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キャピタル・ゲイン及びロス概念の再検討

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員冊

キャピタル ・ゲイン及びロス概念の再検討

一固定資産売却損益を中心としてf

ネ目

       一 序

       ︑一一 キ山一ジ︑タル・ゲイン及びロス概念の史的考察

       Hキ山︐ビタル・ゲイン及びロス概念の生成

       ⇔一九三〇年前後の米国におけるキ︐︐ビタル・ゲイン及びロスの取扱い

      一二 固定資産売却損益のキさビタル・ゲイン及びロス性

       の固定資産売却損益の意義と特殊性

       O固定資産売却損益のキ山︐ヒタル・ゲイン及びロス性

      四 結

rキ瀞︐どタル・ゲイン及び・ス概念の再検討1

(2)

1論

文−

 キャピタル・ゲイン︵8且寅一鵯写ω口資本利得︶及びキャピタル・ロス︵8営3=︒ω田︒ωU資本損失︶は︑それら

を生ぜしめる原因の多様性の故に︑複雑な会計問題を提起している︒一般に︑キャピタル・ゲイン及び︒スとは︑企       パエロ

業が所有する財貨のうち︑特に﹁資本的資産 ︵︑︑8且富一器器富.︑︶の売却によって生じた利得及び損失である﹂

と定義されているが・今日︑その概念がきわめて盃肇ある為に︑﹁大災等により︑固定資産一または睾の儀活

動に必須の手段たる資産の上星晃嬉ご対しても︑キャ夏空・スなる名称橿用糞ている.今・の隻

会計では︑前者は﹁固定資産売却損益﹂と称され︑後者は︑通常﹁臨時巨額の損失﹂といわれている︒

 ところで︑今日の﹁固定資産売却損益﹂が︑特にキャピタル・ゲイン及びロスと呼称されるに至ったのは︑如何な

る理由に基づくものであろうか.そもそもキャピタル・ゲイン及び呈なる用語の起繧︑遠くイギリスの複会鷲

座求められる・複会計制度では︑重に認識されたキャ夏ル・アセ.ッ概念をそのまま用い︑資本署産の処分

に伴う利得及び堤について︑キャピタル・ゲーン及び呈なる名菓与えられていた.およそ︑複会計制度で認識

されたキャピタル・アセッツと︑今日の固定資産とは︑その背景となっている会計思想において︑それぞれ全く異る

観点から導き出された概念である︒にもかかわらず︑近代企業会計上︑ ﹁固定資産売却損益﹂についてキャ■ヒタル.

ゲイン及びロスなる概念が適用されるに至った所以は︑単に︑複会計制度での資本的資産と︑今日の固定資産とが同

あ資産内容を有為という点に着目する以外にない.即ち︑今呂固霧産が当時の資本的資産霜当する概念で       ヤ  ヤ  やあると乙ろから︑今日︑ ﹁固定資産売却損益﹂について︑キャピタル・ゲイン及び︒スなる名称が︑そのまま自動的

(3)

に付与されたのである︒その結果︑複会計制度とは会計観の異なる現在︑その取扱いに矛盾が生じてきている︒

 今日︑キャピタル・ゲイン及びロスと称されている﹁固定資産売却損益﹂の会計処理は︑従来から︑その内容の如

何を問わず︑これをすべて一括して﹁利益剰余金項目﹂とし︑いわゆる損益会計領域で取扱われてきている︒しかし

ながら︑かかる売却差額の生ずる原因を分析してみると︑その中には︑きわめて多様性を有する諸要因が混在してい

るように見受けられる︒かかる諸要因の中でも︑殊に﹁貨幣価値の変動﹂は︑最近のクリーピング・インフレーシ︒

ン下においては︑特に重要な要因の一つになってきている︒従来から︑著しい貨幣価値の変動に基づく固定資産の評

価損益についてはその評価替がなされた場合︑ ﹁本質的にはその評価替を通じて︑将来の適正な損益計算ないし企業

       パづロ経営の基礎となる正しい資本を決定するための資本修正を目的とするもの﹂であるとして︑資本剰余金項目として取

扱われてきている︒かように︑ ﹁固定資産売却損益﹂の会計処理は︑その性質の特殊性の故に︑困難な問題を提起し

ているのである︒例えば︑十年前に百万円で取得した土地を︑現在五百万円で売却した場合を考えてみると︑売却直

前に当該固定資産の評価替をしたのと︑しないのとでは︑算出される処分可能利益額に大きな差異が生ずる︒即ち︑

評価替がなされた後に売却された場合には︑その評価差額−例えば三百万円一−−は︑資本剰余金として取扱われ︑

固定資産売却益︵利益剰余金︶は︑新簿価︵四百万円︶と売価との差額として百万円だけ計上される︒これに対し

て︑評価替をしないままで売却した場合には︑従来の会計処理に従う限り︑貨幣価値の変動に基づく評価差益分の

三百万円もまた︑固定資産売却益︵四百万円︶に包含せしめられ︑利益剰余金として取扱われる︒しかも︑今日の企      ︵5︶業会計では︑ごく限られた場合を除いては︑固定資産の評価替を行わないことを原則としており︑かかる評価差額は

﹁固定資産売却損益﹂に包含せしめられて会計処理がなされているのが常である︒この様な従来の会計処理は︑明ら

 !キギピタル・ゲイン及びロス概念の再検討一      三

(4)

 1論   文一      四

かに﹁資本剰余金と利益剰余金との混同﹂を意味する︒周知のように︑我が国の企業会計原則は一般原則の﹁三﹂に

おいて︑ ﹁資本取引と損益取引とを明瞭に区分し︑特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない﹂旨を要請

しているが︑従来の会計処理が︑この要請にマッチしていないのは言うまでもない︒その上︑前例の評価差額三ピ日万

円は︑経営者の恣意性により︑ある場合には資本剰余金とし︑また他の場合には利益剰余金に含めることによって︑

処分可能利益を操作する為の政策的手段として濫用される可能性を多分に含んでいる︒       ハもロ しかして︑ ﹁固定資産売却損益﹂に関する従来の処理法は︑適正な﹁利益の確定という企業会計の目的﹂々︑破壊す

るものである︒我々はここで︑ ﹁固定資産売却損益﹂の会計処理が混迷していると考えられる原因を究明しなければ

ならない︒それは︑取りも直さずキャピタル・ゲイン及びロス概念それ自体の不明確さに求められる︒従って︑適正

利益の確定という企業会計の目的を破壊するようないわゆる阻害事項を回避し︑適正な損益計算を可能ならしめる為

には︑キャピタル・ゲイン及びロス概念の内容を吟味して︑現代企業会計におけるその概念を明確に確立させる必要

があろう︒

 本稿では︑ ﹁固定資産売却損益﹂の会計処理を中心として︑キャピタル・ゲイン及びロス概念の再検討を試みたい

と思う︒

︵1︶ ρ︾竃2窪窪α勾■界ζ器貫H簿Rヨ巴訂3>80ロ馨ぎ単一〇留︸マ畠9

︵2︶ ﹁企業会計原則﹂注解十︑一一︒

︵3︶ ﹁税法と企業会計原則との調整に関する意見書﹂の総論二1二によれば︑資本的資産とは︑土地︑減価償却の対象となッ

  ている有形固定資産︑投資有価証券︑ならびに︑特許権︑著作権などの無形固定資産に対する総称であるとさわているが︑

(5)

