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論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

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Academic year: 2025

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氏 名 稻いながわゆう 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 乙第 829号

学 位 授 与 年 月 日 令和 4年 6月 22日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第3項該当

学 位 論 文 名 大うつ病性障害の再発に対して電気けいれん療法の施行回数が与える影 響について

論 文 審 査 委 員 (委員長) 教 授 田 中 亮 太

(委 員) 教 授 川 合 謙 介 教 授 岡 島 美 朗 准教授 古 郡 規 雄

論文内容の要旨

1 研究目的

電気けいれん療法(ECT)は大うつ病性障害(MDD)に対する有効な治療法であり、早期に改 善が得られるものの、ECT 実施後の再発率は高いことが臨床上の課題となっている。これまで、

再発予防を目的とした薬物療法や ECT による継続・維持療法について研究がなされてきたが、

ECTの実施回数は経験的に8から12回が推奨されているだけで、再発との関連を調べた研究は まだない。本研究の目的は、ECT の施行回数がECT 後の再発に与える影響を明らかにすること である。

2 研究方法

本研究では、2006年1月から2017年12月の間に自治医科大学精神科へ入院し、初めてECT を実施されたMDD患者53名を対象とした。主要評価項目は、ECT最終実施日から1年間の間 における生存日数とした。再発例の生存日数は、ECT最終実施日からMDD再発による入院日ま たは自殺既遂日までの日数とした。その後、ECTを8回以上行なった群と、7回以下の群の2群 に分けて比較をした。各臨床的特徴の比較では、2 値変数に対してχ二乗検定またはフィッシャ ーの正確確率検定を、連続変数に対しては独立したt検定を行なった。再発率の違いについては、

Kaplan-Meyer法で累積生存率を算出し、生存日数を用いたlog-rank検定とCox比例ハザードモ デルで2群間の差を検討した。

3 研究成果

ECT8回以上の群と、7回以下の群の間で、臨床的特徴に差は認められなかった。ECT後1年 間での累積生存率は、7回以下の群(49%)と8回以上の群(79%)で、log-rank検定により解析し たところ有意差を認めた(χ2 = 4.13; P = 0.042)。ただし、Cox比例ハザードモデルでは、有意差 は認められなかった(hazard ratio = 0.364; 95% CI = 0.131-1.007)。

(2)

4 考察

本研究の結果から、ECT施行回数とMDD再発に関連性があることが臨床研究として初めて示 唆された。基礎研究の分野からも、近年、ECT実施回数とその効果の関連性について報告されて いる。MRIを用いた脳形態学的研究によると、5−6回のECT は主に精神病性の症状の改善に寄 与し、左上・下側頭回の灰白質体積を増加させる。一方、10−11回のECTを行うと、抑うつ症状 の改善に寄与し、左海馬の灰白質体積増加と関連していた。この結果から、ECT早期の段階では 精神病性の症状に対する効果が得られるが、抗うつ効果はECTの回数を重ねて初めて得られ、そ れぞれ異なった脳部位の構造変化と関連していることが考えられる。本研究を踏まえると、精神 病性の症状改善を抑うつの改善と誤って解釈せず、脳構造変化と抗うつ効果を認めるまでECTを 継続することで、再発予防に十分な寛解が得られる可能性を想定できる。

また、うつ病の病態には神経炎症仮説と呼ばれる、脳内炎症を抑うつの原因とする仮説がある。

近年のシステマティックレビューによると、少ない回数のECTは急性のストレス反応を引き起こ すが、ECTを継続することによって血清中のコルチゾールや炎症性サイトカインであるTNF-α が減少することが示されており、うつ症状改善のメカニズムとして想定されている。そのため、

十分な ECT 施行回数によるコルチゾールやサイトカインの減少効果がうつ病再発予防に貢献し ている可能性がある。しかし、ほとんどの研究が長くても1ヶ月後までしか検討していない。十 分な回数のECTが、長期に脳内炎症を抑制して再発を予防するかどうかは、十分なフォロー期間 をもつ研究デザインが必要である。

