足は、原則として自動車メーカー等が負担する。(自動車メーカー等の責任に帰す ことができない理由(例:災害、急激なインフレ等)による著しい過不足に備え何ら かの仕組みも必要。)
輸出等を理由とする自動車の抹消登録(15条抹消)を終えたユーザーに対し、請求 に応じて料金を返還する。
と、<考え方>の中にありますように、新車販売時徴収のA方式とB方式を念頭に自動車 リサイクル法の費用徴収方法と時期を審議されていますが、私たちは、<考え方>の中で 指摘されています廃棄時徴収方法を取ると不法投棄の懸念があるという部分、ならびに、
販売時徴収方法の費用調整問題に疑問を持っていますので、以下でさまざまな視点から、
<考え方>のA方式からF方式を分析し、他車充当方式・販売時徴収方法と自車充当方式・
販売時徴収方法、ならびに自車充当方式・廃車時徴収方法を比較検討していきたいと思い ます。
費用徴収方法 A 方式から F 方式の分析
A方式 自車充当方式・販売時徴収方法
新車に対しては新車購入時に当該自動車リサイクル費用を徴収。
既存車については排出時に当該自動車リサイクル費用を徴収。
B方式 自車充当方式・販売時徴収方法
新車については新車購入時に当該自動車リサイクル費用を徴収。
既販車については任意の時点で当該自動車リサイクル費用を徴収。
C方式 他車充当方式・販売時徴収方法
新車購入時に、当該自動車のリサイクル費用及び当該時点で排出される既販車のリ サイクル費用を徴収。
既存車が存在する時点では、新車購入者は自車の将来のリサイクル費用と他車(既 存車)のその時点のリサイクル費用を二重に負担することとなる。
リサイクル費用を徴収した新車が既存車に占める割合は年々増加し、最終的には自 車充当方式となる。
D方式 自車充当方式・廃棄時徴収方法
新車、既存車を問わず、排出時に当該自動車リサイクル費用を徴収する。
E方式 徴収は任意の時点
新車及び既存車を問わず、任意の時点で当該自動車リサイクル費用を徴収する。
経済情勢等に応じて柔軟に徴収時点を設定することが可能。(例えば、排出時点にお ける徴収から新車購入時点の価格上乗せへと円滑に変更可能。)
F方式 他車充当方式・販売時徴収方法
新車購入時にリサイクル費用を徴収し、その費用で当該時点で排出される自動車リ サイクル費用を補う。
使用便益享受者とリサイクル費用負担者が不一致である。既存車ユーザーのうち、
将来新車購入をしない者は、リサイクル費用を一切負担しない。
自車充当方式 廃棄時徴収
自車充当方式 販売時徴収
他車充当方式 販売時徴収
1. 既販車への対応 ○ * ○
2. 消費者への排出抑制効果 ○ △ Χ 3. 生産者のリサイクル制に配慮した製
品作りへのインセンティブ ○ ○ Χ
4. ユーザーからの不法投棄
△
(登録制度の問題) ○ ○
5. 消費者以外のディストリビューター
(ディーラー等)の不法投棄・海外輸 出への影響
Χ
(登録制度の問題) ○ ○
6. 徴収額の算定 ○ Χ ○
7. ユーザーの製品選択への影響 △ ○ Χ 8. 徴収されたリサイクル費用の
管理コスト
(公的資金管理法人の必要性) 不要 必要 不要 9. 生産者(ディーラー等も含む)の
適応を考えた実現可能性 Χ
△
(価格弾力性の問題) Χ 10. 使用便益享受者と
リサイクル費用負担者の一致 一致 一致 不一致 11. 輸出車両のリサイクル費用の取り
扱いについて対応の必要性 不要 必要 不要
12. 消費者へのわかりやすさ △ *
(費用算定問題)
Χ
13. 料金の回収ロス △ ○ △
14. 後付装着物への対応の必要性 不要 必要 不要
15. 引き取り品目が追加された場 合の対応
不要
必要
不要 16. 自動車を管理するデータベー
スの必要性
不要
必要
不要 17. 費用召集拠点の整備のための
コスト
多額
小額
小額
他車充当方式・販売時徴収方法(C・F 方式)
新車販売時に徴収した費用をその当該時点での使用後段階の自動車のリサイクル費用とし て扱う。
使用便益享受者とリサイクル費用負担者が一致しないことで、消費者にリサイクルしやす い製品を選択するインセンティブを与えず、また、生産者に対しても、より、リサイクル しやすい製品を作るインセンティブを与えません。
マイナス面
受益者と負担者が異なること