  これらは︑今日の企業会計では︑固定資産として貸借対照表に表示される項目である︒なお参考二げいでに米国所得税法の見解

  を示せば︑そこでは資本的資産は︑棚卸資産︑販売の対象となる財産︑減価償却可能な営業財産︑債権お︑⁝び営業に使用ふ︑

  れている不動産以外の財産として規定されている ︵ohρ︾寓︒曳R雪α刃界家母β昼ぎ一∋マ命ρ彗α刃冒・ゆ︒琶

  き匹零↓■田臭︒ざゆ山色︒>08二馨ぎoq−一〇おマおト︒・︶.︑

︵4︶ 渡辺進編著﹁基準会計学辞典﹂昭和四〇年︑一四八頁︑

︵5︶ 例えば︑企業の合併︑解散︑会社更正︑インフン時の資産再評価などの特殊な場合︒

︵6︶民■ピあ翼Fo畳目︒㊤一呂きα一︒ωω︒ωぎ>§5け言逼ゴ︒>§⁝言暖国︒<一塁<︒=♪一︒ω︒も﹂卜︒鱒

ニ キャピタル・ゲイン及びロス概念の史的考察

 O︑キャピタル・ゲイン及びロスとは︑元来︑ ﹁資本的資産の処分から生ずるものであり︑その処分価格が︑それ       パエロらの適切な原価よりも高いか︑低いか﹂によって把握されるものである︒ここに資本的資産とは︑ ﹁資本金︵長期の      パ ロ投下資金︶によって調達すべき資産という意味であり︑イギリスの複会計制度に起源した用語﹂なのである︒複会計

制度︵α2三〇88旨亀ωぢヨ︶が︑考案されるようになった事情は︑十九世紀中葉におけるイギリス鉄道企業の放

漫な経営政策にあるといわれている︒当時︑英国では株式会社による鉄道敷設が盛んに起り︑無謀な鉄道会社の濫立

と競争とが︑鉄道恐慌から一般恐慌まで招来するようになった︒複会計制度は︑かかる事情に対応して︑鉄道企業と

その投資家保護の必要から一八六八年の鉄道統制法︵↓﹃閑畠旦暮δ⇒9勾毘毛塁︾9︶に基づいて制定された会

     ハヨレ計制度である︒

  ーキ距︑ビ々ル・ブイン及びロス概念の再検討−       五

(6)

  i論    文1      六

 複会計制度にあっては︑一切の収入・支出は収益的収入・支出と資本的収入・支出とに区分され︑前者は実質的に

損益計算書を意味するところの収益勘定︵おく目垢貸082葺︶において対比計算され︑後者は資本勘定︵S且雷同㊤?

09旨︶に計上表示される︒ここに資本的収入・支出とは︑株式資本及び社債等の長期借入金による収入・並びに営

業の基礎となる固定設備等に対する支出をいい︑その収支差額は運転資本︵類︒蒔ぎ颯S豆5一︶を意味するものとし

て︑資本勘定とは別個の一般貸借対照表に計上されるのである︒即ち︑資本的収入︵8豆9一器8一讐︶たる﹁資本勘

定上の貨幣受領額︵即ち︑株式の募集または社債の発行等による︶は︑その会社の設備投資の為にのみ使用が認めら

     ロ       うこれており﹂︑資本的支出︵8豆$一①巻雲&密話︶は︑﹁企業の収益力の根源に対する支出として︑対企業収益の元本﹂

の意味において把握されている︒ここでは資本勘定の借方項目は︑単なる固定資産としてではなく︑いわゆる﹁固定

 ハぢロ資本﹂として認識されているといえる︒かように︑この資本勘定が用いられていることからも明らかなように︑複会

計制度では︑固定設備は資本と直接的に結び付くものと仮定されており︑固定設備の永久的な維持︑保全に重大な関

心が払われている︒

 次にハットフィールドの例示に従って複会計的貸借対照表︵3呂ざ霧89一けぎ﹃コ8ω箒9︶の簡単なフォーム

   つじを示そう︒即ち︑資本勘定の貸方には︑固定設備購入資金としての長期資金の流入を資本的収入として示し︑借方に

は︑固定設備購入の為の支出を資本的支出として示す︒上記の資本勘定残高恥伊OOOは運転資本として︑いわば一般

会計の資金源となり︑一般貸借対照表の借方に記載される︑このように︑複会計制度の下にあっては︑貸借対照表は

二分キ︑㌧れ︑資本勘定と一般貸借対照表とに分けられる︒そして資本勘定では︑資本的収支が対比計算され︑固定資本

      ヤ   ヤ   ヤ   やの調達とその運用を示すのに対して︑一般貸借対照表では︑運転資本の活用状況を表示するのである︒複会計制度で

(7)

      資 本 勘 定

睡鯨価f・95』…1株式資本金∫…,…

残  高 5,0001社  債一一!四・趣O      f200,0001   f200,000

    一般貸借対照表   負 債     資 産

資本勘定残高f5,000 原材料等f4,000

支払手形 10,000現 

金 6,000

損  益 一 3,塑 受取勘定一一一8⑲塗O

    f18,000・    £}麹魍

         ロ用していなかった﹂ことからも明白であろう︒

の﹁取替︑更新︑修繕維持に要する支出は︑収益的支出として収益勘定に計上﹂されるから︑資本勘定の借方には︑

最初の資本的資産の購入額だけが資本的支出として計上維持されることとなる︒かように︑複会計制度の下では︑資

本的資産は︑資本勘定を通じて︑投下資本と直接的な関係を有する﹁実物資本﹂たる概念として把握されている︒そ

の結果︑投下資本は︑実物資本たるキャピタル・アセッツの維持によって︑具体的に維持されるものと考えられてい

た︒ かくの如く︑資本的資産が﹁実物資本﹂たる性格を具現した概念として理解されていたことは︑複会計制度の下で

  〜キャ︒ヒタル・ゲイン及びロス概念の再検討−1      七 は︑資本勘定借方記入の固定設備に対して︑そこにキャピタル・アセッツという名称が与えられていた︒従って︑資本的資産は︑資本的支出の結果として認識される概念といえよう︒ところで︑複会計制度での資本的支出と収益的支出とは︑損益計算上︑本質的にその性格を異にするものと仮定されている︒即ち︑後者は︑それ自身が費用として損益計算に算入され︑収益的収入に賦課されるのに対して︑前者は︑

﹁それ自体は決して損益計算に参加せしめられることなく︑永久にそ       ハ ロの当初の金額が資本勘定に累積︑維持される﹂のである︒従って︑資

本的資産は︑固定的・永久的性質を有するものとして理解される︒こ

のことはまた︑複会計制度では︑固定設備について﹁減価償却法を採

即ち︑複会計制度の下では︑車両︑レール︑枕木︑その他の固定設備       ︵10︶

(8)

  1論    文−       八

の資本襯を把握する上に︑重要な意義を有するものである︒ここで︑複会計制度における資本取引を考えてみると︑

それは資本勘定にかかわらしめて把握され︑広く一般に資本的収入︑支出に関する取引を指すのである︒けだし︑資

本勘定の貸方項目についての取引のみならず︑その借方項目たる資本的資産に関する取引もまた︑資本取引に属する

ものとして考えられている︒しかもこの場合︑資本勘定には︑資本的資産の購入取引だけでなく︑処分に関する取引       ︵11︶も記入されるところがら︑ ﹁固定設備の購入︑処分を伴う取引も広く資本取引として﹂理解されている︒これは︑取

りも直さず︑資本勘定の内部での変化は︑一般貸借対照表上の損益︵質︒律弩α一〇霧︶に影響することは決してない   パせロという原則の存在を示唆するものである︒かように︑複会計制度の下での資本取引は︑今日の企業会計における資本

