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サヘルの対 流 に伴 う熱 源 がもたらすユーラシアを横 断 するテレコネクション

Possible semi-circumglobal teleconnection across Eurasia driven by deep convection over the Sahel

519M207 中 西 友 恵 ( 気 象 ・ 気 候 ダ イ ナ ミ ク ス 研 究 室 )

指 導 教 員 : 立 花 義 裕 教 授

Keywords: Sahel, convection, teleconnection, R ossby wave, linear regression

1. はじめに

北半球中高緯度地域における異常気象の要 因の一つに,テレコネクションという現象があ る.その形成要因として,熱帯の積雲対流活動 に伴う大気中層の熱源が重要であることが知 られている(Hoskins and Karoly, 1981[1]など). 中でも,加熱量の大きい海洋上の対流活動に関 する研究は盛んである(エルニーニョ・南方振 動;ENSO,Pacific-Japanパターン[2]など).一方 で,陸上の対流についてはあまり注目されてい ない.しかし,地域によっては海洋上に匹敵す るほどの加熱量が存在する.陸面は比熱が小さ く暖まりやすいことから上昇流が発達しやす い.そのため,全降雨量に占める対流性降雨の 割合が高く,降雨頂高度も高い(Schumacher and Houze 2003[3]など).以上のような陸上の対流に 伴う熱源は,中高緯度の波列パターンを形成す る要因として重要である可能性がある.

ここで,本研究では北アフリカに位置するサ ヘル地域の積雲対流活動に着目した.本地域は サハラ砂漠南縁部に位置し,雨季と乾季が存在 する半乾燥地帯である.雨季には激しい対流が 立つことが知られている.また,気候学的に亜 熱帯ジェットとの距離も近い.サヘル対流の経 年変動は,北大西洋振動の変調を介して,ヨー ロッパの気候に影響を与えることが示唆され ている(Gaetani et al. 2011)[4].しかし,北極域 や東アジアといったさらに遠方の地域への影 響を調べた研究はない.以上により本研究では,

サヘルの積雲対流変動がユーラシアを横断す るようなテレコネクションパターンの形成要 因となりうるか検討する.

2. 使用データ・解析手法

対流活動の指標としてアメリカ海洋大気庁

の外向き長波放射(OLR)を,その他の大気場 データには気象庁 55 年長期再解析データ

(JRA-55)を用いた.海面水温(SST)には

HadISSTを用いた.サヘルが雨季にあたる6-9

月の月平均データを1979-2016年の38年分使 用した.まず,西経20度-東経40度,北緯10 度-20 度で OLR を領域平均し時系列を作成し た(図1).これを線形トレンド除去および標準 化し,サヘルOLRインデックスとして大気場 データとの線形回帰分析を行った.

さらに,サヘルの対流に伴う熱源に対する大 気場の定常応答を確認するため,線形傾圧モデ ル(LBM; Watanabe and Kimoto, 2000)[5]による 実験を行った.後述の回帰分析の結果に従い,

サ ヘ ル 領 域 西 側 の 対 流 圏 中 層 に 最 大 で 0.5K/dayの熱源を与えた.

3. 結果と考察

各月のサヘルOLRインデックスを同時月の ジオポテンシャル高度場に回帰すると,7,8,9各 月においてヨーロッパ付近に高気圧と低気圧 の双極子パターンがみられた(図略).これは 先行研究[5]の結果と整合的である.さらに,9月 においては,ヨーロッパ地域に留まらず,シベ リアを経由して東アジアまで連なるテレコネ クションパターンが見られた(図2).続いて,

このテレコネクションパターンのインデック スを新たに定義し(図1),OLRおよびSSTと の回帰分析を行った(図略).結果として,サ ヘル以外の熱帯地域には西太平洋域を除いて 顕著なシグナルがみられなかった.この地域の 対流はサヘル対流と連動して変動しているも のの,テレコネクションパターンを直接的に励 起するものではないと考えられる.よってサヘ ル対流とテレコネクションパターンとの関係

(2)

は見かけのものではないとみられる.

次に,パターン形成に至る力学過程について 考察する.サヘル地域で対流活動が活発なとき,

直上の大気中層では非断熱加熱と上昇流が卓 越している(図略).このような熱帯域の熱源 に対する応答として,松野-ギル応答(Matsuno, 1996; Gill, 1980)[6][7]が知られている.サヘルイ ンデックスを流線関数に回帰すると,サヘル地 域の北西の下層で低気圧,上層で高気圧偏差が 見られた(図3).これらは,赤道よりやや北の 地域における松野-ギル応答と整合的である.

また,図4は200hPa面の速度ポテンシャルと

の回帰図である.サヘル領域を中心に非地衡風 の発散が見られ,これは低緯度から高緯度への 負の絶対渦度の移流を示唆する.以上により,

サヘルの北西側で高気圧が形成され,テレコネ クションの始点となると考えられる.