ECT実施回数と再発に関する知見は限られているが、本研究を踏まえると、脳構造変化と抗う つ効果を認めるまでECTを継続することで、脳内炎症を抑制し、再発予防に十分な寛解が得られ るという仮説を想定できる。

ただし、本研究は後ろ向き研究であり、評価尺度を用いた MDDの定量的な重症度評価を全て の患者には実施していない。また、先行研究で示唆されている再発予測因子の中で、本研究で検 討できたものはその中の一部である。さらに、本研究ではECT後の薬物療法が個々の患者ごとに 異なっている。これらの限界点を考慮して、本研究の結果は解釈される必要がある。

5 結果

本研究から、MDD患者に対するECTでは、8回以上行なったほうが、7回以下の場合に比べ て1年間の再発率が低下することが示された。ただし、再発までの時間に差は認めなかった。そ の具体的なメカニズムについては不明であるが、先行研究から推測すると、異なる脳部位の構造 変化や、脳内炎症の抑制などが関与している可能性はある。本研究は後方視的研究であるため様々 な限界はあるものの、ECT実施回数と再発を関連づけた報告は本研究以外に無い。今後は、これ らの限界点を踏まえたうえで、ECT回数と、脳形態学的評価や内分泌学的評価を組み合わせ、ECT 実施回数と再発の関連性を示すことが望まれる。

(3)

論文審査の結果の要旨

大うつ病性障害(MDD)の再発に対する電気けいれん療法(ECT)の試行回数がその後の再発 に与える影響について後方視的に検討した。2006年1月から2017年12月に自治医科大学精神 科で大うつ病の診断のもと実施したECT症例53例を解析対象とした。ECTの施行回数8回以上 の群と7回以下の2群に分け、治療実施から1年間の再発を評価した。カプランマイヤー法では ECT8回以上施行群が7回以下施行群に対して有意(log-rank法)に再発を抑制した。一方Cox 比例ハザードモデルによる生存時間解析では統計学的な有意差を見いだせておらず、本研究の限 界であると思われる。ECT8 回以上行った群の再発抑制効果については、脳構造の変化や神経炎 症抑制等の可能性について、過去の文献をもとに適切に考察している。これまでECTの施行回数 と再発の関係を検討した報告はなく、本研究では一定回数のECT治療が大うつ病性障害の再発抑 制に重要であることを明らかにしている。実臨床におけるECT施行回数は担当精神科医の主観に 委ねられているのが現状であり、今回の研究結果は実臨床でのECT治療指針に寄与する内容と考 えられ、重要な治験が得られたと判断出来る。以上から稻川優多氏から提出された学位論文は本 学の大学院博士論文としての基準を満たしており、合格の判断が妥当と考える。

試問の結果の要旨

稻川優多氏は、”大うつ病性障害の再発に対して電気けいれん療法の施行回数が与える影響につ いて”に関する研究成果の発表を行った。まず、MDDに対するECTの有効性と再発率が高いと いう臨床的課題について報告頂き、ECTの施行回数がその後再発に与える影響に関するエビデン スが乏しく、本研究を遂行するに至った旨説明があった。53例の後方視的調査の結果からECT8 回以上施行群が 7回以下施行群より、1年間の再発が少ないことが報告された。審査委員からは ECT施行回数8回をカットオフにした理由、各症例でECT施行回数決定に至った経緯、ECT施 行症例の詳細な臨床的な背景と再発への影響、ECT 施行回数が再発抑制に寄与するメカニズム、

有害事象に関する考察、ECT以外のニューロモデュレーション治療の現状等の質問がされた。稻 川氏は各審査員の質問に対しても紳士的にかつ論理的に回答する事が出来ており、申請者の研究 能力及び、科学的素養・態度は学位授与に値すると考える。

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