取引よりもはるかに広い意味を有する概念として理解される︒我々は︑ここに︑複会計制度独自の論理を支えている

       ヤ  ヤ  ヤ  ヤ一つの特徴として︑資本的資産と資本取引との因果関係を認知する︒ここに︑複会計制度では︑資本的資産にかかわ

る利得︑損失が資本そのものの増減を直接的にもたらすという関係︑即ち︽資本的資産の処分に伴うゲイン︑ロス←

資本取引←資本そのものの変化︾という論理が成立するのである︒従って︑複会計制度でのキャピタル・ゲイン及び

ロスの会計処理は︑いわゆる資本会計の領域において行われ︑以上の論理構成によって︑何ら矛盾なく説明されるの

である︑しかしながら︑このことは︑複会計制度で認識されたキャピタル・ゲイン及びロスが︑同質的な内容を有す

る概念であることを意味するものでは決してない︒後述する如く︑キャピタル・ゲイン及びロスの内容には︑性質の

全く異なる諸要因が混合して包含せしめられているのである︒が︑複会計制度にあっては︑それ独自の論理構成によ

って︑キャピタル・ゲイン及び・ス概念に内包されている諸要因の異質的性格は︑顕現されることなく︑単に潜在的

な存在でしがなかったものと理解される︒

(9)

      ︑

かかる複会計製での論理構成ないしは︑そこでの資本に対する考え方は︑今世紀初頭の英国の会計理論に大毒

影響与えていた・スース︵囚トωヨ葺は︑一九三九年のアカウンティング.レヴ︑誌に掲馨れた論文の中

で・7ギリスの会計学の文献には︑固定資産を長期繰延費用または用役提供活動によ.て費消されるものと巖し

ているような会計理論は・ほとんど暑ρつ鶴と述べている.即ち︑英国の多くの論意︑﹁固定資産は︑慣謂       ヤヤヤヤヤ  めどに・使用の為に覆されるもので︑再販売の為揉有されるものではないと.しろの変的性質の資産﹂︵傍点︐︑引用

者︶として論じている︒このことは︑固定資産と投下資本とが直結していると考える複会計制度的な会計思考が︑そ

の後も尾を引いてきていることを意味する.しかも︑そこでは﹁複会計的繕対照嚢︑もは趨用されていないに       ハめロ

もかかわらず・塁象誌響査の明簸区盆︑未だに固執されている﹂︵傍占⁝よ用者︶のである.前記の如

く・複会計制度暑いても︑固定資歪逆髪本とを明穫区分する.しとは︑その会計理論を支える為の;の前提

事項とし薯えられていた.かように︑英国では︑複会計製の下に確︶一されていた資本観が︑今世紀になってから

もな葦棲れているもの見えられる.従って︑イギリスの会計禦らすれば︑黒計算書にキャーヒタルイン

及び︒スを含め塗とは認められず︑もしそれらを損益計算書旨めるが如き会計処罪馨れた場合には︑利益の

過嚢示・ま荏県奈と穰されるのであ楚以上の点奮推察するに︑今世紀初頭のキャピタル・ゲイン及び

︒スの麗いに対するイギリス人の塁を支えている根本思想は︑実は+九世紀中研渠のイギリス鉄道企業に採用され

ていた複会計製のそ墾あったように思われる.この複会計制度は︑メあ撫するいわゆるイギリス人の思考

様虎︵膏馨駐︒窪︒尋ざ言置︒︶の颪流をなしているもの薯えられる.

英国の会計霧では︑会社企業の場合︑キャピタルルインは︑コ般に資本積立金勘定〃︵.︑∩−︒旦−︒勇︒.︒.<︒       し  −ーキ.ヒ㌣ル・ゲ≧ン及びロス概念の再検討i      プ

(10)

  1論    交−       一〇      ︵B︶︾89旨︑︑︶と呼ばれる勘定に記入されるが︑実際には︑この資本積立金勘定は一種の資本勘定﹂である︒イギリス      ︵帰19︶では︑この資本積立金は配当金として分配されることが許容されておらず︑ ﹁株式資本金と同様の法律上の特性﹂が

与えられていた︒ただし︑キャピタル・ロスを吸収する為に︑この積立金が使用されることは︑是認されていたので      ︵鮒︶ある︒即ち︑資本積立金勘定の貸方には︑ ﹁記録が可能な固定資産の増加分をすべて記入﹂し︑借方には︑キャビタ      ︵21︶ル.ロスを記入することによって︑キャピタル・ロスは︑それまでの固定資産の増加分と相殺される︒今世紀初頭に

おける英国会計実務のこのような会計処理は︑将来のキャピタル・・スに備えて︑キャピタル・ゲインを積立ててお      ︵盈︶くという︑いわゆる﹁保守主義的効果﹂を狙ったものである︒

 かかる複会計制度において独特の意味を持ったキャピタル・ゲイン及びロスなる概念は︑会計観の異なる米国にそ

のまま移植されたのである︒

 口︑周知のように︑初期の﹁アメリカの会計実務や会計理論は︑元をただせばイギリス本国からイギリス人自身の         ︵鴻︶手によりもち込まれた﹂ものである︒にもかかわらず︑近年︑米国において︑キャピタル・ゲイン及びロスの取扱いが

英国と全く異なった方向を示していることは︑興味深い︒一九三〇年以前には︑アメリカの多くの会計士達は︑キャ

ピタル・ゲインを資本剰余金として処理することを是認していた︒この点について︑モントゴメリー ︵即声言︒早

藤︒ヨ︒曙︶は︑ 一九二一年の著書で︑キャピタル・ゲインが配当金として分配される処理法は︑株主達に誤った印         ︵塑︶象を与えるものであると批判し︑キャピタル・ゲインが︑もし︑他の資本修正から生ずるロスを填補する為の危険準

      ︵%︶備金︵8旨ぎ鵯旨希ωR奉︶として理解されるならば︑それは稼得能力に関して誤った印象を創造するものではない

という趣旨の意見を表明している︒かように︑米国では︑一九三e年頃までは︑イギリスにおける資本積立金勘定に

(11)

      ハおロ

ほぼ相当す書本剰金勘定にキャ妄ル・ゲイン及び呈をチャージ︑ディスチ︑︑−ジするのが慣習となっていた

もの意われる・しかもおよう麩理法は︑単に︑英国の伝統的会計実蓼そのまま受け継いでいたように考えら

れが薯あるが曇際には︑それだけでなく︑今世紀初頭のインフレ←.ン時揺︑財務上かなりの効果をもたら

したもののようである.すなわち︑﹁一九二︵一︶年代は︑物価水準上昇の時期であり︑より保守的な経薯や会計誌

は・蟹書して分配されない剰余金の名称でキャ夏空ゲイン雰類す塗あ嵩さ鵡確に認識していた﹂

のである・これを別の観点から豪すると︑米国では︑﹁一空七年頃奮五二︵犀頃へかけての一二一︑四年間

は・繕対照表監査撃幾7あり︑貸借対照表蔑主義の風禦みられていた.この時期には︑信用目的の為の

財務諸表が重視されてい燕巣︑何よりも支払能力の奈に強い関心がはらわれていおである.経営者達は︑かか

る対外蟹導雇して・財務上皇の企業髪払能力を吉高く表示する為に︑麦︑鏡金の企業外流出意力

乾す歪とによって流動柴︵銀行家比率︶嵩上せしめると共に︑他方では自己資本を契弍︑せをとによっ

て資本構成を良好にする必要があった︒かかる経営者の意図から︑キャピタル・ゲイン及びロスは資本剰余金項目と       ぬロ

して取扱われていたものと考えられる.ところが︑株式会社の発達従って︑徐々に株式の分散化が進むにつ

れ・経済的には﹄九二九年の鼻恐髪契機もて︑﹁雇投蓑の保護﹂という篶がしだい裏面些喜

た︒こうした当時の・社会的︑経済的事情を勘案して︑米国では︑会計の目的を切替えて︑いわゆる﹁投資家の為の

会計﹂蜜点が繋れるよう無って吏た.かかる事情は︑米国会計議会の取引所協力特別委員会︵穿︒g︒︒一〜一

9§幕︒︒客︒§含︒二穿︒︒§属図星舅︒︷け冨ぎ︒爵三雲幕︒;︒︒︒ロp叶・︐口けω︶が設釁れる

に至った遜隻察すれば明らかとなろう.特別委員会が設置される讐とな.たのは︑一九三〇年九月..ラドで      一一  ーキ﹂ビタル・ゲイン及びロス概念の再検討1

(12)

