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社会科
先生 ご指導よろしくお願いいたします。 平成 27 年 10 月 14 日(水)
言
言葉 葉科 科実 実践 践事 事例 例 第 第 1 1 学 学年 年 テ テー ーマ マ学 学習 習「 「え えほ ほん んト トー ーク クで で も もっ っと と な なか かよ よし し」 」 指
指導 導者 者 扇 扇 裕 裕 人 人
1 目標
◎
登場人物の様子を想像するには,行動,表情,挿し 絵等に着目するとよいことを理解できる。(創造性)
○
登場人物になりきったり,インタビューしたりして 課題を解決しようとすることができる。 (協働性)
○
自分や友達が選んだ本のよさについて,自分の体験 と結び付けて考えることができる。 (省察性)
2 モデレーションにおける気付き
本単元「えほんトークでもっとなかよし」は,テーマ 学習「もっともーっと学校だいすき!」において学校や 友達をもっと好きになることを探究する過程で生まれ た「友達ともっと仲良くなるにはどうすればよいだろ う」という中心の問いを基に,芸術科と言葉科で問いを 解決するために教科横断的にそれぞれの教科の問いを 追究していくテーマ学習である。主に言葉科では,「ど こに目を付けて読めば,登場人物たちの仲良しの姿が見 つかるだろう」という問いを基に,登場人物の気持ちや 様子を地の文・会話文・挿絵に着目して読むことができ ることを目標とした。
モデレーションタイムでは,言葉科の学習において絵 本トークを行った際に,絵本トークでなりきって話すこ とで分かったことを書き記すモデルのワークシートを アンカー作品として提示した(資料1)。
【資料1 モデレーションの具体とアンカー作品】
このアンカー作品と共に言葉科の教科ルーブリック における創造性を具体化して設定した単元ルーブリッ クは以下の通りである(表1)。
【表1 モデレーションタイム前のルーブリック】
モデレーションタイムにおいて,議論の中心となった のは,本時学習の中心となる問いである「登場人物が仲 良くなったところを見つけるための着眼点」や「低学年 期におけるルーブリックの妥当性」ということであっ た。特に「単元ルーブリックが1年生にとってふさわし いものになっているか」については,教科ルーブリック の「思いや考えの深まり」のステージ3「目的や相手に 応じた言葉の論理に着目して」という方略において, 「相 手に応じて」という目標は,1年生の発達段階では到達 が難しいという意見があり,再検討する必要を感じた。
そこで,単元構成において絵本に親しむ段階から,文章 や挿絵に着目し,登場人物になりきって仲良しを見つけ ることで,言葉科としての目標を達成できるようにし,
人間科の問いの解決につなげられるように単元を再構 成した。また,本時の学習活動前段において,子供が絵 本の登場人物になりきることで登場人物に同化し,気持 ちや様子を可視化できるように単元計画を改善した。ま た,ルーブリックを以下のように改善した(表2)。
【表2 モデレーションタイム後のルーブリック】
3 授業の実際
本時の導入段階では,これまでの学習の姿や,生活の 様子をスライドで振り返り,友達ともっと仲良しになり たいという思いを膨らませることができるようにした。
そして,言葉の問いとして,絵本のどこに目を付けて読 むと仲良しが見つかりそうかを話し合った(資料2)。
【資料2 どこに目を付けて読むかの話し合い】
この問いを基に,同じ絵本を選んだ4人グループで,
登場人物の仲良しな姿を見つける絵本トークを行い,以 下のような子供の姿が見られた(資料3)。
【資料3 絵本トークでの発言】
T :絵本のどこに目をつけて読んだら,仲良しが見付かりそうですか。
C1:話しているところに目を付けて読むとよいと思います。
C2:挿絵を見ると,登場人物の様子や気持ちが分かると思います。
C3:地の文からは様子が分かると思うので,そこから想像したいです。
