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論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

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Academic year: 2024

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氏 名 みなと湊 さおり 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 乙第 841号

学 位 授 与 年 月 日 令和 4年 12月 19日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第3項該当

学 位 論 文 名 血液透析中赤血球輸血の脳・肝臓内酸素化への影響に関する臨床学的 検討

論 文 審 査 委 員 (委員長) 教 授 齋 藤 修

(委 員) 教 授 小 出 玲 爾 教 授 藤 原 慎一郎

論文内容の要旨

1 研究目的

腎性貧血は、血液透析(Hemodialysis:HD)患者を含む慢性腎臓病の患者の合併症の 1 つで ある。赤血球造血刺激因子製剤はHD患者のヘモグロビン(Hb)値を劇的に改善し、輸血の必要 性を減少させた。しかしながら、HD 患者は様々な理由によりしばしば重度の貧血を合併する。

そのような重度の貧血では、全身組織の酸素化の悪化を改善させる目的で輸血を行うことになる。

組織の酸素化は、血圧、循環血液量、ヘモグロビン(Hb)濃度などさまざまなメカニズムによっ て維持される。 特に、Hbそのものが全身組織への酸素輸送に直接的に関与するため、その役割 が重要と考えられている。

近年、近赤外分光法(Near Infrared Spectroscopy:NIRS)を用いた局所酸素飽和度(regional saturation of oxygen:rSO2)測定器装置が日常臨床においても使用されている。NIRSによる rSO2 値は 2 波長の近赤外光の吸光比率から酸化ヘモグロビンの割合を算出するものであり、動 脈血のみならず組織内の静脈血も反映したものである。光源からの距離が異なる 2つの受光部で シグナルを検出することで、深部から浅部のシグナルを差し引き、頭蓋骨や軟部組織などの脳組 織以外のシグナルを除去することを可能にしている。

我々はこのNIRSによる臓器内rSO2測定をHD患者に対して施行し、脳内rSO2はHD中の 輸血による Hb 上昇とともに有意に増加することを報告した。しかしながら、HD 中の輸血と臓 器内酸素動態との関連について検討した報告はほとんどない。

本研究では、HD 中の輸血前後の脳内および肝臓内 rSO2 変化を観察し、その相違の有無、お よびHD中の輸血による脳内および肝臓内rSO2変化と関連する臨床的因子を明らかにすること を目的とした。

2 研究方法

自治医科大学附属さいたま医療センター入院中のHD患者で輸血を要する重度貧血を合併する 患者計38名(男性27名、女性11名、平均年齢70.2 ± 1.6歳)を対象とした。一回あたりの輸 血量は376 ± 22 mlであった。INVOS 5100c(Covidien Japan、Tokyo、Japan)を用いて優

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位半球前額部で脳内 rSO2、右肋間部で肝臓内rSO2 をHD 施行中に測定し、輸血前および HD 後の脳内および肝臓内rSO2を比較した。

さらに、輸血によるHD中の脳内および肝臓内rSO2変化と臨床的因子の関連を明らかにする ために、単回帰および多変量解析を施行した。

統計学的検討として、正規分布を示す値は平均値 ± 標準誤差で示し、正規分布をとらない値 は自然対数(natural logarithm; Ln)を用いて変換した。

3 研究成果

HD中の輸血により、ヘモグロビン(Hb)濃度はHD後に有意に上昇した(7.1 ± 0.1 g/dL vs.