  一論    文一       二一      ︵3D︶開催された米国会計士協会の年次総会におけるホクセィ︵い家︒=o話2︶の講演であるといわれている︒ この講演

が︑大変な反響を呼び︑後に︑ ﹁投資家の為の会計﹂ ︵︾08⊆昌ぎ職8﹃ぼく窃ε︻ω︶と題して︑ジャーナル・オブ・

アカウンタンシィー︵↓ぎ竹琴轟一9︾82口けき2︶に掲載されたが︑ホクセィはここで会計の目的を切替えて投       ︹組︶資家の利益を保護すべきことを強調した︒ このように﹁投資家の為の会計﹂が重視されるようになった結果︑企業

の発表する財務諸表は︑従来の支払能力の表示よりも︑むしろ配当可能利益の表示に力点が置かれるようになってき

た︒.しのことは︑貸借対照表から損益計算書への重一点移行の傾向を示すものである︒即ち︑一般投資家達は︑企業の

経営成績を判断する場合︑何よりもまず︑配当可能利益の良否に多大の関心を払うものである︒かかる投資家の思惑

 口      ︵鍵︶に力︑えて︑法廷の考え方が︑ ﹁収益には︑いかなる源泉から生じたゲインであろうと︑すべて含まれる﹂とする観点

を採るに至ったことから︑経営者達は︑こうした当時の事情に対応して︑キャピタル・ゲインをも配当可能利益に包

含せしめるような会計処理を好むようになったのである︒ここに︑今日の如く﹁固定資産売却損益﹂ーキあビタ

ル・ゲイン及びロスーが損益会計領域の問題として取扱われるに至った土壌が︑はぐくまれつつあった︒このこと

は︑AIAによって採用された利益剰余金の定義に如実に示されている︒すなわち︑ ﹁一九三︵︺年に︑米国会計士協

会の特別委員会によって採用された利益剰余金の定義では︑実現したキャピタル・ゲインを利益剰余金として分類し︵詔︶  ︑       ︵銅︶た﹂︒しカも︑キャピタル・ロスについては︑当然︑利益剰余金に賦課可能なものと考えられていたのである︒

 以上︑一九三〇年前後の米国におけるキャピタル・ゲイン及びロスの会計処理を概観したのであるが︑かかるゲイ

ン及びロスは︑最初は資本剰余金︑次いで利益剰余金という取扱いが一般的にとられるなど︑その時の社会的︑経

済的事情と対応して︑主として経営者の政策的意図によって︑その取扱いが左右されてきたように思われる︒かよう

(13)

に︑キャピタル・ゲイン及びロスが︑その時の事情に応じて資本剰余金または利益剰余金として取扱われ得るという

ことは︑かかるゲイン及びロスそれ自身に資本剰余金的性質を有する要因と利益剰余金的性質を有する要因とが︑共

に包含されていることを示唆するものである︒即ち︑かかる異質的諸要因のうちその一方だけを強調することによっ

て︑キャピタル・ゲイン及び・スは︑ある場合には資本剰余金項目とされ︑他の場合には利益剰余金項目とされて取

扱われてきたのである︒

 ひるがえって︑我が国の事情を考察すると︑我が国の会計実務は︑戦後特に米国の影響を強く受けてきた︒.しのこ

とは︑我が国の﹁企業会計原則﹂が︑S・H・M・会計原則に準拠して構成され︑A・A.A・会計原則の長所を取

り入れて編成されたという点を考え合せれば︑明白であろう︒従って︑キャピタル・ゲイン及びロスと呼称される

﹁固定資産売却損益﹂が︑現在一括していわゆる損益会計領域で会計処理がなされるに至った所以もまた︑その基礎

は一九三⊃年以後のアメリカの会計実務に求められる︒思うに︑キャピタル・ゲイン及びロスの取扱いに関する問題

も︑予め損益会計での問題として︑我が国の会計界に移入畿︑﹂れたと見ることができる︒

    国・r       ↓■U山︒匠︒ざω器山n>noo¢舞言oq一〇お℃・おN・

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1 765432 1

キ)))))))

匡︒閑.=帥窪田〇一島山σ置;℃・S 上村久雄.稿︑前掲稿︑八五五頁︒ 上村久雄稿﹁複会計制度﹂ ︵神戸大学会計学研究室編﹁新会計学辞典﹂昭和四二年︑ =県閑︐=緯臣色身>82﹄pけ言触一〇国凶Poo唖 高橋芳藏著﹁現代会計学原理﹂昭和﹂一一一一九年︑レ︺九頁参照︒ 沼田嘉穂著﹁固定資産会計−﹂昭和ゴ︑﹇六年︑二九頁︒   ゆO鴫〇四コα幻︒

・一ヒタル・ゲイン及一︑︶ロス概念の再検討1 八︑五.五百︹︶︑

ゴ︑一一

(14)

1論    文I−

︵8︶ 上村久雄稿﹁複会計制度﹂ ︵山下勝治編﹁−会計学総論﹂昭和三五年︑五六頁︶︒

︵9︶ 黒沢清著﹁新版近代会計学﹂昭和三六年︑八七頁︒

︵10︶ 上村久雄稿︑前掲稿︑ ︵神戸大学会計学研究室編︑前掲辞典︑八五六頁︶︒

︵11︶ 山下勝治著﹁新版会計学一般理論﹂昭和四◎年︑一五〇頁︑

︵12︶

︵13︶

︵14︶

︵15︶︵16︶

︵17︶︵18︶

︵19︶

︵20︶

︵21︶︵22︶ コ  ベは  い形成に大きな影響を与えていることを指摘している︒余金﹂

なンR9罫界界R

いベ ノ,監ンρ罫「「『串

罫R零露罫 じ区戸[r

︑国■=緯距︒一α﹂σ5Poo︑

 ω目許F一げ一αこマ誌oo●

 ω日晒9﹂σここ唱■冨oo■

 ωヨ澤F一σこ℃■誌oo・

 灯ωヨ淳Fび箆P園oo●

 9家山ざ固旨暑芭>︒8仁韓ぎ堕H逡ρ℃戸ω6・︵木村重義訳﹁−財務会計﹂五−八頁参照︶︒ノイによかば︑会計

 ションに影響する第一︑一の要件は﹁人々の思考様式﹂である︒彼の述べている思考様式とは︑何を意味するか明確で

 、

゙は法律秩序としてのコンモンローの体系とか︑市民法の体系に関する人々の考え方が︑会計コンベンションの

      キ山︑ヒタル・ゲイン及びロスを﹁損益﹂と考えるか︑またぽ﹁資本剰

と考えるかも︑メイによれば︑結局その国の住民の思考様式の差異によって左右されるものとしている︒

 ωヨ一什ダぴこマ旨oo・

 ω日一芸﹂90こP一トoco・

 ω目向けFび置℃︒一boO・

■い■ω自律Fぎ箆℃・感O︐

 ωヨ一号﹂9α一P誌P

(15)

(   (  (  (  (  (  

29  28  27  26  25  24  23

)  )  )  )  )  )  )

