2008.11 ヘルスケア・レストラン 26 27 ヘルスケア・レストラン 2008.11
「高齢者用食品」から「えん下困難者用食品」へ
新たな許可基準決定までのプロセスと今後の方向性
特集
2
緊急鼎談
藤谷 管理栄養士の皆さんにとって関心の高い︑嚥下困難者への食事について︑新たなトピックがあります︒この度︑特別用途食品制度について見直しがなされ︑これまで同制度における﹁高齢者用食品﹂という区分のなかで︑﹁そしゃく困難者用食品﹂﹁そしゃく・えん下困難者用食品﹂という名称で販売されていた商品が︑新たな許可基準のもと︑﹁えん下困難者用食品﹂として 販売されることとなりました︒本日は︑その許可基準案づくりのワーキンググループに携わった先生方をお呼びして︑この見直しの背景と今後の活用の仕方について話し合っていきます︒まず︑この特別用途食品について︑こ
14年法律第103号︶第
を利用して実際に販売している食品数 べて十分とは考え難いこと︑この制度 許可申請の基準が栄養学の進歩から比 たうえで販売する制度です︒しかし︑ 基づいて︑厚生労働大臣の許可を受け 26条の規定に ︵昭和 健康増進法制定以前の旧栄養改善法 藤谷特別用途食品制度の枠組みは︑ い現状があると思います︒ 養士が有効に活用しているとは言えな は限られていることなどから︑管理栄
ました︵図1・ まれ︑それぞれ見直しが進められてき らなる複数のワーキンググループが組 で︑対象食品の範囲について︑識者か る点が多く見受けられました︒そこ えますと︑制度自体に変更を必要とす の進歩など︑現代の大きな変化を踏ま の増加︑医療費の増大︑医学や栄養学 そのため︑高齢化の進展︑生活習慣病 められたものが基本となっています︒ 27年法律第248号︶によって定
への変更については︑ ピックである︑﹁えん下困難者用食品﹂ 28ページ︶︒本日のト 08年 た︵表1・ ータに基づいた許可基準を作成しまし キンググループがつくられ︑最新のデ 5月にワー
29ページ︶︵表2・
30ページ︶︒
藤谷 特別用途食品制度に﹁高齢者用食品﹂が定義されたのは︑平成
り︑数々のデータが発表されてきたこ業者が健康増進法︵平成 にそしゃく・嚥下に関する知見は深ましたい際に︑製造・販売 はありませんでした︒しかし︑その間別の用途に適する表示を 関して︑今回の見直しに至るまで変更産婦用︑病者用などの特 94︶年のことです︒以降︑許可基準にとは︑乳児用︑幼児用︑妊 6︵19柏下特別用途食品制度 てきたのでしょうか? ちは︑どのように利用し れまで管理栄養士さんた この見直しの意義を説く︒ 藤谷順子氏︑柏下淳氏︑柴本勇氏が︑ この許可基準案の作成にかかわった 生まれ変わることとなる︒ として︑新たな許可基準のもとで 食品も︑﹁えん下困難者用食品﹂ えん下障害を有する人のための ﹁高齢者用食品﹂として登場した︑ 平成6︵1994︶年に 特別用途食品制度が見直される︒ 現代の変化に対応するため︑ 高齢化︑医学や栄養学の進歩など
公立大学法人 県立広島大学人間文化学部健康科学学科准教授
﹁高齢者用食品﹂ から ﹁えん下困難者用食品﹂ へ 新 た な 許 可 基 準 決 定 ま で の プ ロ セ ス と 今 後 の 方 向 性 柏 下
淳 氏
新 し い 視 点 は ﹁ 硬 さ ﹂﹁ 付 着 性 ﹂ ﹁ 凝 集 性 ﹂
撮影=関口宏紀︻出席者︼
国立国際医療センターリハビリテーション科医長
藤 谷 順 子 氏
国際医療福祉大学保健医療学部言語聴覚学科准教授柴 本 勇 氏
現 状 と の ズ レ を 是 正 す る た め 特 別 用 途 食 品 制 度 が 見 直 さ れ た 嚥 下 困 難 者 の 安 全 に は 硬 さ 以 外 の フ ァ ク タ ー が 必 要 と 注 目
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とで
︑当 時の 基準 では 現状 に対 応し き れな いと して
︑新 たな 基準 案を 作成 す るこ とと なり まし た︒ また
︑こ れま で
﹁高 齢者 用食 品﹂ 区分 とし て︑
﹁そ しゃ く困 難者 用食 品﹂
﹁そ しゃ く・ えん 下困 難者 用食 品﹂ の2 つが 設定 され てい ま した が︑ その うち のそ しゃ く機 能に つ いて は︑ 食品 の硬 さが 基準 であ り︑ 製 造業 者に おい て容 易に 対応 でき ると 考 えら れる ため
