連 続 不 斉 四 級 炭 素 の 構 築
M 1 松 田 優 一 郎
現 在 ま で 報 告 さ れ て い る 天 然 物 由 来 の 生 理 活 性 物 質 に は 、 不 斉 炭 素 を 有 す る 化 合 物 が 数 多 く 存 在 し て い る 。 不 斉 炭 素 の 構 築 は 、 野 依 不 斉 還 元 等 の 既 存 の 方 法 が 知 ら れ て い る が 、 そ れ ら の 方 法 で は 合 成 で き な い 不 斉 炭 素 も 存 在 す る 。
最 難 関 の 不 斉 合 成 の 1 つ と し て 考 え ら れ て い る の は 、 不 斉 四 級 炭 素 が 連 続 的 に 結 合 し た 連 続 不 斉 四 級 炭 素 構 造 の 構 築 で あ る 。 連 続 不 斉 四 級 炭 素 は 立 体 的 に 混 雑 し て い る こ と か ら 反 応 条 件 が 厳 し く 、 さ ら に 複 雑 な 構 造 で あ る こ と か ら 目 的 の 鏡 像 異 性 体 以 外 の 多 く の 副 生 成 物 を 生 じ る こ と か ら 、 効 率 的 か つ 立 体 選 択 的 な 構 築 は 困 難 で あ っ た 。 し か し 近 年 、 パ ラ ジ ウ ム 触 媒 に よ る 不 斉 環 化 反 応 を 用 い た 方 法 を 始 め と し 、 様 々 な 合 成 戦 略 に よ り 、 立 体 選 択 的 な 連 続 不 斉 四 級 炭 素 の 構 築 法 が 報 告 さ れ て き た 。 今 回 、 連 続 不 斉 四 級 炭 素 の 構 築 法 に つ い て 、 い く つ か の 天 然 物 の 全 合 成 お よ び 部 分 合 成 を 例 に 紹 介 す る 。
【 参 考 文 献 】
( 1 ) A n g e w . C h e m . 2 0 1 6, 5 5, 4 1 5 6 − 4 1 8 6 .
昆 虫 由 来 化 学 防 衛 物 質 の
新 規 医 薬 品 候 補 化 合 物 と し て の 可 能 性
M 1 長 屋 裕 貴
世 界 に は 約 1 0 0 万 種 の 昆 虫 が 生 息 し て お り 、 あ ら ゆ る 文 化 圏 で 食 料 品 や 衣 料 品 等 、 様 々 な 用 途 で 使 用 さ れ て き た 。中 で も 、昆 虫 が 外 敵 か ら 身 を 守 る 際 に 使 用 す る 化 学 防 衛 物 質 は 医 薬 的 用 途 と し て の 可 能 性 が 注 目 さ れ て き た 。し か し 、化 学 防 衛 物 質 の 生 合 成 経 路 等 、 昆 虫 の 化 学 防 衛 に つ い て の 研 究 は 一 部 の 昆 虫 で し か 解 明 さ れ て い な い 。本 論 文 で は 、世 界 中 の 各 地 域 に お け る 昆 虫 の 医 薬 的 使 用 例 、 昆 虫 の 化 学 防 衛 例 お よ び 現 代 の 天 然 物 分 析 法 の 概 要 、 薬 学 的 生 物 活 性 を 有 す る 昆 虫 由 来 化 合 物 の 例 を 紹 介 す る 。ま た 、昆 虫 由 来 の 化 学 防 衛 物 質 の 新 た な 医 薬 品 候 補 化 合 物 と し て の 有 用 性 に つ い て 述 べ る 。
【 参 考 文 献 】
( 1 ) N a t. P r o d. R e p. 2 0 1 0, 2 7, 1 7 3 7 – 1 7 5 7 .
Protein-Templated Fragment Ligation による 新規タンパク質リガンド探索手法
M 1 手 嶋 真 武
医 薬 品 の 創 製 研 究 で は 、 合 成 お よ び 評 価 を 反 復 す る こ と で 有 用 な 新 規 化 合 物 を 探 索 し て い る 。 し か し な が ら 、そ の 探 索 方 法 は 、コ ス ト や 時 間 な ど を 大 幅 に 要 す る こ と か ら 、創 薬 の 場 に お い て 、 よ り 効 率 的 な 新 規 探 索 手 法 が 求 め ら れ て い る 。 そ こ で 近 年 、 タ ン パ ク 質 の 分 子 認 識 機 能 と 低 分 子 f ra g m e n t を 用 い た p r o t e i n t e m p l a t e d f ra g m e n t l i g a t i o n が 着 目 さ れ て い る 。本 手 法 は 、 タ ン パ ク 質 と 相 互 作 用 を 示 す 低 分 子 f ra g m e n t 同 士 を タ ン パ ク 質 上 で 反 応 さ せ 、 生 成 す る リ ガ ン ド と 結 合 さ せ る こ と で 、 合 成 と 評 価 の 統 合 を 可 能 に し た 。本 論 文 で は 、反 応 産 物 の 検 出 法 や 本 手 法 に お け る 実 例 、 将 来 性 な ど に つ い て 解 説 す る 。
【 参 考 文 献 】
( 1 ) A n g e w . C h e m . I n t . E d . 2 0 1 7, 5 6, 7 3 5 8 - 7 3 7 8 .
