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"Genji monogatari" to "Heike monogatari" no tekusuto gengogakuteki kenkyū ni tsuite

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『源氏物語』と『平家物語』のテクスト言語学的研

究について

著者

FIALA Karel

雑誌名

創立20周年記念国際シンポジウム日本文化研究の過

去・現在・未来―新たな地平を開くために―

32

ページ

87-94

発行年

2009-03-03

その他のタイトル

"Genji monogatari" to "Heike monogatari" no

tekusuto gengogakuteki kenkyu ni tsuite

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KarelFIALA (福 井 県 立 大 学) 日本 文 化 の 研 究 は 時 代 の 思 潮 に と ら わ れ ず 、 時 代 を 超 え て そ の 独 自性 を 保 持 しつ づ け な け れ ば な ら な い 。 江 戸 期 よ り発 展 し て き た 「国 学 」 は 、 漢 文 化 に 対 し和 文 化 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ を探 っ て き た 。 と りわ け 本 居 宣 長 の 語 学 ・文 学 の 研 究 は ユ ニ ー ク な も の で あ り、 現 代 に も 通 じ る先 端 的 な 研 究 で あ っ た 。 本 研 究 は 、 「語 り」 「章 段 」 「文 の 成 立 の 条 件 」 「係 り結 び の 文 型 」 「取 り立 て 」 な ど の 国 語 学 の 伝 統 を 踏 ま え 、 さ ら に テ ク ス ト言 語 学 の 手 法 を 用 い て 『源 氏 物 語 』や 『平 家 物 語 』 の 文 例 を 吟 味 し、 次 の 問 題 に つ い て 考 察 す る 。 1.『 平 家 物 語 』 に お け る 時 制 表 示 の 役 割 r【.係 り結 び 文 型 の 使 用 と焦 点 の 表 示 皿.表 現 の 反 復 IV.セ グ メ ン トと文 の 配 列 の 対 比 表 V.『 源 氏 物 語 』 冒 頭 文 の 構 成 VI.『 源 氏 物 語 』 柏 木 帖 に お け る 敬 語 と語 彙 の 使 用 1.『 平 家 物 語 』 に お け る 時 制 表 示 の 役 割 『平 家 物 語 』 の 語 り本 で は 本 筋(「 前 景 」)の 時 制 に 所 属 す る述 語 は 無 標 で 、 時 制 が 表 示 され な い 傾 向 が あ る 。 しか し話 の 筋 が 基 礎 レ ヴ ェル(メ イ ンテ ー マ あ る い は メイ ン の 時 制 、 メ イ ン の モ ダ リテ ィ 等)か ら逸 脱 し二 次 的 で 例 証 的 な 部 分 を 取 り上 げ る 場 合 は 、 時 制 の 助 動 詞 が 多 用 され る 。 時制 の 表示 と無 表 示 「覚 一 本 」 の 文 例 例 ① 基 礎 レ ヴ ェル (得 長 寿 院 の 供 養 は)天 承 元 年 三 月 十 三 日 な り。 第 一 段 階 の 例 証 レ ヴ ェ ル

