島崎・岩本・大貫・中村:東日本大震災が防災学習への取り組みに及ぼす効果
95
東日本大震災が防災学習への
取り組みに及ぼす効果
島崎 圭 岩本 大 大貫 翔平 中村 雅子
横浜市立中学校1年生の総合的な学習のプログラムである防災プロジェクトを支援するとともに,この活動をフィー ルドとして,学習に対する生徒の取り組みを参与観察,アンケート調査によって調査した.このプロジェクトは 2007 年度から実施され,2011 年度は5年目に当たるが,昨年データと比較したところ,今年の生徒の方が防災学習に対する 関心が高く,自ら実践的なテーマを選び,また学習への有用感を持っていることがわかった.東日本大震災の体験が防 災学習に与える効果について定量的に検証された.
キーワード:東日本大震災,防災学習,総合的な学習,中学生,実践的な学習
1 問題意識
2011 年 3 月 11 日に起きた東日本大震災によって,全 国で防災意識が高まり,対策が見直されている.地震防 災学習はこれまでも小中学校で総合的な学習の時間など に行われてきた.しかし,少なくとも関東圏では,これ までの防災学習はほとんど大きな地震の経験がなく,「も し大きな地震が起こったらどうするか」ということを想 像しながらの学習であった.しかし今回の震災で自分や 身近な人が被災して恐怖や不便さを体験し,メディアか らは地震の及ぼす被害の様子が連日流されたことで,こ れからは地震によってどういったことが起こるかという ことを理解した上での学習になる.生徒の視点から防災 学習の必要性が明確であることから,これからの防災学 習への取り組みは,今までと比較して変化があるのでは ないだろうか.私たちは震災後初めての学習に立ち会え るため,生徒の学習への姿勢,取り組み,成果について 昨年と比較してみていこうと考えた.
2 先行研究
1995 年に起きた阪神淡路大震災は,東日本大震災と同 様に防災について多くの教訓を残した.これまで多くの 学校で阪神淡路大震災を教訓にした防災学習が行われて きており,和歌山県広川町の中学校でも防災教育の充実
に努めてきた.その学習に対して,生徒の意識や有用感 に関する研究が 2008 年に行われた(城下・河田,2009). この研究によると,広川町の中学生 825 名を対象にした 調査で,防災学習に対して有用感を感じている生徒は 94%であり,89%の生徒が今後も学校で防災学習を行う ことを希望している.その理由として,「知識や方法を身 につけたいから」と分類される意見が多く,反対に今後 も防災学習を希望しない理由としては,「もう十分だから」
に分類される意見が多い.筆者によると,すべての生徒 がこれまでに防災学習を経験し,多くの生徒が肯定的に 評価しており,防災学習を学校で行うことを評価してい ない生徒に関しては,指導者側がいかなる知識や技能が 生徒らに必要であるかということを十分に議論した上で,
生徒の持つ意識を変容させることができれば望ましいと している.また地域に根ざした学校防災教育を行うこと が,防災学習を「人ごと」ではなく,自分自身の問題と してとらえるきっかけとなり,ひいては自助を中心とし た災害に強い社会の構造に繋がり,そのような防災教育 を総合的学習の時間に積極的に活用して行うことが,総 合的な学習の時間の有効性を証明することとなり,批判 にさらされている総合的な学習の時間を守ることに繋が るとしている.
3 目的
本研究では,横浜市立本牧中学校の「防災プロジェク ト」をフィールドにした.このプロジェクトは,1 年生 の総合的学習の時間に,生徒たちが防災について 1 年間 を通して学ぶものであり,2007 年から同学校と本学中村 研究室の協力によって実施されている.学習の内容は,
「防災インタビュー」,「防災まち歩き」,「調べ学習」な どを通して防災についての理解を深め,最終的にそれを グループごとにパンフレットという形にまとめて地域や
論文
SHIMAZAKI Kei
東京都市大学環境情報学部情報メディア学科 2011 年度卒業生 IWAMOTO Dai
東京都市大学環境情報学部情報メディア学科 2011 年度卒業生 ONUKI Shohei
東京都市大学環境情報学部情報メディア学科 2011 年度卒業生 NAKAMURA Masako
東京都市大学環境情報学部情報メディア学科教授
保護者に向けて発表するというものである.このプログ ラムを対象として,東日本大震災が学校で行われている 防災学習への生徒の取り組みにどのような変化を与えた のか,以下の仮説を立て検証する.