︵30︶

︵31︶︵32︶

︵33︶

︵34︶

e︑﹁固定資産売却損益﹂とは︑設備︑機械等の固定資産を売却処分した時に生ずる利得︑または損失をいい

 ーキ  山桝忠恕著﹁近代会計理論﹂昭和一︑一五年︑四七四頁︒ Oい区■買ωヨ津F一三〇辱Pおピ

O戸閃●=・蜜8眞︒ヨRざ>巨一けぎに日暮oq㊤&℃旨&8︺一〇卜︒ど℃・ω曽・

 Oい国︒出︑竃︒暮moヨRざ一σ三マωトのピ

 山桝忠恕著︑前掲書︑四七四頁参照︒ R・界rωヨ詳Fまここマ50■

 囚.い.ωB犀Fぎ往こ戸一ωρ

 岩田厳著﹁アメリカ財務監査﹂昭和︑一一︑一二年︑ズ︶頁︒

詳しくは・︸>﹄︒幕琶︒乙.箒舞穿§8ヨ︒︒§喜︒3住田藁︒℃暑︒材9一罵︵北島蜜訳

﹁近代株式会社と私有財産﹂︶を参照されたい︒

 岩田厳著︑前掲書︑三一.﹂一頁参照︒

詳しくは︑一き記塞聲>8⁝9の貫穿舞舞穿ε貫・筥︒;§艮㊤昌乏︒;︒葛ω︒も℃﹄寧に︒︒かゲ︑

参照され忙い︒

 O沖>ρ=け二〇8po三α︒且ωギ8唇℃oωoマoh︷貫↓箒>︒8仁昌9αQ寄≦oヨ<o﹃O﹂Oo︒らも・ωOρ

 国●ピ■ωヨ律Fま置こマ一ωO︑

 Oい国●ピ・ω田津Fび箆■︸マ一ωO■

    三 固定資産売却損益のキャピタル・ゲイン及びロス性

      ヤ   ヤ   ヤ今日︑キャピタル・ゲイン及びロスとは︑ ﹁固定資産売却損益﹂ に対して自動的に付与された名称である︒

      ︑当該資産

 劃ヒタル・ゲイン及びロス概念の再検討一      一五

(16)

  1鱈調     文ーー      一六       ハ ロの売却価額と帳簿価額との差額として測定される︒

 ところで︑今日の会計理論では︑ ﹁固定資産売却損益﹂について複会計制度的な会計処理法は︑是認されうるであ

ろうか︒けだし︑複会計制度において︽資本的資産の処分に伴うゲイン・ロス←資本取引←資本そのものの変化︾と

いう論理が成立し得たのは︑それ特有の資本勘定の下で︑キャピタル・アセッツといわれる固定資産と投下資本とが

直接的な関係を持つものと仮定されていたからに他ならない︒ここでは︑固定資産たる資本的資産は︑ ﹁実物資本﹂

を意味し︑永久的な概念として論じられているのである︒これに対して今日の我が国及び米国の企業会計では︑貸借

対照表は︑複会計制度におけるが如き資本勘定と一般貸借対照表との区分はなされず︑単に﹁決算貸借対照表は︑期

間損益計算の結果として作成されるものであるから︑その期間損益計算との関連において︑固有の機能をもつもので      ハ ロあり︑⁝⁝それは︑次期の損益計算に対して出発点となる﹂とする思考が支配的である︒従って︑貸借対照表の借方

項目である資産︑特に﹁固定資産の価額は︑物としての価値を代表するものではなく︑それは次年度以後において配      パ ロ分される費用の集積に他ならない﹂とされている︒即ち︑近代企業会計上︑投下資本と固定資産との問には︑複会計

制度の資本勘定におけるような直接的な関係は認められない︒その結果︑固定資産の売却によって生じたゲインまた

はロスが︑直接的に資本そのものの増減を招来するということは考えられないのである︒さらに︑複会計制度の下で

特別の意味を有していた資本的皮出や資本取引について︑今日なお︑ある支出が︑固定資産購入の為の支出か︑それ

      ハユロとも単純な費用支出かを区別する標識として︑便宜上そこに資本的支出概念がそのまま援用されたり︑近代企業会計

上の資本取引が︑不用意にも固定資産の購入とか︑その処分に結びつけて考えられている場合も見られていることに       ハるロ対して︑山下博士は︑ ﹁そうした考え方は︑明らかに誤ったものである﹂と述べている︒それは︑取りも直さず︑今

(17)

日の企業会計では︑固定資産と投下資本との具体的かつ直接的な関係が︑否定されているからに他ならない︒即ち︑

今日の我が国及び米.国の会計理論では複会計制度独自の︽資本的資産の処分に伴うゲイン︑ロス←資本取引←資本そ

のものの変化︾という論理は成立しないのである︒ここに︑近代企業会計における資本取引とは︑ 一般に︑投ド資

本そのものの増減取引として定義され︑それには︑増減資によるものと資本修正によるものとがあると理一解されてい

る︒具体的には︑ ﹁イ 新株の発行による払込︑ロ 自己株式の買上消却による資本の減少︑ハ 自己資本修正のた      ハ ロめの財産評価替︑二 資本として受領した贈与﹂等があげられる︒かように︑今日の資本取引概念は︑複会計制度に

おける資本取引概念よりも︑狭義に理解されている︒これに対して︑今日︑ ﹁企業の取引活動ないし資本の利用活動

      ︵7︶       ︑ ︑ ︑ ︑から生ずる稼得剰余を問題とする﹂場合には︑損益取引として考えられている︒固定資産と投下資本との直接的関係

       ヤ  ヤ  ヤ     ヤ  ヤ  ヤが断ち切られている現在︑ ﹁固定資産売却損益﹂は︑企業の営業活動が継続する過程の中で︑資本の利用活動のうち

に付随的に生ずるものとして︑一般に理解されるに至っている︒

 かくして︑近代企業会計上︑ ﹁固定資産売却損益﹂は︑その発生原因の如何を問わず︑キ︑ビタル・ゲイン及びロ

スなる名称を適用することによって︑いわゆる損益会計領域で一括処理がなされているのである︒事実︑多くの会計

学者や会計士達は︑キャピタル・ゲイン及びロスを損益会計領域の問題として取り上げ︑単に︑当該項目を表示する

際︑損益計算書の下部の特別損益の部に表示するか︑それとも利益剰余金計算書に表示するかが問題とされてい繍〜

この場合︑かかるゲイン及びロスの会計処理は︑ ﹁包括主義が採用されるのか︑それとも︑当期業績主義が採用され       ︵9︶るのかによって︑適切な報告がなされるべき﹂ものとして論じられてきた︒前者はAAA︵アメリカ会計学会︶及び

SEC︵証券取引委員会︶で好まれ︑そこでは資本利得及び損失は︑非経常または営業外損益として損益計算書に計

 −!千や〆︑タル・ゲイン及びロス概念の再検討−      一七

(18)

       一八 i論    文−

上されるのに対して︑後者は︑AIA︵アメリカ会計士協会一今日のAICPA︶で好まれ︑ここでは資本利得及び

堤は・利益梨金贅書莚罪馨れてい菊な義が国の斐会計原則も後者の立場霞.ている.かよう

に・今日・ ﹁固定資産売却損益﹂を質本0称恥活動のうちに認識されるものとして︑資本取引の対象から除外しよう

とするのが︑大方の考え方であるように思われる︒

 しかしながら︑ ﹁固定資産売却損益﹂の取扱いは︑前述のように︑単純には理解できない複雑性をそれ自身内包し

ているのである︒我々は︐ここで︑かかる売却差額の発生原因を思い起こす必要があろう︒今日︑ ﹁固定資産売却損

益﹂の生ずる原因としては︑ ﹁ω当該資産の価値の相対的な変化︑㈲貨幣価値の一般的な変動︑㈲ある種のものにあ

っては・自然の成長の奨の年度の減灌却の過怠かど種あ鵠集えること尊きる.ωは︑当藺奢

産に対する人々の需要・供給関係による価値の増減額であり︑②は︑一般物価水準の変動に基く貨幣価値の変動を反

映する固定資産の増価ないし減価である︒圖の場合は︑山林等を有する事業会社にあって︑樹木の自然成長による固

定資産の増価等が想定できよう︒@は︑当該固定資産の耐用年数や残存価額の見積りの誤りから生ずるものとして理

解される︒かように﹁固定資産売却損益﹂は︑複雑な内容を有するものであり︑ここに︑ ﹁固定資産売却損益﹂の特

殊性の存在を再認識しなければならない︒以上の各種要因のうち︑固定資産一の売却差額には︑通常︑ω︑卿︑凶の諸

要因が混合して包含されているものと考えられる︒特に︑吻の貨幣価値の一般的な変動に関する要因は︑我が国では

従来から当該固定資産の評価替がなされた場合︑固定資産評価損益t資本剰余金一−として取扱われてきたもので

ある︒かかる資本的性質を有するファクターもまた︑ ﹁固定資産売却損益﹂の重要な構成要素となっている事実は︑

今日のようなクリーピング・インフレーションの経済情勢下にある我が国において﹁固定資産売却損益﹂の会計処理

(19)