ユーザーから徴収する料金がその年の廃車数と新車販売数の関係で変動する等、合理 性にかけること
製品のリサイクル容易性と徴収する料金の水準との間に相関が弱く、自動車製造事業 者が設計・製造段階から3Rに配慮した自動車を製造使用としても、ユーザーがこのよ うな自動車を選択するインセンティブが働かないこと
自動車製造事業者等間の公平な競争が担保されないこと
⇒これらのマイナス点が挙げられるため、現在では、販売時徴収と廃棄時徴収を中心に議 論されている。
自車充当方式・廃棄時徴収(D 方式)
自動車リサイクル料金を自動車廃棄時に徴収
廃棄時徴収方法の問題点
徴収拠点整備のためのコストがかかる問題 ユーザーからの不法投棄の増加の問題
ディーラー等からの不法投棄増加の問題 再資源化業者からの不法投棄の増加
廃棄時徴収方法がとられた場合に懸念される不法投棄は、ユーザーからの不法投棄と ディーラー等からの不法投棄とに分けられると考えます。
A, ユーザーからの不法投棄
ユーザーからの単純なリサイクル料金の支払い忌避による不法投棄については、
自動車登録・届出制度により管理されているユーザー情報を活用した、警察等に よる取締りの強化や違反の場合の罰則の強化等の手段により、増加を防ぐことも 可能である。
このように、<考え方>の中にもあることから、廃棄時徴収方法が取られたとし ても、ユーザーからの不法投棄はあまり増えないのではないか、ということが言
えるのではないでしょうか。
B, ディーラー等(新車または中古車販売事業者・整備事業者など)からの不法投棄 自動車の商品としての特性と使用済み自動車の現在のフローを確認しなければな
らなりません。
自動車の商品としての特性
① 新車販売が毎年600万台程度、排出される自動車が500万台程度、既販 車が7250万台程度存在する。
② 複数のユーザーを流通することが一般的である。
③ 製品としてのライフサイクルが平均で10年程度である。
④ 購入者のうち、新規購入者は約1割程度であり、その他の購入者は買い替え 又は増車である。
上記のように、毎年排出される自動車は500万台程度存在し、この500万台 の自動車(100万台は輸出される)がどのように解体事業者に引き渡されるかを見 ますと、自動車ディーラーから解体事業者に引き渡されるものが25%、中古車 専門店・整備事業者から解体事業者に引き渡されるものが70%を占めています。
このデータは、自動車ユーザーが新車購入時にディーラー等(ディーラー・中古 車専門店・整備事業者)に使用済み自動車を下取りしてもらい、その引き取った 使用済み自動車をディーラー等が解体事業者に引き渡しているケースが約95%
あることを示し、名目的には最終廃棄者は自動車ユーザーであるが、実質的には 自動車ディーラー・中古車専門店・整備事業者が最終廃棄者となり、廃棄時徴収 方法がとられると、これらの業者が自動車リサイクル料金を負担しなくてはなら ないケースが起こることを示します。
よって、廃棄時徴収方法をとった場合、中古車専門店が引き取った使用済み 自動車が中古車として価値がなく売れなかった場合、もしくは、自動車ユーザー の新車購入時・増車時にディーラー等が使用済み自動車を無償引き取りしたにも かかわらずその自動車に価値がなかった場合などは、自動車リサイクル費用負担 者は、自動車ディーラー・中古車専門店・整備事業者となります。これらの事業 者がそのリサイクル費用の支払いを避けるために、不法投棄をするということは 大いに考えられます。というのは、自動車ユーザーから自動車ディーラー等が引 き取った車に関しましては、自動車を一時登録抹消状態にしますので、不法投棄 をしても一時抹消状態の車の最終ユーザーの摘発は困難であることから、自動車 のプロである自動車ディーラー、中古車専門店、整備事業者による不適正処理に より、不法投棄されることが懸念されます。
よって、私たちが<考え方>の中で、疑問に思いますのが、廃棄時徴収方法 を取ると懸念されるのは、ユーザーからの不法投棄ではなく、ディーラー等から の不法投棄ではないかということ。また、<考え方>に自動車ユーザーからの費
用回収ロスとありますが、この部分もユーザーからの費用回収ロスでなく、ディ ーラー等からの費用回収ロスではないかと思います。
