重力波の直接観測
山口大学理学部 白石 清
§1. 重力とは何か
§2. 重力波とは何か
§3. 重力波の検出
§4. 今回の発見
§5. 重力波天文学の将来
2016 年 2 月 12 日 00:30(日本時間)、アメリカの aLIGO は 連星ブラックホール (太陽質量の約 36 倍と約 29 倍) からの重力波を
2015 年 9 月 14 日 (日本時間 18:50:45、0.2 秒間) に検出した、と発表。
論文12報、著者 1000 名以上。
このイベントを GW150914 と命名。
連星ブラックホールのイメージ
ニュートン リンゴから惑星の運動 (ケプラーの法則) まで説明 万有引力の法則 1687 年
EMAN さんのサイトより
重力は瞬時に伝わる?
アインシュタイン (1879-1955)
瞬時に伝わる力は, 特殊相対性理論 (1905) と矛盾 (速さが光速を超えるものはない)
弱重力、低速運動ではニュートンと一致 (重力は時空のゆがみ )
等価原理、 潮汐力が本質
GPS(補正しないと誤差 11 ㎞/1 日)
中性子星
半径 10 ㎞程度、上限質量 太陽質量の約 3.2 倍 太陽質量の 8〜40 倍の星の終着点
パルサー 発見 1967 年、ベル (LGM1)
ノーベル賞 1974 年ヒューイッシュ (同年ライル)
超新星爆発
約8太陽質量以上の星の終着点
太陽が一生のうち生み出すエネルギーと同等の量を数日のうちに放出
かに星雲パルサー、1054 年超新星爆発 SN1987A
ブラックホール
X 線天体
(銀河系の中心には 420 万太陽質量のブラックホール) 半径は質量に比例
§2. 重力波とは何か
電磁気力 電磁場 電磁波 (=光) マクスウェル予言、ヘルツ実験検証 (24 年後)
電荷の加速により生じる
重力 (相対論的) 重力場 重力波 (時空の漣) 質量の加速により生じる
1916
光速、横波
波はエネルギーを運ぶ 2 つの「偏光」モード
重力波の発生
100 ㎏の質量を 1m の棒の両端につけて毎秒 1000 回回転させる
⇒10−40
1 トンの質量を 2m の棒の両端につけて毎秒 1000 回回転させる
⇒10−38
ハルス、テイラー
(米)1974 年連星中性子星パルサー(PSR1913+16) からの重力波放出 (太陽質量程度、周期 9 時間弱)
エネルギー放出により、軌道運動周期が減少 1993 年ノーベル賞
§3. 重力波の観測 ウェーバー
1960 年代1.5 トンアルミ円筒 (1.5m) 共振型 圧電気により検知
1969 年検出発表 (立証されず)
(マイケルソン・モーレー干渉計)
直交する 2 本の腕 光 100 往復
雑音 (高周波量子ノイズ、中周波熱振動、低周波地面振動)
TAMA300 (日) 腕の長さ 300m 東京・三鷹
1995 年試運転 2002 年から 3 年間
LIGO 2000 年試運転開始 2005 年から観測
GEO600 (英・独) 腕 600m ドイツ・ハノーバー
Virgo (仏・伊) 腕 3 ㎞ イタリア・ピサ
2007 年から観測
*
aLIGO
(advanced Laser Interferometer Gravitational wave Observatory) 2015 年 9 月 二つの検出器それぞれ腕の長さ 4 ㎞のレーザー干渉計 重力波の方向は一点には決まらない
Washington Louisiana
(砂漠!) ←約 3000 ㎞ (光速で 10 マイクロ秒) → (ジャングル!)
100Hz 付近の感度が高い
*
KAGRA
(2009 年) 腕 3 ㎞岐阜・神岡 地下、低温鏡
iKAGRA 2010 年から建設 2016 年 3 月試運転:bKAGRA 2017 年本格稼働 (サファイア鏡) (東大宇宙線研究所・所長梶田隆章氏)
*aVirgo
*LIGO India
§4. 今回の発見
2015 年 9 月 14 日 09:50:45(世界時) 正式な観測期間の前 advanced LIGO (aLIGO) (アメリカ) (11 億ドル!?+2 億ドル upgrade?)
リビングストン→(7 ミリ秒)→ハンフォード
ノイズの可能性 20 万年に 1 回以下、ノイズである確率2・10−7、有意さ 5.1 σ (原子核の 1000 分の 1 以下の精度) (インジェクション 偽信号、予行演習・訓練?)
なお、LIGO は 8 月頃までお休み
重力波の振動数 35Hz〜150Hz 毎秒 75 回 350 ㎞ 0.6 c 連星の公転→リングダウン 250Hz (帯域 35〜350Hz) シミュレーション (テンプレート) と一致 最大振幅 10−21 ノイズ 10−18
36太陽質 量 (直径 220 ㎞)+29太陽質 量 (直径 170 ㎞、関東平野が入る)
→62太陽質量 (直径 370 ㎞、九州が入る) 3太陽質量分が重力波のエネルギー/0.03 秒 (ガンマ線バーストより激しい)
角運動量 0.67
2台の観測ではここまでしかわからない
*今回の発見の意義*
・初めて重力波の存在を直接確認できた。
・連星ブラックホールの存在を初めて確認した。
・ブラックホールの準固有振動 (?) リングダウン ミリ秒で減衰
・(一般相対論の検証。重力子の質量<1.2×10 −22eV)
・種族 III の星の存在確認 (?)
(重元素が多い⇒たくさんの吸収線⇒放射を吸収⇒星の放射で 質量放出⇒星の質量が小さくなりすぎる)
・ガンマ線バーストの一つの源 (?)
Fermi 衛星 0.4〜1 秒後にガンマ線バースト 50keV 以上 (Short GRB!?)
1 つの銀河では 10 万年から 100 万年に 1 回 半径 3 億光年の球の中には 10 万個の銀河 aLIGO 今後 100 倍見つかる 年 1000 個?
方向確定のためには 3 つ以上の同時観測
他の観測 (電磁波、ニュートリノ (?)) との同時観測が大事 マルチメッセンジャー
*ET (Einstein Telescope)
腕の長さ 10 ㎞、低温鏡、正三角形 10 億ユーロ?
aLIGO の 10 万倍の数見つかる
DECIGO
宇宙空間 (太陽を公転)、正三角形 5 ケタ上の精度
「新しい望遠鏡ができるたび新たな発見!」
シミュレーション スーパーコンピュータ
§6. 参考文献
田越秀行、中村卓史 日本物理学会誌 71(2016)210 真貝寿明 重力波の解説メモ (統合版)
中道晶香 ついに発見!重力波 月刊星ナビ 2016 年 5 月号 p.50 日経サイエンス 2016 年 5 月号 大特集 重力波