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脂溶性化合物を輸送するトランスポーター - J-Stage

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ビタミン B1発見 100 周年 祝典・記念シンポジウム

鈴木梅太郎博士  

記念シンポジウム

はじめに

アミノ酸,糖類,そしてビタミンなどの食物中の栄養 素は,小腸から吸収され肝臓に運ばれた後,全身の細胞 へと血流に乗って運ばれ利用される.特に,ビタミンB 類,ビタミンCをはじめ水溶性栄養素は,細胞を取り囲 む細胞膜を自由拡散では通過できないため,小腸から吸 収されるには,これらを選択的に輸送するトランスポー ター蛋白質が必要である.たとえば,ビタミンB1は小 腸上皮細胞に存在するTHTR-2という名のトランスポー ターによって体内へ輸送されており,この蛋白質の遺伝 子を欠損させたマウスでは,食物中のビタミンB1が吸 収されずその欠乏症が発症する(1)

一方,脂溶性ビタミンであるA, D, E, Kなどは細胞膜 の脂質に自由に溶け込むため,自由拡散で吸収され,全 身の細胞へと循環すると長い間考えられてきた.しかし 最近,ビタミンEの吸収に,小腸上皮細胞に発現する NPC1L1とABCA1の2つの脂質トランスポーターが関 与していることが示唆され,脂溶性ビタミンの吸収や体 内循環にも選択的な輸送体が必要であると考えられ始め ている.本稿では,さまざまな脂溶性化合物を輸送する  ABC (ATP Binding Cassette) 蛋白質と名付けられた 一群のトランスポーターの生理的役割をまず紹介し,特

に動脈硬化症を防ぐ上で重要な,コレステロール恒常性 維持の鍵を握るABCA1について説明する.

多剤排出ポンプMDR1

日本人の死因で最も多いのは癌であり,3割近くに達 する.癌は,外科的な摘出や抗癌剤で治療できればそれ ほど怖くはない.しかし,抗癌剤治療によって癌が治癒 し退院した後でも,数年あるいは10年後に残念ながら 再発してしまうことが多い.再発したとき,癌は転移し ている上に,治療に用いた抗癌剤だけでなく構造の異な る他の抗癌剤に対して耐性であることが多い.それを癌 の獲得多剤耐性と呼び,癌による死亡の大半に関係す る.

筆者は,抗癌剤の作用機構の研究(2, 3)で博士号を取得 した後,癌の多剤耐性を研究していた米国のPastan博 士とGottesman博士のグループに1985年に加わった.

そして,多剤耐性となった癌細胞で過剰発現している膜 蛋白質の遺伝子を単離することに成功した(4).その遺伝 子は,多剤耐性 (MultiDrug Resistance) の頭文字を とって と名付けられた.MDR1は,細胞膜上で ATP加水分解に依存してさまざまな構造の抗癌剤を排 出する多剤排出ポンプという興味ある活性を発揮し,細

農芸化学の伝統と先端生命科学の進展

健康をまもるABC蛋白質

脂溶性化合物を輸送するトランスポーター

植田和光

京都大学大学院農学研究科,京都大学物質-細胞統合システム拠点

(2)

胞を多剤耐性にすることが明らかになった(5).さらに,

MDR1は食物中に含まれるさまざまな脂溶性有害物の 小腸からの吸収を抑制するとともに,それらの肝臓や腎 臓を介した体外への排泄や,脳,精巣,胎児などの有害 物に対する防御に関わっている.このようにMDR1は,

多くの薬剤の小腸からの吸収性や薬物動態に大きな影響 を与え,薬物相互作用に関与している.

MDR1が低親和性で多種類の脂溶性物質を認識し輸 送するということは,それまでの生化学の常識を破る2 つのことを示した.1つ目は,自由拡散で細胞膜を通過 すると考えられてきた脂溶性化合物の輸送や体内動態に もトランスポーターが関与しているということであり,

2つ目は,生理的に重要な反応は特異性が高く親和性が 高いという生化学の常識はいつも正しいとは限らないと いうことである.