以上の点から、廃棄時徴収方法が取られる場合には、自動車ユーザーから自 動車リサイクル費用の徴収・確保ができず、ディーラー等にその処理コストを負 担を求めるケースが生まれること、さらに、ディーラー等がその処理コスト負担 の回避のために、不法投棄の増加の懸念が生まれるということになります。
* この点、新車販売時徴収の場合は、当該自動車に係るリサイクル費用を新車 販売時に予め確保された状態となり、使用自動車の排出に当たってユーザー や、自動車ディーラー、中古車専門店、整備事業者に新たな経済的負担がな いため、自動車ユーザー、ディーラー等からの不法投棄の懸念はなくなり、
引き取り者の役割が明確になります。
C, 自動車ディーラー、中古車専門店、整備事業者の適用可能性
廃棄時徴収方法が取られる場合には、ディーラー等にその処理コストの負担 を求めるケースが生まれることから、自動車ディーラー、中古車専門店、整備事 業者らは、廃棄時徴収方法よりも、新車販売時に自動車ユーザーから自動車リサ イクル費用を徴収・確保できる販売時徴収方法を好むのではないかと思われます。
D, 海外市場への影響
自動車ディーラー等が自動車リサイクル費用の負担回避のため、自動車を廃 棄することを拒み、中古自動車市場や海外市場に不必要に自動車を流す可能性が あります。
以上のように、私たちは廃棄時徴収方法をとる場合懸念されるのは、自動車ユーザーから の不法投棄というよりも、ディーラー等からの不法投棄であり、また、料金の回収ロスの 面でも、自動車ユーザーからの回収ができないことが問題でなく、使用済み自動車を引き 取りした新車もしくは中古車販売事業者からの処理費用の回収ロスが問題なのではないか と思います。
自車充当方式・販売時徴収方法
(A・B 方式)
新車販売時にリサイクル費用を徴収し、その費用を、その車に当てる
<考え方>の挙げる販売時徴収のメリット
不法投棄の増加の懸念が少ないこと(地方公共団体等から新車時徴収を支持する意見 が多いこと)
料金の徴収コスト、回収ロスが少ないこと 消費者にとってわかりやすく、負担感が少ないこと
販売時徴収方法のデメリット
販売時に徴収された資金の管理方法の検討が必要である。
A, 公的な資金管理団体(公益法人)による資金の管理
自動車製造事業者等の倒産、解散等による徴収した料金の滅失を防止する方策 B, 自動車製造事業者による資金管理
既販車について別途制度を構築する必要があること 個人輸入車・並行輸入車への対応が必要であること
国内の全自動車を管理するデータベースの構築・管理が必要であること
新車について将来必要となるコストを販売時点で予測することは極めて困難であるこ と(費用調整問題)
この費用調整問題に関しては、非常に疑問が残ります。新車ユーザーから徴収す る費用より実際に廃棄時にかかるリサイクル費用が高かった場合、その費用変動リス クはメーカーがとるということになっていますが、メーカーは、その費用変動リスク を回避するため、販売時に徴収する費用を高めに設定することになるでしょう。
また、自動車のライフサイクルは約10年ということから、その10 年の間にリサ イクル技術進歩の結果、徴収された自動車リサイクル料金と実際にかかった費用との 差は確実に開くものと思われます。
これらの理由から余剰が必ず出ると考えられ、これら余剰は自動車リサイクルシ ステムの活性化・高度化のための費用として有効に活用すべきであるとされています が、国民はこれを理解するでしょうか。
自動車リサイクル料金は、実際にリサイクルにかかる費用によって決まるように 見えますが、実際はリサイクルにかかる費用に加え、そのリサイクルシステムの経費
(自動車メーカーの保険料)も含まれたものですので、資料には販売時徴収方法が消 費者にとってわかりやすいと書かれていますが、逆にこの費用調整問題が消費者に不 透明さを与えかねないということもできるかと思います。
この販売時徴収方法をとる場合には、新車購入時に廃棄時にかかると予想される 費用とその費用の算定方法を明示することで避け、また、資金管理団体のその余剰の 扱いについては情報を公開することで、透明性を確保しようとするのでしょうが、販 売時徴収方法を取ると、どうしてもこの費用徴収方法は避けて通れません。
今後、この販売時徴収方法を取る場合は、余剰の使用方法または条件を検討し、