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KarelFIALA 勧 賞 に は 欠 国 を 給 ふ べ き 由 仰 せ 下 され け る 。(流 布 本 で は 「下 され 給 ひ け る 」 とな っ て い る) 例 ② 第 一 段 階 の 例 証 レ ヴ ェ ル 中 頃 太 宰 の 権 の 帥 末 中 の 卿 とい ふ 人 あ りけ り。 第 二 段 階 の 例 証 レ ヴ ェ ル ー 人 は 桜 町 の 中 納 言 し げ の り の卿 の 北 の 方 に て お は す べ か り し が 、 八 歳 の 御 約 束 ば か り に て 、 … 君 達 あ ま た ま しま し け り。 「流 布本 」 に基 づ く例 よ り 例 ③ 第 一 段 階 の 例 証 レ ヴ ェ ル あ る 日は ぎ い ち 、 ぎ に とつ き 、 あ る 日は ぎ ふ く 、 ぎ と くな ど も つ く も の も あ り け り。 付 か ぬ も の も多 か り け り。 同 レヴ ェ ル … 義 王 一 人 参 ら ん こ と の 、 あ ま りに こ こ ろ う し とて 、 妹 義 女 を も合 ひ 具 し け り。 入 道 、 「仏 慰 め よ」 とそ の た ま ひ け る 。 義 王 とか うの 御 返 事 に も お よ ぼ ず 、 涙 を 抑 へ て い で に け り。 例 ④ 忠 盛 播 磨 の 守 た り し に 、 鳥 羽 院 の 御 願 得 長 寿 院 を 造 進 し て … 天 承 三 月 十 三 日 供 養 す 。 例 ⑤ 如 何 な る 賢 王 ・聖 主 の 御 政 も 、摂 政 関 白 の 成 敗 を も 、人 の 聞 か ざ る 処 に て は 、 何 と無 く世 に 余 され た る い た づ ら ご とな ん ど傾 き 申 す は 常 の 習 ひ な り。 例 ⑥ 同年 の 八,月七 日、 香 隆 寺 の う し と ら 、 蓮 台 野 に 於 て 御 埋 葬 有 り。 例 ⑦ さ る ほ ど に 、 … 武 士 … 押 しや りて 乱 れ 入 る。 例 ⑧ 当今 御 即 位 の の ち は 、 … 院 内 の 御 仲 、 疎 か な らず き こ ゆ 。 例 ⑨ 去 ん じ嘉 保 二 年 … 山 門 の 久 住 の 者 円 応 を殺 害 す 。 次 の 例 ⑩ の よ うな 複 雑 な 長 文 で は 時 制 の 助 動 詞 が 頻 繁 に 使 わ れ る。 例 ⑩ か か り し程 に 、 永 万 元 年 の 春 の 頃 よ り、 主 上 御 不 予 の 御 事 御 在 す と 聞 こ え し 程 に 、 六,月二 十 五 日に 俄 か に 親 王 の 宣 旨 を 下 され て 、 や が て そ の 夜 御 譲 位 あ りけ り。 否 定の モ ダ リテ ィ 否 定 の モ ダ リテ ィ が 表 示 され た 場 合 も 、 時 制 の 助 動 詞 が 省 略 され な い こ とが 普 通 で あ る 。 例 ⑪ 力 及 ば で い で ざ り け り。 例 ⑫ そ の 夜 の 闇 み うち は な か りけ り。 例 ⑬ あ へ て 罪 科 の 沙 汰 は な か りけ り。 語 り 物 の 基 礎 レ ヴ ェ ル で も 「な か り け り」 が 多 用 さ れ る こ と に 関 し て は 、 次 の 理 由 が あ る と 考 え ら れ る 。 村 上(2000)は 、 語 り 構 想 へ の 転 換 プ ロ セ ス の 中 で 作 者 が 「な