仮説1:震災によって防災学習に対する有用感が高まる.
ここでいう有用感とは生徒が防災学習を自分のための 学習であると捉えていて,防災学習に高い関心をもって 取り組むことができるかということである.震災によっ て高まったことが予想される.
仮説2:実践的な防災学習への興味が高まる.
実践的な防災学習というのは,地震が起きたら,どの ような行動すればいいのか,自分が住むまちではどのよ うな防災対策がしてあるのかなどの地域や身近な防災や 減災に対しての学習を指す.今回は,一般的な地震の知 識よりも上記の部分への関心が高まるのではないかと予 想される.
4 方法
4.1 アンケート調査
防災学習に取り組む本牧中学校の1年生生徒に対し,
6月に東日本大震災の時の対応を含む事前アンケート,
9月に防災まち歩き当日に実施する当日アンケート,12 月にクラス発表会後に実施する事後アンケートの計3回 アンケートを実施した(実施の詳細は5.3参照).
また,昨年の生徒にも6月に東日本大震災についての アンケートを実施し,まち歩き当日には参加した保護者 に対してもアンケートを実施した.
(1)生徒アンケート
1.事前アンケート:防災に関する知識,東日本大震災 の時の動きなど.
2.2年生向けのアンケート:昨年本牧防災プロジェク トを経験した2年生に対し,東日本大震災の際に,昨年 の防災学習の経験が活かせたかどうかを質問.
3.当日アンケート:まち歩きをして気づいたことがあ るかなど,防災インタビューやまち歩きで関心が高まっ たかなど.
4.事後アンケート:防災に関する知識や感想など.
(2)保護者アンケート
まち歩きの参加理由,まち歩きをして新しく知ったこ とについてなどを質問した.
4.2 参与観察
筆者3名と3年生3名の計6名で防災プロジェクトの 授業を見学し,毎回フィールドノーツを作成.まち歩き
当日には,中村研究室のメンバー20 名にも協力してもら った.
4.3 パンフレット分析
生徒たちが発表会に用いたパンフレットを当日学校か ら預かり,個人のページを分類し,昨年との比較をした.
パンフレットの色使いなども昨年と比較した.
5 概要
5.1 フィールド先の概要
本研究の実践は,横浜市立本牧中学校で行った.本牧 中学校の1年4クラス(計 159 名)を対象に総合的な学 習の時間に地震防災プロジェクトのプログラムが実施さ れた.本牧中学校でこの実践は 33 時間を用いた(うち総 合的な学習の時間 31 時間,国語科2時間).
5.2 実践の概要 5.2.1 実践の流れ
平成 23 年度の実践の流れは表1の通りである.
事前学習は東日本大震災についての被害状況などの説 明の後,防災インタビュー・まち歩きに向けグループで 討議を行った.実際に地域に出て調査を行う防災インタ ビューおよびまち歩きの後,インターネットを用いた調 べ学習を行った.それらが終了した後,グループ毎に防 災パンフレットを作成し,それを元に保護者や地域の人,
まち歩きに参加した大学生らを招待してクラスごとの成 果発表を行った.その後,振り返りの授業が行われた.
クラス投票で優秀グループを選び,各クラスの代表が1 年生全員と保護者らの前で全体発表会を行った.詳しく は表1を参照.表2は昨年のプログラムである.
昨年と今年の大きな違いは以下二点である.
(1)授業の時間数の増減
昨年度と比べると 1995 年の震災を題材にした DVD「幸 せを運ぼう」の鑑賞,グルーブ討議の時間が各1時間削 除されたかわりに,街歩きガイダンス・インタビュー事 前リハーサル・街歩きの地図確認,事前指導・街歩き時 のまとめ作業・パソコンを使った調べ学習の時間・下書 きの時間が計7時間増加している.
(2)ガイダンスの内容の違い
昨年は生徒たちが生まれてすらいない,1995 年1月 17 日に起きた阪神・淡路大震災についての DVD を見てガイ ダンスを行ったが,今年の生徒は 2011 年3月 11 日発生 し,生徒らが経験した東日本大震災を主軸としたガイダ ンスを行った.
な は た で 5
ー つ が た 災 徒 ン
(3)インター 昨年の調べ学 なっていたが,
は,インタビ た疑問を調べ学 である.