を正しく行う上で︑無視しえない点である︒かくして従来から我が国でなされている﹁固定資産売却損益﹂の会計処

理については疑問が生ずる︒即ち︑﹁固定資産売却損益﹂は︑その性質の特殊性の故に︑会計処理にあたっては︑い

わゆる損益会計領域及び資本会計領域の双方に抵触する問題を包含しているのである︒

 ところで︑複会計制度におけるキャピタル・ゲイン及びロスの内容にも︑かかる複雑な諸要因は存在していたはず

  ︵12︶である︒そこでは︑それ特有の論理構成によって︑かかるゲイン及びロスの会計的取扱いについては別に問題は生じ

なかった︒しかし︑企業会計に対する思考が根本的に異なっている現代では︑これら多くの諸要因の異質性が問題と

なってくる︒

 口︑我が国では従来から﹁固定資産売却損益﹂の会計処理は︑資本会計領域から一応これを除外し︑いわゆる損益

会計領域の問題として論じられてきた︒その論拠は︑米国会計実務の影響はあろうが︑近代企業会計での資本取引概

念は︑複会計制度におけるよりもはるかに狭義に理解されており︑ ﹁固定資産売却損益﹂は︑決して資本そのものの

      ヤ  う  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ増減を示すものではなく︑かえって︑企業の資本の利用活動のうちに付随的に生ずるものとして把握されてきている

からである︒しかもそこでの取扱いが︑利益剰余金ないし特別損益項目として一括処理がなされてきたその背後に

は︑ 固定資産売却損益はキャピタル・ゲイン・ロスであるから一括的に取扱われるべきであるとの思考が︑存在

していたかのように思われる︒ここでは︑キャピタル・ゲイン及びロスが︑あたかも同質的な内容を有する概念であ

るかの如く取扱われていることは注意を要する︒ところで︑固定資産の売却差額の生ずる原因を分析してみると︑我

々は︑そこにきわめて多様性ある要因が混合して包含せしめられていることを認知するのである︒かかる﹁固定資産

      ヤ  ヤ  ヤ売却損益﹂の特殊性を考慮せずして︑同売却差額の会計処理について論ずることは︑無意味であるというよりもむし

 ーキ山一ヒタル・ゲイン及びロス概念の再検討一       一九

(20)

      一一﹂一〇

 一論   文1

ろ危険なことであるとさえ思われる︒

 我が国の多くの論者は︑ ﹁固定資産売却損益﹂を過去の減価償却過不足分の訂正︑即ち過年度損益の修正の意味に

おいて理解すべきであると主張する︒ここでは︑キャピタル・ゲイン及びロスを﹁前期損益の修正﹂を意味する概念

として把握することによって︑当該固定資産の売却差額を一括して利益剰余金の調整項目であると考える︒また︑あ

る論者は︑﹁固定資産売却損益﹂は資本の利用過税から生ずる損益であり︑しかもそれは臨時偶発的に発生するもので

あるから︑通常の損益とは区別して取扱われるべきであると主張する︒この論議は︑かような売却差額を惹き起す原

因を全く無視した論理であり︑それの生ずる会計的な現恥面だけを強調した立場である︒ここでは︑キャピタル・ゲ

イン及びロス概念は︑単に︑企業の資本利用過程における一現象として理解されている︒これに対して︑ ﹇︐固定資産

売却損益﹂のうちには︑当該固定資産の評価損益の部分を含む場合が多いところがら︑そのゲイン︑ロスの取扱い上

の相違を︑一応︑評価損益の﹁実現﹂ ﹁未実現﹂という点に求めようとする説がある︒即ち︑ ﹁固定資産売却損益﹂

は﹁卦恥いかキャピタル・ゲイン︑ロス﹂であるから︑利益剰余金項目と考え︑ ﹁固定資産評価損益﹂ に対しても

﹁南勢現ひキャピタル・ゲイン︑・ス﹂なる名称を与えることによって︑資本剰余金の増減項目として処理しようと

する立場がそれである︒この論議は︑ ﹁実現﹂なる概念の導入によって﹁固定資産売却益﹂の一括処理を指向してい

る︒以上の三説が我が国において従来からなされてきた主な論議であるが︑この他に米国の一部の会計学者には︑こ

れらと異なった論議も見出される︒即ち︑ ﹁固定資産売却損益﹂の発生原因の多様性に鑑み︑キャピタル・ゲイン及

びロスの取扱いを資本剰余金と利益剰余金とに二分しようとする論議がそれである︒

 以下では︑これらの各論議を再検討してみたい︒

(21)

 @  ﹁固定資産売却損益﹂の性質を﹁前期損益の修正﹂と同一視する説

 この論議は我が国では従来から広く支持されてきた立場である︒即ち︑ ﹁固定資産売却損益﹂は︑その固定資産の

帳簿価額と売却価額との差額として計上されるわけであるが︑帳簿価額は︑取得原価より減価償却額を控除したもの

であり︑固定資産の減価償却は︑その耐用年数や残存価額の見積りによって計算されるものであるから︑減価償却の

過不足の結果は︑当然に固定資産売却損益の発生を招来するものと考えられる︒従って︑かかる利得及び損失は減価

償却の見積りの誤りから生ずるものであり︑固定資産の売却差額は︑本質的には減価償却の過大計上部分または過小

計上部分を示すものとして説明される︒ここでは︑ ﹁固定資産売却損益﹂を惹き起こす原因のうち﹁過年度減価償却

の過不足﹂による要因だけに着目し︑その他の要因である﹁当該固定資産の価値の相対的な変化﹂とか﹁貨幣価値の

一般的な変動﹂などは考察の対象とはされていない︒かようにこの論議では︑キャピタル・ゲイン及びロス概念は︑

﹁前期損益の修正﹂の意味において一面的に理解されているのである︒しかしながら固定資産の売却差額の生ずる原

因は︑必ずしも過去における減価償却の見積りの誤りだけによるものとは断定できない︒このことは﹁減価償却の対      パゆロ象とはならない土地についても︑固定資産売却損益は生ずる﹂ことからも明らかであろう︒かくして︑ ﹁固定資産売

却損益﹂のすべてが﹁過年度損益の修正﹂を意味するものであるという論理は︑非現実的であり︑いわば﹁固定資産

売却損益のもつ特殊性﹂を無視した論議であるように思われる︒例えば︑今日のようなクリーピング・インフレーシ

ョンの時期・iI貨幣価値の下落時1に︑ある固定資産を処分して︑売却益が生じた場合を考えてみよう︒この説に

従う限り︑当該固定資産の売却差額はすべて過年度減価償却の過剰部分と考えられ︑一括して利益剰余金に加えられ

て処分可能利益を構成することになる︒ところで︑貨幣価値の変動による部分は︑評価替がなされれば︑資本剰余金

  ーキ.ヒタル・ゲイン及びロス概念の再検討−      二二

(22)