︑対 象か ら除 外す るこ と とな って いま す︒ そし て︑
﹁高 齢者 用食 品﹂ とい う名 称は
︑対 象者 が必 ずし も 高齢 者に 限定 され ず︑ さま ざま な疾 患 によ る障 害が ある 方も 対象 とな るこ と から
︑﹁ えん 下困 難者 用食 品﹂ と見 直さ れま した
︒ 柏下 今回 の許 可基 準内 容の 変更 は︑
えん 下困 難者 に適 した 食品 を管 理栄 養 士が 判断 する 際に 指標 とす るべ き事 項 が盛 り込 まれ まし た︒ 見直 し前 の︑
﹁そ しゃ く困 難者 用食 品﹂
﹁そ しゃ く・ えん 下困 難者 用食 品﹂ につ いて の基 準で は︑ その 食品 の﹁ 硬さ
﹂が 主な 基準 と なっ てい まし た︒ 嚥下 困難 者に とっ て︑ 食品 が適 切な やわ らか さで ある こ とは 考慮 すべ き1 つの 指標 にな りま す︒ しか し︑ 現在 の知 見で は︑ それ だけ では 足り ない こと が明 らか にな って お り︑ やわ らか いこ と︑ まと まり があ る こと
︑く っつ きに くい こと など が必 須 の条 件と して 報告 され てい ます
︒こ の こと
を踏 まえ
︑新 たな 基準 では
︑﹁ 硬 さ﹂
﹁付 着性
﹂﹁ 凝集 性﹂ とい う3 つの 因 子を 入れ てい ます
︒ 藤谷 許可 基準 の条 件と して 挙げ た凝 集性 とは わか りや すく 言え ば︑ どう い うこ とで しょ うか
? 柴本 凝集 性と は︑ 口の 中で のま とま りや すさ を意 味し ます
︒私 たち は普 段︑ 口の 中に 入れ たも のを そし ゃく し て︑ 1つ にま とめ てか ら飲 み込 んで い ます
︒そ しゃ くを する と︑ 食物 と唾 液 が混 ざり 合い
︑ド ロっ とし てき ます
︒ これ が︑ まと まり のあ る状 態で す︒ 藤谷 その まと まり があ る状 態は
︑嚥 下困 難者 にと って どん な意 味が あり ま すか
? 柴本 たと えば
︑大 量調 理の 場で 多く
出さ れて いる 食事 に︑ きざ み食 と呼 ば れる 食形 態が あり ます
︒こ れは
︑食 べ 物を そし ゃく せず に飲 み込 める とい う 概念 で︑ そし ゃく する こと が難 しい 高 齢者 に対 し︑ あら かじ め食 べ物 を砕 い てお けば
︑飲 み込 みや すい だろ うと い う発 想か らつ くら れて いる のだ ろう と 思い ます
︒し かし
︑実 際に 患者 さん が 食べ ると
︑舌 に麻 痺が あっ たり
︑動 き の悪 い患 者さ んで は︑ 口の 中で まと め るこ とが でき ずに 飲み 込め ない とい う 報告 が多 くあ りま した
︒バ ラバ ラに なっ てし まい
︑誤 嚥や 窒息 によ る事 故 がお きて いま す︒ 藤谷 つま り︑ 凝集 性と はあ る程 度の 水分 があ って 唾液 とも から み︑ まと ま りや すく なっ てい るこ とで
︑安 全性 の
1つ の指 標と いう こと です ね︒ では
︑ 付着 性と はど のよ うな こと でし ょう か? 柴本 付着 性と は︑ わか りや すく 言え ば︑ ベタ ベタ です
︒口 の中 で食 物を 1 つに まと めて 飲み 込む 際︑ ベタ ツキ が 増す ほど
︑飲 み込 む際 によ り強 い力 が 必要 にな りま す︒ そう いう もの は患 者 さん にと って
︑非 常に 難し いこ とを 要 求す るこ とに なり ます
︒そ して
︑ベ タ ツキ が低 く︑ 口の 中の 通過
︑咽 頭の 通 過︑ 食道 の通 過が しや すい もの が好 ま しい こと にな りま す︒ 食物 と唾 液が う まく から まっ て︑ まと まれ るか がポ イ ント にな ると 考え られ ます
︒臨 床現 場 では
︑私 はそ こを ポイ ント とし て見 て いま した
︒
る実 績が あり ます
︒こ のよ うに
︑3 つ の視 点を もっ て総 合的 に判 断す る必 要 があ るの です
︒ 藤谷 今回 の判 断基 準で は︑ 高齢 者に おけ る誤 嚥や 窒息 をし ない こと が︑ 基 準作 成の 課題 でし た︒ そし ゃく 機能 が 低下 して いる 方で あっ ても