5.2.2 生
(1)防災プ 6月 28 日の ーポイントを元 ついてどのよ が出たのか,
たかなどを中心 災地のことまで 徒たちには東 ンケートを実施
(2)防災イ 9月 15 日に
平成 1 ガイダンス
活動内容 全体計画投
(東日本大 インタビュ 街歩きガイ インタビュ 防災インタ 街歩き地図 街歩き+ま
(水)
2 街歩き後 パンフレ 調べ学習(
(1) ガイダ (2) 下書き (3) 下書き (4) 清書 3 発表準備
発表会原稿 発表会リハ 4 発表会
クラス別発 防災プロジ 全体発表会 計 31(33)時
ーネットを用 学習の実施時
,今年はまち ューやまち歩 学習でより深
生徒の学習の ロジェクトの の総合の時間 元に,各クラ うな地震だっ 自分たちの地 心に,生徒た で幅広い内容 日本大震災に 施した.
ンタビュー に防災インタビ
表1 平成 2 成 23 年度防災プ
ス~街歩き 投げかけと意識付 大震災の振り返り ー先・質問事項 ダンス ー事前リハーサ ビュー 9 月 15 確認・事前指導 とめ 9 月 29 日
後の学習 レット作成・調べ
(パソコン使用)
ダンス・台割り
・班内チェック
備
稿準備(国語科)
ハーサル
発表会 12 月 20 日 ジェクト振り返り 会 1 月 16 日
時間(*は昨年
いた調べ学習 時期は防災イン 歩きの後に実 歩きで生徒たち 深く勉強しても
の詳細 のガイダンスと 間に中村研究室 スで先生方が たのか,どの 地域ではどうい たちの身の回り 容で学習を行っ について振り返
ビューが実施さ 23 年度プログ プロジェクト年間
付け*
り)
項の決定 サル
5 日(木)
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*
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日(火)
り
年との内容・順番
島崎・岩本
習の実施時期 ンタビューの前 実施をした.こ ちが実際に体験 もらうための配
と導入
室で作成したパ が東日本大震災 のくらいの被害 いうことが起こ のことから,
った.その後,
返ってもらい,
された.地域の グラム
間活動内容 時間数 1 時間 1 時間 1 時間 1 時間 2 時間 2 時間 6 時間
4 時間 1 時間 2 時間 2 時間 2 時間
(2 時間)
1 時間
2 時間 1 時間 2 時間 番の変更箇所)
本・大貫・中村
前に これ 験し 配慮
パワ 災に 害者 こっ 被 生 ア
の施
設を 地域 ュー 中村 1
2
3
4
計
村:東日本大震
を訪問し,災害 域の一員として ー同行は,中村 村である.
表 平成 22 ガイダンス~
内容
全体計画投げか DVD「幸せを運 いての教材ビデ グループ討議
「幸せを運ぼう インタビュー先 調べ学習(パソ 防災インタビュ 街歩き+まとめ 2 街歩き後の学
パンフレッ (1) ガイダンス (2) 下書き (3) 下書き・班 (4) 清書 3 発表準備
発表会原稿準備 発表会リハーサ 4 発表会
クラス別発表会 防災プロジェク 全体発表会 1
計 26(28)時間
図
(出典:2
震災が防災学習
害時に自分たち て何ができるの 村研防災プロジ 表2 平成 22
2 年度防災プロ
~街歩き かけと意識付け 運ぼう」(阪神
デオ)
(前コマの DVD う」の内容につい 先・質問事項の決 ソコン使用)
ュー 9 月 2 日 め 10 月 13 日
学習 ト作成 ス・台割り 班内チェック
備(国語科)
サル
会 12 月 21 日(火 クト振り返り
月 15 日
図1 インタビ 2011 年9月2
習への取り組み
ちで何ができる のか学んだ.