  ⁝論    文−1       二二

として取扱われるべき性質のものである︒この固定資産売却益の中には︑かかる資本剰余金の性質を有する部分も包

含されているのが常であるから︑これをすべて一括して﹁前期損益の修正﹂として取扱うことは到底是認し得ない︒

即ち︑この会計処理にあっては︑﹁資本取引と損益取引との混同﹂が必然的に招来され︑﹁適正利益の確定﹂という企

業会計の基本的使命を成就することは不可能である︒本論議がかくも混迷していると考えられる原因は︑実は︑キャ

ピタル・ゲイン及びロス概念の内容を構成する異質的諸要因の一部1﹁減価償却の見積りの誤り﹂という要因−−1

だけを取上げ︑それがあたかも同概念の同質的全体所︑あるかの如く取扱われていたからに他ならない︒

 ㈲  ﹁固定資産売却損益﹂を﹁非経常的︑臨時的な損益﹂であるとする説

 今日﹁固定資産売却損益﹂は︑資か分秒恥避愚において認識された利得及び損失を意味するものとして︑一般に理

解されてきている︒ところで︑固定資産は︑転売を目的とせず︑長期間経営手段として使用する目的をもって取得さ

れた財産であり︑経済価値の増殖に使用される使用財であるから︑固定資産の売却は︑流動資産のように通常頻繁に      パリレ発生するものではなくて︑いわば臨時的︑非経常的なものである︒従って︑このような非経常的︑臨時的な損益であ

る﹁固定資産売却損益﹂は︑当期業績主義の下では︑これを利益剰余金勘定で処理すべきであるとするのが︑本説の

論拠である︒この論議では︑キハビタル・ゲイン及びロスなる概念は﹁非経常的な損益であり︑臨時的で︑めったに      パルロ起らない取引によって生ずる﹂ものとして把握されている︒かように︑ここでは︑ ﹁固定資産売却損益﹂の発生原因       やの分析を全く行わずに︑ただ資本0称恥温温という会計静恥塾面だけを考察の対象としており︑かかる売却差額の生

勢か現繁が非経常的ないし臨時的である為に︑通常の損益とは区別されることとなる︒会計学上︑以上の論理は︑き

わめて合理的であるかのように考えられがちであるが︑我々は本説に︑次のような欠陥を見出す︒けだし︑一概に︑

(23)

﹁園器産売却黒﹂と称されている概念集成する諸要因のなかには︑企業の資本の利黒動ないし利用羅の現

象としては標するこあ雲ないファクタふ含まれているか塗ある.即ち︑それは当該固審産の売却蓋に

通常包蒙れている﹁貨幣橿の複製変動﹂の部分である.かかる要因は︑投下資本の利用活動という現象とは

全く別個の立場から認識されなければならない概念であり︑今日︑ ﹁資本修正﹂を意味するものとして理解されてい

る・かように・あ論華は︑キャピタル・ゲイン及び・ス馨概念を︑単旨本の利用覆という現象面だけ署

目している結果︑同概念に内包されているいわゆる異質性は全く見落されているのである︒本説に従えば︑貨幣

価値の一般的変動がある場合︑それに基づく評価差額:一資本剰余金項目︐﹁−に相当する部分は︑自動的に﹁固定資

産売却損益﹂の中に包含せしめられて︑一括的に処理されることになる︒このことは︑資本剰余金を利益剰余金に振

替えたことを意味する︒かように︑この論議においても︑ ﹁固定資産売却損益﹂の性質の特殊性の故に︑同売却差額

をいわゆる損益会計領域において一括処理しようとする立場を矛盾なく説明することはできないのである︒

 @  ﹁実現﹂なる概念を導入しようとする説

 今日の会計実務では︑固定資産の評価損益の部分も﹁固定資産売却損益﹂の中に包含されているのが常である︒け

だし︑前述の二説の論理に以上のような不合理が生じたのは︑この点を度外視して︑ ﹁固定資産売却損益﹂の一括処

理を指向していたからであると考えられる︒これに対して︑本論議は︑キャピタル・ゲイン及びロスの取扱いについ

て︑﹁固定資産の処分損益のうちには︑その評価損益の部分を含む場合が多いので︑その損益の取扱い上の相違は︑一

応・評価渠の憲委暑いう点にこれ条めよう与る立槻比倍率引用者︶震るあである.こ毛は︑

       ヤ  ヤ﹁固定資産売却損益﹂は︑その中に評価損益の部分も含まれているが︑その部分も実現されたものであるから他の部

  iキ卦ビタル・ゲイン及びロス概念の再検討!−       一︑一﹂一..

(24)

 一論     文一       二四

分と同様に利益剰余金項目として一括的に取扱われるべきであると考えられている︒この考え方からすれば︑その評

       ヤ  ヤ  ヤ価損益に相当する部分が例えば評価替等によって認識された場合︑それは未実現のものであるから資本剰余金項目と

して取扱われることになる︒かように︑この論議では︑ ﹁固定資産売却損益﹂の発生原因の如何を問うことなく︑そ

   ヤ  ヤ  ヤ  やれに﹁実現したキ瀞ビタル・ゲイン及びロス﹂なる概念を適用することによって︑かかる売却損益の会計処理を一元

的に理解しようとしているのである︒しかしながら︑メイが指摘しているように︑本来︑ ﹁実現した損益と未実現の      ハザロ損益とを区別することの意義は必ずしも本質的なものではない■﹈から︑利益剰余金と資本剰余金との区分基準につい

て︑ ﹁実︑現﹂ ﹁未実現﹂なる概念を導入することは︑許されない︒かかる概念を本質的なものとして考えるならば︑

それは︑進んで資本取引と損益取引との混同を惹き起こすことになる︒例えば︑評価引上げの場合を考えてみよう︒

固定資産の評価替をしないままで︑これを処分すれば︑その簿価と処分額との差額が全部利益剰余金となるが︑もし

・ての処分直前に一度評価替を行い︑しかる後にこれを処分すれば︑その評価益は資本剰余金となり︑評価替後の新簿       ︵18︶価と処分額との差が利益剰余金となる︒かように︑評価酵の有無によって相反する会計処理が行われることになる︒

従って︑固定資産の評価損益に相当するものの実現︑未実現によって︑■キ︾︑ビタル・ゲイン及びロスの性格上の差異       ハめロを帰結するが如き取扱い上の相違を是認することは︑明らかに誤りである︒即ち︑この論議をもってしても︑我が国

の従来からの会計処理を矛盾なく説明することはできない︒ここでは﹁固定資産売却損益﹂の複雑な内容には着目せ

ず︑単に﹁実現﹂なる概念によって一括的に取扱かおうとしていた点に欠陥があったように思われる︒

 ㈲ 固定資産売却損益の発生原因によって区分しようとする説

 固定資産の売却によって生ずるキζヒタル・ゲインは︑基本的には資本の一部であるからその他の資本項目と同様

(25)

      ハぬロに︑配当充当額︵階≦匿え希ωR≦9︶から除外されるものであるとする考え方に対して︑ペイトン及びリトルトン

は・ ﹁会社会計基準序説﹂ ︵>づ雲霞a8瓜8800﹃宕声冨>8窪旨3凶斧讐α鋤目αω︶において︑次のように論駁

している︒ ﹁基本的な分析の立場からはこの意見は実現された増加分が主として一般物価変動の結果である場合に限

り真に正当化しうる︒しかし︑貨幣価値が安定している場合は︑いわゆる資本的利得︵︒山官仕四一αq餌一口︶が真正の企業      ハリロ利益を構成し︑合理的にiI合法的のみならずii配当の基礎に供されうるということは明らかであろう﹂︒かよう

にペイトン・リトルトンによれば︑キャピタル・ゲイン及びロスが一般物価の変動︑即ち貨幣価値の変動の結果とし

て認識されるならば︑ ﹁固定資産売却損益﹂は評価増減分を意味するものとして資本項目と理解される︒また︑貨幣      ハ ロ価値が安定している場合には︑キ距ビタル・ゲイン及びロスは︑ ﹁過去の利潤の修正項目﹂として利益剰余金計算書