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し 」 を 「な か り け り 」 に 変 え る こ と に よ っ て 、 五 拍 の 句 を 目 指 し た と 推 測 す る 。 「き 」 の 用 例 例 ⑭ 楊 貴 妃 が さ い は ひ し と き 、 と き の き ら め で た か り き 。 「ざ りき」 の用 例 例 ⑮ 懸 賞 行 な はれ し こ と、 十 両 に は 過 ぎ ざ りき 。 中 世 の 軍 記 物 語 の 語 り系 に い た る と 、 肯 定 表 現 の 終 止 形 は 、 主 と して 漢 文 訓 読 体 に 基 づ く と み られ る 文 章 に 限 り使 用 が 見 られ る 。 「き 」 の 連 体 形 「し」 は 、語 り部 に よる解 説 の レ ヴェル(メ タ言 語 学的 な レヴェ ル)で 出 現 す る 。 た と え ば 「とそ 見 え し」、 「とそ 聞 こ え し」 な どの よ うな 形 式 が こ れ に 当 た る。 ま た 打 ち 消 し に続 く 厂き 」 も 出 現 す る こ とが あ る。 II.係 り結 び 文 型 の 使 用 と焦 点 の 表 示 係 り結 びの文 型 とその 語 り物 に お ける機 能 現 代 目本 語 と チ ェ コ 語 の 語 順 に 関 す る パ ラ レル コ ー パ ス の デ ー タ(フ ィ ア ラ 2008)が 示 す 通 り、 チ ェ コ語 の よ うに 語 順 が 相 対 的 に 自 由 な 言 語 類 で は 、 主 題 ・取 立 て ・焦 点 な ど は 語 順 に よ っ て 示 され る 。 現 代 日本 語 で は 、 主 題 と取 り立 て は 助 詞 で 示 す こ と が で き る が 、 焦 点 は 正 確 に 表 示 す る こ とが で き な い 。 た だ 古 典 日本 語 の 係 り結 び 文 で は 、 係 り助 詞 は 発 話 の 焦 点 を 示 し て い た 。 古 典 日本 語 の 「喚 体 文 」 で は 助 詞 「ぞ 」 「な む 」 「や 」 「か 」 「こ そ 」 が 焦 点 助 詞 で あ っ た こ と は 、 焦 点 が 明 確 に 表 示 さ れ る チ ェ コ 語 へ の 翻 訳 文 の 語 順 か ら も推 測 で き る 。 「喚 体 文 」 で は 、 話 題 が 本 筋 か ら逸 脱 し、 例 示 的 な 働 き を し、後 続 文 に引 き継 が れ な い 例 が 多 い 。 焦 点 助 詞 「ぞ 」 は 語 り物 の ジ ャ ン ル で 頻 繁 に 出 現 す る 。 ま た 「け り」 との 組 み 合 わ せ で 「ぞ … け る 」(焦 点+基 礎 レ ヴ ェ ル か らの 逸 脱)と い う文 型 が 成 立 す る。 語 り物 の 初 期 の 異 本 に 比 べ て よ り新 しい 異 本 で は 、 「ぞ 」が 「こ そ 」 に 置 き 換 え ら れ る 例 が 徐 々 に 増 え て い る 。 ま た 初 期 の 異 本 で は 厂な む 」 も見 られ る が 、 小 川 栄 一 が 軍 記 物 語 研 究 会(1994)で 指 摘 した よ うに 、 こ れ は 徐 々 に 減 っ て い る。 小 川 に よ る と 、13世 紀 前 半 に 成 立 した 『宇 治 拾 遺 物 語 』 で は 係 助 詞 厂な む 」 は104回 出 現 す る が 、1306年 以 降 の 『とは ず が た り』 で は 「な む 」 は7回 、1309年 書 写 の 『延 慶 本 平 家 物 語 』 で は8回 出 現 し、1370年 書 写 の 『覚 一 本 』 以 降 見 当 た ら な い 。 皿.表 現 の 反 復 表 現 の 反 復 は 語 り文 体 の 特 徴 と して 捉 え る こ と が で き る。 村 上(2000)は 、 室 町 期