ジェクトメン 年度プログラ ロジェクト年間活
・淡路大震災に
いて)
決定
(水)
(水)
火)
ビューの様子 2日 筆者らが
みに及ぼす効果
9 るか等を伺い,
防災インタビ バーの6名と ラム
活動内容 時間数 1 時間 につ 1 時間 1 時間 1 時間 2 時間 2 時間 5 時間
1 時間 2 時間 1 時間 2 時間
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97 ビ
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グ 防 ペ
(3)防災まち 9月 29 日に の中で,各ク 自分たちが住ん できる施設な トは,中村と中 牧中学校の保護
(4)調べ学習
「地震防災に ータ室でパソ 調べ学習が行わ ージのテーマに この作業には,
6名がアシス
(5)パンフ まち歩き後の グループごとに 防災インタビ ページであった
図3
(出典:
(出典:2 ち歩き に防災まち歩き
ラスごとのコ んでいる地域 どを調査した 中村研究室メ 護者の方にも
習(パソコン に役立つ知識 コン・インタ われた.生徒 にそって調査
,中村研究室 タントとして レット作成 の総合の時間 に一冊のパン ュー,まち歩 た.
3 パンフレ 2011 年 11 月 図2 街歩 2011 年 10 月 1
きが実施された ースをグルー 域の危険な場所 た.防災まち歩 ンバー20 名で 参加して頂い
ンを使用)
識」というテー ーネットを使 徒各自がパンフ 査・プリントア 室の防災プロジ て参加した.
間に行われた.発 ンフレットを作 歩きをまとめた
ット作成時の 28 日 筆者ら 歩きの様子
13 日 筆者ら
た.中学校の学 ープ単位で歩き 所や災害時に利 歩きのアシスタ である.また,
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ーマで,コンピ 使用し,4時間 フレットの個人 アウトを行った ジェクトメンバ
発表会に向けて 作成した.内容は た班ページと個
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6)発表原稿作 発表会にむけて が行われた.
7)リハーサル 2 月上旬に各 が行なわれた.
ンフレットを写 て発表練習をし 見ていた生徒が 8)発表会
2 月 20 日に実 室で,関係者を ションを行った 学参加した.
9)全体発表会 1月 16 日に本 投票で選ばれた 村研究室からは 参加した.
3 調査の概 1)アンケー いずれのアンケ 得て実施した.
生徒用事前ア 在籍数:159 名 6月ごろに各ク い回収した.ア 起きたときに何 いたか」「防災
生徒用事前ア 在籍数:169 名 6月ごろに各ク い回収した.ア 年度の本牧防災
生徒用まち歩 在籍数:159 名 9月 29 日まち 徒に記入しても
「防災に関する を通して身につ
生徒用事後ア 在籍数:159 名
2 月 20 日の振 作成
て国語科と総合
ル
各教室でプレゼ 本番同様にモ 写し出し,ス した.発表が終 が良い点や改善
実施された.場 を招き各グルー
た.保護者の方
会
本牧中学校体育 た代表1班が発 は防災プロジェ
概要 ト調査
ケートも中学校 アンケート(
名 回収数:1 クラス担任が配 アンケートの質
何をしていたか 災に関する知識
アンケート(2 名 回収数:1
クラス担任が配 アンケートの質
災プロジェク 歩き当日アンケ 名 回収数:15 ち歩き当日,まと
もらい回収した る知識について
ついたか」など アンケート 名 回収数 158
振り返りの授業
合の時間を使
ゼンテーショ モニターに OH トップウォッ 終わった後は 善点をアドバ
場所は本牧中学 ープ 10 分程度
方,地域の方合
育館で実施され 発表した.保護 ェクトメンバ
校側の事前チ 1年生向け)
52 名 回収率 配布し,生徒 質問項目は,「東
か」「その後の数 識について」な
2年生向け)
60 名 回収率 配布し,生徒 質問項目は,「今
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58 名 回収率 とめ作業終了 た.アンケー て」「どのよう
ど.
8 名 回収率 業内に生徒に
用し,原稿作
ンのリハーサ HP を接続し,
チで時間を計
,先生や発表 イスしていた
学校 1 学年各 のプレゼンテ 合せて 35 名が
れた.各クラス 護者らのほか、
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ェックと了解
率 96%
に記入しても 東日本大震災 数日間何をし など.
率 95%
に記入しても 今回の地震で ましたか」な
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(2)参与観察 筆者らは防災 ビュー,街歩 表会当日に本牧 ィールドノーツ ロジェクトメ にも協力して らった.主な観 テーマ選びの際 近な人が被災 り組みの差であ
(3)パンフ 生徒たちが作 学校から預か ージを 10 カテ ような傾向の差 点について比較
6 結果
今年度の防災 生徒たちの取 結果で,各尺度 ができた.防災 ルが上がってい に高い関心を持 6.1 防災
(1)防災イ 昨年は準備 のに対して,今 主的に手を挙げ メモを取ってい はたくさんの生 参与観察では
アンケートの 方はどうだっ ついて」など まち歩き当日 参加していた した.参加者 項目は「街歩き ったこと」な 察
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レット分析 作成したパン りすべてを写 テゴリに分類し
差があるのか 較した.