では,MDR1はどのようなメカニズムでさまざまな構 造の化合物を認識し,輸送しているのだろうか? それ は,MDR1の発見以来25年間謎につつまれたままであ る.筆者らは,10年以上にわたって,京都大学大学院 薬学研究科の加藤博章教授と構造解析の努力を重ねてき た.最近,pH1.5,  水温45℃という環境で生育する単細 胞真核生物のもつMDR1類縁蛋白質の解析に,筆者ら のグループの小段 篤くんが成功した(投稿準備中).今

後,ABC蛋白質の基質認識機構や輸送機構の理解が深 まると期待している.

ABC蛋白質と疾病

ゲノム解析の結果,ヒトの染色体上には約50のABC 蛋白質遺伝子がコードされていることが明らかになっ た.それらは,いずれも12 〜17の膜貫通 

α

 ヘリックス と2つのATP結合ドメインをもち,ハーフサイズのも のはホモ二量体あるいはヘテロ二量体として機能する.

ATP結合領域のアミノ酸配列の相同性によってAから Gま で7つ の サ ブ フ ァ ミ リ ー に 分 け る こ と が で き,

MDR1はBサブファミリーの1番ABCB1という統一名 が与えられている(図

1

.これらの多くは,MDR1と 同様にATP依存排出ポンプとして機能し,膜脂質や代 謝産物などの内在性の脂溶性物質を輸送し,我々の健康 をまもっている.

事実,ABC蛋白質の異常はさまざまな疾病と関係し ている(6).たとえば,ABCG2の異常は痛風リスクを大 きく上昇させる.特に日本人にはABCG2の機能不全を ひき起こす一塩基多型の比率が高く,痛風のリスクが世 界の中でも高い民族である.痛風の予防は日本人にとっ て重要な問題である.ABCC7 (CFTR) の異常は,白人

図1ヒトABC蛋白質のサブグループと典型的な2次構造

(3)

に最も多い遺伝病である嚢胞性繊維症をひき起こすが,

この病気は日本人にはほとんどない.ABC蛋白質は糖 尿病とも関係する.

また,ABCA3は呼吸器の病気,ABCA12は皮膚の病 気,ABCA7, ABCA13は 神 経 変 性 疾 患 と 関 連 す る.

ABCA4は眼においてビタミンAの代謝回転に関係して おり,その異常によってひき起こされる黄斑変性症は老 人性の失明の原因となる.ABCC6の異常は筋繊維の石 灰化をひき起こす.ABCA1の異常は動脈硬化と密接に 関係している.

ABCA1と動脈硬化症

コレステロールは,細胞膜の成分やビタミン・ホルモ ンの前駆体として私たちの身体に必須な物質であり,肝 臓で合成されるほか,食物として摂取している.食物中 のコレステロールは小腸から吸収され,肝臓に運ばれた 後,超低密度リポ蛋白質 (VLDL),低密度リポ蛋白質 

(LDL) として全身の細胞に運ばれる.しかし,コレス テロールの過剰な蓄積は細胞にとって有害であり,末梢 細胞で過剰になったコレステロールは善玉コレステロー ルとして知られる高密度リポ蛋白質 (HDL) として肝臓 へ戻される(図

2

.このHDL形成にABCA1は必須で あり,ABCA1に異常があるとHDLが産生されない遺 伝病タンジール病がひき起こされる.過剰になったコレ ステロールによってマクロファージの泡沫化が進み,血 管壁に沈着してプラークが形成されると,動脈が閉塞,

血栓によって血流障害が生じ心不全,心筋梗塞,脳卒中 などがひき起こされる.日本人の死因のうち脳と心臓の

血管系の疾患は合わせると約3割となり,癌に匹敵する 値となる.

2011年に米国において疫学調査が行なわれ,冠動脈 疾患のリスクファクターが調べられた.1番が糖尿病,

2番が高血圧,3番が喫煙と,予想通りであったが,い わゆる悪玉コレステロールLDL量はリスクではなかっ た.冠動脈疾患のリスクが減るファクターとしては,血 中HDL量がリスクと逆相関することは予想通りであっ たが,それよりもマクロファージからのコレステロール 排出活性が,冠動脈疾患のリスクと最も逆相関するファ クターであった(7).すなわち,ABC蛋白質を介したコ レステロール排出が動脈硬化の予防に非常に重要である ということが示唆された.

