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PDF 内部腐朽した木材の部分横圧縮性能 - 北海道大学

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平成 26 年度卒業論文

内部腐朽した木材の部分横圧縮性能

北海道大学農学部森林科学科

木材工学研究室 斎藤のぞみ

(2)

目次

1.緒言 ... 1

2. 材料と実験方法 ... 2

2-1 試験体の作成 ... 2

2-2 腐朽処理 ... 3

2-3 部分横圧縮試験 ... 4

2-4 応力波伝播時間と穿孔抵抗値の測定 ... 5

2-5 変色面積の測定 ... 6

2-6 密度と含水率の測定 ... 6

3.結果・考察 ... 7

3-1 腐朽状況 ... 7

3-2 部分横圧縮試験 ... 13

3-3 応力波伝播速度 ... 16

3-4 穿孔抵抗値 ... 18

4.結論 ... 22

謝辞 ... 23

参考文献 ... 24

(3)

1

1.緒言

住宅の解体による廃棄物や建て替えにかかる費用の削減、都市における炭素固定といっ た観点から、近年木造住宅の長寿命化が求められている。木造住宅を長期にわたり使用す る上では腐朽による木材の劣化が問題となり、定期的に点検や補修を行う必要がある。

土台では防腐剤の浸透が不十分な部材や割れが起こった部材に内部腐朽が生じる危険性 がある。腐朽した木材の強度低下と劣化診断については、後藤ら1)が部分圧縮強度と超音波 伝播速度の研究を、森ら2)が曲げ及び圧縮強度と超音波伝播速度、打ち込み深さの研究を行 っているが、内部腐朽による強度低下についての研究報告はない。そこで内部腐朽した木 材の部分横圧縮性能を調査することとした。土台は柱を介して繊維直交方向に圧縮される ため、部分横圧縮性能について調査した。また内部腐朽は木材内部にのみ腐朽が生じるた め、マイナスドライバーの穿孔や触診といった従来の方法では診断が難しい。第二の目的 として、応力波伝播速度や穿孔抵抗を測定し、腐朽診断法について検討した。

(4)

2

2. 材料と実験方法

2-1 試験体の作成

材料にはトドマツ(Abies sachalinensis)の105×105mm正角材6本を用いた。年輪傾斜角 の違いにより圧縮強度に差が出ないよう、二方柾の材を選んだ。使用した材の絶乾密度と 動的ヤング率を表2-1に示す。試験体寸法は105×105×270mmとし、中央120mm区間 に節などの欠点がこないよう、1本から6体の試験体をエンドマッチで切り出した3)。その うち4体を腐朽試験体、1体を浸水処理し湿潤コントロール、もう1体を気乾コントロール とした。腐朽試験体にはタイプa~dの菌接種孔を深さ25mmであけ、水分と菌糸の導入

孔を直径 3.8mm、深さ 40mmであけた(図 2-1)。湿潤コントロールには水分の導入孔を

直径3.8mm、深さ40mmであけた。これらの加工は両木口面に行った。

表2-1 試験体材料特性

図2-1 試験体図

タイプa タイプb タイプc タイプd

1 2 3 4 5 6

ρ (kg/m³) 407 400 368 353 351 337

Efr(Gpa) 11.5 11.4 9.8 7.7 9.3 8.2

(5)

3 2-2 腐朽処理

腐朽試験体は25~40日間浸水処理し、含水率を繊維飽和点以上に高めた。その後121℃

で15 分間オートクレーブにかけ、高温高圧滅菌を行った。菌接種孔にPDA培地を注ぎ、

褐色腐朽菌オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)を接種した。接種後は恒温恒湿環境(平均温

度25.5℃、相対湿度80%)で90日間培養した。その後菌糸を取り除き再び含水率調整の

ため浸水処理を行った。腐朽処理中と菌糸除去後の写真を図2-2に示す。

0日目 7日目

26日目 90日目

腐朽処理後

図2-2 腐朽処理中と処理後の試験体

(6)