災学習につい り組みに明確 度において高 災パンフレッ いた.これら 持つことがで 災学習に対する
ンタビューに した質問以外 今年は各クラ げて質問して いた生徒が半 生徒が裏まで は以下のよう
の質問項目は「
たか」「防災学 ど.
アンケート ただいた保護者 者は 36 名,回収
きに参加した理 などである.
トのガイダン べ学習,パンフ 行き,参与観察 た.また,まち の中村研究室の
歩きの補助と 徒たちの学習に なテーマを選 徒とそうでない
ンフレットを発 写真撮影した.
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いて,昨年と比 確な差があった 高い評価の回答 トの完成度で は生徒自身が できたためと言 る有用感につ について 外はその場では
ス1,2個程 ていた.昨年は 半数ほどだった で使ってメモを な記述も見る
島崎・岩本
「防災プロジェ 学習を行ったこ
者の方に記入し 収数は 35 票.
理由」「防災に
ンス,防災イン フレット作成,
察を行い,毎回 ち歩きの際には のメンバー14 と観察を行って に対する自主性 選んでいるか,
い生徒の学習の
発表会終了後,
その中の個人 ンフレットとど 点,今年分 1
比較したところ た.アンケート 答を多く得るこ でも,今年はレ が防災というも 言える.
ついて は全く出なかっ 程度だが生徒が はインタビュー たのに対し,今 を取っていた.
ることができた
本・大貫・中村
ェク こと
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ンタ 発 回フ はプ 名 ても 性や 身 の取
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(2 ま 防災 尺度 25%
う結 た生 とい
「少 あま た」
ま 発見 のに られ かっ でき 参 みら 備蓄 に生
村:東日本大震
こで廊下側の れた.「今回の とはありました
(9 月 1
ンタビューの時 質問する生徒 う.まとめ作業
2)まち歩きに まち歩き当日ア 災についての関 度の質問に,昨
%,「すこし高 結果に対して,
生徒が 34%,「少 いう結果になっ 少し高くなった まり大きな差が と回答した生 まち歩きの感想 見に加えて「疲 に対し,今年は れてよかった」
ってよかった」
きた.
参与観察ではフ られた.この記 蓄庫を見せても 生徒が自主的に
図4 地震や防
震災が防災学習
一番前に居た の震災が起きた
たか」
15 日 防災イン 大貫 時,多くの生徒 徒も割と多かっ 業に関してもま
(9 月 15 日 防 宇野 について アンケートの 関心は高くな 昨年は「高くな 高くなった」と
今年の生徒は 少し高くなっ った.昨年と た」の合計が昨 が見られなかっ 生徒の割合が 想を自由記述で 疲れた」,「暑い は「防災の観点
,「こんなにも とポジティブ フィールドノー 記述はまち歩き もらった時に本 に質問したとい 防災インタビ 防災についての
習への取り組み
た子が自主的に たことで,当日 ンタビューアソ 貫 フィールドノ 徒が紙の裏側ま ったので意欲が もまじめに取り
防災インタビュ 野 フィールドノ
「まち歩きに りましたか」
なった」と回答 と回答した生徒
は「高くなっ た」と回答した 比較すると 昨年は 84%,今
ったが,明確 9 ポイント上 で聞いた質問 い」などの記 点で自分たち も危ない場所 ブな回答を多 ーツに以下の きで本牧小学校 本牧小学校の校 いうシーンで ビューによる,
の関心の向上
みに及ぼす効果
9 に手をあげて
日何か大変な ソカ幼稚園班 ノートより)
までメモを取 があるように り組んでいた.
ュー消防署班 ノートより)
よって地震や という4段階 答した生徒が 徒が 59%とい た」と回答し た生徒が 55%
「高くなった」
今年は 89%と 確に「高くなっ
昇した.
では,昨年は 述が多かった の住む街を見 所があるのがわ く見ることが ような記述が 学校にある防災 校長先生あて ある.
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99 や 階 が い し
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主 し 徒 何 探 K M K M
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「備蓄庫の耐震
「中にはどんな
「火種となる
「3 月 11 日の たか.」 質問していた としていた.彼 ないので,その と思う.