創薬におけるシクロプロパン骨格の有用性
M 1 深 澤 隼 介
シ ク ロ プ ロ パ ン は 、 3 つ の 炭 素 が 結 合 角 60 度 で 結 合 し て い る た め ゆ が ん だ 構 造 を と る 。 そ の 結 果 、 シ ク ロ プ ロ パ ン は C-H の 結 合 エ ネ ル ギ ー が 他 の ア ル キ ル 基 と 比 較 し 強 力 で あ り 、 医 薬 品 の 候 補 に ア ル キ ル 基 の 代 わ り と し て そ れ を 導 入 す る と 、 酸 化 的 代 謝 が さ れ に く く な る 。 ま た 、 シ ク ロ プ ロ パ ン が 導 入 さ れ た 化 合 物 は 平 面 性 が 消 失 し 、 一 方 で コ ン フ ォ メ ー シ ョ ン が 固 定 化 し 柔 軟 性 が 低 下 す る た め 、 医 薬 品 の 候 補 に シ ク ロ プ ロ パ ン を 導 入 す る と オ フ タ ー ゲ ッ ト の 減 少 、 阻 害 活 性 の 向 上 な ど が 期 待 で き る 。
以 上 よ り 、 医 薬 品 の 候 補 を 非 臨 床 か ら 臨 床 試 験 へ 発 展 さ せ る た め に 、 シ ク ロ プ ロ パ ン を 導 入 す る こ と が 近 年 に な り 増 加 し て お り 、 ま た FDA に 承 認 さ れ た 多 く の 医 薬 品 に も 導 入 さ れ て い る 。
本 総 説 で は 、 医 薬 品 の 候 補 に 対 し シ ク ロ プ ロ パ ン を 導 入 し た と き 、 ど の よ う な 特 長 を 獲 得 し た の か を 多 数 の 実 例 を 交 え て 紹 介 す る 。
【 参 考 文 献 】
(1) J. Med. Chem. 2016, 59, 8712-8756.
小 胞 体 を 標 的 と す る 天 然 物 の 作 用 機 序 と 医 薬 品 と し て の 可 能 性
M 1 佐 藤 慶 吾
タ ン パ ク 質 の 合 成 や フ ォ ー ル デ ィ ン グ 等 を 担 う 小 胞 体 の 機 能 異 常 は 、“小 胞 体 ス ト レ ス ”と し て が ん や 神 経 変 性 疾 患 ( ア ル ツ ハ イ マ ー 病 等 ) の 発 症 へ の 関 与 が 報 告 さ れ て い る 。 小 胞 体 ス ト レ ス と は 、 生 活 習 慣 の 乱 れ や 遺 伝 等 の 原 因 に よ り 、 異 常 タ ン パ ク 質 が 小 胞 体 内 に 過 度 に 蓄 積 さ れ る 、 ま た は 、 小 胞 体 内 の カ ル シ ウ ム イ オ ン 動 態 に 異 常 を き た す 状 態 の こ と で あ る 。 小 胞 体 ス ト レ ス が 長 期 に わ た っ て 生 じ る こ と で 細 胞 に ア ポ ト ー シ ス が 誘 導 さ れ る こ と が 判 明 し て お り、上 記 疾 患 発 症 に 寄 与 す る 。
本 論 文 で は 、 天 然 由 来 の 小 胞 体 を 標 的 と す る 化 合 物 に 注 目 し 、 小 胞 体 ス ト レ ス の メ カ ニ ズ ム と 、 小 胞 体 を 標 的 と す る 様 々 な 天 然 由 来 化 合 物 の 作 用 機 序 を 解 説 し 、 標 的 と し て の 小 胞 体 の 有 効 性 と 、 天 然 物 の 医 薬 シ ー ド と し て の 可 能 性 を 示 す 。
【 参 考 文 献 】
( 1)Nat. Prod. Rep. 2015, 32, 705-722.