Exercise in Mathematics IIA 数学演習 IIA
Exercise in Topology 位相演習
平場 誠示 (Seiji HIRABA) 作成
はじめに
『位相』は難しい! !苦手! !嫌い! ! と言う人が殆どではないかと思う。
言葉や定義がやたら沢山あり、似たような言葉に、似たような定義、さらに、定義と同値な命題 がいくつも! ?しかも, 教科書によって定義が違ってたりもする。
問題を解くのもチンプンカンプン! !意味すら分らない。例え意味が分ったとしても、一体何を すれば良いのやら???
大事なのは、本質を見抜いて、流れを理解すること。そうすれば、証明や問題はその流れの中 で、ちょっとしたキーワードと共に、自分で見通せるようになる。
細かい違いを覚えようとするのではなく、何故、そんな定義が必要なのか?その違いから、どう いうことが分かるのか?もし自分で定義しようとしたら、どう考えるか?などを自問自答しなが ら、読み進めば、自ずと答えが見えてくるであろう。
目 次
1
位相(Topology)
22
近傍系
(Neighborhoods Systems) 33
連続写像
(Continuous Mappings) 54
部分空間, 直積空間
(Subspaces, Product Spaces) 5後期の内容(数学演習 IIB )
連結性
(Connectivity)コンパクト性
(Compactness)分離公理 (
Separating Axioms)距離空間
(Metric Spaces)以下の問で, 「定義や命題を述べよ」という問題については, できるだけ, 言葉のみと論理記号
(+単語)のみの両方で述べよ. また, 命題についてはその証明(の概略)も述べよ.
例えば, 位相空間での連続写像とは, 開集合の引き戻し(逆像)が開集合となること.
f : (X,OX)→(Y,OY)
が連続
⇐⇒ f−1(OY)⊂ OX, i.e., ∀V ⊂Y: open,f−1(V)⊂X: open.1 位相( Topology)
「位相」とは何か?簡単に説明すると, 近さを測るための構造である.
現代においては, 距離を用いて, 統一的に近さ・遠さを知ることができる. しかし, 例えば, 原始 時代を考えれば, 当然, 統一的な距離という概念があったとは考えられない. では近い・遠いをどう 表せば良いのか. (日本では戦国時代に, 殿様の掌の長さを基準にしていたという話があるが, こ れは一種の距離と言えるだろう.)
原始的に考えれば, 例えば, 体に触れるものは「非常に近い」, 手を伸ばして届く範囲にあるも のは「かなり近い」、足を伸ばして届くものは「まあまあ近い」、一歩踏み出して届くものは, 「近 い」、目に見える範囲にあるものは「普通」それ以外は「遠い」と定義することができるだろう. こ の概念が「近傍系」と呼ばれるものであり, 更に抽象化したものが「位相」と呼ばれるものである.
問
1.1次の言葉の英語と定義を述べよ.
位相、位相空間、開集合、離散位相、密着位相(自明な位相)、相対位相、部分(位相)空間、
閉集合
位相 (topology)とはある集合の部分集合の集まり(部分集合族)で,全体集合と空集合を含み,和につ いて閉じていて,交わりについては,有限個であれば閉じているものをいう.(尚,和についてはいくら多くて も構わない. 無限個であっても良くて,しかも,その個数の濃度は可算無限はおろか連続無限,さらにそれより 多くても構わない.)全体集合と位相を組み合わせたものを位相空間 (topological space)といい,位相の各 元を開集合(open set)という. 言い換えれば,位相とは開集合の全体をいう. また開集合の補集合を閉集合 (closed set)という.
(S,O): top. sp. ⇐⇒def S: a set,O ⊂2S: S の位相,即ちSのある部分集合族で次を満たす. (i)∅, S∈ O. (ii)Aλ∈ O(λ∈Λ)⇒∪
λ∈ΛAλ∈ O. (iii)∀n≥2, B1, . . . , Bn∈ O ⇒∩n
i=1Bi∈ O.
