6-1 2.2.3 行列の積 【動画】
行列どうしの積は和や差よりかなり複雑です。以下の例を見て下さい。
=
2 3 0
0 1 A 1
−
=
0 1
3 1
0 2 B
の2つの行列の積は以下のようになります。
= −
+
+
+
−
+
+
+
+
−
+
=
9 1
3 1
0 2 3 3 0 0 1 2 ) 1 ( 3 2 0
0 0 3 1 0 1 1 0 ) 1 ( 1 2 AB 1
四角で囲まれた部分は、行列Aの1行目と行列Bの1列目を順番に掛けて和を取っていま す。成分表示では以下のように表わされます。
( ) ( ) ( ) ( ) AB AB AB AB
11 11 11 12 21 13 31
12 11 12 12 22 13 32
21 21 11 22 21 23 31
22 21 12 22 22 23 32
= + +
= + +
= + +
= + +
a b a b a b a b a b a b a b a b a b a b a b a b
これを一般的に書くと
3
1 1 2 2 3 3
1
( )ij i j i j i j ik kj
k
a b a b a b a b
=
= + + =
ABとなります。この計算から分かることは行列Aの列数と行列Bの行数が等しくなければ積
ABは計算出来ないということです。また、計算結果の行列の行数は行列Aの行数に、列 数は行列Bの列数に等しくなります。これを形式的に書くと以下のようになります。
C(m n )=A(m p) (B p n )
各行列の成分をそれぞれ小文字で表すと、成分の間の関係は以下となります。
== p
k kj ik
ij a b
c
1
次に順序を入れ替えた行列の積BAを計算してみましょう。行列Bの列数と行列Aの行 数が等しくなければ計算出来ませんが、今の場合これらは共に 2 ですので計算可能です。
結果は以下のようになります。
2 1 0 0 2 1 0 3 2 0 0 2 2 2 0 1 1 3 0 1 1 3 3 1 0 3 2 1 8 6 1 1 0 0 1 1 0 3 1 0 0 2 1 1 0
+ + +
= − + − + − + = −
+ + +
BA 【Skip OK】
これを見ても分かるように、一般に行列どうしの積について、交換法則は成り立ちません。
また行数と列数によっては計算できない場合もあります。
ABBA
6-2
交換法則は行列A B, が正方行列どうしでも一般には成り立ちません。以下の例を見て下 さい。
1 2 0 3
=
A , 0 1
1 2
=
B , 1 0
0 1
=
I 単位行列
これを用いて計算を行ってみましょう。違う結果になることが分かります。
1 2 0 1 1 0 2 1 1 1 2 2 2 5 0 3 1 2 0 0 3 1 0 1 3 2 3 6
+ +
= = + + = AB
0 1 1 2 0 1 1 0 0 2 1 3 0 3 1 2 0 3 1 1 2 0 1 2 2 3 1 8
+ +
= = + + = BA
次に単位行列Iについて見てみましょう。単位行列は特殊な行列で、どんな行列にどちらか らかけても元の行列になります。上の例で見てみましょう。
2 1
0
1 2 1
3 1
0 0
0
3
= =
= A
AI
1 2 1 2
0 1 0
3 0 3
0 1
= =
= A
IA , a = =1 1 a a
このような意味で、単位行列Iは数字の1に相当していることが分かります。
もう一つ同じような例をやってみましょう。
(
2 3)
1 1 00 3 2
−
=
A ,
( )
2 0
3 2 1 3
1 0
= −
B
のとき、ABとBAを計算してみます。
パソコンの利用(必ず実行して下さい)
これまでの計算で、行列の積は計算が面倒であることが分かったと思います。それが分か ってもらえればここまでの話は十分です。これからは、このような面倒な計算はパソコンを 使って実行することにします。
以後、以下のCollege Analysisの画面が立ち上がったとして解説します。
6-3
図1 College Analysis 画面
立ち上げ方は、コースコンテンツ「ソフトウェア設定」を見て下さい。
基礎数学で使う場合、行列のデータを入力するグリッドと呼ばれるものを作ります。これ
はExcelのワークシートと同じようなものです。画面上のメニュー[ファイル-新規作成]
を選ぶと、以下のような入力メニューが表示されますので、行数20、列数10として「OK」
ボタンを押して下さい。
図2 表の新規作成
すると20行、10列の表(グリッド,データ入力画面)が以下のように現れます。
図3 データの入力画面
次に、行列計算のプログラムを立ち上げます。上のメニューの中で、[分析-数学-行列計 算]を選ぶと、以下のような行列計算のプログラムが動きます。これは行列電卓のようなも のです。
図4 行列計算プログラム まず、データを表に以下のように入力します。
6-4
図5 データの入力
左と右の「a=」と「b=」は行列の名前です。大文字と小文字は区別されません。「=」は必ず 付けて下さい。その右へ具体的な行列の表式を入力します。行列と行列の間は1列または1 行必ず空けて下さい。
次に、図4の行列計算のテキストボックスに「a*b」と以下の図のように入力し、
図6 数式の入力
実行ボタンをクリックします。結果は以下のように表示されます。
図7 「a*b」計算結果 同様に「b*a」では、以下のようになります。
図8 「b*a」計算結果
このような手順で、以下の答えがみつかりました。計算できない場合は「**に問題があり ます。」とメッセージが表示されます。また、結果の行列が1行1列の場合は、結果はただ の数値です。
3 3
1 9
−
= −
AB ,
2 2 0 1 10 6 1 1 0
−
= −
−
BA
問題
行列A,B,Cが次のように与えられるとき、以下の行列の計算をせよ。また、求められ ない場合はその旨を示せ。
6-5
1 1 0 1 0 0
1 2 1
, 0 2 1 , 0 2 0
1 0 2
1 1 3 0 0 3
−
−
=− =− = −
A B C
1)AB 2)BA 3)BC 4)B2 5)C2 6)A B C( + )
解答(右に入力式を書いておきます)
1)
−
− 6 1 3
1 4
2 a*b 2)計算できない b*a
3)
−
−
−
9 2 1
3 4 0
0 2 1
b*c 4)
−
−
10 4 4
5 5 1
1 3 1
b*b
5)
9 0 0
0 4 0
0 0 1
c*c 6)
−2 1 0 2 8
1 a*(b+c)
演習
0 2 2 3 1 0
=
A 3
1 1
0 2 1
=
−
− B
3 1 0
2 0
0 2
1 1
−
=
− −
C のとき以下を求めよ。
計算できないときは「計算できない」と書くこと。
1)AB=
① 2 7 3 1
−
②
1 3 2
3 0 6
3 6 2
−
− −
③計算できない
2)C2 =CC=
①
9 4 0 0 1 4 0 1 1
②計算できない ③
9 8 4
0 1 0
0 0 1
− −
−
−
6-6 3)BC=
①計算できない ②
3 9
4 5
2 4
−
−
−
③
3 9
4 5
2 2
−
−
−
4)ACB=
①
3 9 18
3 12 10
0 6 8
− −
− −
−
②計算できない ③ 6 3
7 17
− −
−
【動画】
【C.Analysis:基礎数学A_06】