9.0 ± 0.1 g/dL, p <0.001)。HD終了時の脳内および肝臓内rSO2は輸血前に比し、有意に上昇 した(脳内rSO2, 43.8 ± 1.5% vs. 48.0 ± 1.4%, p <0.001; 肝臓内rSO2, 46.7 ± 1.7% vs. 55.4

± 2.0%, p <0.001)。また、脳内rSO2と肝臓内rSO2の比較では、輸血前では有意な差異を認め なかった(p = 0.200)が、HD終了時では肝臓内rSO2は有意に高値を示した(p = 0.004)。

輸血による脳内rSO2変化は輸血前とHD終了時のHb濃度から算出したHb濃度比(Ln-Hb ratio)と有意な正の関連を示した(標準化係数: 0.367, p = 0.023)。一方で、輸血による肝臓内 rSO2変化はHb ratioを輸血前およびHD終了時膠質浸透圧(colloid osmotic pressure, COP)

の比で除したもの(Ln of Hb ratio/COP ratio)と有意な正の関連を示した(標準化係数: 0.378, p

= 0.019)。

4 考察

重症貧血のHD患者に対する輸血により、脳内および肝臓内rSO2は改善を示し、さらに肝臓 内 rSO2 は脳内 rSO2 に比し、有意に高値を示した。さらに本研究では、輸血による脳内 rSO2 変化は輸血前後によるHb濃度変化(Hb比)と有意な正の関連を示す一方で、肝臓内rSO2変化 は輸血前後によるHb濃度変化(Hb比)をCOP変化(COP比)で除したものと有意な正の関連 を示した。したがって、輸血を要する重度貧血を伴うHD患者において、脳内酸素動態変化には 輸血による Hb 増加のみが関与することが明らかとなったが、肝臓内酸素動態変化には輸血によ るHb増加(正の変化)と除水に伴うCOP増加(負の変化)の両者の関与が考えられた。

本研究で確認できた輸血による脳内 rSO2 の改善は過去の報告と一致していた。HD 症例の脳 内rSO2は平均血圧、血清アルブミン濃度、Hb濃度および認知機能と正の関連を有することが報 告されている。したがって、重症貧血に伴う Hb 濃度の低下は脳内酸素動態の悪化を介した認知 機能低下につながる可能性も考えられる。本研究で確認された HD中の輸血によるHb濃度の上 昇と脳内 rSO2 変化との正の関連は貧血に伴う認知機能障害の軽減につながる可能性を想起させ る結果である。循環動態の安定した維持HD患者では、肝臓内rSO2は除水を伴うHD中に維持 されること、さらにHb濃度が維持されているHD症例では肝臓内rSO2は脳内rSO2よりも比 較的高いことが報告されている。しかしながら、今回の検討では、重度の貧血存在下で、脳内お よび肝臓内 rSO2には有意な差異を認めなかった。この理由として、重度の貧血という臓器内酸 素供給低下を来す状態では、体内への酸素供給は均一に行われるのではなく、生体内で最も重要 な臓器である脳組織への酸素供給、および脳内酸素動態の維持を優先する一方で、肝臓を含めた 腹腔内臓器の酸素動態は対照的に悪化を来す可能性が考えられる。また、輸血による肝臓内rSO2

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変化において、Hb変化と正の関連を示す理由としては脳内rSO2変化におけるHb上昇との関連 と同様の機序であると推測される。一方、HD 中の除水により循環血漿量減少に対応して総蛋白 およびアルブミン濃度は増加しCOPは増加すると考えられ、除水に伴うCOP比の増加は肝臓内 血流の減少を介した肝臓内酸素動態の悪化と関連している可能性が示唆された。HD 症例の重度 貧血症例中、特に出血性疾患に伴う貧血症例や手術関連貧血症例では循環血液量喪失による血管 内体液量減少を伴う場合も少なくない。そのような症例において、HD 中の輸血による臓器内酸 素動態の改善効果を最大限に得るためには、確実な Hb 値の上昇に加え、さらなる血管内体液量 減少とCOP上昇を抑制するために、緩徐な除水にとどめるなどの臨床的対応が望ましいと本研究 結果から考えられた。しかしながら、本研究ではHD中の脳内および肝臓内血流を直接測定でき ておらず、HD 中の輸血による脳内および肝臓内酸素動態変化と臓器内血流を含む臨床パラメー ターの変化との関連については不明であり、今後さらなる検討が必要であると考えられた。

5 結論

輸血を要する重度貧血を伴う HD 患者において、HD 中の輸血により脳内および肝臓内rSO2 は改善を示し、さらに肝臓内rSO2は脳内rSO2に比し有意に高値を示した。

