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DNA の特殊構造選択的な化学修飾に成功

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Academic year: 2024

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www.tohoku.ac.jp

令和元年6月20日

東北大学多元物質科学研究所

【発表のポイント】

 創薬標的である核酸の高次構造をピンポイントに化学修飾できる新し いアルキル化剤の開発に成功した。

 高次構造の例として、抗がん剤の標的であるグアニン四重鎖構造、遺伝 性神経筋疾患の一因であるチミン-チミン(T-T)ミスマッチ構造で選 択的な化学修飾を実現した。

 詳細な検討により、標的に依存して反応性が OFF から ON に切り替わ るアルキル化剤であることが分かった。

 従来のアルキル化剤と比較して、化学的安定性、選択性が非常に高く、

新しい核酸修飾分子として広く利用されることが期待される。

【概要】

東北大学 多元物質科学研究所の永次 史教授、鬼塚和光准教授(大学院理学研 究科化学専攻 兼任)らの研究グループは、病気の原因となり得る核酸の特殊構造を 選択的に化学修飾する新しいアルキル化剤の開発に成功しました。今回開発したア ルキル化剤は、その反応性がOFFからONへと変化する非常にユニークな性質を持 つことが詳細な検討から明らかになりました。この新規アルキル化剤は従来のものと比 較し、化学的安定性、選択性が非常に高く、今後新しい核酸修飾分子として広く利用 されることが期待されます。

本研究成果は、2019年6月12日16時(英国時間)に「Nucleic Acids Research」のオンライン速報版で公開されました。

【論文情報】

タイトル:“Reactive OFF-ON type alkylating agents for higher-ordered structures of nucleic acids”

著者名:Kazumitsu Onizuka, Madoka E. Hazemi, Norihiro Sato, Gen-ichiro Tsuji, Shunya Ishikawa, Mamiko Ozawa, Kousuke Tanno, Ken Yamada, Fumi Nagatsugi

雑誌名:Nucleic Acids Research DOI:10.1093/nar/gkz512

DNA の特殊構造選択的な化学修飾に成功

反応性 OFF-ON 型核酸アルキル化剤を開発

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【詳細な説明】

研究の背景

生体夾雑系における生体高分子の標的選択的な化学修飾は、生命現象の制御や 解明にとって非常に重要であると考えられています。例えば、核酸に対する化学修飾 では、ナイトロジェンマスタード類似体*1 や白金製剤*2のような抗がん剤としての利用 が有名で、生化学的ツールとしてもよく用いられています(図1)。現在でも核酸修飾の ための様々な反応剤が研究・開発されている一方で、生体分子との望まない反応(不 活性化)や標的以外の核酸への反応の回避は非常に難しい課題となっています。本 研究では、病気に関連した核酸高次構造に着目し、その標的構造を選択的に化学修 飾する新しいアルキル化剤*3 の開発を行いました。これらの核酸高次構造に対するア ルキル化剤は、これらの構造が一因となる病気の治療法に適用する可能性をもつと期 待されます。

具体的には、抗がん剤の標的であるグアニン四重鎖(G4)構造*4 及び遺伝性神経 筋疾患の一因であるチミン-チミン(T-T)ミスマッチ構造*5 に注目し、その選択的な化 学修飾分子の開発を行いました(図2)。

研究の内容と成果

本研究では、核酸高次構造選択的な化学修飾を目指し、通常は安定な OFF の状 態で存在し、標的と結合したときに活性が ONになり反応する反応性 OFF-ON型核 酸アルキル化剤の開発を試みました(図3)。このようなアルキル化剤を開発するため、

本研究グループは、ビニルキナゾリノン(VQ)に着目し、このビニル基に様々な求核種 を反応させビニル基を保護し、安定前駆体とすることを考えました(図 4)。この安定前 駆体は、標的の G4 構造に結合し近傍の核酸による酸塩基効果により脱離反応が誘 起され、活性体になることを期待しました。このような反応が起きうる脱離基としてスル ホキシド(SOR)、チオフェニル(SPh)、チオメチル(SMe)基を選択しG4DNAに対す る反応を行いました。その結果、G4DNAに対してはすべての安定前駆体で反応が進 行したのに対して、一本鎖DNAや二本鎖DNA に対してはほとんど反応せず、高い G4 選択性をもつアルキル化剤の開発に成功しました(図 5)。これらのアルキル化剤 の中で、SPh、SMe 体は水溶液中で安定であり、化学的安定性および高次構造選択 性は非常に高いことが分かりました。さらに、SPh 体を用いて T-T ミスマッチ構造に対 して反応を行ったところ、ミスマッチ部位のチミンとピンポイントに反応することも見出し ました。