4 2-3 部分横圧縮試験

構造用木材の強度試験法4)に基づき、部分横圧縮試験を行った。試験体中央部を鋼製の加 圧板で挟み、単調加力で荷重を付加した。加圧板は長さ90mmであり、端部には半径3mm の丸身をつけた。変位は巻き取り式変位計を用いて図2-3の区間で測定した。加圧板とクロ スヘッドをつなぐ木材の中央部にフックを取り付け、試験機の台座とフック間の変位を測 定した。試験体の両側で測定し、平均値を変位とした。

図2-3 部分横圧縮試験

(7)

5 2-4 応力波伝播時間と穿孔抵抗値の測定

圧縮試験の後、腐朽診断法の検討のため、応力波伝播時間と穿孔抵抗値を測定した。こ れらの機器は木材の内部まで調査できるため、内部腐朽を検出できると考えた。応力波伝 播時間の測定にはファコップ(アルナス社製)を用いた(図 2-4)。ファコップは、ハンマ ーでたたいた時の応力波がセンサー間を伝わる時間を計測することができる。応力波が木 材内部を伝わるよう、木材を挟み込むようにセンサーを配置した。穿孔抵抗値の測定には レジストグラフ(IML社製 IML RESI F500)を用いた(図2-5)。どちらも測定は菌接種 孔からの距離が10mm、60mm、110mmの位置で行い(図2-6)、応力波伝播時間は半径方 向と接線方向の2面で、穿孔抵抗値は半径方向のみ1面で測定した。

図2-4 ファコップ 図2-5 レジストグラフ

図2-6 測定位置

(8)

6 2-5 変色面積の測定

菌接種孔から10mm、60mm、110mmの位置で試験体を切断し、内部の腐朽状況を観察 した。その後変色面積の測定を行った。まず断面の画像をスキャナで取り込み、ペイント を用いて変色部を白色、健全部を黒色とし、画像を二値化した(図 2-7)。その後ピクセル カウンターを用いて変色部分の面積を算出した。

図2-7 タイプa菌接種孔から10mmにおける試験体断面:左 二値画像:右

2-6 密度と含水率の測定

変色面積の測定後、絶乾密度と含水率の測定を行った。圧縮部分における値を調べるた め、試験体中央部から105×105×50mmのブロックを切り出して測定した。また質量減少 率は以下のように算出した。

質量減少率=(乾燥コントロール絶乾密度−腐朽材絶乾密度) × 100

乾燥コントロール絶乾密度 (%)

(9)

7

3.結果・考察

3-1 腐朽状況

図3-1~4に菌接種孔から 10、60、110mm の位置で切断した断面画像を載せる。接種孔

から 10mmの木口付近では激しく腐朽したが、110mmの試験体中央部では局所的、また はほとんど腐朽せず、腐朽が試験体中央部まで到達しなかった。約半数の試験体は菌接種 孔の形状に近い形に腐朽した。残りの半数は接種孔とは関係のない位置や、割れ周辺部に 腐朽がみられた。辺材を含んでいた4番と5番の正角材は、辺材部全体が腐朽した。

菌接種孔の形状に腐朽したものが半数程度にとどまったのは、腐朽処理中に菌糸が木材 の表面全体を覆い、菌接種孔以外からも菌糸が進入したためと考えられる。試験体を内部 腐朽させるためには、菌接種孔以外の試験体表面をエポキシ樹脂で覆うなど、菌糸が材内 部のみを腐らせるような工夫が必要となる。

また、腐朽処理後の絶乾密度と試験時の含水率、質量減少率、断面の変色率を表3-1に示 す。質量減少率はばらつきが大きく、負の値になるものもみられた。腐朽がほとんど到達 していない試験体中央部で測定したことと、絶乾密度の誤差が大きいことが原因として考 えられる。

(10)

8

表3-1 試験体密度と含水率、質量減少率

密度(kg/m³) 含水率(%) 質量減少率(%) 変色面積率(%)