ABCA1によるHDL形成機構

HDLは,血漿中の両親媒性 

α

 へリックスに富むアポ A-I蛋白質に,ABCA1の働きによって末梢細胞のリン 脂質とコレステロールが受け渡され形成される.しか し,そのメカニズムの詳細はいまだ不明である.筆者ら は,ABCA1の機能をさまざまな方法で研究してきた.

たとえば,蛍光標識したアポA-Iを培地中に加えると,

ABCA1発現細胞の細胞表面に結合することが観察でき る.代謝阻害剤によって細胞内ATPを欠乏させるとア ポA-Iは結合しなくなる.このとき,培地中にグルコー スを添加し細胞内のATP濃度を高めると,アポA-Iは 再度細胞表面に結合する(8).つまり,アポA-I結合には 細胞内ATPが必要であることがわかる.ABCA1の2つ のATP結合ドメインそれぞれに変異を導入してATP加

図2体内のコレステロールの循環

(4)

水分解活性を消失させた変異体はアポA-Iを結合できな い.つまり,アポA-I結合にはABCA1による加水分解 が必要である.

ABCA1は,約600アミノ酸と300アミノ酸からなる 大きな細胞外ドメインをもつことが特徴である(図1). 全長が2,261アミノ酸なので,分子の約半分が細胞外ド メインである.アポA-I蛋白質がこの細胞外領域と直接 結合することは,細胞非透過の架橋剤を用いたクロスリ ンク実験により示されている.また,ABCA1の2つの 細胞外領域は2本のジスルフィド結合によって架橋され ており,これらのジスルフィド結合が形成できない ABCA1は,ア ポA-Iと 結 合 で き な い(9).さ ら に,

ABCA1の細胞外領域のリシン残基を一級アミン修飾試 薬で修飾すると,アポA-Iとの結合活性が失われる(10). 結晶構造解析から,アポA-Iの表面に負電荷のアミノ酸 からなる領域が存在することが報告されている.HDL 形成の第1ステップはアポA-IのABCA1細胞外ドメイ ンとの静電相互作用であると考えられる.

一方,細胞外ドメインにエピトープタグを挿入し,抗 体との反応性を調べることによって,ABCA1の2つの ATP結合領域でのATP加水分解によって細胞外ドメイ ンが大きく構造変化することが明らかになった(8).ま た,その抗体の反応性とアポA-I結合活性が相関するこ とから,ATP加水分解に依存した構造変化によってア ポA-I結合部位が細胞外領域に形成されると予想され た.以上の知見から,筆者らは以下のようなモデルを考 えている.①ABCA1がATP加水分解を繰り返すこと によって,リン脂質とコレステロールを輸送する.②そ れによって細胞外ドメインが大きな構造変化を起こし,

アポA-I結合部位が細胞外ドメインの表面に現われる.

③アポA-IはABCA1の細胞外ドメインと相互作用する ことによって,脂質を結合できる構造に変化する.④ア ポA-IがABCA1から脂質を受け取り,新生HDLが形成 される.

ABCA1の活性制御

遺 伝 子 の 転 写 は,核 内 リ セ プ タ ー で あ る LXR (Liver X Receptor) 

β

 と RXR (Retinoid X Recep- tor) のヘテロダイマーによって制御されている.細胞 内に過剰なコレステロールが蓄積すると,オキシステ ロールの細胞内濃度が上昇し,LXRにリガンドとして 結合することによってABCA1やABCG1などの転写を 活性化する.発現したこれらABC蛋白質によって過剰 なコレステロールは細胞外へ排出される.しかし,コレ ステロールは細胞にとって必須の構成成分であり,コレ ステロールを排出しすぎることがないように,ABCA1 の活性は分解などのさまざまなメカニズムで制御されて いる.そこで,ABCA1の翻訳後制御に関わる相互作用 蛋白質を見つけるため,ABCA1のC末端領域を用いて 酵母ツーハイブリッドスクリーニングを行なった.その 結果,まずC末端のPDZモチーフに結合する 

α

1-シント ロフィンが見つかり,その相互作用がABCA1の分解を 抑制しHDL形成を促進することを明らかにした(11).そ のスクリーニングでは,同時に,核内リセプターであり ABCA1の転写を制御するLXR

β

  がABCA1と相互作用 する可能性が示された.筆者らは驚き,慎重に実験を開 始した.その結果,次のようなまったく予期しない LXR

β

 の生理的役割が明らかになった(図

3

(12, 13)

細胞内に過剰なコレステロールが存在しない状態で

図3核内受容体LXRβ/RXRヘテ ロダイマーによるABCA1の転写制 御と翻訳後制御

(A) 細胞内に過剰なコレステロール の蓄積がないとき, 遺伝子は 転写されない.またLXRβ/RXRヘテ ロダイマーがABCA1に結合し,不 活性ABCA1が細胞膜に保持される.