に記載されるべきであると述べている︒かように︑ベイトン・リトルトンは︑貨幣価値の安定︑不安定により︑キャ

ピタル・ゲイン及びロスの意味を区別して用いようとする見解をとっているものと理解される︒

 また・メィは・キャピタル・ゲイン及びロスを生ぜしめる原因の多様性に鑑み︑かかるゲイン及び︒スは所得の概

念に反映されることが望ましいと一般に考えられる諸原因から生ずる結果として示すことがで吏︑︑あるいはそのよう

に考えることが適正である場合には︑損益計算書において処理し︑それ以外の原因から生ずるキャピタル・ゲイン及

び︒ス矯鮮蕃から除去す書であ鉾述べている.そして︑前者の例として︑減優却の過歪︑その他類似

の原因から生じたとみられ得るキャピタル・ゲイン及びロスをあげ︑後者の例としては︑物価水準の変動等によるキ

卸ビタル・ゲイン及びロスをあげてい瓠四この点について彼は︑ ﹁物価水準の変動そのものを反映する貨幣における       ハおロ利得は︑時に相当程度にまで経営所得に表示されているが︑これは遺憾な必然である﹂と述べ︑かようなものが︑損

      一︑﹇冗  ⁝キ.ヒタル・ゲイン及びロス概今心の再検討−

(26)

  1一払嗣     文−      二六

益会計に含まれる範囲を最小限にすることの必要性を説いている︒彼はさらに︑キャピタル・ゲイン及び・スに含ま

れている異質的要因の異なった力が︑逆の方向に作用している場合︑ ﹁その区別が必要な時にはいつでも︑すべての

質本利得および損失をあたかも同質的なものででもあるかのように取扱うことよりも︑いっそう好ましい結果に到達       ︵鴻︶するための合理的な実際的なルールをつくることができなければならない﹂と論じている︒この点は今日の我が国に

おいて︑ ﹁固定資産売却損益﹂の意義を考慮する場合︑大いに参考にすべき見解であると思われる︒しかしながら︑

用語法という点を考察した場合︑同じくキャピタル・ゲイン及びロスグなる用語を使用していながら︑一方では損

益項目とし︑他方では資本項目として取扱われることとなり︑今日の会計実務に取入れられた場合︑かえって混乱を

惹き起こす可能性を含んでいるように思われる︒このことはペイトン︑リトルトンの論議にも同様にあてはまる事柄

であろう︒

 これに対して︑我国の太田博士は︑固定資産の売却益には︑二つの要因が包含されていることを指摘し︑次のよ

うに述べている︒﹁一つは過去における過大の減価償却をした結果︑帳簿価額が法外に低いために生ずるものと︑他

は一般物価の騰貴によるもの︑即ち貨幣価値変動を原因とするものである︒此の両者は混合して生ずるのが通例であ

る︒そこで若し此の売却益が単に貨幣価値変動のみを意味する場合︑例えば土地の売却益の如き場合であれば︑これ

      ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤは評価益が実現したものとして資本利益として資本剰余金に加えるのが正しいのである︒⁝⁝そこで減価償却の過当

なりしことが︑売却益で実現したとすれば︑これは過去の損益計算を修正する意味で繰越利益即ち利益剰余金に加算      ハロロしなければならないことになる︒﹂ ︵傍点一引用者︶かように太田説では︑ ﹁固定資産売却損益﹂の発生原因が貨幣価

値の変動を意味するものとすれば︑この売却損益は評価損益が実現したものとしてキャピタル・ゲイン及びロス

(27)

なる讐蕊用し盗本墾金の濃習として取繋れ象︑減価償却の過歪の原因でこの売却損蕪実現した

とすれば・これは漣牽犠益の惨事意味するあとして利益梨窪毅葛髪が嵩されているように理

蟹れる・お論議霞前記の諸説所論じ華や妄をゲイン及び︒スの異質的諸要因の混合を排除し︑同概

念嵩鵠内妻享禽念とし毒山巻ん与る意図がうかがえる.含の企業会計董求されるのは︑かように

同質的な内容を享ゑヤピタをゲィ迄び・ス概念の定藝ある.即ち︑資本取引と損益取引お区分鵡らか

にし・﹁固定資産売却損益﹂の会計処翠羅に行う為には︑同概念の純化︑ないし明確化こそがぜひとも必要なの

誇る差だし畜説慮・﹁固定資産土鍋損益﹂の発生原因として貨篤値の変動と過年羅機却の曇りの誤

り璽つの要因だけし薯察の対象としていない点は欠陥といえよう.同説によれば︑例えば土地の売却益の如毒       ハぬロ合どれはすべて貨幣価値の変動のみを意味するものと理蟹れているが︑実際にはその他の要■因として土地それ自

体の需鵠係名爵に反映する簿欝の部分も包怠れているのが蕩である.従.て︑妾︑の売梨額の全部が

常に資本剰余金に加算されるとは限るまい︒

 ︵−︶9ρ>・竃︒冨冨巳幻象︑馨言﹂匿も﹂︒国・

 ︵2︶ 山下勝治碁︑前掲書︑二四一頁︒

 ︵3︶ 高橋芳藏著︑前掲書︑四五頁︒

  ︵4︶oい∩>.鼠︒達帥&界客ぎ甕﹂σ一αもマω︒︒−︒︒9

  ︵5︶ 山下勝治著︑前掲書︑ 一五一頁︒

  ︵6︶ 山下勝治著︑前掲書︑ 一︑圧二頁.      二七  ーキ︐﹄ヒタル・ゲイン及びロス概今心の再検討i

(28)

︵13︶

︵14︶

︵15︶

︵16︶

︵17︶︵18︶

︵19︶

︵20︶︵21︶ 一一一一論    文一       二八

︵7︶ 山下勝治著︑前掲書︑ 一四六.貞︑

︵8︶ R・目・=・ω㊤区輿即F押=餌焦一︒往四&<・霞oo﹃ρ>ωけ簿︒ヨ︒茸︒︷>08β暮ぎのギぼ9覧①の﹂Oωoo︸℃℃ωoo6聾

︵9︶客三図︒P>8︒章3算ω.田&σ︒︒ぎ一8ρマ?o︒・

︵10︶ O栖oo・9言餌P>82葺ぎ頒Ooぎ8富饒ギ︒津﹂80暑中詔令紹ρ窒α犀毛罫oP一σ由皇マ守¢中島省吾訳編﹁増

  訂AAA会計原則﹂昭和三九年︑ 一一頁参照︒

︵n︶ 山桝忠恕著︑前掲書︑四ぢ.︑頁.

︵12︶ 複会計制度では︑減価償却法を採用していなかったことがら︑前記の発生原因のうち@の﹁減価償却の過不足﹂による要

  因は一応問題外にされるが︑.﹃︑の反面固定設備の﹁︐陳腐化﹂ ﹁不適応化﹂等もま仁資本損失を生ぜしめる要因として浸入さ

  れてくる.︑

       一 高橋芳藏著︑前掲書︑ 一九六頁︒︑

 佐藤孝一稿﹁固定資産売却損益﹂ ︵神戸大学会計学研究室編︑前掲辞典︑三一︑九頁︶参照︒

 >︑O■ピ犀ユ08Pゆσ一匹戸ooON

 山下勝治稿﹁キ卦︑ジ︑タル・ゲイン・ロス﹂﹁︐会計﹂第六十六巻第二号︑二八頁一㌧

 O■O﹂≦mざまごこ℃■NN9

 山下勝治稿︑前掲稿︑一︑一八ーゴ︑九頁参照.︑

 山下勝治稿︑前掲稿︑三九頁参照︒

 Oい刃薫ダoP一σこご℃■㎝・oo︑

 峯>・評8口国乱>・O・=窪︒けop︾⇒一算3身&oコ︒団Oo弓︒轟げ︒>︒8冒けぎ頃ω冨&㊤乱ω幅一〇ρp

訳﹁会社会計基準序説︵改訳版︶﹂一〇二頁︶︒ 9︑︵中島省吾

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