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Title
Ⅰ.分子レベルによる口腔疾患の病因解明と新たな診断
・治療法の開発 骨芽細胞メカニカル応答システムの多面 的検討
Author(s) 東, 俊文; 長山, 和亮 Journal 歯科学報, 122(3): 264‑266
URL http://hdl.handle.net/10130/5993 Right
Description
Ⅰ.分子レベルによる口腔疾患の病因解明 と新たな診断・治療法の開発
骨芽細胞メカニカル応答システムの多面的検討
研究代表者 東 俊文(生化学講座・教授)
研究分担者 長山和亮(茨城大学 工学部 機械シ ステム工学科 兼 知能システム工学 科・教授)
1.研究の概要
細胞はメカニカルストレスに対し形態,機能,分 化が変化する。このメカニカルストレス応答メカニ ズムには,概ね次の2通りが考えられる。①細胞外 からのメカニカルストレスを細胞膜が受容し,これ を細胞内情報伝達経路の活性化/抑制を通じて伝達 し,遺伝子発現を調節する。②細胞外からのメカニ カルストレスを細胞骨格タンパク質(主にアクチン 線維)が受容・伝達しアクチン線維と連結する核膜 タンパク質が核膜に結合するクロマチンに伝達する ことにより,遺伝子発現を制御する。
このいずれも,詳細についてほとんど解明されて いない。本研究では,核膜タンパク質 LaminaA/C と Nesprin に注目し,これらの発現低下と核膜の 異常について検討し,その後核膜にメカニカルスト レスを与えた場合に細胞機能異常を形態,機能,分 化の面から解析する。
2.取組状況
Runx2(−/−)細胞の核膜形態異常を観察し,
これに対して原子間力顕微鏡により核膜強度の測定 を行う。クロマチン核膜タンパク質相互作用につい て検討する。
3.本事業の成果
Runx2遺伝子欠損 iPS 細胞を解析し,骨芽細胞 分化異常と核膜タンパク質発現異常が生じることを 確認した。
【関連業績】
雑誌論文
1.Nakamura Y, Onodera S, Takano M, Katakura A, Nomura T, Azuma T.
Development of a targeted gene panel for the diagnosis of Gorlin syndrome.
Int J Oral & Maxillo Surgery(in press).
2.Ooki A, Onodera S, Saito A, Oguchi A, Mu- rakawa Y, Sakamoto T, Sueishi K, Nishii Y, Azuma T.
CAGE−seq analysis of osteoblast derived from cleidocranial dysplasia human induced pluripotent stem cells.
Bone.141:115582,2020.doi:10.1016/j.
bone.2020.115582.
Epub 2020 Aug 11.PMID:32795676.
3.Ohno T, Nakamura T, Nakae S, Morita H, Matsumoto K, Saito H, Takeda K, Okumura K, Azuma T.
TSLP is a negative regulator of RANKL−in- duced osteoclastogenesis.
Biochem Biophys Res Commun.Sep 24;530
⑶:508−512,2020.doi:10.1016/j.bbrc.
2020.05.055.
Epub 2020 Jun 26.PMID:32600615.
4.Onodera S, Saito A, Hojo H, Nakamura T, Zujur D, Watanabe K, Morita N, Hasegawa D, Masaki H, Nakauchi H, Nomura T, Shibahara T, Yamaguchi A, Chung UI, Azuma T, Ohba S.
Hedgehog Activation Regulates Human Os- teoblastogenesis.
Stem Cell Reports. Jul 14;15⑴:125−139,
2020.doi:10.1016/j.stemcr.2020.05.008.
Epub 2020 Jun 11.PMID:32531191.
5.Nakamura T, Nakamura−Takahashi A, Ka- sahara M, Yamaguchi A, Azuma T.
Tissue−nonspecific alkaline phosphatase pro- motes the osteogenic differentiation of osteo- progenitor cells.
Biochem Biophys Res Commun.;524⑶:702
−709,2020 Apr 9.doi:10.1016/j.bbrc.
2020.01.136.
Epub 2020 Feb 5.PMID:32035618.
共同研究プロジェクト 研究成果報告
東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ 264
― 18 ―
6.Kimura M, Saito A, Onodera S, Nakamura T, Suematsu M, Shintani S, Azuma T.