明示することが必要となると思います。
後付装着物や引き取り品目が追加された場合への対応が必要であること 輸出等により不要となったリサイクル費用の取り扱いについての対応が必要
販売時徴収方法と廃棄時徴収方法のどちらが 安く費用徴収をできるか
以上のように、私たちは、A方式から F方式までを分析しましたが、C 方式・F方式に関 しましては、上記のように問題も多くありますので、実現可能性は低いものとし、以下で は、上記のように分析した上で、果たして販売時徴収方法と廃棄時徴収方法にかかる社会 的コストはどちらのほうが安いかを考えてみたいと思います。
(*インフラ整備にかかるコスト)
販売時徴収方法にかかる費用
1、 自動車リサイクル費用を管理するコスト
2、 全自動車を管理するデータベースの管理にかかるコスト 3、 *全自動車を管理するデータベースの構築にかかるコスト 4、 *リサイクル料金を徴収する拠点の整備コスト
廃棄時徴収方法にかかる費用
1、 不法投棄の回収・処理にかかるコスト
(費用回収のロス・不適正処理の防止にかかるコスト)
2、 *自動車リサイクル料金徴収拠点整備のためのコスト
以上のように、各方法にかかる費用を挙げることができると思います。ここで私たちは、
インフラの整備にかかる費用を抜かしまして、毎年度にかかる費用である、販売時徴収方 法の1、自動車リサイクル費用を管理するコスト・2、全自動者を管理するデータベース の管理にかかるコスト、廃棄時徴収方法にかかります不法投棄の回収・処理にかかるコス トを比べたいと思います。
A, 廃棄時徴収方法をとっても不法投棄が大幅に増加しない場合
まず、私たちはA パターンとし、廃棄時徴収方法がとられても、自動車登録制度が機 能し、ユーザーからの不法投棄、また、ディーラー等からの不法投棄が増加しないケース を想定してみました。
販売時徴収方法にかかるコスト > 廃棄時徴収方法にかかるコスト 自動車リサイクル費用の管理コスト 不法投棄の回収・処理コスト 全自動車を管理するデータ管理コスト
このA パターンで、不法投棄が大幅に増加せず、その不法投棄の回収・処理にかかるコス トが販売時徴収方法にかかる自動車リサイクル費用の管理コスト・全自動車を管理するデ
ータ管理コストを下回るとしますと、販売時徴収方法のコストがそのメリットである不法 投棄増加の懸念がないというものを上回ります。この際、廃棄時徴収方法が消費者にわか りやすいものと判断されるならば、廃棄時徴収方法をとるべきであるということができる でしょう。
B, 廃棄時徴収方法をとると、不法投棄が大幅に増える場合
次に、Bパターンとして、自動車登録制度がまったく機能せず、販売時徴収方法が取られる とユーザーからの不法投棄、ならびにディーラー等からの不法投棄が大幅に増えると想定 された場合を考えます。
販売時徴収方法にかかるコスト < 廃棄時徴収方法にかかるコスト 自動車リサイクル費用の管理コスト 不法投棄の回収・処理コスト 全自動車を管理するデータ管理コスト
この場合は、販売時徴収方法の不法投棄の懸念がないというメリットが販売時徴収方法に かかるコストを上回っていますので、販売時徴収方法を取るべきであるかもしれません。
しかし、販売時徴収方法には、上記のA方式からF方式の比較の表を見てもらいます とわかりますように、避けて通れない問題があります。
まず、販売時徴収方法では、既販車への対応が必要となりますし、また、後付装着物 への対応、引き取り品目の追加が決まったときの対応、輸出車両への対応も必要となりま す。そして、何よりも徴収費用の算定問題・費用調整問題が残ります。この部分で、透明 性が確保されず、消費者からの理解が得られなければ、販売時徴収方法を取ることは賢明 ではないでしょう。
ここまでのポイント
1. 廃棄時収方法にした場合、不法投棄がどれだけ増えるのか、予測し、その回収・処理 コストを算定する必要がある。
2. 販売時徴収方法を取る場合かかる、徴収された自動車リサイクル費用を管理するため のコスト、全自動車の管理のためのデータベース管理コストを算定するべきである。
3. 販売時徴収方法を取れば、費用調整問題が残ってしまう。