︑食 べや す いと いう 視点 が入 って いま す︒
﹁硬 さ﹂
﹁付 着性
﹂
﹁凝 集性
﹂そ れぞ れの 因子 を組 み合 わせ るこ とで
︑よ り重 度の 嚥下 困 難者 が安 全に 飲み 込め て︑ かつ 誤嚥 や 窒息 の危 険性 が少 なく でき るよ うに 考 えら れて いま す︒ 藤谷
﹁え ん下 困難 者用 食品
﹂に つい て︑
﹁硬 さ﹂
﹁付 着性
﹂﹁ 凝集 性﹂ とい う新 たな 因子 に基 づい て許 可基 準が 作成 さ れま した
︒さ らに この 基準 は︑ 許可 基 準Ⅰ
︑Ⅱ
︑Ⅲ とカ テゴ リー に分 けら れ てい ます
︒ 柴本 今回 の﹁ えん 下困 難者 用食 品﹂ で は︑ これ まで の基 準よ りも 重度 の嚥 下 困難 者に 対応 でき るよ うに なっ てい ま す︒ 許可 基準
㈵は もっ とも 重度 な患 者 でも 食べ られ るだ ろう とい うレ ベル
︑ 許可 基準
㈼は もう 少し 幅の 広い 人が 対 象︑ 許可 基準
㈽は それ より 軽い 方を 対 象に して いま す︒ 軽度 の患 者で はな く︑ 全般 的に 重い 嚥下 困難 者を 想定 し
栢下 物性 とい う観 点で は︑ 硬 さと 付着 性に 相関 があ ると わ かっ てい ます
︒硬 い食 品ほ ど付 着性 が高 い︑ つま り口 の中 での ベタ ツキ が強 く︑ 通過 しに くい とい うこ とで す︒ 一方 で︑ 飲み 込み やす いゼ リー 類に つい て測 定を して みる と︑ 付着 性は 比較 的低 いこ とが わか って いま す︒ また
︑凝 集性 と付 着性 につ いて は︑ 面白 い関 係が あり ます
︒臨 床現 場で 出さ れて いる 食事 で は︑ ある 一定 の凝 集性 の測 定値 付近 であ れば
︑付 着性 が多 少高 いと 思わ れる 食品 であ って も︑ 臨床 現場 では 安全 に出 され てい
定を して みる と︑ 付着 性は 比較 表1 えん下困難者用食品許可基準
1. えん下困難者用食品たる表示の適用範囲
許可を受けるべきえん下困難者用食品の表示の適用範囲 については、えん下困難者の用に適する旨を医学的、栄養 学的表現で記載されたものに適用されるものとする 2. えん下困難者用食品たる表示の許可基準
えん下困難者用食品(えん下を容易ならしめ、かつ、誤えん 及び窒息を防ぐことを目的とするもの)の表示の許可基準 は、次の基準に適合したものであること
(1 ) 医学的、栄養学的見地から見てえん下困難者が摂取する のに適した食品であること
(2 ) えん下困難者により摂取されている実績があること
(3 ) 特別の用途を示す表示が、えん下困難者用の食品として ふさわしいものであること
(4 ) 使用方法が簡明であること
(5 ) 品質が通常の食品に劣らないものであること
(6 ) 適正な試験法によって特性等が確認されるものであること
(7 ) 別表1の規格を満たすものとする
なお、簡易な調理を要するものにあっては、その指示どおり に調理した後の状態で当該基準を満たせばよいものとする 3 . 必要的表示事項
えん下困難者用食品として許可された場合の必要的表示 事項は、次のとおりとする
(1 ) 許可を受けた表示の内容として、「えん下困難者用食品」
を意味する表示
(2 ) 許可基準区分
(3 ) 喫食の目安となる温度
(4 ) 包装 1 個当たりの重量の表示
(5 ) 1 包装分が含む熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物の量及 びナトリウムの表示
(6 ) 医師、歯科医師、管理栄養士等の相談指導を得て使用す ることが適当である旨の表示
参考文献)特別用途食品制度のあり方に関する検討会報告書 ,2008, 資料 1-8より抜粋
﹁ え ん 下 困 難 者 用 食 品
﹂ の 物 性 は 献 立 作 成 の ヒ ン ト に も な る は ず
藤谷順子
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○○○○○○○○○○○○○
○○○○○○○○○○ 130 字
図1 対象食品の見直しの概要
許可基準型 病者用単一食品