1-a 358 33.0 13.3 43.4

2-a 375 33.6 -0.5 42.9

3-a 356 37.3 1.7 71.7

4-a 340 35.6 2.6 7.1

5-a 313 33.6 5.9 62.7

6-a 310 30.7 12.0 51.1

1-b 383 29.2 7.2 23.5

2-b 400 30.4 -7.1 41.5

3-b 352 36.4 2.7 33.2

4-b 343 38.8 1.8 20.8

5-b 330 37.3 0.5 67.2

6-b 317 26.4 10.1 45.7

1-c 378 27.5 8.5 18.9

2-c 382 31.5 -2.3 52.3

3-c 342 39.3 5.6 72.0

4-c 347 31.6 0.5 2.5

5-c 334 35.7 -0.4 59.7

6-c 306 28.5 13.2 52.0

1-d 390 31.2 5.4 32.1

2-d 385 33.7 -3.3 57.8

3-d 348 37.9 3.9 70.7

4-d 352 35.6 -0.8 9.1

5-d 313 35.0 5.7 55.8

6-d 319 29.4 9.7 53.8

1-e 413 10.3

2-e 373 10.6

3-e 362 10.8

4-e 349 9.9

5-e 332 11.1

6-e 353 10.2

1-f 372 36.2

2-f 365 53.1

3-f 340 54.1

4-f 346 41.5

5-f 317 50.1

6-f 298 47.0

湿 潤 コ ン ト ロ ー ル 乾燥コント

ロール

(11)

9 1-a

2-a

3-a

4-a

5-a

6-a

図3-1 試験体断面 タイプa

(12)

10 1-b

2-b

3-b

4-b

5-b

6-b

図3-2 試験体断面 タイプb

(13)

11 1-c

2-c

3-c

4-c

5-c

6-c

図3-3 試験体断面 タイプc

(14)

12 1-d

2-d

3-d

4-d

5-d

6-d

図3-4 試験体断面 タイプd

(15)

13 3-2 部分横圧縮試験

部分横圧縮試験の結果から以下のように部分横圧縮性能値を算出した(図3-5)。 第一剛性(𝑁 𝑚𝑚³⁄ ) =𝛥𝐹₁ 𝛥𝑤₁⁄

𝑏𝑙 第二剛性(𝑁 𝑚𝑚³⁄ ) =𝛥𝐹₂ 𝛥𝑤₂⁄

𝑏𝑙 降伏応力(𝑁 𝑚𝑚²⁄ ) =𝐹𝑦

𝑏𝑙 5mm変形時応力(𝑁 𝑚𝑚²⁄ ) =𝐹5𝑚𝑚

𝑏𝑙 木口破壊時応力(𝑁 𝑚𝑚²⁄ ) =𝐹木口破壊

𝑏𝑙 20mm変形時応力(𝑁 𝑚𝑚²⁄ ) =𝐹20𝑚𝑚

𝑏𝑙

ここで、 b:試験体の幅(=105mm) l:加圧板の長さ(=90mm)

𝛥𝐹₁ 𝛥𝑤₁⁄ :第一勾配の荷重と変形の比 𝛥𝐹₂ 𝛥𝑤₂⁄ :第二勾配の荷重と変形の比

𝐹𝑦:荷重変位曲線と、第一勾配を2mmオフセットした直線との交点の荷重 𝐹5𝑚𝑚:5mm変形時荷重

𝐹木口破壊:木口破壊時荷重 𝐹20𝑚𝑚:20mm変形時荷重

図3-5 部分横圧縮性能値の算出

(16)

14 各タイプの平均部分横圧縮性能値を表3-2に示す。

表3-2 部分横圧縮性能値

腐朽材では湿潤コントロールに対し、すべての部分横圧縮性能値で平均値の低下が見ら れた。タイプaの第二剛性とすべてのタイプの木口破壊時応力は有意水準1%で有意差があ った(**)。しかしその他の値では有意水準 5%でも有意差が見られなかった。またタイプ a

