ベジエ曲線の導関数
ベジエ曲線bn0(t)の導関数は,制御点の差分を用いて計算で きる.
制御点の前進差分演算子∆kbj を帰納的に
∆0bj =bj, ∆kbj = ∆k−1(bj+1−bj)で定義する.
例.∆bj =bj+1−bj, ∆2bj =bj+2−2bj+1+bj,
∆3bj =bj+3−3bj+2+3bj+1−bj.
d
dtbn0(t)=
∑n j=0
bjd
dtBnj(t)= n
∑n j=0
(Bn−1j−1(t)−Bn−1j (t))bj
=n
∑n−1 j=0
(bj+1−bj)Bnj−1(t)=n
∑n−1 j=0
∆bjBnj−1(t)となる.
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特に,ベジエ曲線bn0(t)は端点b0, bnでそれぞれ,ベジエ多角 形の辺b0b1, bn−1bnに接することがわかる.
上述の細分割とあわせると,ベジエ曲線bn0(t)は点bn0(t0)で線 分bn0−1(t0)bn1−1(t0)に接していることもわかる.
また,高階の導関数に対しても,
dk
dtkbn0(t)= n!
(n−k)!
n−k
∑
j=0
∆kbjBn−kj (t) (9) が成り立つ.
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ベジエ曲線の高階の導関数の応用例
高階の導関数に関する式(9)を用いて,細分割に関する補題2 を示す.
c1(t)=bn0(t0t)のベジエ点を求めるために,まずつぎのことに 注意する.
多項式 p(t)=a0tn+a1tn−1+· · ·+an−1t+anに対して,原点 t=0でのn階までの微係数が定まると多項式 p(t)は定まる.
すなわち,n次の多項式p(t)とq(t)に対して,
dk
dtkp(t)|t=0 = dk
dtkq(t)|t=0 (k=0,1,· · · ,n) ならば,p(t)= q(t)となる.
また,
dk
dtkbn0(t0t)|t=0= n!
(n−k)!t0k∆kb0 (k =0,1,· · · ,n) (10) で,右辺はt0とb0,b1,· · · ,bk で定まることに注意する.
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c1(t)=bn0(t0t)のベジエ点をc0,c1,· · · ,cnとすると,
c1(t)=
∑n j=0
cjBnj(t)で,
dk
dtkc1(t)|t=0 = n!
(n−k)!∆kc0 (k= 0,1,· · · ,n) (11) となる.また,cr0(t)=
∑r j=0
cjBrj(t), br0(t)=∑r
j=0bjBrj(t)( r=0,1,· · · ,n)とおくと,br0(t0t)=
∑r j=0
bjBrj(t0t)で,(10), (11) より,
dk
dtkbr0(t0t)|t=0 = dk
dtkcr0(t)|t=0 (k= 0,1,· · · ,r) (12) となる.
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ベジエ曲線の高階の導関数の応用例
cr0(t),br0(t0t)の各成分はr次の多項式であるから,
cr0(t)=br0(t0t)となる.特に,cr0(1)=br0(t0)(r=0,1,· · · ,n)を 得る.従って,cr =cr0(1)=br0(t0)(r= 0,1,· · · ,n)を得る.
従って,c1(t)= bn0(t0t)のベジエ点は
b0,b10(t0),b20(t0), . . . ,bn0(t0),
で与えられる.
同様に,c2(t)=bn0(t0+(1−t0)t)のベジエ点を求めると bn0(t0),bn−11 (t0),bn−22 (t0), . . . ,bn
となる.
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平行移動,拡大や縮小,回転移動などにより,ベジエ曲線はどの ように変化するかなどを調べる.
平面R2あるいは空間R3のn+1個の点b0,b1,· · · ,bnを考 える.
b=c0b0+c1b1+· · ·+cnbn, c0+c1+· · ·+cn =1 と表わされるとき,bをb0,b1,· · · ,bnの重心結合という.
例えば3点b0,b1,b2の作る三角形の重心g= 1 3b0+ 1
3b1+ 1 3b2 は,重心結合の一例である.
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重心結合と制御多角形
集合P=
∑n j=0
cjbj
∑n j=0
cj = 1, 0≤ cj ≤ 1
をb0,b1,· · · ,bnで生成 される凸包とよぶ.
例1. 2点b0,b1のとき,Pは線分である.
例2. 3点b0,b1,b2のとき,Pは三角形の内部と境界である.
図11
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例3. 空間R3の4点b0,b1,b2,b3 を考え ると,一般にはPは四面体の内部と境界 である(図12a).
図12a
例4. 4点b0,b1,b2,b3が同一平面上にあ るとき,Pは四辺形の内部と境界である
(図12b). 図12b
ベジエ曲線とその制御多角形との関係をみよう.
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重心結合と制御多角形
ベジエ曲線bn0(t)は0≤ t≤1のとき,制御多角形内にある.
これをベジエ曲線の凸包性という.
このことは次のようにしてわかる:ベルンシュタイン多項式Bnj(t) は
Bnj(t)≥0 (0 ≤t≤ 1),
∑n j=0
Bnj(t)= 1 をみたす.ベジエ曲線bn0(t)=∑n
j=0bjBnj(t)は集合 P={∑n
j=0cjbj ∑n
j=0cj =1, 0≤cj ≤1
}に含まれる.
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別証
b0
b1
b2
b3
b10HtL
b11HtL
b12HtL b20HtL b21HtL
b30HtL
ド・カステリョのアルゴリ ズム において, bri(t) は1 つ前の段階である br−1i (t) と bri+1−1(t)とをt : 1− t に内分 する点として得られ,これを 繰り返すことによりbri(t)は 得られる.
従って,bri(t)はb0,b1,· · ·,bn から生成される制御多角形内にあ
る. 特に,ベジエ曲線bn0(t)は制御多角形内にあることがわかる.
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