さらに,定常ロスビー波のエネルギー伝播を 確認するため,波活動度フラックス(Takaya and Nakamura, 2001)[8]を計算した.図2を見ると,

ロスビー波束がヨーロッパから東アジアへ向 かって伝播している.これによりテレコネクシ ョンパターンが形成されると考えられる.

最後に,因果関係を明らかにするため,LBM による実験を行った.結果として,サヘルから ヨーロッパまで連なる高気圧と低気圧のパタ ーンが見られた(図5).位相はやや異なるが,

熱源応答の様子はおおむね回帰分析と整合的 である.

4. まとめと議論

回帰分析の結果より,9月のサヘルの積雲対 流変動とユーラシアを横断するテレコネクシ ョンパターンとの関係が示された.ここに熱帯 海洋など他地域の影響が介在していないこと も確認した.9月にパターンが卓越する理由と しては,ロスビー波を励起する亜熱帯ジェット が,季節進行によりやや強まりながら南下する ことが考えられる.

さらに,因果関係を明らかにするため LBM 実験を行った.結果として,サヘルからヨーロ

ッパまで連なる波列パターンが現れたことか ら,サヘル対流はテレコネクションパターン形 成のトリガーになりうると考えられる.その力 学過程については大気中層の熱源に対する松 野-ギル応答や絶対渦度の移流,およびロスビ ー波束の伝播から説明できると考えられる.た だし,サヘルに熱源を与えたLBM実験では東 アジアに至るまでの影響は再現されなかった.

そこで,本実験で確認されたヨーロッパの高気 圧偏差に対応する負の渦度強制を与える追加 のLBM実験も行った.結果として,北西ヨー ロッパに高気圧,極域に低気圧,東アジアに高 気圧偏差がみられ,2段階ではあるが回帰分析 の結果を支持した(図略).

最後に,本研究の結果を,日本が猛暑や豪雨 に見舞われた2018年の事例に当てはめてさら に考察した.この年の異常気象の要因の一つと してジェットの蛇行が挙げられている.ジオポ テンシャル高度偏差(図6)は,ユーラシアを 北回りに横断する波列を示しており,これは回 帰分析で得られたもの(図2)と非常に類似し ている.このとき,サヘル地域のOLR偏差は 全体的に負であり,対流活動が活発であったこ とも示された(図略).以上の結果は本研究の 結果と整合的であり,サヘルの対流変動が日本 の異常気象へも影響を与える可能性を示唆し た.

5. 謝辞

本研究を進めるにあたり,温かく熱心にご指 導いただきました立花義裕教授に深く感謝い たします.また,数多くのご助言をいただき,

精神的な面からも支えてくださった安藤雄太 研究員,そして同研究室の皆様に感謝の意を表 します.

引用文献

1. Hoskins B. J. and Karoly D., 1981, J Atmos Sci, 38, 1179-1196.

2. Nitta T., 1987, J. Meteorol. Soc. Jpn., 65, 373- 390.

3. Schumacher C. et. al., 2004, J. Atmos. Sci., 61,

(3)

1341–1358.

4. Gaetani M. et al., 2011, Geophys.Res. Lett., 38, L09705.

5. Watanabe M., Kimoto M., 2000, J. Meteorol.

Soc. Jpn., 126, 3343–3369.

6. Matsuno T., 1966, J. Meteorol. Soc. Jpn., 44, 25-42.

7. Gill A. E., 1980, Quart. J. R. Met Soc., 106, 447-462.

8. Takaya K. and Nakamura H. 2001, J.Atmos.Sci, 58, 608-627.

図3 サヘルOLRインデックスと流線関数との回帰図(9月).(a)300hPa面,(b)850hPa 面 等値線:回帰係数(×105 m2/s),色:信頼係数90%以上(暖色:高気圧性,寒色:低気圧性)

(a) (b)

図2 サヘルOLRインデックスと300hPa面ジオポテンシャル高度との回帰図(9月)

赤枠が本研究で定義したサヘル領域.

等値線:回帰係数(m),色:信頼係数90%以上,ベクトル:波活動度フラックス(m2/s2

図1 9月のサヘルOLRインデックス(青棒)とテ レコネクションインデックス(赤線)

両インデックス間の相関係数は0.66

(4)

図5 LBM実験(サヘル西部に熱源)による結果.9月300hPa面.

等値線,色:ジオポテンシャル高度の偏差(m),ベクトル:波活動度フラックス(m2/s2) 図4 サヘルOLRインデックスと200hPa 面速度ポテンシャルとの回帰図(9月). 等値線:回帰係数(×105m2/s),色:信頼係数90%以上(暖色:収束,寒色:発散)

図6 2018年7月の300hPa面ジオポテンシャル高度(m, 等値線)と気候値からの偏差(m, 色)

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