ボゾンスターの解析的解
A Poorman's approach
山口大理 白石 清
☜目次☞
0. Introduction 1. 球形のボゾンスター
2. 回転する非相対論的ボゾンスター 3. 今後の課題のまとめ
日本物理学会秋の分科会(東京都立大学)1997年9月21日
0. Introduction
(半)解析的な解の研究の意義 (異議あり?)
1 非相対論的(ニュートン)近似
+(Post Newtonian (?))
ちゃんとした近似になるのか,
展開の物理的意味を考察しつつ検討
2 臨界的振る舞いの検証
荷電ボゾンスターでq 2->1の極限で 質量の振る舞い〜(1ーq 2)-1/2
3 種々の応用問題
たとえばBGとしての荷電ボゾンスター における量子的真空の不安定性
(Jetzer et al. Astropart. Phys. 1 (1993) 429-448)
4 厳密解を解くときの"種"
特に非球形のとき
今回扱うのはボソンの自己相互作用 の非常に大きい極限の場合です。
1. 球形のボゾンスター
アクション:
S = d4x – g 16π 1
GR – F2 – Dµϕ 2 – m2 ϕ 2 – λ 2 ϕ 4
(Dµ = ∇µ + i e Aµ)
"Charged Boson Star" が古典的に構成される。
reviews:
Jetzer, Phys. Rep. 220 (1992) 163
Liddle & Madsen, J. Mod. Phys. D1 (1992) 101
Colpi, Shapiro & Wasserman, PRL 57 (1986) 2485 (電荷なし)
電荷が臨界関係に近いとき(e2 ≈ Gm2) Charged Boson Starの半径は(Jetzer)
R≈O(1)× 1
m λ
Gm2 – e2
φ
: dilaton
S = d4x – g
16π
[
G1
R – 2 ∇µφ 2 – e– 2aφF2– e– 2bφ Dµϕ 2 – m2e– 2cφ ϕ 2 – λ
2e– 2dφ ϕ 4
]
(場の運動方程式は省略)
球対称解のかたち ds2 = – 1 – 2GM (r)r e– 2δ(r)dt2 + 1 – 2GM (r)r
– 1
dr2 + r2d2Ω2 ϕ=ϕ (r) eiωt,
e Aµ= m A(r) –ω δµ0, φ=φ (r) を仮定する。
境界条件
ϕ′ (0) = 0, A′(0) = 0, φ′(0) = 0 M(0) = 0, δ(0) = 0, φ(0) = 0
ϕ (∞) = 0, A(∞) = const.
変数の書き換え
さらに q2 = e2 / Gm2, Λ =λ / Gm2 と定義 また mr→ r, GmM → M, Gϕ→ ϕ
と無次元化する。
さらに,Λ→∞の場合を考える。
ϕ* =ϕ Λ, r* = r / Λ, M* = M / Λ
結合常数が臨界条件に近いとき,
A0が1に近いので
A(r *) = A0(1+α(r*))とおき,
α , φ, M, δ = O( A20 – 1)として まず の最低次で解く。
さらに0での境界条件も合わせ考えると つぎの連立方程式を得る。
β″ + 2r*β′ = q2 – (b – c)2 A20 – 1
2 +β + M* r* +δ
1
r*2M*′ = A02 – 1
2 +β + M* r* +δ
r1*δ′ = – A02 – 1
2 +β + M* r* +δ
ここで β =α – (b – c)φ, φ = (b – c) / q2 α 解は次のように得られる。
・線形近似の解(q2 – (b – c)2≅ 1)
β = A02 – 1 2
q2 – (b – c)2
1 + (b – c)2 – q2 1 – sin 1 + (b – c)2– q2r*
1 + (b – c)2 – q2r*
M* = A20 – 1 2
1
1 + (b – c)2 – q2 ×
sin 1 + (b – c)2– q2r*
1 + (b – c)2– q2 – r*cos 1 + (b – c)2– q2r*
δ = A02 – 1 2
1
1 + (b – c)2 – q2 cos 1 + (b – c)2 – q2r* – 1
すなわち,臨界条件は
q
2– (b – c)
2→ 1
これらから,同じ線形近似のレベルで
e– 2dφ ϕ*2 = A02 – 1 sin 1 + (b – c)2– q2r*
1 + (b – c)2– q2r*
解のかたちはなかなかよい。(図)
Numerical Solution
q=.7, varphi0=.1
1 2 3 4 5
0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
Approximation (linearized ODEs)