≫ 廃棄時徴収方法にしても不法投棄が増えず、その回収・処理にかかるコストより、販 売時徴収方法で必要な徴収された費用管理コスト、データベース管理コストの方がか かる場合は、廃棄時徴収方法をとるべきである。
不法投棄が大幅に増え、廃棄時徴収方法がとれない場合 もしくは、廃棄時徴収方法が消費者にとってわかりにく く、また、料金の回収ロスが多く出て、自動車リサイク ル料金が確保できない事態が懸念され、廃棄時徴収方法 がとれない場合
ここで、私たちの提案したいのが、デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型とい うものです。
デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型
自動車ユーザーから自動車販売時に、デポジットとして、ある一定の料金を徴収し、自動 車リサイクル資金管理法人で、その資金をその自動車のライフサイクルが終わるまで、預 かっておき、(使用便益享受者と自動車リサイクル費用負担者は一致)自動車ユーザーが廃 棄する時、そのデポジット額を返し、自動車リサイクル料金を徴収する方法。
名目的なデポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型
自動車ユーザーから廃棄時に自動車リサイクル料金を徴収するので、廃棄時徴収方法とい うことができます。
実質的なデポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型
自動車ユーザーは、自動車購入時に自動車リサイクル資金管理法人に自動車リサイクルに かかるデポジットを預け、自動車廃棄時にそのデポジットの中から自動車リサイクル料金 を支払うので、販売時徴収方法となります。
(デポジット額を販売時徴収。そのデポジット額から自動車リサイクル料金を徴収し、そ のデポジット額と実際にかかる自動車リサイクル料金の差額をお釣りとして自動車ユーザ ーに返すという、販売時徴収にないお釣りを支払えるシステム)
自車充当方式 廃棄時徴収
自車充当方式 販売時徴収
デポジット制度 廃棄時徴収方法 ハイブリッド型
1、既販車への対応 ○ * *
2、消費者への排出抑制効果 ○ △ △
3、生産者のリサイクル性に配慮した
製品造りへのインセンティブ ○ ○
○
4、ユーザーの不法投棄 △
(登録制度の問題) ○
○
5、ユーザー以外のディストリビュータ ーの不法投棄・海外輸出への影響
Χ
(登録制度の問題) ○
○
6、徴収額の算定 ○ Χ ○
7、ユーザーの製品選択への影響 △ ○ ○
8、徴収されたリサイクル費用の管理コ
スト 不要 必要 必要
9、生産者の適応を考えた実現可能性
Χ
△
(価格弾力性による)
△ 10、使用便益享受者と
リサイクル費用負担者の一致 一致 一致 一致
11、輸出車両への対応 不要 必要 不要
12. 消費者へのわかりやすさ △ *
(費用算定問題の 透明性による)
○
13. 料金の回収ロス △ *
(費用算定問題)
○
14. 後付装着物への対応の必要性 不要 必要 不要
15. 引き取り品目が追加された場合の 対応
不要
必要 不要 16. 自動車を管理するデータベースの
必要性
不要
必要 必要 17. 費用召集拠点の整備のための
コスト
多額
小額 小額
表を見て頂けますとわかりますように、このデポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッ ド型では、廃棄時徴収方法の問題点と販売時徴収方法の問題点を解決することができます。
廃棄時徴収方法の問題
1. ユーザーからの不法投棄の増加の問題 ディーラー等からの不法投棄の問題
販売時に自動車ユーザーから自動車リサイクルに係るデポジットを徴収し、廃棄時そ のデポジット額の中から自動車リサイクルにかかる費用を徴収するので、販売時徴収方 法と同様に自動車リサイクルにかかる費用を確保していることになり解決。
2. 徴収拠点整備のためのコストがかかる問題
徴収拠点整備に関しては、デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型では、販 売時徴収方法と同様に販売時に自動車リサイクルにかかるデポジット額を徴収するの で、徴収拠点の整備の費用は、販売時徴収方と同じく、小額ですむと考えます。