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KarelFIALA 成 立 の 浄 瑠 璃 本Dで 次 の 言 葉 に 注 目 した 。 例 ⑯ 「あ づ ま へ く だ り ひ で ひ ら を け い さ く(計 策)し み や こ へ の ぼ り… 」 浄 瑠 璃 御 前 は 、 京 の 冠 者 風 情 に 恋 を し母 に 追 放 され た 。 そ の 後 、 彼 女 は 御 曹 司 の 命 を 助 け 、 紆 余 曲折 を経 て 自 害 に 追 い 込 ま れ た 。 浄 瑠 璃 の 筋 が 極 ま る 度 に 、 浄 瑠 璃 御 前 の 言 葉 は 、 そ れ ぞ れ 異 な る登 場 人 物 の 口 を借 りて 繰 り返 し吐 き 出 され る 。 悲 劇 に 身 を置 く 登 場 人 物 達 は 、 そ れ と は気 づ か ぬ ま ま に 同 じ言 葉 を 繰 り返 して い る 。 同 じ言 葉 を 反 復 す る こ とで 、 情 報 の 冗 長 度 が 上 が り、 聞 き 手 に 秩 序 感 ・安 定 感 を 与 え る と見 られ る。 反 復 表 現 は 新 情 報 は 乏 しい が 、 聞 き 手 を 惹 き つ け 語 り手 と結 ぶ 効 果 が 得 られ る 。 牛 若 舞 曲 や 『平 家 物 語 屋 代 本 』 の よ う な 、 初 期 の 語 り接 縁 の 作 品 の 中 に も こ の よ うな 表 現 の 反 復 が 頻 繁 に観 察 され る 。 例 え ば 牛 若 舞 曲 で は 、 鬼 界 が 島 に 到 着 し た 有 王 の 言 葉 「是 に都 よ り流 さ れ し法 勝 寺 の 執 行 御 房 の 行 方 や 知 り た る」 「是 に 都 よ り流 され た ま ひ し法 勝 寺 の 執 行 御 房 の 行 邊 や 知 りた る 」 は 、 以 前 勅 使 元 康 が 表 し た 言 葉 と ほ ぼ 一 致 す る。 た だ 有 王 の 言 葉 に は 赦 免 され た 二 人 の名 は 登 っ て い な い 。 一 方 流 の 語 り本 の 達 成 期 に 至 っ て、 「覚 一 本 」 「百 二 十 句 本 」 な どで は 早 期 の 異 本 に 見 ら れ る 無 意 識 的 な 反 復 と は 異 り、 本 筋 の テ ー マ は 意 識 的 に 繰 り返 され て い る (「二 人 とそ 書 か れ た る 、 三 人 と は 書 か れ ず 」)。 村 上(2000)は 語 りの 特 徴 を 次 の よ うに ま と め た 。 1)話 し手 と 聞 き 手 に 共 通 す る場 が 存 在 す る こ と 、 2)登 場 人 物 の 劇 的 な行 動 が 外 面 的 に捉 え られ て い る こ と 、 3)美 文 の 形 を と っ た解 説 が 挿 入 され て い る こ と 、 4)様 々 な 説 話 の挿 入 が 見 られ る こ と 、 5)特 殊 な 言 葉 の リズ ム が 認 め られ る こ と。 こ こ で テ ク ス ト言 語 学 の 立 場 か ら次 の 項 目 を加 え た い 。 1)語 り特 有 の 長 文 や 未 完 結 提 題 句 の 使 用(西 田1990が 指 摘 す る よ うに 、『平 家 物 語 』 で は 未 完 結 提 題 句 が 多 用 され る)。 2)語 り文 章 の 文 を発 話 モ ダ リテ ィ類 型 に よ っ て 三 つ の レ ヴ ェ ル(出 来 事 の レ ヴ ェル 、 発 話 行 為 の レ ヴ ェル 、 語 り手 に よ る 解 説 の レ ヴ ェ ル)に 分 け て 当 て は め る と 、 各 レ ヴ ェ ル に は そ れ ぞ れ 独 自 に 変 動 す る 特 徴 が 見 られ る。 未 完 結 提 題 句 の 一 例 を 挙 げ よ う。 『平 家 物 語 』 巻 一 章 段 の 「殿 下 乗 合 」 の 「… 世 の 乱 れ そ め け る 根 源 は 、 … 資 盛 朝 臣 … 六 波 羅 へ か へ られ け り。」 と い う文 に お い て 、文 頭 と文 末 は 呼 応 しな い 。つ ま り 助 詞 「は 」 の 付 い た 主 題 に 対 す る 結 び と して は 、 「な り」 「な りけ り」 な ど が 出 現 す