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3 今後の展開

G4 はテロメア*6やがん関連遺伝子に形成されると考えられており、G4 高選択的な 化学修飾は抗がん剤開発や G4 構造の機能解明研究ツールとして重要であると考え られています。T-T ミスマッチ構造は、トリプレットリピート病の一つである筋強直性ジス トロフィー1型(DM1)*7の原因となる CAG/CTG リピート DNA上に形成されると考え られています。これらの高次構造に対する高選択的な化学修飾は、転写や複製阻害 を起こすことが可能なため、未だ治療法が確立していない、この難病の治療薬開発に 繋がると期待されます。今回開発したアルキル化剤は、これらの研究の新しいツール・

阻害剤として画期的な発明であると考えています。

2 本研究で標的とした核酸高次構造

(上図)G4構造。Gカルテット平面が重なり形成。

(下図)T-Tミスマッチ構造。CAG/CTGリピート上に形成。

G4 構造 テロメアやがん関連 遺伝⼦に形成

T-T ミスマッチ構造 DM1 の原因となる CAG/CTG リピート 上に形成

核酸⾼次構造専⽤ 本研究 の反応剤開発

1 既存の核酸アルキル化剤 シスプラチン

(⽩⾦製剤)

ナイトロジェン マスタード類似体

R N Cl

Cl

抗がん剤として利用 (二本鎖DNAと反応し複製を阻害する)

(4)

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3 反応性OFF-ON型核酸アルキル化剤の概念図

(左図)従来のアルキル化剤は標的以外の生体分子と反応して、不活性化を受け ていた。副作用の原因にもなっていた。

(右図)今回開発したアルキル化剤は標的に結合したときに反応性になるので、

標的以外とは反応しにくく、選択的なアルキル化が可能になる。

4 ビニルキナゾリノン(VQ)安定前駆体の分子設計

(上図)VQおよびVQ安定前駆体の分子構造。

(下図)期待した脱離反応と今回検討した脱離基。

(5)

5

【用語説明】

*1 ナイトロジェンマスタード類似体

シクロホスファミド製剤がよく知られており、がん細胞などのDNAと反応し、DNAの複 製を阻害する。

*2 白金製剤

シスプラチンがよく知られており、がん細胞などのDNAと反応し、DNAの複製を阻害 する。

*3 アルキル化剤

DNAと反応することでアルキル基が共有結合し、DNAの複製を阻害する薬剤。抗が ん剤に用いられる。

*4 グアニン四重鎖(G4)構造

4 つのグアニンが形成する G カルテット平面からなる核酸高次構造。カリウムのような カチオン存在下でこの平面構造が重なり G4 構造が形成される。染色体末端のテロメ ア領域やがん関連遺伝子などに形成されると考えられている。

5 G4DNAに対するアルキル化反応

AG4DNAのアルキル化反応。B)反応に用いたDNAの配列。ds:二本鎖 DNAss:一本鎖DNAC)アルキル化収率の経時変化。D12時間後のア ルキル化収率。

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*5 ミスマッチ構造

DNA はアデニンとチミン、グアニンとシトシンのペアで二本鎖構造を形成している。こ のペアとは違う塩基対のことをミスマッチ塩基対と呼ぶ。今回の標的はチミン-チミン のミスマッチ塩基対を持つ構造である。

*6 テロメア

染色体末端領域の構造で、細胞寿命のコントロールに関与している。

*7 筋強直性ジストロフィー1型(DM1)

筋強直および筋萎縮を特徴とし、骨格筋、多臓器を侵す全身疾患である。ミオトニン プロテインキナーゼ(DMPK)遺伝子の3’非翻訳領域に存在するCTG反復配列の異 常な伸長が疾患の原因であると考えられている。

【問い合わせ先】

(研究に関すること)

東北大学多元物質科学研究所

担当:教授 永次 史(ながつぎ ふみ)

電話:022-217-5633

E-mail:[email protected]

(報道に関すること)

東北大学多元物質科学研究所 広報情報室 電話:022-217-5198

E-mail:[email protected]

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