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イチジク近縁種イヌビワのゲノム配列を解読しました

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Academic year: 2024

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イチジク近縁種イヌビワのゲノム配列を解読しました

〜病害に強いイチジクへの品種改良に期待〜

1月24日に The Plant Journal 誌にてオンライン公開

令和2年2月7日

公益財団法人 かずさDNA研究所 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所

<報道に関すること>

かずさDNA研究所 広報・研究推進グループ 農研機構果樹茶業研究部門 果樹連携調整役 国立遺伝学研究所 リサーチ・アドミニストレーター室 広報チーム

<研究に関すること>

かずさDNA研究所 植物ゲノム・遺伝学研究室

主任研究員 白澤 健太(しらさわ けんた)

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) 果樹茶業研究部門 領域長 薬師寺 博(やくしじ ひろし)

同時発表:農政クラブ、農林記者会、農業技術クラブ、文部科学省科学記者会、千葉県政記者会、

千葉民間放送テレビ記者クラブ、木更津記者クラブ、筑波研究学園都市記者会、三島記者クラブ

 かずさDNA研究所、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)果樹茶業研究部門、国 立遺伝学研究所、広島県立総合技術研究所、福岡県農林業総合試験場は共同で、イチジク (Ficus carica)の近縁野生種であるイヌビワ(F. erecta)のゲノムを解読しました。

 イヌビワは、イチジクの生産に大きな被害を及ぼす「株枯(かぶがれ)病」に強い抵抗性(真 性抵抗性)をもつことから、この抵抗性遺伝子のイチジク栽培種への導入が試みられていま す。しかし、耐病性の判定に時間と労力がかかるので、ゲノム情報を利用した育種法が求め られていました。

 近年実用化された PacBio ロングリード技術などの新しい技術を用いて、比較的長い DNA 配 列を連続して読むことにより、効率よくゲノムを解読しました。

 イチジクとの交雑子孫の比較解析により、株枯病に強い抵抗性を示す候補遺伝子を同定し、

遺伝子型の判定に用いることができる DNA マーカーを開発しました。

 研究成果は、国際科学雑誌 The Plant Journal に 1 月24日にオンライン公開されました。

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2 1. 背景

イチジク(Ficus carica)の近縁野生種で、日本では関西より西側の地域に自生しているイ ヌビワ (F. erecta)は、イチジクの生産に大きな被害を及ぼす「株枯(かぶかれ)病」に対す る強い抵抗性を持つことが知られています。株枯病は、土壌微生物が原因で起こる病気で、苗 木の移植などにより感染が拡大し、発病すると成木でも短期間で枯死してしまうことから、イ チジク栽培に大きな被害をもたらしています。そこで、イヌビワとイチジクとを交雑すること によってイヌビワのもつ株枯病抵抗性をイチジクに導入する試みが進められています。しか しながら、イチジクとイヌビワとの交雑が困難な上に、たとえ交雑できたとしても耐病性の判 定に時間と労力がかかるため、幼苗での早期判別が重要です。さらに、イチジクは雌雄異株な ので、品種育成では食用に適した雌株と交配に使用する雄株を早期に選抜する必要がありま す。

このため、イチジク株枯病に抵抗性をもつ品種開発の効率化を目指して、イヌビワのゲノム

*1解読を行いました。なお、イチジクのゲノムは、2017 年にかずさ DNA 研究所、福岡県農林業 総合試験場、九州大学の共同研究により解読が完了しています。

この研究成果により、イチジクの株枯病真性抵抗性遺伝子*2を保持し、かつ、ゲノム背景が イチジクに近い雌株系統を幼苗段階で早期に選抜できるようになり、品種改良の効率化が期 待されています。

本研究でかずさDNA研究所は、研究立案、ゲノム配列の解読と解析、および研究の取りま とめを、農研機構はイヌビワとイチジクの後代の育苗を、国立遺伝学研究所(先進ゲノム支援)

は PacBio Sequel を用いてゲノム解読における基盤情報を提供しました。

2. 研究成果の概要と意義

① 連続した 10,000 塩基以上の長い DNA 配列を一分子レベルで解析できる PacBio ロングリ ード技術を使用してイヌビワのゲノム配列データを収集し、3 億 3160 万塩基対のゲノム 配列を決定しました。

② イヌビワのゲノム配列中に、51,806 の遺伝子を見出しました。

③ イチジクとイヌビワの戻し交雑第1世代を用いてゲノム上の同じ領域の塩基配列の違い を容易に比較することができる ddRAD-Seq 法により検出した DNA 多型*3を使用して遺伝 地図上にゲノム配列を位置付け、株枯病真性抵抗性の候補遺伝子を同定し、DNA マーカ ー*4を開発しました。

④ 塩基配列の違いをゲノム全体にわたって調べることができる全ゲノムジェノタイピング 分析により、イヌビワの持つ株枯病抵抗性を保持し、かつ、ゲノム背景がイチジクに近 づいた系統を幼苗段階で選抜できるようになりました。

3. 将来の波及効果

① ゲノム情報をもとにした育種が可能になり、株枯病抵抗性をもつイチジク新品種の育成 が加速されます。

② イヌビワは株枯病抵抗性の他にも様々な病害虫に対する抵抗性を持つことが知られてお り、本ゲノム情報が基盤となってイチジク育種に役立つ遺伝子が今後も見つかることが 期待できます。

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この研究は、文部科学省科学研究費助成事業(科研費)の基盤研究(B)(課題番号 16H04878)

および先進ゲノム支援(課題番号 16H06279)の助成によって行われました。

論文タイトル:The Ficus erecta genome towards Ceratocystis canker resistance breeding in common fig (F. carica).

著者:Shirasawa K, Yakushiji H, Nishimura R, Morita T, Jikumaru S, Ikegami H, Toyoda A, Hirakawa H and Isobe S.

掲載誌:The Plant Journal DOI:10.1111/tpj.14703

用語解説

*1 ゲノム:生物をその生物たらしめるのに必須な最小限の染色体のひとまとまり、または DNA 全 体のことをいう。

*2 真性抵抗性遺伝子:病害に対する抵抗性をもつ遺伝子は、病気に侵されない真性抵抗性と、病 害の程度が状況によって異なる罹病性に分けられる。

*3 DNA 多型:ゲノム DNA 中の塩基配列にみられる配列の差異(変異)。

*4 DNA マーカー:遺伝子の目印となる DNA 配列。導入したい形質に関わる遺伝子を DNA マーカー の有無で確認して個体を選抜することができる。

参考資料

写真:イヌビワ(写真提供:農研機構)

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