さらに、脳内酸素動態変化には輸血による Hb 増加のみが関与するが、肝臓内酸素動態変化に は輸血によるHb増加(正の変化)と除水によるCOP増加(負の変化)の両方が関与する。

論文審査の結果の要旨

透析患者、特に血液透析患者は間欠的透析により大量の細胞外液を4時間程度の短時間で除水 する治療を継続的に受けている。このような大量の除水は患者の全身状態が安定している状況で は、中 1日で体重の3%、中2日で体重の5%以内であれば比較的安全に行われることが示され てきた。しかしながら、全身状態が悪化しているような状況で、このような大量の除水が果たし て、どの程度安全に行えているのか、また除水による臓器血流の影響は、どのようになっている のかを検討した報告はこれまでにほとんどない。

本研究は Hb7.0g/dl前後の重症貧血を来した血液透析患者を病態モデルとして、脳と肝臓の

局所酸素飽和度を指標として輸血がどの程度臓器酸素飽和度に影響するかを解析した研究である。

全身状態が安定した透析患者に対する局所酸素飽和度を用いた研究はこれまでにも発表が成され ているが、重症貧血を来した透析患者に対する輸血の効果を評価した本研究は、斬新であり独自 性に富み、その結果が即時的に臨床治療に応用できる実践的な検討である。また、輸血による脳 と肝臓の局所酸素濃度を対比することで、それぞれの臓器への輸血効果の差が生じていることを 明らかにした点も、これまでの研究にはない新たな発見であった。特に本研究では比較的酸素飽 和度が保たれる機序がある脳の局所酸素濃度よりも肝臓の酸素濃度の方が輸血による改善効果が より大きい点を示した。この結果は、これまでの研究発表では見られない新たな知見であり、透 析患者の重症貧血によるショック・リバーと呼ばれる虚血性肝障害が透析により悪化する危険性 を、適切な輸血により防御できる可能性を直接示した点は臨床的意義が極めて高い。

本研究では、現段階でこのような輸血を行った事による肝機能の保持や予後については、ま

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だ検討が行われていないが、今回の研究を元に更に具体的な臨床効果や予後に反映できるかどう かを今後検討されることが期待される。また、門脈系の血流と大循環の血流の双方が得られる肝 臓で何故このような現象が生じたのかを末梢循環などと対比させることや、既存肝機能障害があ る患者でも同様な知見が得られるかなど、今後この機序に関する更なる検討が成されることを期 待したい。

上記理由により、本研究の独創性、得られた新たな知見、実地臨床への即時的な有用性など の観点から自治医科大学医学博士、学位論文に相応しい内容であり、審査員全員の合意のもと、

本論文を学位論文として合格とする。

試問の結果の要旨

試問のプレゼンテーションに関して、本研究の具体的な意図については理解出来ていると思わ れたが、研究結果の動機や臨床的意義については些か説明が不十分であった。特に肝血流改善に ついての考察や脳血流との間に生じた臓器酸素飽和度の差について試問では明確な回答が得られ ず、論文での説明追加が必要であった。また、今回の測定器以外にドップラー超音波などによる 他のデバイスを用いた検証について質問が出たが、その点に関する回答もやや不十分であり、論 文での追加記載を要した。研究結果についても、何故、相関係数が高い血清アルブミン値ではな く膠質浸透圧(COP)の変化や比率を用いたのか些か説明不足の感があった。

しかしながら、本研究の独創性、得られた新たな知見、実地臨床への即時的な有用性などにつ いての説明は満足のいくレベルに到達しており、輸血という普遍的な治療方法がもたらす重症貧 血を合併した透析患者の肝血流改善効果を証明した点はその測定主義や解析方法などに満足のい くレベルに習熟しており、評価に値する発表であった。

これらの観点から自治医科大学医学博士試問に相応しい発表であり、審査員全員の合意のもと、

本研究発表、試問は合格とする。

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