明らかに,全部分集合族2S: 離散位相 (discrete top.) や空集合と全体集合のみ{∅, S}: 密着(自明な)
位相indiscrete (trivial) top. は位相である. が,これらは位相としては,極端過ぎて,余り役には立たない. 相対位相 (relative top.) とは,部分集合における位相で,全体に入っている位相をその部分集合に制限 したものをいう. 即ち, (S,O) top. sp. として,A⊂S の相対位相OA=O ∩A={U∩A;U ∈ O}. このと き, (A,OA)をS の部分(位相)空間sub-topological spaceという.
今後, 特に断らない限り, (S,
O)を位相空間
top. sp.とし,
A, B ⊂ Sにおいては, 相対位相
OA,OBが入っているものとして考える.
問
1.2ユークリッド空間
Rnにおける開集合の定義を述べ, その全体が位相であることを確かめ よ. また, 距離、距離空間の定義を述べ, 距離空間における開集合の定義を述べ, 距離位相を説明 せよ.
Euclid 空簡における開集合とは全ての点が内点,即ち,任意の点に対し,その集合に含まれる開近傍が存 在するときをいう.但し,空集合も開集合とする. (要は境界を含まないので,どんなに境界に近い点でも,そ の集合に含まれる近傍が取れるときをいう.)
U ⊂Rn: open ⇐⇒def ∀x∈U,∃δ >0;Bδ(x)⊂U. 但し,Bδ(x) ={y∈Rn;|x−y|< δ}.
その全体が位相となることは,容易に確かめられる.
距離metricとは, 2点間の関数=2変数関数で,非負性と0値同一性,対称性,三角不等式を満たすもの をいう,距離の入った空間を距離空間metric sp. という. S: a setに対し,
d=d(x, y) :S×S→R+; [d(x, y) = 0 ⇐⇒ x=y], d(x, y) =d(y, x), d(x, y)≤d(x, z) +d(z, y).
距離空間における開集合は上と同様に,全ての点が内点であるときをいう. 但し,このときの近傍は与えられ た距離によって決まる. 即ち,Bδ(x) ={y∈Rn;d(x, y)< δ}. この距離によって決まる近傍を用いて定義さ れる開集合の全体が位相となるので,これを距離位相metric topologyという.
問
1.3閉集合の定義を述べ, その全体の満たす性質を述べ, 説明(証明)せよ.
閉集合closed setとは,捕集合が開集合のときをいう. A: closed ⇐⇒def Ac: open.
この閉集合の全体は,空集合と全体集合を含み,交わりについて閉じており,和については有限個なら閉じ ているものをいう.
問
1.4内部、内点、閉包、触点の定義を述べ, それらに関する命題を述べ, 証明せよ.
内部interior=その集合に含まれる最大の開集合=その集合に含まれる開集合全体の和;Ao.
・So=S,Ao⊂A, (A∩B)o=Ao∩Bo, (Ao)o=Ao.
内点 int. pt=内部の点,即ち,その集合に含まれる開近傍(=その点を含む開集合)が存在するときを いう.
x∈A: Aの内点 ⇐⇒def x∈∃U⊂A,U はopen.
閉包closure: その集合を含む最小の閉集合=その集合を含む閉集合の共通部分;A
・∅=∅,A⊂A,A∪B=A∪B,A=A. (クラトフスキーKuratowskiの公理系)
・k: 2S→2S がKuratowskiの公理系を満たす,即ち,k(∅) =∅,A⊂k(A),k(A∪B) =k(A)∪k(B), k(k(A)) =k(A) (A, B⊂S) を満たすとき,C ={A⊂S;k(A) =A}は閉集合の全体と同じ性質を満たし, 従って,位相O=Ccを定める. さらにこの位相のもと,k(A) =A.