~dを比較すると、タイプaとタイプc、dの第二剛性の間に有意差があったが、その他に 差は見られなかった。圧縮した試験体中央部まで腐朽が到達せず、菌接種孔の形状に腐朽 したものも半数程度にとどまったため、有意差が出たものが少なかったと考えられる。木 口破壊時応力については、試験体木口付近の腐朽状況が影響するため、湿潤コントロール に対し有意差が出た。参考として、木質構造設計基準5)で規定された許容応力度との比較を 行う。湿潤状態のめり込み長期許容応力度は 1.23(N/mm²)である。本実験結果の降伏応力 と比較すると、実験結果はすべて許容応力度を上回った。全試験体の部分横圧縮性能値を 表3-3に示す。

第一剛性 第二剛性 降伏応力 5mm変形時応力 木口破壊時応力 最大荷重時応力

(N/mm³) (N/mm³) (N/mm²) (N/mm²) (N/mm²) (N/mm²)

a 0.91 0.067** 1.927 1.991 2.198** 2.600

b 0.94 0.080 2.012 2.056 2.290** 2.660

c 1.07 0.085 2.007 2.078 2.229** 2.671

d 0.89 0.088 2.051 2.082 2.217** 2.753

湿潤コントロール 1.15 0.090 2.168 2.212 2.907 3.042

気乾コントロール 1.83 0.134 4.060 4.138 4.860 5.184

(17)

15

表3-3 部分横圧縮性能値詳細

第一剛性 第二剛性 降伏応力 5mm変形時応力 木口破壊時応力 最大荷重時応力

(N/mm³) (N/mm³) (N/mm²) (N/mm²) (N/mm²) (N/mm²)

1-a 0.97 0.065 2.02 2.07 2.25 2.79

2-a 1.32 0.089 2.36 2.48 2.60 3.10

3-a 0.87 0.059 2.13 2.19 2.37 2.76

4-a 1.02 0.072 1.88 1.97 2.41 2.78

5-a 0.50 0.048 1.40 1.42 1.56 1.96

6-a 0.78 0.067 1.77 1.81 1.99 2.21

a平均 0.91 0.067 1.93 1.99 2.20 2.60

1-b 1.04 0.092 2.20 2.26 2.57 3.03

2-b 1.73 0.120 2.51 2.69 2.78 3.42

3-b 0.79 0.070 2.00 1.98 2.27 2.55

4-b 0.75 0.068 1.83 1.83 2.17 2.49

5-b 0.38 0.061 1.60 1.55 1.70 1.93

6-b 0.96 0.072 1.94 2.02 2.24 2.54

b平均 0.94 0.080 2.01 2.06 2.29 2.66

1-c 1.35 0.105 2.26 2.37 2.50 3.17

2-c 1.60 0.100 2.51 2.65 2.74 3.25

3-c 0.75 0.107 1.92 1.93 1.94 2.47

4-c 0.97 0.073 1.98 2.02 2.38 2.72

5-c 0.69 0.063 1.47 1.51 1.75 1.99

6-c 1.08 0.065 1.90 2.00 2.05 2.42

c平均 1.07 0.085 2.01 2.08 2.23 2.67

1-d 1.21 0.111 2.46 2.54 2.83 3.35

2-d 1.56 0.104 2.51 2.64 2.62 3.33

3-d 0.72 0.074 2.01 1.99 1.77 2.58

4-d 0.84 0.080 1.89 1.96 2.32 2.76

5-d 0.58 0.084 1.30 1.40 1.52 1.97

6-d 0.45 0.074 2.14 1.96 2.24 2.52

d平均 0.89 0.088 2.05 2.08 2.22 2.75

1-e 2.23 0.149 4.73 4.84 5.83 5.83

2-e 2.33 0.139 4.74 4.96 5.96 5.96

3-e 1.69 0.199 4.34 4.32 4.90 5.66

4-e 1.45 0.110 3.79 3.79 4.16 4.83

5-e 1.73 0.098 3.25 3.39 4.18 4.28

6-e 1.56 0.106 3.51 3.54 4.12 4.54

e平均 1.83 0.134 4.06 4.14 4.86 5.18

1-f 1.22 0.104 2.57 2.65 3.22 3.53

2-f 1.67 0.104 2.53 2.66 3.32 3.56

3-f 1.15 0.089 2.14 2.15 3.02 3.06

4-f 0.96 0.090 2.09 2.00 2.81 2.92

5-f 0.94 0.078 1.77 1.83 2.48 2.54

6-f 0.95 0.075 1.92 1.99 2.59 2.64

f平均 1.15 0.090 2.17 2.21 2.91 3.04

(18)