Med Mol Morphol.The concurrent stimulation of Wnt and FGF8 signaling induce differen- tiation of dental mesenchymal cells into odon- toblast−like cells.
2021 Nov 5.doi:10.1007/s00795−021−
00297−3.Epub ahead of print. PMID:
34739612.
7.Onodera S, Morita N, Nakamura Y, Taka- hashi S, Hashimoto K, Nomura T, Katakura A, Kosaki K, Azuma T.
Novel alterations in IFT172 and KIFAP3 may induce basal cell carcinoma.
Orphanet J Rare Dis,16⑴:443,2021.
doi:10.1186/s13023−021−02033−7.
PMID:34674729;PMCID : PMC8529737.
8.Islam S, Kitagawa T, Azuma T, Kuramitsu Y.
The Expression Levels of Vinculin in Pancre- atic Cancer Tissues Significantly Correlates With Patient Survival.
Anticancer Res.41⑽:4979−4984,2021.
doi:10.21873/anticanres.15311.
PMID:34593445.
9.Matsunaga M, Kimura M, Ouchi T, Naka- mura T, Ohyama S, Ando M, Nomura S, Azuma T, Ichinohe T, Shibukawa Y.
Mechanical Stimulation−Induced Calcium Signaling by Piezo1 Channel Activation in Human Odontoblast Reduces Dentin Minerali- zation.
Front Physiol.12:704518,2021.doi:10.3389
/fphys.2021.704518.
PMID:34504437;PMCID : PMC8421527.
学会発表
1.東 俊文,齋藤暁子,中村 貴(口頭発表)
骨芽細胞 Runx2は核膜タンパク質発現制御を 通じて核形態および骨芽細胞分化を制御する。
第94回日本生化学会大会,11月5日,横浜 2.東 俊文,齋藤暁子,中村 貴
ワークショップ『核とミトコンドリア研究』か
ら見えてきた疾患病態の先端分子生物学 第44回日本分子生物学会年会,12月1日,横浜 3.奥平貴人,中村 貴2,齋藤暁子2,山口 朗1,
髙野正行3,柴原孝彦3,東俊文1.2
1東歯大・口腔科学研究センター,2東歯大・生 化 学 講 座,3東 歯 大・口 腔 顎 顔 面 外 科 学 講 座 O4−1.
骨細胞の Lamin A は骨リモデリングを制御す る。
第53回日本臨床分子形態学会総会・学術集会,
2021年10月22日〜24日,(Web 開催)
4.中村ゆり子,小野寺晶子,秀島 樹,森田奈 那,髙野正行,片倉 朗,東 俊文,野村武史 Gorlin 症候群診断遺伝子パネル開発とその信頼 性の検証
第65回日本口腔外科学会総会・学術大会,2020 年11月14日,愛知県名古屋市(Web 開催)
5.中村ゆり子,小野寺晶子,秀島 樹,髙野正 行,片倉 朗,東 俊文,野村武史
リキッドバイオプシーで応用可能な Gorlin 症 候群診断遺伝子パネルの開発
第311回東京歯科大学学会,2021年6月5日〜
6日,東京都千代田区(Web 開催)
歯科学報,121⑵:194,2021
6.秀島 樹,中村ゆり子,小野寺晶子,森田奈 那,加藤禎彬,吉田秀児,野村武史,髙野正 行,東 俊文,片倉 朗
Gorlin 症候群診断遺伝子パネルを用いた歯原性 角化嚢胞の解析
第66回日本口腔外科学会総会・学術大会,2021 年11月12日〜14日,千葉県千葉市(Web 開催)
7.森田奈那,小野寺晶子,中村ゆり子,長谷川 大悟,渡邊豪士,秀島 樹,髙橋慎一,野村武 史,松浦信幸,東 俊文
Gorlin 症候群患者由来 iPS 細胞の上皮細胞分化 誘導と紫外線照射時の反応
第66回日本口腔外科学会総会・学術大会,2021 年11月12日〜14日,千葉県千葉市(Web 開催)
8.森田奈那,小野寺晶子,中村ゆり子,長谷川 大悟,渡邊豪士,秀島 樹,髙橋慎一,野村武 史,松浦信幸,東 俊文
Gorlin 症候群患者由来 iPS 細胞の上皮細胞分化
