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二十世紀ナシのゲノムを高精度で解析

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二十世紀ナシのゲノムを高精度で解析

〜ナシで新品種育成の効率化が可能に〜

3月2日(火)に

DNA Research 誌

でオンライン発表

令和3年3月2日

公益財団法人 かずさDNA研究所 京都府公立大学法人 京都府立大学

(問い合わせ先)

<報道に関すること>

かずさDNA研究所 広報・研究推進グループ 京都府立大学 企画課

<研究に関すること>

かずさDNA研究所 植物ゲノム・遺伝学研究室

ゲノムユニット長 白澤 健太(しらさわ けんた)

京都府立大学 生命環境科学研究科

教授 板井 章浩(いたい あきひろ)

同時発表:農政クラブ、農林記者会、文部科学省記者会、千葉県政記者会、

千葉民間放送テレビ記者クラブ、木更津記者クラブ、京都大学記者クラブ

かずさDNA研究所と京都府立大学は共同で、ナシ品種「二十世紀」のゲノムを高精度で解 析しました。

「二十世紀」は、100年以上前の明治時代に千葉県松戸市で栽培が開始され、20世紀の 半ばには生産量第1位になるなど、日本を代表するナシ品種のひとつで、今も生産量第4位 を誇ります。また、新しく育成されるニホンナシ品種の殆どは二十世紀ナシの子孫です。

ナシの仲間としては、近縁種のセイヨウナシ、チュウゴクナシとリンゴなどのゲノムが解析 されていましたが、ニホンナシのゲノム解析は行われていませんでした。

1 分子リアルタイムシークエンサーのロングリード技術を利用したゲノム配列の詳細な解析 により、見つかった遺伝子は 44,876 個になりました。このうち 7,041 個の遺伝子は今回の 解析で新たに見つけたものです。

今後、研究がさらに進み、ナシの品種育成を効率化するしくみが確立できると期待されてい ます。

研究成果は、国際学術雑誌 DNA Research において3月2日にオンライン公開されます。

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1. 背景

日本で消費が多いナシはニホンナシ(Pyrus pyrifolia)です。滑らかな食感を持つラ・フラ ンスなどの洋ナシに対して、シャリシャリとした食感が印象的な果実です。この食感は、果 肉にある石細胞(せきさいぼう:stone cell)によるもので、細胞壁に主としてリグニン*1な どが蓄積したものです。日本では登呂遺跡からナシの種子が見つかっており、弥生期にはす でに食べられていたようです。すでに、平安期の「延喜式」には接ぎ木による栽培法が記さ れていますが、ニホンナシのルーツについてはよくわかっていません。

ニホンナシの品種として有名な「二十世紀」は、明治時代に千葉県松戸市の松戸覚之助氏 がゴミ溜めで見つけた幼木が起源という逸話が残っています。二十世紀を代表する品種にな って欲しいとの期待から、明治37年(1904 年)に「二十世紀」と命名されました。最初に 栽培されていた地域は現在「二十世紀が丘梨元町」という地名になっています。「二十世紀」

は当時の他品種と比べて肉質や食味が良かったことや貯蔵性に優れることから栽培地は日本 全国に広がり、その名の通り20世紀の半ば(1940 年代から 80 年代にかけて)は国内生産 量第 1 位に輝いています。現在も第4位の栽培面積を誇ります。また、新しく育成されるニ ホンナシ品種のほとんどは二十世紀ナシの子孫です。

ナシは播種してから実がなるまでに5年はかかります。その上、ナシ品種の多くは自家不 和合性*2で、別の品種(授粉樹、と呼ばれています)を同時に育て、その花粉がめしべに授粉 しなければなりません。ナシの品種改良を加速するためには、他の農作物と同様にゲノム*3情 報の利用が欠かせません。ナシでは、ニホンナシとは種が異なるセイヨウナシ (洋ナシ:P.

communis)やチュウゴクナシ (中国ナシ:P. bretschneideri)のゲノムが 2012 年に解読され ていましたが、ニホンナシではゲノム解読の報告はありませんでした。そこで、現在栽培さ れている主要品種と関係する「二十世紀」のゲノムを解析しました。

2. 研究成果の概要と意義

① 1 分子リアルタイムシークエンサーのロングリード技術*4を利用することで、ニホンナシ

「二十世紀」の染色体*5規模のゲノム解読に成功しました。

② 約 5 億塩基対のゲノム配列から 44,876 個の遺伝子*6が見いだされ、このうち 7,041 個の 遺伝子は、セイヨウナシやチュウゴクナシなどのデータベースには存在せず、今回の解析 で新たに見つかったものです。

③ 予想通りニホンナシのゲノム構造はセイヨウナシ、チュウゴクナシ、およびリンゴとよく 似ていることがわかりました。また、ゲノム比較により、2000 万~500 万年前にリンゴと 系統が分岐する以前に起こった全ゲノム重複の痕跡を見つけることができました。

3. 将来の波及効果

① ニホンナシ「二十世紀」のゲノム情報を利用して、「二十世紀」の誕生の謎とともに、

良い肉質と食味を有するという性質の由来が解明できるようになるかもしれません。

② 「二十世紀」がどのように現在の品種育成に利用されたのかが分かれば、ニホンナシの 品種改良の効率化が期待できるようになります。

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論文タイトル:Chromosome-scale genome assembly of Japanese pear (Pyrus pyrifolia) variety ‘Nijisseiki’.

著者:Kenta Shirasawa, Akihiro Itai, Sachiko Isobe.

掲載誌:DNA Research

DOI: 10.1093/dnares/dsab001

用語解説

*1 リグニン:セルロースとともに植物の細胞壁を構成する成分のひとつ。細胞壁に沈着して組 織を固くし、植物体を強固にする機能がある。

*2 自家不和合性:同じ品種の花粉、または遺伝的に近い品種の花粉では実をつけることができ ない性質のこと。人工授粉を行ったり、異なる品種を混栽したりして結実させる

*3 ゲノム:生物をその生物たらしめるのに必須な最小限の染色体のひとまとまり、または DNA 全体のことをいう。

*4 ロングリード技術:ゲノム配列を解読するときに用いられる DNA の配列解読に用いる方法 で、従来法では、平均 400~1000 塩基対の読み取り断片になるシークエンシング反応を数 百万サンプル分並行して行うことにより解読するのに対し、ロングリード技術は、1 万塩基 対以上の長い配列を連続して読み取ることができることから、繰り返し配列が多い、似た配 列があるなど、複雑なゲノム構造をもつ生物のゲノム配列を解読するのに適している。

*5 染色体:細く長い DNA を保護し、細胞増殖時には効率良く複製と分配を行うための構造体の こと。ヒトでは、染色体は 1 つの細胞に 23 対 46 本ある。ナシやリンゴは 17 対 34 本。すべ てのゲノムを解読することができれば、読み取り断片をつなぎ合わせてできる連続した配列

(スキャフォールド)は染色体数と同じになる。

*6 遺伝子:生物の体を作り動かすのに必要なタンパク質などを作るための設計図のことで、そ の本体は DNA。

参考となる図や写真

二十世紀ナシの果実

Referensi

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