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る は ず で あ る が 、 こ こ で は 文 末 の 助 動 詞 は 出 現 して い な い 。 こ の よ うな 未 完 結 の 構 文 は 不 安 定 で 、『平 家 物 語 』で は 異 本 を 通 して ダ イ ナ ミ ッ ク に 変 動 す る 。 た と え ば 従 来 女 車 に 乗 っ て い た 資 盛 の 姿 が 、 鷹 狩 りを す る騎 上 の 武 士 に 描 き か え られ た り、「雪 は 葉 だ れ に 降 っ た りけ り、枯 野 の 景 色 お も し ろ か り けれ ば 、 雲 雀 ・鶉 を 追 っ か け 追 っ か け … 」 が 挿 入 さ れ る な ど 、 異 本 間 の 変 動 が 見 られ る。 未 完 結 提 題 句 の 変 動 は 、 次 に挙 げ る セ グ メ ン トと文 の 配 列 の 対 比 表 か ら読 み 取 れ る。 IV.セ グ メ ン ト と 文 の 配 列 の 対 比 以 下 の 表 は 、 先 述 の 未 完 結 提 題 句 を 含 む 『平 家 物 語 ・巻 一 』 章 段 「殿 下 の 乗 り合 い 」 に お け るセ グ メ ン ト ・文 の 配 列 の 対 比 を 示 す 。 盛 四 源 延 長 南 屋 覚 表1セ グ メ ン ト と 文 の 配 列 の 対 比 較 16'/17x27.32'.3435/42'43/35(102).49'.101'(111').17'一18/.22'26(33). 1717'18/2122(26')/2728'32'33'. 17272817"18/18'22/23/2425.19'/20'/25"26".32"33. 16"/1717"18/22/23'2123/2425.19/20/25"26'.2728'32'33. 16"/1717"18/22/23'2123/2419/20/2525'26/2728"28'32'33'. 1717'18'/18/21"2223"/19/20242525"26/32'2728'33. 16"/1717'1818'/19/20/2122/232425.25'26/2728.293031.3233. 16/1717'1818'/19/20/2122/23242525'26/2728/293031.3233. 解 説: 盛 源 平 盛 衰 記 四 四 部 合 戦 状 源 源 平 闘 諍 録 延 延 慶 本 長 長 門 本 南 南 都 本 屋 屋 代 本 覚 覚 一 本 /最 短 文 の 切 れ 目 .文 の 切 れ 目 太 字 最 も ダ イ ナ ミ ッ ク な 挿 入 成 分 や 拡 張 の 成 分(よ り新 し い 異 本 で は 左 の 方 に 移 動 す る 傾 向 が あ る と 思 わ れ る) 数 字 異 本 を 通 して 類 似 す る セ グ メ ン ト (フ ィ ア ラ2000aに よ る)