歯科学報 Vol.122,No.3(2022) 265
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誘導と紫外線照射時の反応
第53回日本臨床分子形態学会総会・学術集会,
2021年10月22日〜24日(Web 開催)
マイクロバイオーム解析による歯周炎の病因の 解明
研究代表者 石原和幸(微生物学講座・教授)
研究分担者 齋藤 淳(歯周病学講座・教授),喜 田大智(歯周病学講座・助教),新谷 誠康(小児歯科学講座・教授),櫻井 敦朗(小児歯科学講座・講師),河野 通良(市 川 総 合 病 院・皮 膚 科・准 教 授),国 分 栄 仁(微 生 物 学 講 座・講 師),柴 山 和 子(微 生 物 学 講 座・講 師),中村修一(東北大学 大学院工 学研究科 応用物理学専攻 生物物理 工学分野・助教)
1.研究の概要
慢性歯周炎は,壮年期以降の人口の罹患率が30%
にも及ぶ疾患である。本疾患は持続的な感染を伴う ため,糖尿病,心血管系疾患等全身に関わる疾患に も影響を与えることが示されている。その治療と予 防のためには病因解明が不可欠である。歯周炎の病 因には,歯肉縁下細菌叢組成が病的なものへと移行 する ディスバイオーシス が関わることが知られ ているが,そのプロセスは未だ明らかにされていな い。これを明らかにするためには,歯肉縁下細菌叢 の機能遺伝子の解析と,細菌叢内における個々の細 菌の動態の解析が必須である。本プロジェクトで は,マイクロバイオームのメタゲノム解析による正 常細菌叢と歯周炎細菌叢の機能遺伝子の比較により その変化を明らかにするとともに,細菌の病原性お よび共培養による細菌間相互作用の解析を行う。こ れらの解析からディスバイオーシスの過程に関わる 細菌の動態を解明することを目的としている。
2.取組状況 メタゲノム解析
前年度まで行ってきた16SrRNA の塩基配列解析 による解析に加え,本年度は歯周炎患者と健常者歯
肉縁下プラークマイクロバイオームのメタゲノム解 析を行った。これによって,歯周炎部位と健常部位 の歯肉縁下プラーク細菌の機能遺伝子について比較 を行い病態への関わりについて解析を行った。
Treponema denticolaの運動性の解析
Treponema denticolaの運動性はその病原性に重要 な役割を果たしている。本菌が運動するためには,
回転する菌体の表層タンパクが周囲の分子から受け る作用が重要な役割を果たす。これを明らかにする ために,欠損株による表層タンパクの変化とそれに 伴う運動速度,菌体回転数の変化について解析を 行った。
細菌相互作用の解析
Fusobacterium nucleatumは,early colonizer と歯 周病原細菌の間のブリッジとなる菌種であり,Por- phyromonas gingivalisの定着に重要な役割を果たし ていると考えられている。我々は,P. gingivalisが
F. nucleatumの増殖を促進することを以前明らかに
している。本年度はさらに,P. gingivalisとの共培 養によってF. nucleatumの遺伝子発現にどのような 変化が起こっているのかについて明らかにするた め,この2菌種の共培養を行い,F. nucleatumの遺 伝子発現を RNA−seq により解析した。
3.本事業の成果
メタゲノム解析により,歯周炎部ではBacteroides
属とMycobacteriun属の上昇が認められた。歯周炎
部の機能遺伝子の解析では,炭水化物の代謝,アミ ノ酸の代謝のカテゴリーに属す遺伝子群が健常部に 比べ低く,グリカンの合成と代謝,遺伝子の複製と 修復のカテゴリーに属す遺伝子群が健常部に比べ高 くなっていた。このうちアミノ酸代謝については,
歯 周 炎 部 に お け る phenylalanine/tyrosine/trypto- phan の代謝に関わる遺伝子の低下が認められてい た。これらの結果は,プロテオーム解析で過去に得 られている結果と合致していた。
T. denticolaの表層には dentilisin と major outer sheath protein(Msp)が存在する。これらの表層 タンパク欠損が本菌の運動性にどのような影響を及 ぼすかについて解析した。Msp と dentilisin の欠損 株は共に運動速度が低下していた。さらに dentilisin の欠損株では回転数あたりの速度の低下が認められ た。Dentilisin 欠 損 株 の outer sheath 画 分 の プ ロ 東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ
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