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ホスフィン系白金

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Academic year: 2024

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1 / 5 2.研究の詳細

プロジェクト 名

ホスフィン系白金(II)錯体の理論化学計算による電子状態解明

プロジェクト

期間 令和2年度 申請代表者

(所属等)

長澤 五十六

(理科教育ユニット)

共同研究者

(所属等)

なし

1.研究の目的

配位不飽和な金属錯体(四配位平面型錯体は代表的な例である)に対する酸化的付加反応注1の進行は,

金属錯体から基質となる化合物への電子流入に基づいて起こる。そのメカニズムは二酸化炭素の oxidative

coupling 反応まで関係し,次世代のエネルギー創成や人口光合成の鍵となる反応を意味する(Scheme 1)1)

これまでに,分光学的データを基にする反応速度論的研究などの酸化的付加反応の反応機構解明に関する 研究がなされてきたが,反応中間体と考えられる化学種を単離し,その構造を検討することで,反応機構 を特定しようとする研究例は多くない。次世代のエネルギー創成や人工光合成の開発を進めるためにも,

酸化的付加反応の反応機構の解明は極めて重要な問いとなる。

平成25年度〜28年度福岡教育大学研究推進支援プロジェクト経費の採択により,申請者は主に三級アル シン系配位子を有する六配位八面体型白金(II)錯体の合成し,酸化的付加反応の反応機構解明に繋がる成果 を得た。これらの発見を一般性の高い事実として認めるためには,類似化合物での反応条件の解明が望ま れる。申請者は平成29~31 年度の研究推進支援プロジェクト経費の採択により,さらなる酸化的付加反応 の反応解明に向けて,配位原子にヒ素とリンを有する,六配位八面体型白金(II)錯体の系を拡張する研究を おこなった。それらは金属錯体が持

つ,どの分子軌道が酸化的付加反応 の進行に関与するかを検証するた め,酸化的付加反応の中間体モデル 錯体,[PtI(dmpe)2(

1-I2)]I32),及び [PtI(diars)2(

1-I2)]I33)の量子化学的理 論計算をおこなったものである

(Fig. 1)。

令和2年度は,これらの研究を拡張するため,三級アルシン配位子,diarsと同様の骨格構造を有する三 級ホスフィン配位子,diphos を有する白金(Ⅱ)錯体の量子化学計算をおこなった。この研究は,アルシン 系錯体とホスフィン系錯体の差異によって,白金(II)から酸化剤への電子移動の起こりやすさにどのような

CO2の還元反応への応用!

(oxidative coupling 等)�

有機触媒合成や次世代エネルギー創成,人工光合成への応用の鍵となる重要な反応�

Pt L

L L

L A

B

Pt L

L B

L A

L Pt

L

L L

L A B

or

Scheme 1: Oxidative addition reaction

H2の開裂!

O2の開裂!

X2(ハロゲン)の開裂!

RX(ハロゲン化アルキル等)

の開裂!

(2)

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変化が起こるのかを解明するための一歩とするものである。

2. 研究の内容と計画

本研究は,diarsのヒ素をリンに置換した配位子,diphosを有する白金(II)錯体(Fig. 2)の構造的特性を理 論計算により予測し,その電子状態を理論的に解明することによって,白金から基質への電子移動の特性 を理解しようとする研究である。そのためには,まず錯体の構造を理論的に最適化しなければならない。

正確にその構造を予測しようとする場合,量子化学計算に使用する最適な基底関数を求めることが,まず 必要となる。このため,最初に四配位平面型の[Pt(diphos)2]2+を対象として構造最適化をおこなった。計算方 法は密度汎関数法,B3LYP法を用い,全ての原子を基底関数LANL2DZ を用いて計算をおこなった場合と,

Pt,I原子は基底関数LANL2DZを,P,C,H原子には6-31G系,及び6-311G系の種々の基底関数を用い て計算をおこなった場合とを比較した。これにより,この系に必要な基底関数の条件を精査することとし た。さらに,より反応溶液中での出発物質として可能性が高いと考えている,五配位正方錘型の[PtI(diphos)2]+ を対象として量子化学計算を行った。このとき適応した基底関数は,四配位平面型錯体の計算で検証した,

最も適性が高いと思われる基底関数である。それぞれの計算は,類似の構造を持つ[PtI(diars)2]+の単結晶 X 線構造解析結果の原子位置を基礎とし,分子モデリングソフト,GaussViewを用いて初期構造を作成した。

計算は構造最適化計算を行ったあとに,振動数計算を行った。

3. 実施体制

本研究を進めるにあたり,令和2年度に本学長澤研究室に在籍した,学部4年生2名と研究チームを組織し,

研究の実施にあたった。

4. 令和2年度実施による研究成果

4.1

四配位平面型 [Pt(diphos)2]2+の量子化学計算結果

について

種々の基底関数を用いて構造最適化をおこなった。構造最適化後の[Pt(diphos)2]2+に関する原子間距離を

Table 1に,得られた原子間距離の妥当性を評価するため,配位子にフェニル骨格を有する三級アルシン錯

体,[PtI(diars)2]I,及び 三級ホスフィン錯体,[PtI(dmpe)21-I2)]I3の単結晶X線構造解析結果を比較対象とし,

その実験値をTable 2に示した。これら2つの化合物の構造解析結果を示したのは,[Pt(diphos)2]2+のフェニ ル基におけるCPh-CPh間距離(リンと結合した炭素間距離)の評価を[PtI(diars)2]Iの結果を指標として,さら に,[Pt(diphos)2]2+のP-C間距離,及びPt-P間距離の評価を[PtI(dmpe)21-I2)]I3の結果を指標としておこなう ためである。