16 3-3 応力波伝播速度

表3-4に応力波伝播速度低下率rVを、半径方向、接線方向別に示した。菌接種孔からの 距離が等しければ腐朽は同程度と考えられるため、距離ごとに値を平均した。菌接種孔か ら10mmである木口付近では、応力波伝播速度が6割程度に低下した。腐朽が局所的であ った、菌接種孔から110mmである試験体中央部においても9割程度に低下した。この結果 から、同一材の健全部と腐朽部で応力波伝播速度を比較することにより、内部腐朽を検出 することが可能といえる。また半径方向と接線方向で速度の低下率に変化はなく、年輪の 傾斜角を考慮する必要はない。

応力波伝播速度低下率𝑟𝑉 = 腐朽材応力波伝播速度(𝑚 𝑠⁄ ) 湿潤コントロール応力波伝播速度(𝑚 𝑠⁄ )

表3-4 腐朽材と湿潤コントロールの応力波伝播速度比

続いてファコップを用いて部分横圧縮性能値を推定できるか検討する。図3-6は横軸に菌 接種孔から10mmにおける半径方向の応力波伝播速度を、縦軸に部分横圧縮性能値を取っ た散布図である。これらの値を線形近似すると正の相関が見られ、相関係数は0.48~0.645 となった。ここでは半径方向のグラフのみを載せるが、接線方向も同様の傾向を示した。

よって、応力波伝播速度の低下率を用いて、部分横圧縮性能値の低下率を推定できると考 えられる。また菌接種孔から10mmでの応力波伝播速度が部分横圧縮性能値と最も高い相 関を持っていたことから、診断の際には柱の直下だけでなく、周辺270mm程度の速度を測 定する必要がある。

10 60 110 10 60 110

a 0.572 0.823 0.851 0.615 0.876 0.891

b 0.669 0.878 0.901 0.629 0.893 0.901

c 0.635 0.853 0.874 0.629 0.854 0.856

d 0.619 0.845 0.885 0.601 0.872 0.884

平均 0.624 0.850 0.878 0.618 0.874 0.883

半径方向 接線方向

rV

菌接種孔からの距離(mm)

(19)

17

図3-6 部分横圧縮性能値と応力波伝播速度(半径方向)

(20)

18 3-4 穿孔抵抗値

図3-7はレジストグラフで測定した穿孔抵抗値のグラフと測定箇所の断面画像である。

写真赤枠部分の測定結果を上から順に右側に示している。代表的なものを抜き出し、デー タを掲載する。

腐朽部で穿孔抵抗値が低下した。図 3-7(下)では菌糸導入孔をあけた横軸 30mm付近 と 60mm付近で抵抗値が低下し、菌糸導入孔の周辺で腐朽が進んだことが分かる。図 3-8 では横軸 10mm 付近の抵抗が低下し、辺材部の腐朽を検出した。また(中)110mm付近 の割れ周辺の腐朽も検出した。このようにレジストグラフは腐朽の位置と大きさを詳細に 把握することができる。ただしレジストグラフは径3mmのドリルが通過した部分でのみ測 定が可能なため、腐朽部分をドリルが通らない場合は腐朽が検出されない。図3-9のように 試験体中央部では抵抗は低下しなかった。

図3-7 断面画像と穿孔抵抗値 1-b 10mm

(21)

19

図3-8 断面画像と穿孔抵抗値 4-d 60mm

図3-9 断面画像と穿孔抵抗値 2-c 110mm

(22)