3. 自動車ユーザーからの費用回収のロスの問題
販売時に自動車ユーザーから自動車リサイクルにかかるデポジット額を徴収し、その 中から自動車リサイクル料金を徴収する。つまり、販売時に自動車リサイクルにかかる 料金を確保しているため、問題はないと考えます。
4. 自動車ユーザー又は自動車ディーラー等が、廃棄時に料金を徴収されることを避ける ため、自動車を廃棄することを拒み、中古自動車市場や、海外市場に不必要に自動車 を流す可能性がある問題
廃棄時徴収方法の場合と違い、デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型では、
自動車ユーザーから、自動車リサイクルにかかるデポジットを徴収・確保しているた め、自動車ディーラー等に自動車リサイクル費用負担を求めるケースはなく、中古自 動車の輸出にドライブがかかるような状況は生み出さないと考えます。
販売時徴収方法の問題
1. 既販車への対応の問題
デポジット制度・廃棄時支払いハイブリッド型でも、販売時徴収方法と同じく、自動 車リサイクルにかかるデポジットを新車販売時に徴収するため、既販者への対応が必 要となります。
この点は、販売時徴収方法と同じように対応する必要があると考えます。
A方式型: 既販車に対しては、廃棄時徴収で対応
B方式型: 任意の時点で、自動車リサイクル費用を徴収することで対応
2、リサイクル費用算定問題・費用調整問題
デポジット制度・廃棄時支払いハイブリッド型では、廃棄時に自動車リサイクル料金 を徴収するので、廃棄時徴収方法同様、費用調整問題は起こらないと考えます。また、
消費者は、デポジット額と実際に自動車リサイクルにかかった費用の差額を受け取る ことができるので、資金管理団体の透明性は販売時徴収方法の場合よりも透明性が高 いと思われます。
3、自動車リサイクル費用を管理するコストの問題
デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型では、販売時に自動車リサイクルに かかるデポジットを徴収するため、販売時徴収方法と同じく、自動車が廃棄されるま での約10年間、自動車資金管理団体などでの資金管理・運営が必要となります。この 自動車資金管理団体の運営費用・資金管理費用は販売時徴収方法と同じく必要となり ます。
4、全自動車を管理するデータベースの構築・管理のコストの問題
販売時徴収方法と同じく、デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型でも、自 動車ユーザーから販売時にいくらデポジットとして預かっているのか確認できるよう なシステムが必要となります。この全自動車を管理するデータベースの構築・管理に かかるコストは、デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型でも同様に必要と なります。
5、輸出車両が出た場合、自動車リサイクル料金の取り扱いへの対応の必要性。
デポジット制度・廃棄時支払方法ハイブリッド型では、デポジット額と実際に自動車 リサイクルにかかった費用の差額を消費者に返すことのできるシステムを前提として いるため、輸出車両が出た場合でも、容易に、自動車ユーザーにデポジット額の返却 ができるものと考えます。
6、後付け装着物や引き取り品目が追加された場合の対応の必要性
デポジット額が、ライフサイクル終了後にかかると予測される自動車リサイクル費用 よりも高く設定されている場合は、そのデポジット額から、後付け装着物にかかるリ サイクル料金、もしくは、追加された引き取り品目にかかるリサイクル料金を徴収す ることが可能であると考えます。
デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型の問題
生産者の適応を考えた実現可能性
デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型では、デポジット額が、自動車リサ イクル料金より高く設定されることが前提としてあるため、デポジット制度・廃棄時 徴収方法ハイブリッド型だと、販売時徴収により徴収する自動車リサイクル料金より も多くデポジット額を集めなくてはなりません。