∅ ∈ Cは最初の性質から明らか. S ⊂k(S)⊂S より,k(S) =S. また,有限個の和についても, 3番 目の性質から明らか. 交わりについては,まず,A ⊂B ならk(A) ⊂k(B) が成り立つことに注意して(実 際,B=A∪(B ⊂A)とkの和を保つ性質より得られる),Fλ∈ C なら,k(∩
Fλ)⊂k(Fλ) =Fλ. つまり, k(∩
Fλ)⊂∩
Fλ. 逆はkの性質から明らかなので,k(∩
Fλ) =∩
Fλ. 即ち,∩
Fλ∈ C. 従って,Cは閉集合全 体となる. 最後に∀A⊂S, k(k(A)) =k(A)∈ Cより,k(A)は閉集合.F ∈ C;F ⊃Aなら,F=k(F)⊃k(A) なので,k(A)はAを含む最小の閉集合となる. 故に,k(A) =A.
触点adherent pt: 閉包の点,即ち,外点以外の点なので,∀U(x): xの開近傍,U(x)∩A̸=∅.
問
1.5外部、外点、境界点、境界、集積点、導集合、孤立点の定義を述べよ.
外部
exterior:補集合の内部; ExtA, extA,
Ae= (Ac)o.外点
ext. pt:外部の点, 即ち, その集合の補集合に含まれるその点の開近傍が存在する.
x∈Ae ⇐⇒def x∈∃V ⊂Ac; V: open.
境界
boundary,境界点
boundary pt:内部でも外部でも無い集合, 内点でも外点でもない点;
∂A=A\Ao.
集積点
accumlate pt: xが
A\ {x}の触点, 即ち,
∀U(x): xの開近傍,
U(x)\ {x} ∩A̸=∅.触集合(導集合)
adherence (derived set):集積点の全体.
孤立点
isolate pt:その集合の点で, 触集合以外の点
2 近傍系 (Neighborhoods Systems)
問
2.1近傍, 近傍系の定義を述べ, それの満たす性質を述べ, 証明せよ.
点xの近傍neighborhoodとはその点を内点として含む集合,即ち,xを含むある開集合を含む集合. N(x): xの近傍系=xの近傍全体.
xを含む開集合は近傍である. また開近傍の閉包も近傍である. (しかし,解析などにおいて,『近傍』と言 うときには,『開近傍』を指すことが多く,実際,そう解釈しても問題は無い.)
・近傍系{N(x)}は次のHausdorffの公理系を満たす:
[1]∀x∈S, S∈ N(x). U ∈ N(x)⇒x∈U. 全体集合は近傍,点の近傍はその点を含む. [2]U, V ∈ N(x)⇒U∩V ∈ N(x). 有限個の交わりについて閉じている.
[3]U ∈ N(x), U⊂V ⊂S⇒V ∈ N(x). 近傍を含む集合も近傍.
[4]∀U ∈ N(x),∃V ∈ N(x);∀y∈V, U ∈ N(y). これはV =Uo と取れば明らか.
各近傍に対し,同じ点の別の近傍が存在し,元の近傍が存在する近傍の各点の近傍となるようにできる. 示すべきは[2]ぐらいで,∃U(x), V(x): xの開近傍;U(x)⊂U, V(x)⊂V. W(x) =U(x)∩V(x)とおけ ば,xを含む開集合で,W(x)⊂U∩V なので,成り立つ. 他は明らか.
・U
∈ O ⇐⇒ ∀x∈U,∃U(x)∈calN(x);U(x)⊂U ⇐⇒ ∀x∈U, U ∈calN(x).最初の同値は∀x∈U が内点であることから明らかで,次の同値は,上の[3]とU(x) =U と取れば良いこ とから明らか.
・Hausdorff の公理系を満たすものが存在すれば, それは近傍系で, それによって定まる位相は一 意的である. 即ち,
h:S→22S;h(x)が
N(x)の代わりに
Hausdorffの公理系を満たすなら,
O = {U ⊂S;∀x∈U,∃U(x)∈h(x);U(x)⊂U}
= {U ⊂S;∀x∈U, U ∈h(x)}
によって位相が一意的に定まり, しかもこの位相の下,
h(x) =N(x)となる. 但し, 空集合も含まれ るとする.
一意性については,h(x) =N(x)が示せれば,U∈ O ⇐⇒ ∀x∈U, U∈h(x) =N(x)が成り立つので,上 の表現と合わせて明らかである.