気持 ちや 様子 を読 み取 る ため に「 なり きる
」と は
〇登 場人 物が 行動 した 際の 気持 ちを 声・ 動き
・表 情の 工夫 で可 視化 でき てい る。
C4:どうしてテンを探しにいくときに,自分の家に,「テンを さがしにいきます」って書かなかったのですか。
C5:だって,自分を探しに来ると思わなかったから。
C6:どこでテンと仲良くなったんですか。
C7:一人で遊んでたときにテンさんと会えて,それが嬉しくて,
そのとき友達になったよ。
⾔葉に関する課題 思いや考えの深まり 創り出す 3 絵本を紹介する場⾯にお
いて,登場⼈物の⾏動や会 話を基に,登場⼈物の様⼦
を想像して,⾃分の体験と つなげながら話したり聞い たりすることができる。
⾃分が選んだ絵本の紹介と,
友達が選んだ絵本の紹介を聞 き⽐べることで,友達が絵本 を選んだ理由に気付くことが できる。
絵本が伝えたい内容につ いて,⼈間科との関連につ いて気付き,⾃分の体験と 結び付けて絵本を読むこと ができる。
2 絵本を紹介する場⾯にお いて,登場⼈物の⾏動や会 話を基に,様⼦を具体的に 想像して話したり聞いたり することができる。
⾃分が選んだ絵本の紹介を 通して,絵本の⾯⽩さに気付 くことができる。
絵本が伝えたい内容につ いて,⾃分の体験と結びつ けて絵本を読むことができ る。
⾔葉に関する課題 思いや考えの深まり 創り出す
2 物語を読んで感想をもつ ことを基に,叙述や挿し絵 から登場⼈物の様⼦を想像 することへの問いをもつこ とができる。
物語の登場⼈物になりきっ て話し合うことで,⾃分の思 いや考えを,叙述や挿し絵,
これまでの体験とつなげて演 じることができる。
絵本トークで話し合って 考えた問いの答えについて,
もっと仲よくなりたいとい う思いを込めて表現するこ とができる。
1 物語を読んで感想をもつ ことを通して,友達ともっ と仲よくなるために絵本を 読むことの問いをもつこと ができる。
物語の登場⼈物になりきっ て友達と話し合うことで,⾃
分の思いや考えを,叙述や挿 し絵とつなげて演じることが できる。
物語を読み,⾃分が感じ たことを⾔葉で説明したり,
物語の登場⼈物になりきっ て表現したりすることがで きる。
C6の発言のように,仲良しになった場面を問われた 際に,C7で場面の様子や挿絵の表情を読み取ること で,仲良しになった根拠を話す姿が見られた(資料4)。
【資料4 絵本トークで仲良しの姿を話す子供たち】
子供たちは,登場人物が仲良くなった場面を中心に,
登場人物に聞きたい質問をしていた。展開後段におい て,子供たちから以下のように発言する姿が見られた。
【資料5 絵本トーク後に行った全体交流での発言】
C9,C10の子供は,会話文に目を付けて読むことで,
登場人物の気持ちが分かったという発言があった。ま た,C11の発言からは,絵本トークで登場人物になりき る際に,挿絵に着目することで,登場人物の表情から気 持ちを読み取り,絵本トークを行うことで,気持ちを可 視化しようとした姿が見られた(資料5)。
終末段階では,G Go oo og gl le e J Ja am mb bo oa ar rd d を使って,絵本のどこ に着目すると仲良しが見つかったのか,最初と本時との 比較を基に自分の変容に気付くことができた(資料6)。
【資料6 絵本トークの振り返りにおける発言】
4 授業整理会で明らかになったこと
授業整理会で,まず中心となったことは,展開後段に おける資料4のC11 の発言である。授業者はC11 の発 言を,目指していた姿として提示した。整理会の中で,
その発言の価値について「どこに目を付けて読むと本時 の学習のめあてが達成できそうか見通しをもって活動 できている」や「表情に目を付けて話そうとしている」
といった発言があった。それに対して,「絵本のどこに 仲良くなるためのヒントがあるかを読み取るために,絵 本トークを行うことは有効であるが,課題意識,内容面,