(9 月 29 日 以下のような 主的に質問を しに行ったりす 徒には見られな 何故か,進行方 探しに行くこ K(大学生)「何 M(生徒)「電話 K「あぁ,災害 M「そうそう!
(9 月 29 日
(3)防災学習 事後アンケー すか」という質 い「とても楽 い「まあ楽しか 対して,今年の 生徒が 39%,回 ると「とても楽 5 ポイントの差 う積極的な回答
図5
耐震性はどうな んなものが入っ るものはありま の地震でこの備 たのは I くんと 彼らはメモを見 の場で思いつい 日 まち歩き 大
な記述も見る したり,コー するなどの行 なかった光景 行方向とは逆に ことに.
何しにいくの?
電話ボックス見 害時に携帯使え
!」
日 まち歩き 國 習全般として ートの「防災 質問に,昨年 しかった」と回 かった」と回答 の生徒は「と 回答した生徒 楽しかった」, 差だが,今年 答が 11 ポイン
防災学習は楽
なっていますか っていますか.」 ますか.」
備蓄庫は何か被 と号令が係の子 見ながら話して いたことをぶつ 大貫 フィール
ことができた ースとはやや遠 行動を見せた.
景だった.
に公園を進み,
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えなくなっとき 國政 フィール
災プロジェクト 年の生徒は5段 回答した生徒 答した生徒が ても楽しかっ 徒が 36%だった
「まあ楽しか 年は「とても楽 ント上昇した.
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か被害は受けま 子が交互にず していたわけで ぶつけていたの ルドノートより)
た.生徒たちは 遠い物をチェッ これは昨年の
電話ボックス だよ.」
よ.」 きのためか」
ルドノートより
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どうか(%) まし ずっ では のだ り)
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な にも トで に立 答し ンケ とき 階尺 が 生徒 もの で学 6.
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(昨
今 と伝 して 図な 今回 あり 長い れを 図
なお,昨年この も 2011 年7月 で「今回の震災 立ちましたか」
した生徒は 29%
ケートの「今回 きに役に立つと 尺度の回答で
「まあそう思う 徒がこの防災学 のだと答えてい 学習に取り組ん 2 実践的 生徒たちが制作 はマグニチュー など,実際に地 的な知識につい いたが,今年は だった.その反 ついて調べてい 昨年は 12%),
今年の生徒は,
伝えようとする ても,文字の見 などの解説があ 回の発表の総括 り,どこの班も い棒を使って説 を見れば防災マ 図6 昨年と今
の防災学習を学 にアンケート 災で昨年度の本
という質問に
%しかいなか 回の総合学習は と思いますか」
65%の生徒が う」と回答した 学習は今後起こ いる.これは生 んだのが大きく 的な学習につい
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他の人に自分 る意識を感じら 見づらいところ あるときはしっ 括としては,最 も発表の方法に
説明や,聞き手 マスターになれ 今年の防災パン
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本牧防災プロ に対し,「役に かった.一方,今
は,今後大き
」という質問 が「そう思う」
た.合計する こりうる大地震 生徒たちが実 く影響してい いて
レットの個人 違いや,地震 しまったとき が多く,全体の 内容を作った 生徒は防災設備 多かった.防災
9%(昨年は2
分の調べたこ られた.OHP ろをクローズ っかりと図を 最優秀作品と に力が入ってい
手を引きつけ なれます」など ンフレットの
現在2年生)
このアンケー ジェクトは役 に立った」と回 今年の事後ア な地震が来た に対し,4段
,29%の生徒 と,94%もの 震に役に立つ 践的なテーマ る.
ページで,去 震についての伝 ではなく,一 の 15%を占め 生徒は7%の 備や二次災害 災設備は 24%
2%)だった.
とをしっかり の利良方法に アップして,
強調していた ということだけ いたと言える.
ける前口上「こ ど昨年までに見 分類比較(%)
ー 役 回 ア た 段 徒 の つ マ
去 伝 一 め の 害
%
に た.
け こ 見
島崎・岩本・大貫・中村:東日本大震災が防災学習への取り組みに及ぼす効果
101 られなかったことを実践していたりと発表に対して工夫
をみることもできた.生徒たちは割と真剣に発表を聞い ており,地震防災に真摯に取り組んだのだろうと思った.