20

穿孔抵抗値を用いた部分横圧縮性能値の推定について検討する。まず穿孔距離が15~

105mmにおける穿孔抵抗値を平均した。平均値を測定位置に合わせて並べた棒グラフを図

3-10に示す。1-aのように腐朽が特に激しかった試験体では菌接種孔から10mmの位置で 平均値の低下が起こった。しかしその他の試験体では接種孔からの距離による変化をみる ことができなかった。

図3-10 15~105mmにおける穿孔抵抗値

そこで穿孔抵抗値が低下した区間の長さを算出した。これを抵抗値低下区間長とする。

抵抗値低下区間長を抵抗値測定区間の長さで割った値を抵抗低下率とする。低下の基準は、

穿孔抵抗値が健全部における抵抗平均値の2分の1以下とした。縦軸に部分横圧縮性能値、

横軸に抵抗低下率を取った散布図を図3-11に示す。線形近似の結果、負の相関関係がみら れ、相関係数は-0.23 から-0.68 であった。応力波伝播速度と比較すると相関は低いが、抵 抗低下率を調べることで部分横圧縮性能値を推定できることが示唆された。

(23)

21

図3-11 部分横圧縮性能値と抵抗低下率

(24)

22

4.結論

今回の実験では、タイプ a の第二剛性と全タイプの腐朽材木口破壊時応力に低下が見ら れた。しかし、タイプa~d間に差は見られず、断面に対する腐朽範囲の違いが部分横圧縮 性能値に与える影響6)を明らかにすることはできなかった。今後は木材内部のみを中心部ま で腐朽させるように、腐朽処理の方法を検討する。

また応力波伝播速度と穿孔抵抗値の測定により、内部腐朽を検出することができた。ど ちらの方法も部分横圧縮性能値と相関があり、強度の推定を行うことができる。

それぞれの特徴について説明する。応力波伝播速度については、応力波が穿孔抵抗と比 べて広範囲を伝わるため、腐朽部の見落としが少なくなる。また部分横圧縮性能値との相 関も比較的高い。本実験では木材を挟み込むようにセンサーを配置できたため、このよう な結果が得られた。しかし実用性の面では、土台が壁などに覆われている場合が多いため 課題が多いといえる。

穿孔抵抗については腐朽部の位置や大きさを詳細に検出できるという特徴がある。しか しドリルが通らない部分は把握できないため、木材表面が腐朽していない場合、見落とす 危険性がある。応力波伝播速度に精度は劣るが、部分横圧縮性能値との相関もみられた。

一方向からの測定が可能であるため、腐朽診断の現場では比較的使いやすいと考えられる。

(25)

23

謝辞

本研究を行うに当たり、論文を書き上げるまで一から温かくご指導くださった北海道大 学農学部森林科学科木材工学分野の澤田圭助教と、ゼミなどで数々の助言をいただいた平 井卓郎特任教授、小泉章夫准教授、実験の操作や試験体加工を指導してくださった佐々木 義久技官、腐朽処理に関する指導をしてくださった森林資源生物学分野の玉井裕准教授、

腐朽操作から研究のまとめ方まで多くのことを教えていただいた木材工学研究室の先輩方 にこの場を借りて深く感謝の意を表します。

(26)

24

参考文献

1) 後藤崇志,冨川康之,中山茂生,古野毅 腐朽処理した木材の超音波伝播速度及び部分 圧縮強度の変化 超音波伝播速度の低下と残存強度との関係 木材学会誌 Vol.57, No.6, p.359-369, 2011

2) 森拓郎,簗瀬佳之,田中圭,河野幸太郎,野田康信,森満範,栗崎宏,小松幸平 生物劣化を受けた木材の曲げおよび圧縮強度特性とその劣化評価 Journal of the Society of Materials Science, Japan Vol.62, No.4, pp.280-285, 2013

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Gambar

図 2-1  試験体図
図 2-2  腐朽処理中と処理後の試験体
図 2-3  部分横圧縮試験
図 2-6  測定位置
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Referensi

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