自動車製造業者が、実質的に自動車価格が上昇することによる自動車需要の低下を懸
念する場合、自動車製造業者の賛成は得られない可能性があります。
≫ デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型を取る場合は、デポジット額をいく らに設定するのかが問題となります。
ここで、販売時徴収方法にかかるコストとデポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド 型にかかるコストを比較検討してみたいと思います。
デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型にかかるコスト 自動車リサイクル費用を管理するコスト
徴収拠点整備のためのコスト
全自動車を管理するデータベース管理のコスト
以上の3点のコストに関しては、販売時徴収方法にかかるコストと同様。
デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型では、販売時徴収方法のシステムに加え、
自動車ユーザーに徴収されたデポジット額と実際にリサイクルにかかる費用との差額を返 却できるメリットがありますが、この返却のためのコストが販売時徴収方法に加え必要と なります。
デポジット金額と実際にかかるリサイクル費用との差額を返却するシステムにかかる コスト
と、以上のように、デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型を取るには、差額を 返却するシステムにかかるコストが、販売時徴収方法にかかるコストに比べ、追加的に必 要となります。しかし、注目すべきは、デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型 には、廃棄時徴収方法のメリットでもある輸出車両への対応が不要であること、後付装着 物への対応が可能であること、引き取り品目が追加されでも対応が可能であること等のメ リットがあり、そして、何よりも、デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッド型が取 られると、販売時徴収方法の避けられぬ問題である費用算定問題・費用調整問題が避けら れることになります。これらの点において、デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブリッ ド型では、差額返却の追加的コストはかかるものの、上記のようなメリットがありますの で、販売時徴収方法よりも優れた方法であると私たちは考えます。
廃棄時徴収方法を取り不法投棄が大幅に増え、その回収・処理にかかる費用が、販売時徴 収方法にかかる自動車リサイクル費用を管理するコスト、全自動車を管理するデータベー スにかかるコストを上回ると算定された場合は、デポジット制度・廃棄時徴収方法ハイブ リッド型を取るのが良いと思われます。
まとめ
廃棄時徴収方法にした場合、ユーザーからの不法投棄がどれだけ増えるのか、予測し、
その回収・処理コストを算定する必要がある。
販売時徴収方法を取る場合かかる、徴収された自動車リサイクル費用を管理するため のコスト、全自動車の管理のためのデータベース管理コストを算定するべきである。
販売時徴収方法を取れば、費用調整問題が残ってしまう。また、この費用調整問題は、
消費者に不透明さを感じさせる可能性がある。
廃棄時徴収方法を取っても不法投棄が大幅に増えることなく、その回収・処理にかかかる コストが、販売時徴収方法にかかる自動車リサイクル費用を管理するコスト、全自動車を 管理するデータベース管理にかかるコストを下回る(販売時徴収方法にかかるコストが不 法投棄増加の懸念がないというメリットを上回る)と算定された場合、自車充当方式・廃 棄時徴収方法を取るべきである。
廃棄時徴収方法を取ると不法投棄が大幅に増え、その回収・処理にかかるコストが多大に かかり、そのコストが、販売時徴収方法にかかる自動車リサイクル費用を管理するコスト、
全自動車を管理するデータベース管理にかかるコストを上回ると算定された場合は、デポ ジット制度・廃棄時徴収方法を考慮することが望ましい。