数学序論演習問題
2014年7月23日(水)
1
1. 恒等写像は単射であることを示せ. 2. 恒等写像は全射であることを示せ.3. 真部分集合の包含写像は全射ではないことを示せ.
解答例
X を集合とする.
1. x1, x2 ∈Xとし, id(x1) = id(x2)であるとする. このときx1 = id(x1) = id(x2) =x2. よってid は単射.
2. x∈Xとする. このときid(x) =xだから, idは全射.
3. i. A(X を真部分集合とし,j:A→X を包含写像とする. A6=Xだから,あるx∈Xが存在 して, x6∈Aとなる. 任意のa∈Aに対し,j(a) =a∈Aであるから,j(a) =xとなるような a∈Aは存在しない. よってjは全射ではない.
ii. A(Xを真部分集合とし,j:A→X を包含写像とする. 任意のa∈Aに対し,j(a) =a∈A であるから, j(A) ={j(a) a∈A} ⊂A(X. ゆえにj(A)6=X. よって定理11.7よりjは 全射ではない.
(ここではj(A)⊂Aということを示したが, 実は, すぐわかるように, j(A) =Aとなってい る.)
iii. 対偶を示す. すなわち「A⊂Xを部分集合とし,j:A→X を包含写像とする. jが全射であ れば,A=Xである」ことを示す.
A ⊂X を部分集合とし, 包含写像j: A → X が全射であると仮定する. X ⊂Aを示せば よい. x ∈ X とする. j は全射なので, あるa ∈ Aが存在してj(a) = xとなる. よって, x=j(a) =a∈A. ゆえにX ⊂A.
2
A={1,2,3},B ={1,2}とする.1. AからBへの写像は全部でいくつあるか?
2. AからBへの写像で全射でないものはいくつあるか? 3. AからBへの全射はいくつあるか?
4. AからBへの単射はあるか?
5. BからAへの写像は全部でいくつあるか? 6. BからAへの単射はいくつあるか? 7. BからAへの全射はあるか?
解答例
1. 1,2,3∈Aそれぞれの行き先として1,2∈Bの2通りあるので, 23= 8通り. よって8個. 2. 全射でないのは, 1 ∈Bが像に入っていないか, 2∈ Bが像に入っていないかのいずれかである.
1∈Bが像に入っていないときは1,2,3∈Aが全て2∈Bに写る. 同様に, 2∈Bが像に入ってい ないときは1,2,3∈Aが全て1∈Bに写る. よって全射でないのは,この2つ.
3. 8−2 = 6個.
4. 1,2,3∈A全てが異なる元に写るとすると,像は3個の元を含まなくてはならない. Bには2個し
か元がないので,単射は無い. 5. 1と同様に考えると, 32= 9個.
6. 1∈Bの行き先は1,2,3∈Aの3通り. それぞれに対し, 2∈Bの行き先は残りの2つの元のいず れか. よって3×2 = 6個.
7. 像の元の個数は高々2個. よって全射は無い.
3
X,Y,Z を集合,f:X →Y, g:Y →Zを写像とする. このとき次は正しいか. 正しければ証明し,正 しくなければ反例を挙げよ.1. g◦fが単射ならばgも単射である. 2. g◦fが全射ならばf も全射である. 解答例
X =Z={1},Y ={1,2}とし,写像f, gをf(1) = 1,g(1) =g(2) = 1と定めると, 1,2いずれも成り 立たない. 詳細は略.
4
f:X → Y を単射, Sを集合とする. このとき, 写像g1, g2:S → X がf ◦g1 =f◦g2をみたせば, g1=g2であることを示せ.解答例
写像g1, g2:S→Xがf◦g1=f◦g2をみたすとする.
s ∈S とする. 仮定よりf(g1(s)) =f ◦g1(s) =f ◦g2(s) =f(g2(s))である. f は単射であるから, g1(s) =g2(s).
よってg1=g2.
5
f:X →Y を全射,T を集合とする. このとき, 写像h1, h2:Y →T がh1◦f =h2◦f をみたせば, h1=h2であることを示せ.解答例
写像h1, h2:Y →T がh1◦f =h2◦f をみたすとする.
y ∈ Y とする. f は全射であるからある x ∈ X が存在して, y = f(x)となる. よって, h1(y) = h1(f(x)) =h1◦f(x) =h2◦f(x) =h2(f(x)) =h2(y).
よってh1=h2.
6
f:X →Y, g, h:Y →Xを写像とする. g◦f = idX,f ◦h= idY が成り立てば,f は全単射であり, g=h=f−1であることを示せ.解答例
g◦f は恒等射ゆえ単射,よってf は単射. f◦hは恒等射ゆえ全射,よってf は全射. したがってf は 全単射. また
g=g◦idY =g◦(f◦f−1) = (g◦f)◦f−1= idX◦f−1=f−1
=g◦(f◦h) = (g◦f)◦h= idX◦h=h.
7
X,Y,Zを集合,f:X →Y,g:Y →Zを写像とする. このとき次を示せ. 1. f,gがどちらも単射ならばg◦f も単射である.2. f,gがどちらも全射ならばg◦f も全射である.
3. f,gがどちらも全単射ならばg◦f も全単射である. 解答例
1. x1, x2 ∈X とし, g◦f(x1) =g◦f(x2)とする. このとき, g(f(x1)) = g◦f(x1) =g◦f(x2) = g(f(x2))であり,仮定よりgは単射なので,f(x1) =f(x2). 仮定よりfは単射なので,x1=x2. 2. z ∈ Z とする. 仮定よりg は全射なので, あるy ∈ Y が存在して z = g(y) となる. 仮定
よりf は全射なので, この y に対して, あるx ∈ X が存在してy = f(x)となる. よって z=g(y) =g(f(x)) =g◦f(x). よってg◦fは全射.
3. 1,2より明らか.