(1月16 日 学年全体発表 島崎 フィールドノートより)
自分の調べたことをみんな知ってもらい,震災が起き た時に役に立ててほしいという意欲を見ることができた.
他にも,昨年のパンフレットと今年のパンフレットを比 較してみると,今年のパンフレットの方が全体的に色鮮 やかであり,第三者に投げかける内容のものが多かった.
7 考察
7.1 防災学習に対する有用感についての考察 アンケートの結果から生徒たちの防災学習に対する関 心が高まっており,更に学習終了時の満足度も上昇して いる.こういった結果から,今年の生徒たちは昨年の生 徒たちより防災学習に高い関心をもって取り組めたとい うことができる.
その原因としては3月 11 日に発生した東日本大震災 の影響が大きい.この未曾有の大震災は,震源から遠く 離れた横浜の本牧中学校のある地域にも様々な被害を及 ぼした.大きな揺れによる器物の落下,破損,停電や保 護者の帰宅困難,買い占めによる食料・生活必需品の欠 品などだ.この,かつてない体験により,生徒たちは地 震による恐怖をその身に感じた.さらに,生徒たちはこ のような実体験以外にもメディアから様々な情報を得た.
気仙沼の火の海がうごめいている姿や,津波に呑みこま れる街,避難所での生活など大震災をリアルに想像する ことを手助けている.こういった体験や情報から生徒た ちは「いずれ起こりうるだろう地震」から「今すぐに起 きてもおかしくない地震」と意識が変わった.そして,
この防災学習は「総合の授業の一環だからやっている学 習」から「自分の身を守るために必要な学習」に変わっ た.自らの為の学習は生徒たちに有用感をもたらし,生 徒たちの学習の効果が上昇したといえる.
7.2 実践的な学習についての考察
昨年の生徒は「地震がどうして起こるのか」,「マグニ チュードと震度の違い」,「液状化現象とは何か」などと いった地震のメカニズムや,どういった現象なのかとい う一般的な地震の知識を調べている生徒が多かった.し かし,今年の生徒のパンフレットを見ると「エレベータ ーで地震が起きたら」,「地震が起きたらどのような所に 逃げればいいのか」,「避難所と仮設住宅ではどういった メリット・デメリットがあるのか」などといった,地震 が起きた後に実際にどういう行動を取れば助かるのか,
被害を最小限に抑えることができるのか,というところ に注目している.他にも「本牧中学校付近では,どうい
うところに逃げれば津波を回避できるか」などの地域性 のあるパンフレットも,昨年と比較すると多く見ること ができた.これも東日本大震災の影響が大きいと推測で きる.7.1で述べたとおり,生徒たちの意識が変わる ことによって「自分たちのための学習」という意識が強 くなった.したがってパンフレットで自由にテーマを決 める際に,より「自分たちのためになるテーマ」を選ん だと推測できる.
8 まとめ
先の結果でも述べたが,生徒たちは自分たちの学習が これから起きるかもしれない大震災に役に立つものとし て捉えている.このように,生徒が自分にとって役に立 つ学習をしていると生徒が認識していることこそ,有用 感のある学習であり,有用感のある学習を行うことによ って学習効果そのものも上がったことがわかった.この 防災学習だけではなく他の科目の学習も,何故この学習 をしなければいけないのか,この学習は自分に何をもた らすのかを生徒にしっかりと認識させることが,学習に おいて大切だろう.
残念ながら,今日の学習は,受験勉強のため,成績表 のためといった取り組みが多い.受験をしない生徒,成 績表に関心がない生徒はこのような学習環境で,学習に 有用感を感じることはないだろう.そこで,今一度,学 習の取り組み方について再考し,この学習の意義を生徒 たちにしっかりと認識させ,有用感を維持させていくこ とを目指すべきである.
謝辞
この研究にご協力頂いた,本牧中学校の先生・生徒・
保護者の皆様,本牧地域の方々,ボランティアの学生の 皆様に厚く御礼申し上げます.
参考文献
[1] 稲垣大 佐藤亘:共同学習の効果:地震防災をテー マとする総合的学習, 東京都市大学環境情報学部 2010 年度卒業論文,2011
[2] 城下秀行・河田惠昭:学校における防災学習に対す る中学生の意識‐和歌山県広川町の生徒を対象と して‐, 自然災害科学,Vol.28,No.1,P67~80,
2009