(B) 細胞内に過剰なコレステロール が蓄積したとき,オキシステロール がLXRβ  に結合し 遺伝子の 転写が活性化される.同時に,オキ システロールが結合したLXRβ/RXR ヘテロダイマーが細胞膜上のABCA1 か ら 遊 離 す る.活 性 の 回 復 し た ABCA1がHDLを産生し,過剰なコ レステロールを細胞から除去する.

(5)

は,細胞膜上のABCA1のC末端部分の2つのロイシン 残基を介して,LXR

β

/RXRヘテロダイマーがABCA1 と直接結合する.この結合によって,ABCA1は何らか の構造変化を起こしてATP結合活性を失い,ABCA1 の2つの活性,アポA-I結合とコレステロール排出の両 方が阻害される.さらにABCA1の分解が抑制され,不 活性な状態のABCA1が細胞膜上に保持される.コレス テロールが過剰蓄積すると,細胞内で生成したオキシス テ ロ ー ル がLXR

β

に 結 合 し,LXR

β

/RXRヘ テ ロ ダ イ マーはABCA1から解離する.すると,ABCA1の活性 がただちに回復し,過剰なコレステロールは細胞外へ排 出される.つまり,LXR

β

 はこれまで考えられてきたよ うに,核内に常に存在し,リガンドであるオキシステ ロールの核内濃度が上昇したときに働く転写因子として の役割だけでなく,リガンドが存在しないときには核外 にも存在すること,さらに細胞膜上の蛋白質と直接相互 作用することによって,翻訳後制御にも関わっているこ とが明らかになった(12, 13).これは,これまでの常識を 覆す発見であった.

マクロファージにおいて過剰になったコレステロール は,ABCA1に よ っ て 血 中 の ア ポA-Iに 受 け 渡 さ れ,

HDLとして肝臓へ逆輸送される.この反応は動脈硬化 の予防にとって重要である.しかし,ABCA1の蛋白質 としての半減期は2時間以内と短く,過剰のコレステ ロールを蓄積していない状態ではABCA1は速やかに分 解されてしまう.ABCA1は2,261アミノ酸の膜蛋白質 であり,転写,翻訳され細胞膜上に現われるまでには数 時間は要する.それ故,たとえばマクロファージがアポ トーシス細胞を貪食し,細胞内コレステロール濃度が急 上昇したとき,オキシコレステロールをリガンドとする LXR

β

  によって 遺伝子の転写が活性化され,

ABCA1が細胞膜上で働くまでには,最低数時間が必要 である.そこで,細胞内に過剰なコレステロールが存在 しないときに,不活性なABCA1を細胞膜上に安定に保 つことは,このタイムラグを埋めるために重要となる.

コレステロールが過剰蓄積したとき,細胞はすぐに過剰 なコレステロールを排出し始めることができる.この機 構は,転写活性化機構が過剰コレステロールに対応する

までのラグタイムを埋めるための即時応答機構であると 予想される.

おわりに

食物中の栄養素を吸収し全身に届けるため,重要な代 謝物を必要な場所へ届けるため,また老廃物や有害物質 を体外へ排出するため,私たちの体ではさまざまなトラ ンスポーターが働いている.これらの輸送体は,私たち の身体を健康に保つために懸命に働いている.しかし,

むやみに複数の薬を服用したり,サプリメントなどとし て一度に高濃度の物質を摂取すると,トランスポーター が充分に機能を発揮できない事態が発生することが懸念 される.また,ABCA1が排出できる限度をこえてコレ ステロールを摂取することも控えたほうがよい.毎日の 生活で,これら輸送体のことをもう少し気にかけていた だければありがたい.

文献

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Referensi

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