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KarelFIALA 最 後 に 、 『源 氏 物 語 』 に お け る係 り結 び の 呼 応 と敬 語 の 一 致 に つ い て 述 べ た い 。 V.『 源 氏 物 語 』 冒頭 文 の 構 成 例 ⑰ い つ れ の 御 時 に か 、 女 御 更 衣 あ ま た さ ぶ ら ひ け る 中 に 、 い とや ん ご と な き 際 に は あ らぬ が 、 す ぐれ て 時 め き た ま ふ あ りけ り。 こ の 文 で は 以 下 の よ う な 呼 応 類 型 の 違 反 が 見 られ る。 1)冒 頭 文 節 の 「い つ れ の 御 時 に か 」 の 中 の 係 助 詞 「か 」 は 終 止 形 「あ り け り」 に 係 る 。 2)「 時 め き た ま ふ あ りけ り」の 中 で 、 主 節 と従 属 節 に お け る敬 語 の 不 一 致 が 見 られ る 。 「あ りけ り」 は 物 語 冒頭 文 の プ ロ トタ イ プ の 表 現 で あ る か ら、 作 者 は 連 体 形 「あ りけ る 」 あ る い は 尊 敬 語 「お は し け り」 な ど の よ うな 形 式 を 避 け た の で あ ろ う。 つ ま り、 文 章 構 成 の レ ヴ ェ ル を規 定 す る 規 則 は 文 を規 定 す る統 辞 規 則 よ り も 重 い 。 , 文 章 レ ヴ ェ ル の プ ロ トタ イ プ は 文 レ ヴ ェ ル の プ ロ トタ イ プ よ り も重 視 され て い る。 構 文 の 一 貫 性 よ り も テ ク ス ト類 型 の 一 貫 性 が 優 先 され る 。 Vl.『 源 氏 物 語 』 柏 木 帖 に お け る 敬 語 と語 彙 の 使 用 次 の 柏 木 の 文 の 引 用 に お け る 絶 対 的 敬 語 、 相 対 的 敬 語 、 そ して 敬 語 以 外 の 語 彙 の 対 立 な ど を た ど る と 、 柏 木 の 内 的 世 界 が 浮 き彫 りに な る 。 例 ⑱ 厂行 方 な き 空 の 煙 と な りぬ と も 思 ふ あ た り を 立 ち は は な れ じ 夕 は わ き て な が め させ た ま へ 。 咎 め させ た ま は ん 人 目 を も 、 今 は 心 や す く 思 し な りて 、か ひ な き あ は れ を だ に も 絶 え ず か け させ た ま へ 」な ど書 き 乱 り て 、 柏 木 は 、 女 三 宮 に 宛 て た 便 りの 中 で 自 らの 死 期 を予 感 し、 源 氏 の こ と を 気 に しな い で 、 柏 木 の い る 空 を 仰 ぎ み る よ う に女 三 宮 に 求 め る。 光 源 氏 は 、桐 壼 帝 の御 慮 に よ っ て 朝 家 か ら離 れ た が 、現 在 復 権 し、 「院 」 と 同 格 の 地 位 を得 て い る 。 柏 木 は こ の 事 実 が 気 に 食 わ な い 。 柏 木 は 「咎 め させ た ま は ん 」 の 中 で 、 「た ま ふ 」 に よ っ て 源 氏 が 自分 よ り上 位 で あ る こ と を 示 唆 し、 「させ 」 に よ っ て 源 氏 が 事 実 上 「院 」 と見 な され て い る こ と 、 さ ら に 「き こ ゆ 」 に よ っ て 源 氏 の 身 分 が 一 の 院 の 娘 「女 三 宮 」 に 及 ば な い こ と を 示 唆 し