低ナトリウム食品 低カロリー食品 低たんぱく質食品
低(無)たんぱく質高カロリー食品 高たんぱく質食品
アレルゲン除去食品 無乳糖食品 病者用組合わせ食品
減塩食調整用組合わせ食品 糖尿病食調整用組合わせ食品 肝臓病食調整用組合わせ食品 成人肥満症食調整用組合わせ食品 個別評価型
病者用食品
高齢者用食品
そしゃく困難者用食品 そしゃく・えん下困難者用食品 乳幼児用調製粉乳
妊産婦、授乳婦用粉乳
栄養表示基準に 基づく栄養強調 表示で対応
宅配食品栄養指針で対応
許可基準型
低たんぱく質食品
アレルゲン除去食品
無乳糖食品
総合栄養食品
個別評価型
病者用食品
えん下困難者用食品 乳幼児用調製粉乳 妊産婦、授乳婦用粉乳
いわゆる濃厚 流動食(新規)
2008.11 ヘルスケア・レストラン 30 31 ヘルスケア・レストラン 2008.11
「高齢者用食品」から「えん下困難者用食品」へ
新たな許可基準決定までのプロセスと今後の方向性
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ています︒柏下 許可基準を作成するにあたっては︑臨床的な知見をベースにして考えなくてはなりません︒実際に複数の病院で提供されている食事を測定して︑たたき台としています︒また︑より実際の提供状況に近い測定条件に変更しました︒たとえば︑以前の基準では︑食品を かい献立はおおよそ る条件とは大きなズレがあります︒温 ますが︑それでは実際に提供されてい 20℃の状態で測定するとなってい
いものは︑ 45℃前後で︑冷た 10℃から
今回の基準では︑温かいものは る物性への影響は非常に大きいため︑ 入ることになるでしょう︒温度が与え 15℃くらいで口に 20℃と 45℃︑冷たいものは
20℃と
10℃の2点て︑かえって飲み込みにくくしてし 往々にしてトロミをつけすぎてしまっ 体にトロミをつけたいとなった際︑ 場では︑サラサラして誤嚥しやすい液 てもらうメリットもあります︒臨床現 るなどして︑今後の献立作成に活かし た︑自らがつくる︑調理師さんに教え やすいのだと判断してもらえます︒ま 物性が重度の嚥下困難者にとって食べ ﹁えん下困難者用食品﹂を食べて︑この という意味では︑管理栄養士さんが てきたものをもとにして作成した基準 藤谷管理栄養士さんが実際に提供し で測定しています︒ かし︑嚥下障害については︑勉強して ことは︑勉強を積んできています︒し ンパクがどのくらい必要かなどという エネルギーをいくつに設定するか︑タ 病などの患者さんの病態に合わせて︑ のなかでよく対象となる糖尿病や腎臓 柏下私たち管理栄養士は︑栄養指導 いいと思います︒ たという自覚をもてるようになれれば が︑張り付きすぎる物性にしてしまっ はなく︑まとまりやすさはよくなった いとか︑やわらかいという視点だけで ぎてしまったということです︒単に硬 けれども︑反対に付着性が強くなりす は︑簡単に言えば︑凝集性は高まった まっている場面を見かけます︒これつと思います︒
藤谷 現在︑嚥下困難者を対象にした食品は︑その数を増しています︒ここ数年で︑それぞれの企業がさまざまな食品を開発し︑販売するようになりました︒そのこと自体は︑選択の幅も広がり︑またこのような食品の質の向上にもつながるということで︑よいことだと思います︒しかし一方で︑各企業独自の基準︑測定方法による弊害も出てきています︒
柴本 流通している多くの食品を見てみると︑どんな栄養成分が入っているのか︑実際の硬さはどれくらいなのか︑どのくらいバラけるものなのかなどということは︑一見しただけではわかりません︒口にしてみないとわからないことが多く︑問題だと思います︒購入する前にある程度︑その食品の物性を判断できるシステムがあれば︑選ぶ医師や管理栄養士さん︑そして食べる患者さんにとってわかりやすくなるでしょう︒現状としては︑そのようなシステムがないという印象を受けるのですが︑管理栄養士さんは数ある市販食品を︑どう評価して使用を決めているのでしょうか?