まず, Hausdoeffの公理系より,Oが位相となることが示せる. さらに,h(x) =N(x)を示すには,位相O
のもとで,集合V の内部Vo を考えたとき,x∈Vo ⇐⇒ V ∈h(x)を示せば良い. 実際,位相Oのもとで, V ∈ N(x) ⇐⇒ x∈Vo なので,上の同値から,題意を得る.
問
2.2上の証明を厳密にせよ.
開基, 準基, 可算公理
問
2.3開基、基本近傍系の定義を述べよ. またそれらの例を挙げ, 説明せよ. さらに関連する命題 を述べ, 証明せよ.
点x∈X の近傍系nbd systemとは,xを内点としてもつ集合の集まり全体であったが,その一部で,x の任意の近傍に対し,それに含まれる近傍を必ず元として持つものをxの基本近傍系という. またx∈S を 全て動かしてできるその全体を単に基本近傍系basis for the nbd systemという.
開基basis=位相の一部で,任意の開集合が,それらのいくつかの和で表せる. B: Open Basis ⇐⇒ B ⊂ O,def ∀U ∈ O,∃BU⊂ B;U=∪
BU,
⇐⇒ ∀U∈ O,∀x∈U,∃V ∈ B;x∈V ⊂U. (この同値を示せ).
この定義より,O={∪
U;U ⊂ B}と表せることに注意. 実際, (⊂)は定義から明らかで,逆は,開集合の和 が開集合であることから明らか.
例: Rにおいて開区間全体,離散位相(S,2S)において, 1点集合全体は開基となる.
・B ⊂2S: O.B.⇒X =∪
B, [A, B∈ B, x∈A∩B⇒∃C∈ B;x∈C⊂A∩B]. 逆に,Bがこの条件を 満たすとき,O={∪
U;U ⊂ B}と定義すると,これは位相となり,Bはこの位相の開基となる. また開基による位相は一意的に決まる.
前半は開基の定義とその言い換えを用いれば明らか. 後半については,U=∅のとき,∪
U=∅に注意して,
∅ ∈ O. 他も,条件を用いれば容易に確かめられる. (→これを厳密に証明せよ.)
問
2.4第
1可算公理, 第
2可算公理、稠密、可分の定義を述べ, さらにそれらに関する命題を述 べ証明せよ.
1st & 2nd axioms of countability
CI: 第1可算公理=各点の基本近傍系が高々可算個 CII: 第2可算公理=高々可算個の開基をもつ.
(尚、このCI, CII という記号は、このテキストでの記号で、スタンダードなものではない.)
可分separable=可算稠密部分をもつ,即ち,ある可算集合があり,その閉包が全体と一致する.
・距離位相はCI を常に満たす. U1/n(x), n≥1.
・CII⇒CI かつ,可分.
点xを含む開基の元全体がxの可算基本近傍系. また,可算開基の元から,任意に1点ずつ固定すれば,そ れが稠密部分.
・距離化可能で,可分な位相空間はCII.
可算稠密部分の各点の可算基本近傍系の全体が可算開基
3 連続写像 (Continuous Mappings)
問
3.1連続写像、点
x∈Xでの連続性の定義を述べ, それらに関する命題を述べて, 証明せよ.
連続=開集合の引き戻し(逆像)が開集合 (勿論、任意の)
ある点で連続=写した先の任意の近傍の引き戻しが元の点の近傍
・各点で連続 ⇐⇒ 連続 ⇐⇒ 閉集合の引き戻しが閉集合 (勿論、任意の)⇐⇒ 閉包の像が像の閉包 に含まれる. (勿論、任意の集合に対して)
問
3.2開写像, 閉写像, 同相写像の定義を述べ, 関連する命題を述べよ.
4 部分空間 , 直積空間 (Subspaces, Product Spaces)
問
4.1誘導位相の定義とそれに関する命題を述べよ.
位相空間への写像に対し, 開集合の引き戻し全体をその写像による誘導位相
induced top.とい う. この位相は写像を連続にする最弱位相である.
問
4.2相対位相, 部分空間の定義を述べよ.
問
4.3直積位相, 直積空間の定義を述べよ.