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て い る。 さ ら に 、 柏 木 は 「人 目」 とい う語 句 に よ っ て 、 源 氏 が 自 分 と女 三 宮 に と っ て 脅 威 で あ る とい う印 象 を与 え て い る 。 形 式 上 礼 節 を 踏 ま え て い る 三 重 敬 語 と 「人 目 」 とい う語 句 は 対 立 し、 そ の 効 果 か ら光 源 氏 に 対 す る 険 しい 反 感 が 読 み 取 れ 、 朱 雀 院 が 取 り持 っ た 光 源 氏 と 女 三 宮 と の 結 婚 へ の 反 発 が 感 じ られ る。 柏 木 は敬 語 表 現 の 巧 み な 使 用 に よ っ て 、 女 三 宮 の 世 話 を 怠 っ た と され る源 氏 よ り も 自分 が 女 三 宮 に 近 い こ と を 暗 示 して い る 。 ま た 新 間(2006)が 指 摘 す る よ うに 、 作 者 は 柏 木 を 白居 易 と同 時 代 の 詩 人 で あ っ た 元 槇 の 姿 と重 ね て い る 。元 槇 に 対 す る 哀 悼 歌 の 表 現 は 、『源 氏 物 語 』の 作 者 に イ ン ス ピ レ ー シ ョン を 与 え た よ うで あ る。 作 者 は 、 白居 易 が 元 槇 の 死 を 悼 ん だ の と 同 じ く、 こ の 元 槇 を モ デ ル と し た 柏 木 に 対 し て も 憐 憫 の 情 を 覚 え る 。 こ の 女 三 宮 の 結 婚 に よ っ て 『源 氏 物 語 』 の 構 想 自体 が 大 き く変 わ っ た の で は な い か と思 わ れ る。 新 し い 構 想 で は 、 源 氏 の 子 息 夕 霧 は 物 語 の 主 人 公 と して の 地 位 か ら 格 下 げ され て い る 。 も と も と夕 霧 が 太 政 大 臣 に な る と い う予 言 が あ っ た が 、 女 三 宮 と光 源 氏 の 結 婚 、 薫 の 誕 生 な ど の 構 想 が も との 構 想 と衝 突 し 、 予 言 の 実 現 に は 至 ら な か っ た 。 以 上 例 示 し た よ うに 、 国 語 学 的 手 法 に テ ク ス ト言 語 学 的 手 法 を加 え て 、 古 典 文 学 作 品 の 構 成 、 成 立 過 程 、 変 遷 の 履 歴 な ど を 明 ら か に す る こ と が で き る 。 参 考 文 献 『 日本 語 の 情 報 構 造 と 統 語 構 造 』 ひ つ じ 書 房. フ ィ ア ラ 、 カ レ ル(2000b)「 日本 語 に お け る 主 題 展 開 の モ デ ル と 『主 題 ・焦 点 』 の 分 節 一 チ ェ コ 語 と の 対 比 」 『ダ イ ナ ミ ス 』4号,京 都 大 学 大 学 院 人 間 環 境 研 究 学 科. フ ィ ア ラ 、 カ レ ル(2008)「 日 本 語 と チ ェ コ 語 の 語 順 の 対 称 研 究 」 『福 井 県 立 大 学 論 集 』2008.2 五 味 文 彦(1999)『 人 物 叢 書 ・平 清 盛 』 吉 川 弘 文 館. 伊 佐 原 均 他(2000)「 コ ー パ ス か ら の 語 順 の 学 習 」 『自 然 言 語 処 理 』Vol.7,No.4. 早 川 厚 一 ・生 形 貴 重 ・佐 伯 真 一(2000-2007)『 平 家 物 語 四 部 合 戦 状 本 平 家 物 語 全 注 釈 』(第6, 7,9巻). 上 横 手 雅 敬(1985)『 平 家 物 語 の 虚 像 と 真 実(再 版 、 上)』 塙 新 書. 村 上 學(2000)『 語 り 文 学 の 表 現 構 造 』 風 間 書 房.

MurasakiSikibuPrib馼princeGendziho.『 源 氏 物 語 』K.Fialaチ ェ コ 語 全 訳(1.2002,II.2005, 皿.2007,IV.2008).Paseka.Praha.

佐 伯 哲 夫(1998)要 説 『日 本 文 の 語 順 』 く ろ し お 出 版. 西 田 直 敏(再 販1990)『 平 家 物 語 の 国 語 学 的 研 究 』 和 泉 署 員.

Prib馼roduTaira.『 平 家 物 語 』K.Fialaチ ェ コ 語 全 訳 注 釈,Mlad稠ronta.Praha.

新 間 一 美(2006)「 源 氏 物 語 柏 木 巻 に お け る 白 詩 受 容 に つ い て 」 白 居 易 研 究 年 報 第 七 号 玉 上 琢i濔(1964-1969)『 源 氏 物 語 評 釈 』 第 十 四 巻 。 角 川 書 店.

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KarelFIALA

角 田 文 衛(2000)『 平 家 後 抄(下)』 講 談 社 学 術 文 庫. 安 田 元 久(1967)『 平 家 の 群 像 』 塙 新 書 。

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