q=.7, varphi0=.1
1 2 3 4 5
0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
.nb 1
Approximation (O(r^2))
q=.7, varphi0=.1
1 2 3 4 5
0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
M_* (O(r^2))
0 0.5 1 1.5 2 2.5
-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1
.nb 2
4.この最低次の近似の解は
H = d3xψ+( x)– ∇2
2m ψ( x)
+ 12 d3x d3x′ψ+( x)ψ( x)V(| x – x′|)ψ+( x′)ψ( x′)
を変分してえられる運動方程式の の解に対応 している。(非相対論的近似)
正確にはchemical potential×(粒子数) の項を付けて変分。(ここで は,あとでみる長距離ポテンシャルの定数部分にくりこまれるので省略。)
Ferrell & Gleiser, PRD40 (1989) 2524 (g=0) Membrado et al., PRD40 (1989) 2736 (g= ) ほか,そのreferences
なぜなら等価なH
から得られる運動方程式は次のようになる。
ただしここで
・ のとき
これは の場合のレーン・エムデン方程式に対応 ちなみに自己相互作用の次数を変えればさまざまな指数に対応した レーン・エムデン方程式がえられる。
・2次のオーダー
非相対論的近似の考察からもわかるように,最低次 ではボゾンスターの質量を決めることができない。
そこで の2次のオーダーを考えてみる。
, etc. y=
結果:(q2=0.9, a=b=c=0のとき)
M(r)のグラフ(適当なスケール)
y=
もともとy= の小さなところでしか近似は 有効でないが,y= がかなり小さくないとM に対してはよい近似とならない。
Pade近似等により,改善する-->今後の課題
臨界条件近傍のボゾンスターの質量の近似
boson star の質量を求めるには, A02 – 1
≈
ϕ* 2(0)を動かして最大値を求める。
すべての関数をr*の2次式で近似する。
これらから
ϕ
*2= 0
となるr
*= r
cを求めるとただし, として高い次数は落と
した。
M
*≈ 1
6 A
02– 1 r
c3をA02 – 1≈
ϕ*2(0)の関数として
考えるとその極大値は そのとき
r
cは図参照
2. 回転する非相対論的ボゾンスター
(電荷なし)
の変分から得られる運動方程式は次のようになる。
ただしここで
,
, 以下*は略す。
回転:
・ のとき,回転の効果が残るとして
ただし
これを解くとき,ボゾンスターの外側( =0)
の領域で重力場 に特異点がないようにしなければ ならない。
たとえば無限遠で となるようなGreen関 数を使って解く。
ここでは,簡単な近似解をあたえ,知られている厳 密な解と定性的に振る舞いを比べてみる。
解が次のようなかたちで近似できると仮定
,( )
ただし は の解
境界条件(決して厳密ではないが)
赤道上の外縁で回転の影響( の関数)は小さい
,
赤道の内縁上で重力場の勾配=0
at
図
質量(スケールされている)は この関係から
外周と角運動量の関係のグラフ
図
四重極能率と質量,スピンの関係の定性的理解-->
すぐにできる課題。
注意:非相対論的なので,球対称のときのように,
すくなくともひとつはパラメータの値が原理的に決 まらない。
非相対論的,あるいは相対論的な厳密解を計算する 際の種として使えないか?変分法に工夫。
回転するボゾンスター
Ryan, PRD55 (1997) 6081
Yoshida & Eriguchi, PRD56 (1997) 762
そのほか,そのreferences(ごめんなさい!)
3. 今後の課題のまとめ
・球対称解
近似を改善(パデ式?)
臨界的ふるまいの解析的検討
・回転する非相対論的ボゾンスター
非相対論的レベルで厳密に解く(Green関数)。
そのうえでPost Newtonianの効果を入れる。
変分法的に解けないか。
(ホントに解析的に解けないか?個人的こだわり)
ボゾンスター全般について
・今回スカラー4点coupling無限大極限のみあつ かった。 couplingない一般の場合は?(複雑)
・Brans-Dicke(dilaton つき)ボゾンスター Tao & Xue, PRD45 (1992) 1878
Gunderson & Jensen, PRD48 (1993) 5628 Torres, PRD56 (1997) 3478
Comer & Shinkai, preprint