13 . 導関数の定義,様々な関数の導関数
科目: 基礎解析学I及び演習(1‐3組)
担当: 相木
前回のプリントで微分係数の定義をした.さらに,開区間I = (a, b)上で定義された 関数fに対して∀α∈Iに対してαにおけるfの微分係数f′(α)が存在するとき(つまり,
fがαで微分可能などき),f はI上で微分可能であると言ったことを思い出そう.
そこで,fが開区間I上で微分可能なとき,x ∈ Iに対してfのxにおける微分係数 f′(x)を対応させる関数が考えられる.これが導関数である.
導関数
a, b∈R,a < bとし,I = (a, b)を開区間とする.f :I →RがI上で微分可能なとき,
x∈Iに対してf のxにおける微分係数f′(x)を対応させる関数をfの導関数といい,
df
dx(x), d
dxf(x),f′(x)などと表す.定義からf′もまたI上で定義された関数である.
注意:fの導関数f′は連続であるとは限らないことに注意(演習問題).
プリント12で解説した微分可能性の基本性質はI上で微分可能な関数に対してその まま適用すれば導関数に対する性質にもなるのでもう一度復習しておく.
微分可能性の基本性質
a, b∈R, a < bとし,I = (a, b)を開区間とする.f :I →Rとg :I →Rは共にI上 で微分可能であるとする.このとき,以下が成り立つ.
(i) ∀s, t∈Rに対してsf +tgはI上で微分可能で∀x∈Iに対して (sf+tg)′(x) = sf′(x) +tg′(x) (微分の線形性)
が成り立つ.
(ii) f gはI上で微分可能で∀x∈Iに対して
(f g)′(x) =f′(x)g(x) +f(x)g′(x) (積の微分公式)
が成り立つ.
(iii) ∀x∈I, f(x)̸= 0ならば g
f はI上で微分可能で∀x∈Iに対して (g
f )′
(x) = g′(x)f(x)−g(x)f′(x)
f2(x) (商の微分公式)
が成り立つ.
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合成関数の微分
a, b, c, d∈R, a < b, c < dとし,I = (a, b), J = (c, d)を開区間とする.関数f :I →R とg :J →Rは以下の3つを満たすとする.
(i) ∀x∈I, f(x)∈J.
(ii) f はI上で微分可能である.
(iii) gはJ上で微分可能である.
このとき,fとgの合成g◦f :I →RはI上で微分可能で∀x∈Iに対して (g◦f)′(x) =g′(f(x))f′(x)
が成り立つ.
逆関数の微分
a, b∈Rとし,I = (a, b)を開区間とする.関数f(x)はI上で微分可能であるとし,逆 関数f−1 :R(f)→I が存在するとする.さらに,α∈I においてf′(α)̸= 0であると し,y =f(α)とおく.このとき,y∈R(f)においてf−1は微分可能で
d
dyf−1(y) = 1
df
dx(f−1(y)) が成り立つ.なお,右辺の分母は「fの導関数df
dxにf−1(y)を代入したもの」である.
上の逆関数の微分の表記は教科書と少し違うが,上のように書いたほうが「どの関数」
を「どの変数」に関して微分しているのかがはっきりするのでこのように書いた.教科書 では微分を′を用いて表記しているが,逆関数の微分を考えるときは混乱しやすいのでお すすめしない.
上の書き方では,逆関数f−1がyの関数として与えられているときのような表記になっ ているが,yであることに特に意味はなく,fの変数と区別するために別のアルファベッ トを使っているだけである.注意しなくてはならないのが,fの変数とf−1の変数に同じ アルファベットを使うと混乱を招き,また,上の逆関数の微分の公式を間違って適用する 原因になるので変数を表すアルファベットを区別するようにしよう.
2
最後に,よく使う関数の導関数を列挙する.すでに演習問題でも使っていたようにR 上の関数sinxとcosx,(−π2,π2)上の関数tanxの導関数はそれぞれ
d
dxsinx= cosx, d
dxcosx=−sinx, d
dxtanx= 1 cos2x, である.
様々な関数の導関数
(i) R上の関数exに対して
d
dxex =ex が成り立つ.
(ii) (0,∞)上の関数logxに対して d
dxlogx= 1 x が成り立つ.
(iii) ∀t∈R\ {0}をとる.(0,∞)上の関数xtに対して d
dxxt =txt−1 が成り立つ.
(iv) [−1,1]上の関数arcsinxに対して d
dxarcsinx= 1
√1−x2
が成り立つ.
(v) [−1,1]上の関数arccosxに対して d
dxarccosx=− 1
√1−x2
が成り立つ.
(vi) R上の関数arctanxに対して d
dxarctanx= 1 1 +x2 が成り立つ.
特に指定がない限り,これらは証明なしに用いてよい.
3
以下の問題で逆三角関数は主値をとるとする.
予約制問題
(13-1) d
dxarcsinx= 1
√1−x2 を示せ.
(13-2) 以下のR上の関数の導関数を求めよ.
(i) ex2+3x+1 (ii) sin(cosx)
(13-3) 以下で与えられるR上の関数fの導関数f′ を求めよ.また,f′がx= 0で連続 でないことを示せ.ただし,sin1x とcos1x はx →0における極限を持たないこと を認めてよい.
f(x) =
x2sinx1, x̸= 0,
0, x= 0.
早いもの勝ち制問題
(13-4) d
dxarccosx=− 1
√1−x2 を示せ.
(13-5) d
dxarctanx= 1
1 +x2 を示せ.
(13-6) 以下のR上の関数の導関数を求めよ.
(i) √
1 + cosx (ii) ax (a >0は定数)
(13-7) 以下の関数の導関数を求めよ.括弧内は関数の定義域を表す.
(ヒント:合成関数の微分)
xsinx (x >0)
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