柏下 現在の判断基準のほとんどは︑ 定方法は︑各企業間で差があり︑単純に比較することが難しい状況です︒パンフレット上の記述では︑Aという食品よりもBの食品の方がやわらかいと書いてあっても︑実際に比べてみるとそうではないこともよくあります︒藤谷 ワーキンググループで作成した﹁えん下困難者用食品﹂の許可基準は︑ 製造・販売業者がこの基準に合わせて製造し︑その表示をすることで︑利用する管理栄養士さんが選びやすくするためのものです︒特別用途食品は︑その表示がついていたからといって︑それさえ食べれば必ず安全に摂取できるということではなく︑医師︑歯科医師︑管理栄養士と相談のうえ︑患者さんに利用を勧めるものです︒ただ︑厚生労働省で作成した基準ができたことで︑より多くの製造・販売業者が対応商品 に出て行くことで︑重度の嚥下困難者に適した食品のイメージがわかりやすくなると期待しています︒製造・販売業者の方々には是非︑この基準に即した﹁えん下困難者用食品﹂を売り出してほしいと思います︒そうすれば︑管理栄養士さんの選択の幅は広がりますし︑採用されることで製造・販売業者のモチベーションも上がる︑それが結局は患者さんのためになっていきます︒藤谷 高齢化が進み︑各家庭における食事をつくる能力は著しく落ちています︒管理栄養士さんが栄養指導をすれば︑患者さんが自宅できちんと食事をつくれる時代ではなくなってきています︒﹁えん下困難者用食品﹂の存在を知り︑患者さんの療養生活にうまく取り込んでほしいと思います︒嚥下困難者への食事は︑﹁味気ない﹂﹁見た目が悪くて食べる気がしない﹂などといった批判があり︑まだまだ発展途上です︒安全な食品を︑いかにおいしく食べてもらう献立に落とし込めるかが管理栄養士さんの技術だと思います︒食事は文化です︒新たな﹁えん下困難者用食品﹂を利用して︑患者さんの食事を支 きた必要栄養量についての知識とはまた別に︑物性という知識が必須となってきます︒この物性については︑これまで管理栄養士の養成課程であまり教えられてこなかったので︑入職してから本格的に学ぶことも多いでしょう︒そのため︑臨床現場で迷っている人が相当数いると考えられます︒この新たな基準が患者さんの栄養管理に役立
パンフレットの内容に書かれている内容をもとに︑判断していることと思います︒しかし︑パンフレットに書かれている食品の物性についての測
を売り出していけば︑管理栄養士さんが患者さんに適した食品かどうかを判断する有力な基準になると期待できます︒柴本 この基準は︑それぞれの病院や福祉施設などでつくる︑嚥下困難者用の食事を適応させることを意図したものではありません︒しかし︑許可基準Ⅰ︑Ⅱ︑Ⅲなどと表示されている食品が︑世の中
えていきましょう︒
﹁ え ん 下 困 難 者 用 食 品 ﹂で 豊 か な 療 養 生 活 を 支 え よ う 新 基 準 は 物 性 を 判 断 す る 有 力 な 指 標 と し て 活 用 で き る
柏下 淳
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柴本 勇
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【えん下困難者用食品の試験方法】
えん下困難者用食品の試験検査方法は、次に示す試験方法又は試験条件によるものとする 1 硬さ、付着性、凝集性の試験方法について
試料を直径40mm、高さ20mmの容器に15mm充填し、直線運動により物質の圧縮応力を測 定することが可能な装置を用いて、直径20mm、高さ8mm樹脂性のプランジャーを用いて、圧 縮速度10mm/sec、クリアランス5mmで2回圧縮測定する。測定は冷たくして食する又は常温 で食する食品は10±2℃と20±2℃、温かくして食する食品は20±2℃と45±2℃で行う
2 成分分析表及び熱量の試験方法について
成分分析表及び熱量の試験方法は、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法」に よるものとする
参考文献)特別用途食品制度のあり方に関する検討会報告書 , 2008 , 資料 1 - 8より抜粋
表2 えん下困難者用食品許可基準(別表1)
硬さ(一定速度 で圧縮した時の 抵抗)(N/ u)
許可基準 Ⅲ 3×102〜 2×104 許可基準 Ⅱ
許可基準 Ⅰ
1×102〜 1×104 3×103〜 1×104
付着性(J/m3) 5×10 〜 4×102 4×10 〜 1×103 3×10〜1.5×103 凝集性 0 . 2×0 . 6 0 . 2 〜 0 . 9 ──
参考
不均質なものも含む
(例えば、まとまりのよ いおかゆ、やわらか いペースト状又はゼ リー寄せ等の食品)
均質なもの(例えば、
ゼリー状又はムース 状等の食品)
均質なもの(例えば、
ゼリー状の食品)