まず,全ての原子にLANL2DZを基底関数として用いた場合の結果を評価する。得られたフェニル基に

おけるCPh-CPh間距離は1.4106 Åと,報告された距離よりも0.1 Å程度大きな値を示した。このことは他の

(3)

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基底状態を用いた場合と比較しても,実験値との差異が大きく,全ての原子にLANL2DZを基底関数とし て適応することは,有効でないことが示唆される。そこで,Pt,I原子以外には,6-31G系,及び6-311G系 の基底関数を適応し,その計算結果を比較した。

計算結果の妥当性を評価するために,フェニル基におけるCPh-CPh間距離に関して,計算結果と構造解 析結果の実験値を比較した。基底状態として6-31Gと6-311Gを用いて計算した結果を比較すると,より高

レベルの6-311Gを用いた方が,実験値の値と近いことがわかる。このことは予想される結果であり,ある

意味当然である。ここで,実験値である[PtI(dmpe)21-I2)]I3におけるP-Cの原子間距離と,それぞれの基底 関数での結果を比較すると,分極関数

を加えていない場合はそれほどの差異 はない。しかしながら,分極関数を加 えた場合,どちらの基底関数系でも実 験値により近づいていることがわか る。このことは,基底関数のコストを 大きなものに変えるよりも,分極関数 を加えることが,正確な構造を求める 上で重要な要因となり得ることを示唆 している。より大きな基底関数である

6-311Gの方がより良い値を示している

が,所有する計算機での計算コストな どを考慮すると,6-31G(3d)で十分妥当 な計算結果が得られているため,

6-31G(3d)が最適な基底関数であると言 える。

Table 1 [Pt(diphos)2]2+の構造最適化により得られた原子間距離の比較

Pt-P(Å) P-CPh(Å) CPh-CPh(Å)

LANL2DZ 2.4303 1.8749 1.4106

6-31G 2.4252 1.8760 1.4032

6-31G(d) 2.3903 1.8306 1.4064

6-31g(2d) 2.3714 1.8229 1.4040

6-31G(3d) 2.3638 1.8191 1.4042

6-31g(df) 2.3816 1.8259 1.4041

6-31G(2df) 2.3614 1.8213 1.4031

6-31G(3df) 2.3564 1.8183 1.4029

6-311G 2.4253 1.8775 1.4000

6-311G(d) 2.3868 1.8311 1.4027

6-311G(df) 2.3806 1.8294 1.3995

Fig. 3 最適化後の[Pt(diphos)2]2+の構造

(4)

4 / 5 4.2 五配位正方錘型[PtI(diphos)2]+の量子化学計算結果

について

四配位平面型の計算結果の比較により,基底関数6-31G(3d)を用いて計算することで実験値に近い結果が 出ることがわかった。そこで,五配位正方錘型の[PtI(diphos)2]+についても6-31G(3d)の基底関数を用いて計 算を行った。

計算により得られた原子間距離をTeble 3に示した。合成計画のもと,[PtI(diphos)2]+を合成し,X線構造 解析をすると,今回計算で得られた値と近い原子間距離になると考えられる。また,構造最適化後に得ら

れたHOMOをFig. 4に示す。図から明らか

なように,白金に配位したヨウ化物イオン のトランス位に電子の存在確率が高い空間 が広がっていた。このことは配位ヨウ化物 イオンのトランス位に,求電子剤が攻撃し やすい空間が形成されていることを示して いる。以上のことから,五配位正方錘型錯 体,[PtI(diphos)2]+は酸化的付加反応が進行す る上での出発物質として考えられる錯体で あり, I2分子が配位ヨウ化物イオンのトラ ンス位から接近し,我々が酸化的付加反応 の中間体と考える六配位八面体型白金(Ⅱ) 錯体,[PtI(diphos)21-I2)]I3が生成するのでは ないかと推測している。

5. 研究の今後の展望と予想される成果

今回の研究により,三級ホスフィン系白金(II)錯体における量子化学計算について,コストパフォーマン スの高い基底関数に関しての情報を得ることに成功した。このことにより,三級アルシン系錯体だけでは なく,三級ホスフィン系錯体の酸化的付加反応のメカニズムを明らかにするためのノウハウを手に入れる ことができた。今後は,目的とするホスフィン系配位子の簡便な合成方法の開発により,この配位子を有 する白金(II),パラジウム(II)錯体の合成と構造決定をおこなった後,電子スペクトルを手段として用いた,

Table 3 [PtI(diphos)2]+の構造最適化により得られた原子間距離

Pt-I(Å) Pt-P(Å) P-CPh(Å) CPh-CPh(Å)

6-31G(3d) 3.151 2.351 1.825 1.401

Table 2 X線構造解析で得られた原子間距離

Pt-P(Å) P-C(Å) C-C(Å)

[PtI(diars)2]I 2.386 - 1.392

[PtI(dmpe)21-I2)]I3 2.388 1.817(av.) -

Fig. 4 構造最適化後に得られた[PtI(diphos)2]+のHOMO

(5)

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溶液中での反応追跡による酸化的付加反応の反応機構解明をおこないたい。

6. 主な学会発表及び論文

本研究内容は,次年度に予定しているホスフィン系配位子を有する白金(II),パラジウム(II)錯体の合成と 構造決定をおこなった後,令和4年度の国内学会での発表,及び国際誌に論文を投稿する予定である。

REFERENCES

1) J. A. Labinger, Organometall., 2015, 34, 4784−4795.

2) R. Makiura, I. Nagasawa, N. Kimura, S. Ishimaru, H. Kitagawa, R. Ikeda, Chem. Commun. 2001, 1642.

3) 内田 亨 2013年度福岡教育大学化学教室卒業論文集第61集

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