方法面から改善が必要ではないか」「単元の終末段階で あれば,単元ルーブリックを見直し,改善の方向性をも つべきである。交流後に自分ならどうやって仲よくなれ るだろうと話し合うことで,テーマ学習につなげるとよ い」という意見があり,本単元における子供の文脈や単 元計画について,見直す議論となった。
次に議論となったのは,展開前段における資料4のA 児の表現である。授業者は絵本の登場人物になりきって 絵本トークをしていたこの表現を,目指していた姿とし て提示した。整理会の中で,その表現の価値について「登 場人物になりきって絵本トークを行うことは,登場人物 と同化して口調や表情,動きを再現することであり,な りきる子供も,見ている子供も気持ちを読み取ることに つながる」といった発言があった。一方で,登場人物に なりきって表現することと,人間科の問いである「もっ と仲良くなるためにはどうすればよいか」という問いの 解決を同じ時間に行うことについて議論になった。それ は,「登場人物になりきること(内化)と,絵本から友 達と仲良くなるためのヒントを見つけて,自分たちの生 活にどのように生かすのか話し合うこと(外化)は,発 達段階から適切か」という意見があったからである。そ れに対して,「テーマ学習で,友達ともっと仲良くなる ために絵本を読むのであれば,登場人物の行動や気持ち を客観的に捉えることが必要である。そのためには,な りきる時間となりきった姿から仲良しを見つける時間 を設定すべきである」といった意見があり,発揮させた い資質・能力について,見直す議論となった。
5 カリキュラムの変更,更新
本実践を通して,資料7のように変更,更新すべきで あると考える(資料7)。
【資料7 本実践を通したカリキュラム改善の具体】
その理由は,以下の通りである。
○ 絵本の登場人物の表情や口調に着目することのよ さを読みの視点として獲得することで,言葉科の資質・
能力である創造性を発揮することにつながるため
○ テーマ学習として,年間を通して位置付ける単元に おいて,友達との交流から創造性が発揮されるため
ネズミさんは,どこでテンと仲良くなったんですか。
テンさんと会えて嬉しかったところだよ。
最初は,どこに仲良しがあるか分からなかったけど,
友達との絵本トークで,仲良しを見つけました。
⽬標や内容 創造性を発揮する場⾯において,
登場⼈物の様⼦を具体的に想像する ために,登場⼈物になりきって,
表情や⼝調,様⼦に着⽬すること 単元の配列 友達との関わりが増え,⼈間科を 中⼼としたテーマ学習から学びが 発展していくことが期待できるため 11⽉・12⽉に設定
絵本を個⼈で読む活動から,活動構成 ペアの友達と⼀緒に読む活動に広げ,
絵本の仲よしがどこにあるか
⾒付ける活動構成
変更なし
教科ルーブリックの更新 低学年期における思いや考えの深 まりのステージ2の段階では,⽬的 に応じて⾔語活動を⾏うことが⽬標 を達成するために有効である。
配列の変更はしない 他教科でも協働的な学びが増える 時期であり,本単元の学習は協働的 な学びにより創造性が発揮される ことが期待できる。
読む量と話す量を確保すること 友達と交流する時間を⼗分確保し,
絵本トークを繰り返すことで,話す 内容の質も⾼まりが⾒られた。単元 の時間を増やすことが必要である。
T :絵本のどのようなところに目を付けたら,仲良しになる方法が 分かりましたか。
C8:会話文です。会話文に目を付けて読むと,しゃべっていること から,登場人物が考えていることや気持ちが分かりました。
C9:そこから気持ちが分かります。
C10:また一緒に遊びたいという気持ちが分かります。
C11:表情に目を付けて絵本トークをしました。表情に目を付けると,
どのような気持ちなのかが分かります。
T :どのような表情だったのかな。
C12:最初は怒っている表情だったけど,最後のページでは,「ごめ んね」と謝っていて,感謝しているような表情でした。
A児
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